万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4502 駅前で眠る老人すぐ横にマクドナルドの温かいごみ

令和7年1月31日(金) 【旧 一月三日 先負】 大寒・鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)

駅前で眠る老人すぐ横にマクドナルドの温かいごみ
  ~鳥居 『キリンの子-鳥居歌集』

 ソ連末期の1990年1月31日、ペレストロイカの波の中で米ハンバーガーチェーン「マクドナルド」がモスクワに第1号店を出店しました。35年前の今日のことでした。ご存知の通り、ウクライナ侵攻を機に2022年6月にマクドナルドはロシアから全面撤退しています。

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Photo:撤退が決まって混雑するマクドナルドモスクワ店。

 マクドナルドの撤退から約1ヶ月後に同じ場所オープンしたのは「フクースナ・イ・トーチカ」というロシアブランドのハンバーガーチェーンでした。店名はロシア語で「美味しい。ただそれだけ」という意味だとか。マクドナルド時代に使っていた厨房の設備をそのまま使っていて、レシピもそのままだから、きっとお味はそんなに変わらないのかもしれません。

ハンバーガー食べて氷河の神に会う
  ~伊丹公子(1925-2014)『アーギライト』

250131_ハンバーガー食べて氷河の神に会う
Photo:マクドナルド撤退後の新店舗。看板のロシア語は「名前が変わっても、愛はそのまま」。

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#4495 庭隅にゆふさり来れば眼のごとくボンタンの實ほのか光れり

令和7年1月24日(金) 【旧 一二月二五日 赤口】 大寒・款冬華(ふきのはなさく)

伊予柑に光沢与ふ燧灘
  ~高澤良一(1940-)『寒暑』

 燧灘《ひうちなだ》は瀬戸内海の中央部にあたる海域で愛媛県高縄半島と香川県の荘内半島の間の海域。具体的には今治、新居浜 四国中央、観音寺などの各市の沖合いの一帯の海。詳しくは存じませんがこの地区にも伊予柑の農家があるのでしょう。

250124_伊予柑に光沢与ふ燧灘
Photo:伊予柑 ~GIFYPAD

 「伊予柑」は春の季語ですが、一般に柑橘類は寒い時期に旬を迎えるものが多いようです。愛媛に伊予柑があれば高知には土佐文旦あり。九州地方ではボンタンとも呼ばれますが同じ果物を指します。伊予柑よりははるかにデカい。でかいうえに皮が分厚いので食べるのには少々時間がかかります。今年はカメムシの被害で蜜柑の値段が高騰していますが、これだけ皮の厚い文旦にはさすがのカメムシも歯が立たないでしょうね。

庭隅にゆふさり来れば眼のごとくボンタンの實ほのか光れり
  ~中村憲吉(1889-1934)

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Photo:土佐文旦 ~宮地さん家

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#4478 芹なずな御形はこべら仏の座すずなすずしろこれぞ七草

令和7年1月7日(火) 【旧 一二月八日 先勝】 小寒・「芹乃栄(せりすなわちさかう)」

芹なずな御形《おぎょう》はこべら仏の座すずなすずしろこれぞ七草
  ~伝:四辻善成(1326-1402)

芹(せり)、なずな(ぺんぺん草)、御形(母子草)、はこべら(はこべ)、仏の座(小鬼田平子)、すずな(蕪)、すずしろ(大根)。これが七草なのだよ。

250107_芹なずな御形はこべら仏の座
Photo:七草粥 ~@Living

 今年最初の節句は今日1月7日の「人日《じんじつ》」。「節句」とは季節の節目を祝う日本の行事で、1年に5回あります。この次は3月3日の上巳《じょうし》、そして5月5日の端午、7月7日の七夕《しちせき》、9月9日の重陽と続き、これを合わせて五節句。「人日」に七草粥を食するのは、正月の美酒美食で弱った胃腸を休めて一年の無病息災を祈るためだと言われています。したがって別名は「七草の節句」。1月7日は昭和天皇が崩御され、平成の始まった日でもありました。1989(昭和64)年のことでした。昭和も遠くなりにけり、ですね。

昭和史閉ず七草粥に白き膜
  ~寺井谷子(1944-)

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#4459 白菜に春菊が入り魚が入り大血縁となりゆける鍋

令和6年12月19日(木) 【旧 一一月一九日 大安】 大雪・「鮭魚群(さけのうおむらがる)」

春菊の湯をとほしたる香りかな
  ~染谷秀雄(1943-)

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Photo:春菊 ~シンクヘルスブログ

 春菊はキク科シュンギク属の植物で、葉の形や香りが菊にそっくりなのに黄色い花が咲くのは春。したがって俳句でも春の季語として扱われます。原産地は地中海沿岸。欧米では観賞用植物として栽培されていますが、中国や韓国など東アジアでは若い茎葉が食用にされています。日本には室町時代に渡来したとされ、今では鍋料理に欠かせない冬野菜となっています。花より団子的発想で言うと冬の季語にしてもらいたいくらいです。ちなみに関西では「菊菜」と呼ぶことのほうが多いようです。

白菜に春菊が入り魚が入り大血縁となりゆける鍋
  ~池田はるみ(1948-)『ガーゼ』

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#4449 河豚鍋も鮟鱇鍋もせずに久しどうでもよいかそれはいけない

令和6年12月9日(月) 【旧 一一月九日 先勝】 大雪・「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」

河豚鍋も鮟鱇鍋もせずに久しどうでもよいかそれはいけない
  ~馬場あき子(1928-)『太鼓の空間』

241209_河豚鍋も鮟鱇鍋もせずに久し
Photo:あんこう ~Sushi sKool K(慶)

 寒くなってくると鍋料理が恋しくなってきます。ところが仕事を辞めてしまうと会社や取引先の忘年会で鍋を囲むという機会もなくなってしまいました。夫婦二人で鍋料理というのもいささか寂しさがあるものです。まして家庭で河豚鍋や鮟鱇鍋はちょっとハードルが高いかなと思っていると、昨日はお歳暮で河豚鍋のセットを頂きました。鮟鱇鍋はまだ食べたことがありませんが、どんなお味なのでしょうか。そういえば今日12月9日は「漱石忌」。夏目漱石にも鮟鱇の句がありました。

あんかうは釣るす魚なり縄簾
  ~夏目漱石(1867-1916)

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