万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

高知

#4851 高円の尾上のきぎすあさなあさな妻に恋ひつつ鳴く音かなしも

令和8年1月15日(木) 【旧 11月27日 先勝】 小寒・雉始雊

雉子の声死後にも似たる朝景色
  ~右城暮石(1899-1995)

 朝の田園の澄み切った空気をつんざくような雉の声。「死後にも似たる」というのはその音と景色が生み出す鋭い透明感からの印象なのでしょう。

260115_高円の尾上のきぎすあさなあさな
Photo:キジの求愛 ~ぶらり自然散歩

 二十四節気「小寒」の末候は七十二候の第69候「雉始雊(きじはじめてなく)」。冬の寒さが深まった頃、雄の雉が雌を求めて鳴き始めます。雉がなく時は翼をバタバタを母衣打ちしながら「ケーンケーン」と甲高い声で鳴いて雌にプロポーズします。それに対する雌の行動はまさしく人間と同じ、受け入れれば「よろしくお願いします」、気に入らなければ「ごめんなさい」。それならまだいいほうですが、バカにするように「ホロロ」と鳴いてとっとと去っていくことも。「けんもほろろ」は雉さんのプロポーズが語源だったんですね。

高円の尾上のきぎすあさなあさな妻に恋ひつつ鳴く音かなしも
  ~源実朝(1192-1219)

高円の丘の上で雉が毎朝のように妻を求めて鳴く声が、なんとも物哀しい事だ。

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#4785 花終えし秋明菊の払われて庭ひろびろと日暮れより雨

令和7年11月11日(火) 【旧 9月22日 赤口】 立冬・山茶始開(つばきはじめてひらく)

花終えし秋明菊の払われて庭ひろびろと日暮れより雨
  ~大下一真(1948-)『漆桶』

251111_白咲けり赤は消えしか貴船菊
Photo:善法寺の秋明菊 ~とっておきの京都プロジェクト

 名前に「菊」とありますがシュウメイギクはキンポウゲ科の多年草で、菊ではなくアネモネの仲間なのです。欧米では Japanese anemone と呼ばれ、日本風の庭園には欠かせない植物となっています。ただし原産地は中国のようで、かなり古い時代に日本に入ってきた帰化植物とのこと。貝原益軒は『大和本草』の中で「秋牡丹」という名で紹介しています。他にも呼称が多く、貴船神社の周辺にたくさん自生していたことから「貴船菊」と呼ばれ得ることも多いようです。開花期は秋9月から11月。秋の始まりを知らせる花の一つで、そろそろ花の季節も見納めですね。

白咲けり赤は消えしか貴船菊
  ~右城暮石(1899-1995)『散歩圏』

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#4776 秋風の日に異に吹けば水茎の岡の木の葉も色づきにけり

令和7年11月2日(日) 【旧 9月13日 先負】 霜降・楓蔦黄(もみじつだきばむ)

黄葉す古木の一樹一樹かな
  ~右城暮石(1899-1995)

251102_黄葉す古木の一樹一樹かな
Photo:カツラの黄葉 ~山形市野草園

 七十二候の第54候は「楓蔦黄(もみじつだきばむ)」。二十四節気「霜降」の末候にあたります。木々が本当に色づいてくると季節はもう晩秋。代表的なイロハモミジが色づき始めるのは最低気温が8℃以下になることが必要で、5℃以下になると紅葉は一気に進むとされています。もちろん地域や個体差があるし、日照や昼夜の気温差により一概には言えませんが、これが散り始めるとあっという間に過ぎてゆく秋の名残の風景だと思うのは日本人共通の美意識と季節感ですね。

秋風の日に異《け》に吹けば水茎の岡の木の葉も色づきにけり
  ~作者未詳 『万葉集』 巻10-2193 雑歌

秋風が日増しに強く吹くようになってきてみずみずしい茎の生える岡の木々も色づいてきた。

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#4697 雪風の夜こそねらはん時なれや いさを立てよと船おろしする

令和7年8月15日(金) 【旧 閏6月22日 先負】 立秋・寒蝉鳴(ひぐらしなく)

雪風の夜こそねらはん時なれや いさを立てよと船おろしする
  ~中村亀三郎中将(1884-1944)

 毎年太平洋戦争終戦の日を迎える8月には戦争にちなんだ映画が上映されます。今年は今日8月15日に封切りされる『雪風 YUKIKAZE』。題名の「雪風」は帝国海軍の甲型駆逐艦の名前です。冒頭の短歌は1939年の進水式にあたって当時佐世保鎮守府司令長官であった中村亀三郎中将がこの艦に贈った一首。もちろん私もまだ観ていませんが、悲惨な最期を迎える結末をもって戦争の虚しさを訴えるドラマが多い中、この映画は「生きて帰る、生きて還す」ことをテーマにしているようです。

250815_生きるとは生き残ること
Photo:映画『雪風 YUKIKAZE』(2025年)

 「雪風」は「スラバヤ沖海戦」「西部ニューギニア戡定作戦」「第三次ソロモン海戦」「レイテ沖海戦」「坊ノ岬沖海戦」その他の有名な作戦に参加。瑞鳳をはじめとする空母や武蔵や大和などが次々に撃沈される激戦の中で最後まで沈められることがなく終戦を迎え、戦後は賠償艦として連合国に引き渡さています。余談ですが、昨年アカデミー視覚効果賞を獲った『ゴジラ-1.0』でもゴジラを倒すための戦力として駆逐艦「響」とともに「雪風」が返還されたという設定で登場しています。もちろんフィクションですが、このときもゴジラに沈められることはありませんでした。

生きるとは生き残ること 炉の裡にむくろ焼く火のとどろく聞けば
  ~高野公彦(1941-)『汽水の光』

250815_雪風の夜こそねらはん時なれや
Photo:雪風(駆逐艦)~Wikipedia

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#4685 大仏様も背中を開けて涼をとる台風一過鎌倉の夏

令和7年8月3日(日) 【旧 閏6月10日 先負】 大暑・大雨時行(たいうときどきにふる)

大仏様も背中を開けて涼をとる台風一過鎌倉の夏
  ~松田和生 「第21回NHK全国短歌大会」

250803_大仏様も背中を開けて涼をとる
Photo:鎌倉の大仏 ~photoAC(よしかっぱさん)

 台風9号は関東地方に向けてまっしぐらにやって来るかと思いましたが、途中で方向を変えて本州に上陸することなく過ぎていきました。適度な雨と風なら炎天下で座っている大仏様も喜んでくれるかもしれませんが暴風雨となると話は別。小笠原の海は荒れていたでしょうが、大きな災害にはならずに何よりでした。ともかく台風の発生数も日本に接近・上陸する数も最も多くなるのは8月。夏休み、レジャーの予定と重なるときもあるかもしれませんが、危険があれば予定変更もやむなしと覚悟しておかなければなりません。

ゴムボート玄関に入れ台風待つ
  ~右城暮石(1899-1995)『散歩圏』

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