万葉歳時記 一日一葉

「万葉集」から1300年の時を超えた現代短歌・俳句まで、
昔と今を結ぶ日本人のこころの歌を歳時記にしました。

#4987 重々ととよみはじめて夜明けたる梅雨入空に啼くほととぎす

令和8年5月24日(日) 【旧 4月8日 大安】 小満・蚕起食桑

梅雨入前悔なき晴もあらむとす
  ~相生垣瓜人(1898-1985)『明治草』

260524_重々ととよみはじめて夜明けたる
2026年梅雨入予想 ~tenki.jp

 そろそろ梅雨の季節がやってきます。気象協会が4月23日時点で発表した梅雨入り予想はこの図のとおりです。平年より少し早めになっていますが奄美は5月3日に、沖縄は4日に梅雨入りしました。九州から東北にかけては今月下旬から6月中旬にかけてと予想されており、降水量は平年並みかやや多いとされています。最近の雨の降り方は昔と違って突然猛烈に降ることがあるので大きな災害がなければいいのですが。

重々ととよみはじめて夜明けたる梅雨入空に啼くほととぎす
  ~斎藤茂吉(1882-1953)『霜』

 「響《とよ》む」は大きな音や声が鳴り響くこと。この場合は雷の音のようです。

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#4971 きし近く烏城そびえて旭川ながれゆたかに春たけむとす

令和8年5月8日(金) 【旧 3月22日 赤口】 立夏・蛙始鳴

きし近く烏城そびえて旭川ながれゆたかに春たけむとす
  ~昭和天皇(1901-1989) 昭和43年「歌会始の儀」

 「烏城《うじょう》」は岡山城の別称。昭和天皇が昭和42年4月、植樹祭に行幸の折、岡山後楽園に立ち寄られ、外苑を散策された時の旭川の印象を、翌年新春歌会始めの御題「川」によせてこの歌を詠まれた歌です。私が岡山後楽園を訪れた「昭和の日」にちなんで昭和天皇の御製を選びました。

260508_きし近く烏城そびえて旭川
Photo:岡山後楽園(2026年4月29日)

 尾道の翌日(4月29日)は因島の村上水軍城を訪れた後岡山へ。倉敷で一泊の後、日本三名園の一つ岡山後楽園を訪れました。昨日の記事でも書きましたが、山陽・山陰・四国地方は現役で仕事をしていた時には私の管轄テリトリーだったため、それこそ何度も出張する機会があったものの、有名な観光地をゆっくり見学することはありませんでした。もちろん後楽園も初めてです。雪の兼六園、花の偕楽園に対し、月の後楽園と呼ばれていますが訪れたのは昼間。恐らくこの日の夜は十三夜の月が綺麗に見えたであろうと想像しながら帰途につきました。

春曉の園丁鶴を放ちけり
  ~辻濛雨《つじもうう》(1884-1976)

 ※「園丁《えんてい》」とは庭師、造園師のこと。

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#4970 日のかげは青海原を照らしつゝ光る孔雀の尾の道の沖

令和8年5月7日(木) 【旧 3月21日 大安】 立夏・蛙始鳴

日のかげは青海原を照らしつゝ光る孔雀の尾の道の沖
  ~十返舎一九(1765-1831)

陽光が青海原を照らして、まるで孔雀の尾が開いたようにきらきらと輝く尾道の沖だよ。

 ゴールデンウィークは昨日で終わりました。私は観光地が込み合う前にと、先月27日から少し早めに出かけたのが広島県の尾道でした。尾道に来たのは約40年ぶり。仕事の関係で度々出張していたものの、当時を懐かしいと思ったのは商店街の尾道ラーメンだけ。名所旧跡を訪ねるのは今回が初めてでした。

260507_日のかげは青海原を照らしつゝ
Photo:千光寺公園からの眺望(2026年4月28日)

 尾道といえばやはり千光寺ですね。ロープウェイで登る山頂から瀬戸内海を眺める絶景はつとに有名です。千光寺公園の「文学のこみち」には多くの文学者や俳人などの歌碑や句碑がありました。江戸時代の戯作者十返舎一九は東海道だけではなく山陽道も旅していたのを知って驚き。そして尾道を舞台にした林芙美子の自伝小説『放浪記』の文学碑もありました。

海が見えた。海が見える。
五年ぶりに見る尾道の海はなつかしい、
汽車が尾道の海へさしかかると、
煤けた小さい町の屋根が提火のように、
拡がって来る。
赤い千光寺の塔が見える。
山は爽やかな若葉だ、緑色の海向こうに
ドックの赤い船が、帆柱を空に突きさしている。
私は涙があふれていた。

  ~林芙美子(1903-1951)『放浪記』より

260507_光る孔雀の尾の道の沖
Photo:「文学のこみち」に点在する文学碑(2026年4月28日)

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#4968 花鳥のあかぬわかれに春くれてけさよりむかふ夏山の色

令和8年5月5日(火) 【旧 3月19日 先負】 立夏・蛙始鳴

首夏の心をよみ侍りける
花鳥のあかぬわかれに春くれてけさよりむかふ夏山の色
  ~西園寺実兼(1249-1322)『玉葉和歌集』

花鳥との名残惜しい別れのうちに春が過ぎ、今朝から向き合うのは夏山の緑であるなあ。

 「首夏」は初夏と同義。旧暦4月1日に詠まれた歌のようです。年により5月4日や6日になることもありますが、多くの場合二十四節気7番目の「立夏」は、5月5日の「こどもの日」と重なります。

260505_花鳥のあかぬわかれに春くれて
Photo:JREメディア(JR東日本)

 「立夏」は「春分」と「夏至」のちょうど真ん中。『暦便覧』では「夏の立つがゆへ也」とされており、この日から「立秋」(今年は8月7日)の前日までが夏とされます。長い休みがある夏の季節が待ち遠しかった子どもの頃も今は昔。最近は夏の暑さも半端ないくらいで、今年には気温35℃の「猛暑日」の上に、40℃以上の日に「酷暑日」という名称が誕生するほど。その前に鬱陶しい「梅雨」も待っていますから、ますます体調に気をつけないといけない危険な季節の到来だと思えてしまいます。

夏が来ていなくなるひと戻るひとわたしの心は忙しくなる
  ~飯沼鮎子(1956-)

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#4953 春の雨ばらの芽に降りニコライへ明神の鳩遊びにぞ来る

令和8年4月20日(月) 【旧 3月4日 赤口】 穀雨・葭始生

風眠り穀雨の音か夕早し
  ~小倉緑村(1912-?)

260420_風眠り穀雨の音か夕早し
Photo:穀雨 ~神社・寺-御朱印めぐり.com

 今日は二十四節気の第6「穀雨」。『暦便覧』に「春雨降りて百穀を生化すればなり」と記されているとおり、穀物の成長を助ける恵みの雨が降るころです。期間としては次の「立夏」の前日までの半月間。すっかり暖かくなり、北の国を除いて桜の季節はほぼ終わりましたが、これから色とりどりの花が競って咲き始めます。

春の雨ばらの芽に降りニコライへ明神の鳩遊びにぞ来る
  ~与謝野晶子(1878-1942)

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