ホーム初勝利、やったぜヾ(´ω`=´ω`)ノ
神様仏様サトミキ様こと2015Jリーグ女子マネージャーであらせられる佐藤美希さんが来場したこの一戦。見事同じ九州のライバルである長崎に勝利し、待ちに待ったホーム初勝利を目の前で見届ける事が出来て良かったですわ。以前岐阜戦の時に言及した荒れた芝生もメイン側中央付近以外は概ね良好と言える程に回復しており、戦前に予想されたようなロングボールが飛び交いまくる展開にはならなかったことや興味深い選手起用がみられたこともあって、(勿論まだまだ課題もあるが)この長崎戦は見ごたえのある試合だったなぁと個人的には思っている。そんな一戦を今回は個人的に印象に残った3選手にスポットを当てて振り返る。
1.「ボランチ」藏川の意味とは
スタメン発表時、頭の中が「???」となった熊本サポーターも少なくなかったのではないだろうか。なんと、小野監督は本来SB(主に右)の藏川をボランチで起用したのだ。過去に、終盤の守備固めでボランチや(この前のセレッソ大阪戦のように)サイドハーフで起用されたことはあったが、スタートから起用したことは今までなかったからだ。本来ここのポジションを任されている黒木の出来も良かったため、髙柳・黒木のボランチコンビはしばらくは変えないだろうと考えていただけに、私もこの起用を知ったときには驚きを隠せなかった。
では、今回の起用を行った意図は何だったのだろうか。監督は試合後のコメントの中で「相手の出方というのがいくつか想定していて、カードを切らずにこちらのやり方を変える必要がありました。最後はそういう形でいくつか動かしたんですけども、暑くなるかもしれない試合で、カードを切ってシステム変更をしていたらどこかで間に合わなくなるというなかで、複数のポジションができる彼の存在は、今日の1つのキーになったと思います」と述べている。
実際ポジションを動かしたのは前線の方だったので藏川自体を動かすことはなかったが、試合展開次第ではカードを切らずに右SBの養父とポジションの入れ替えを行って、二人を本来のポジションに移す(上の図のように養父を右SB→ボランチ、藏川をボランチ→右SB)ことでチーム全体のバランスを整える選択をすることが出来るようにしておきたかったのではなかろうか。
今回の起用を行ったもう一つの意図として、私が試合をみて感じたのは、スペースのケアや味方のサポートの徹底だ。本来このポジションで起用されている黒木は運動量が豊富で、攻守に動き回れる選手だ。特に、自らインターセプトしてドリブルで持ちあがり前線に絡んでいく動きは熊本の攻撃に躍動感をもたらす原動力になっている。しかしその反面、彼が持ち上がった後のスペースは当然「穴が空いた」状態になる。カウンターの際には(勿論状況次第だが)攻撃に厚みをもたらす為に養父も上がる為、「カウンターのカウンター」を受けると周りのスライドが間に合わず、空いた右の奥のスペースを使われるリスクも上昇する。
黒木がインターセプトからドリブルで前線へ→嶋田と養父もそれに絡む→攻撃に厚みは増す一方で、中途半端な位置で取られて「カウンターのカウンター」を受けると上の図の斜線で示しているスペースを狙われるリスクもある
そこで、黒木に代えて藏川を起用することで前線でのプレーエリアを縮小する代わりに相手が使えるスペースも少なくする。また、攻撃時には養父を前に押し出し、その空いたスペースのカバーに入ったり、守備時には養父の守備の負担を軽減するために近くにポジションを取って積極的にサポートに入る事が出来る。
(攻撃時のイメージ) (主に)養父や嶋田の足元や前線のスペース(斜線部)に配球するが、黒木ほど敵陣深くまでは侵入しない(ハーフウェーラインを少し超えるぐらい)
(守備時のイメージ) 攻撃直後は養父が攻め上がったスペースのケアをし、相手がポゼッションしてる際は養父との距離を近づけてカバーリングに専念し、周りもそれに合わせてスライドする
実際、熊本の事を熟知している(ロアッソの元監督でもある)長崎の高木琢也監督は守備に不慣れな養父のいる右サイドに、CFで186cmの長身のイ ヨンジェを流れさせてそこにロングボールを入れて起点を作ろうとしたり、梶川や古部をあててドリブルやコンビネーションで切り崩そうとした。特に前半の前半は熊本側はその対応に追われ何度か危ない場面もあった。しかし、そこを耐え抜き、それ以外の時間帯でも失点をせずに済んだのは藏川の献身的なサポートのおかげであると言えるだろう。
前線でのプレーエリアは黒木程ではないと先程言ったが、それは攻撃面への貢献が無かったというわけではない。藏川自身のプレーエリアは広くはないが、真ん中の位置で全体を見渡し、空いているスペースにボールを出したり、攻撃に繋げられそうな位置に居る選手を見つけてはテンポよく配球していく。そのことが攻撃にもリズムを生みだし、それが決勝点にも繋がったのである(先制点のアシストは髙柳だが、その髙柳へのロングパスを出した養父にパスを出したのは藏川)。
2.もう一人のボランチ髙柳がみせた存在感
本職ではないボランチの藏川が守備に軸を置いて奮闘する一方で、その分攻撃に厚みをもたらしたのはボランチを主戦場とする髙柳だ。決勝点となった齊藤のゴールをヘディングでアシストした場面もそうだが、髙柳はこの試合で、藏川が低い位置でプレーする機会が多かった分、いつもより高い位置を取り、より攻撃に関わろうとしていたようにみえた。勿論他の試合でもボール奪取から縦パスをいれて攻撃のスイッチをいれる役割を果たしているが、この試合ではより前線に近いところ(特に長崎の3バックの横のスペースの近く)でプレーする姿がみられた。チームのバランスを考えてプレーしている髙柳が状況を見極めて攻撃参加する機会がもっと増えてくれば、より質の高い攻撃に繋がる。だからこそ、私は前線に彼が飛び出してきてゴールする姿がみられる日が近い将来訪れることを期待しているのである。
3.「帰ってきた」男、ダン(シュミット ダニエル)
昨年も怪我人続出による人員不足を補う為、一カ月という短期の期限付き移籍で仙台から熊本にやってきたシュミット ダニエル。今回は低迷するチームに刺激を与えるという、昨年よりも補強の意味合いの強い(半年以上の契約期間でもある)期限付き移籍での加入となった。
今回早速スタメンに入った彼は早速存在感を示した。ゴール隅へ飛んだシュートを196cmのリーチと的確なポジショニング、そして抜群の反射神経を活かしてセーブし失点のピンチからチームを救ったのだ。そればかりでなく、余裕でハーフウェイラインをこえる飛距離を出すパントキックで攻撃の起点になったり、長身と的確な判断を活かしてハイボールの処理もきっちりこなしてみせた。特にハイボールの処理は、セットプレーでの失点が多い今季のロアッソにおいては非常に重要なプレーだが、この試合でのダンはほぼミスもなくこなしていたし、そのことが無失点での勝利に繋がったといっても過言ではない。今後も安定感のあるプレーを続けて欲しいし、残り4人のGK陣も彼と共に切磋琢磨し正GKの座を奪い返しにいってもらいたい。
次節はアウェイ本城で北九州との対戦で、バトルオブ九州の連戦となる。悪夢の0-7を含め、とかく相性の悪い地での戦いだが、長崎戦で得た喜びを持続するためにも粘り強く戦って、鬼門のイメージを叩きつぶす勝ち点3を手に入れてもらいたい
髙柳一誠
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