rhidetoのblog

数学に現れる定義,定理,証明を理解するために,これまでいろいろと考えてきたことを主に書いていこうと思います。「数学を絵で理解しよう」

2013年08月

例27. 線形写像の箙(えびら)表示

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

 前回までで,テンソル積とHomの随伴についてのお話は1段落しましたので,例23で予告していたように,今回は,線形写像を図で表す方法と双対空間を導入します。次回は,その準備のもとで,もう1つ別のテンソル積の構成法を与えます(これは物理で扱われているテンソルの集合になります)。
 以下 $K$ を体とし,ベクトル空間はすべて $K$ 上の有限次元ベクトル空間とします。

線形写像の箙表示

 ベクトル空間の間の線形写像 $f \colon V \to W$ は,$V$ と $W$ それぞれの(順序)基底 $B:= (v_1, \ldots, v_m)$, $C:= (w_1, \ldots, w_n)$ を固定すると, $B, C$ に関する行列 $A$ によって一意的に表され,対応 $f \mapsto A$ は,ベクトル空間の間の同型
$\mathrm{Hom}_K(V, W) \to \mathrm{Mat}_{n,m}(K)$
を与えていました。ただし, $\mathrm{Mat}_{n,m}(K)$ は,$K$ 上の $(n,m)$ 型行列全体のなすベクトル空間とします。この $A$ を図で表すことを考えます。 $f$ と $A$ の関係は次の式で与えられていたことを思い出してください。行列表示を用いると,
(1)   $(f(v_1), \ldots, f(v_m)) = (w_1, \ldots, w_n)A$
あるいは成分で書くと,
(2)   $A = (a_{ji})_{1 \le j \le n, 1 \le i \le m} \iff f(v_i) = \sum_{j=1} ^n a_{ji}w_j$ $(1 \le i \le m)$

例1. 例えば, $m = 2, n= 3$ で,
$f(v_1) = w_1 + 2 w_2 - w_3, f(v_2) =  - w_2 + w_3$
のとき。 $f$ の $B, C$ に関する行列 $A$ は
$(f(v_1), f(v_2)) = (w_1, w_2, w_3)\begin{bmatrix}1 & 0\\2& -1\\ -1& 1\end{bmatrix}$
なので,
$A = \begin{bmatrix}1 & 0\\2& -1\\ -1& 1\end{bmatrix}$
となります。この線形写像 $f$ を次の図で表します。
valued-quiver-exm1

 つまり,一般に,上の (1) の形で $f$ が与えられているとき, $f$ は,$v_1, \ldots, v_m$, $w_1, \ldots, w_n$ を頂点とし,各 $i, j$ に対して, 値つきの矢印
$v_i \overset{a_{ji}}{\longrightarrow} w_j$
をもつ有向グラフによって表します。有向グラフは最近では,矢の入れ物である箙(えびら)という言葉でよばれますので,これを $f$ の付値箙表示 (valued quiver presentation) あるいは単に箙表示とよぶことにします。以下,この表示を用いますが,さらに簡単のために次の規則を用います。
● $a_{ji} = 0$ のときは,矢印 $v_i \overset{a_{ji}}{\longrightarrow} w_j$ を描かない。
● $a_{ji} = 1$ のときは,矢印 $v_i \longrightarrow w_j$ だけを描き,値は書かない。
この規則を用いると,先ほどの例は次のようになります。
valued-quiver-exm2

例 2. $V, W$ を上の例1と同じとします。このとき,$\mathrm{Hom}_K(V, W)$ は次の6個の線形写像を基底に持ちます:
 
基底
実際,(2,3)型行列で, $(j,i)$ 成分だけが1でそれ以外の成分が0であるようなものを $E_{ji}$ で表すと,$E_{ji}$ の全体は,(2,3)型行列の全体のなすベクトル空間 $\mathrm{Mat_{2,3}}(K)$ の基底になっていて, $E_{ji}$ は, $e_{ji}$ の行列 ($i = 1, 2; j = 1, 2, 3$) となっていますから。

練習問題 1. 例1の線形写像 $f$ を $e_{ji}$ ($i = 1, 2; j = 1, 2, 3$) の1次結合として表してください。

 上のことを一般化すると,次が得られます。

定理 1. $V, W$ をベクトル空間, $B:= (v_1, \ldots, v_m)$, $C:= (w_1, \ldots, w_n)$ をそれぞれ $V, W$ の(順序)基底とする。矢印として $v_i \longrightarrow w_j$ 1本しか持たない箙で表示される線形写像を $e_{ji}$ とする ($i = 1, \ldots, m; j = 1, \ldots, n$)。すると, $e_{ji}$ の全体は, $\mathrm{Hom}_K(V, W)$ の基底をなす。特にその次元は $mn$ となる。

練習問題 2. 上の定理を証明してください。

例 3. $K= \mathbb{C}$ とし,$ V$ をベクトル空間, $B:= (v_1, \ldots, v_m)$ をその基底とします。$B$ に関する行列がサイズ3,固有値 $\lambda$ のジョルダン細胞 $J_3(\lambda)$
$J_3(\lambda):= \begin{bmatrix}\lambda & 0 & 0\\1 & \lambda & 0\\0 & 1 & \lambda\end{bmatrix}$
になる $V$ の線形変換は,次の左の箙表示を持ちます。特に $\lambda = 0$ のときは右の箙表示になります。
Jordan-cell
また,$B$ に関する行列がジョルダン標準形 $J_3(\lambda) \oplus J_4(\mu)$ になる線形変換の箙表示は次のようになります:
Jordan-std-form

練習問題 3. $K= \mathbb{C}$ とし,$ V$ をベクトル空間, $B:= (v_1, \ldots, v_11)$ をその基底とします。 $V$ の線形変換 $f$ の $B$ に関する行列がジョルダン標準形 $J_2(1) \oplus J_2(0) \oplus J_3(2) \oplus J_4(-1)$ になるとき, $f$ の箙表示を求めてください。

研究問題. 線形写像の合成は,箙表示を用いるとどうなるか考えてみてください。

定義. ベクトル空間 $V$ に対して, $V^*:= \mathrm{Hom}_K(V, K)$ を $V$ の双対空間とよぶ。

  $K$ は $1$ を基底にもつので, $n = 1$ のときに上の定理を適用して,次が得られます。

定理 2. $V$ をベクトル空間, $B:= (v_1, \ldots, v_m)$ をその基底とする。このとき $e_{11}, \ldots, e_{m1}$ は,双対空間 $V^*$ の基底となる。この基底を $B$ の双対基底とよぶ。以下,各 $e_{j1}$ を $\check{v}_j$ とおく。

例 3. $V$ が $(v_1, v_2, v_3)$ を基底に持つとき,その双対基底となる $V^*$ の基底は次で与えられます:
双対基底

例26. テンソル積とHomの随伴(一般の環の場合)

まず,数学を理解することについてを読んでください。今回もすでに知っていることに,新しく学ぶ内容を関係づけて理解する(理解の成長の)例です。

 例19から前回の例22までの準備のもとで,例23, 24 でベクトル空間のテンソル積についてお話し,例25 で体上のベクトル空間の場合について,テンソル積とHomの随伴についてお話しました。
今回は,体上のベクトル空間での内容を一般の環の場合に拡張します。ですので,例 23, 24, 25の内容はすでに読まれているものと仮定します。証明は少し変えればほとんどそのままで通用しますので,詳しい証明は練習問題とします。
 以下,環とその上の加群を考えます。これらの概念に慣れていないときは,環を,整数全体の環 $\mathbb{Z}$ と思って,その上の左加群も,右加群も演算を加法で書かれたアーベル群(これをここでは加法群とよびます)と思って読んでください。(例10での注意と同じです。)

$R$ を環とし, $V$ を右 $R$ 加群, $W$ を左 $R$ 加群とします。この設定を簡単に
 $(V_R, {}_R W)$
で表します。 $V$ と $W$ からある加法群 $V \otimes_R W$ を作り,そのなかで次のような条件と計算規則が成り立つようにすることを考えます。
(T1) その加法群の元は,すべて $v \otimes w$, $(v \in V, w \in W)$という形の元の有限個の和で与えられる。
(T2) $v, v' \in V,w, w' \in W, a \in R$ のとき,
 (a$_1$) $(v + v') \otimes w = v \otimes w + v' \otimes w$,
 (a$_2$) $v \otimes (w + w') = v \otimes w + v \otimes w'$, かつ
 (b) $(va) \otimes w = v \otimes (aw)$.

ベクトル空間の場合と同様に,次のようにして $V \otimes_R W$ を作ります。

定義. 上の設定のもとで, $V$ と $W$ のテンソル積 $V \otimes_R W$ とは,次のように定義される加法群である。まず,直積集合 $V \times W$ を基底とする加法群 $\displaystyle\bigoplus_{(v, w) \in V \times W}\mathbb{Z}(v,w)$ を $F(V \times W)$ とおく。これを用いて
$V \otimes_R W:= F(V \times W)/I$
と定義する。ただし, $I$ は次の集合で生成される $F(V \times W)$ の部分群である:
$\{(v + v', w) - (v, w) - (v', w),$
$(v, w + w') - (v, w) - (v, w'),$
$(va, w) - (v, aw) \mid $
$v, v' \in V, w, w' \in W, a \in R\}$.
また,各 $(v, w) \in V \times W$に対して,
$v \otimes w:= (v, w) + I \in V \otimes_R W$
とおく。また写像,$\otimes_R \colon V \times W \to V \otimes_R W$ を,
$\otimes_R(v, w):= v \otimes w$ ($v \in V, w \in W$)
で定義する。

すると,ベクトル空間の場合と全く同様にして次が示されます。

命題. 上で定義したテンソル積 $V \otimes_R W$ は性質(T1), (T2)をもつ。したがって特に,写像 $\otimes_R$ は $R$-バランス写像になっている。

バランス写像は少しだけ双線形写像と異なりますので,その正確な定義を与えておきます。

定義. $R$ を環とし設定 $(V_R, {}_R W)$ を考え, $U$ を加法群とする。写像
$f \colon V \times W \to U$
が次の条件をみたすとき, $f$ は $R$-バランス写像であるという:$v, v' \in V,w, w' \in W, a \in R$ のとき,
($a_1$) $f(v+v', w) = f(v, w) + f(v', w)$,
($a_2$) $f(v, w+w') = f(v,w) + f(v, w')$, かつ
(b) $f(va, w) = f(v, aw)$.

注意. 双線形写像では,上の (b) のところは $f(av, w) =af(v,w)= f(v, aw)$ となっていました。
● そこでは, $V$ も $W$ も"左" $R$-加群でしたので, $av, aw$ と $a$ は左から作用し,移り先の $U$ も"左" $R$-加群でしたので, $af(v,w)$ が考えられました。
● しかし,上の設定では,$va, aw$ となり,$U$ には $R$ の作用は定義されていませんので $af(v,w)$ の項は出てきません。
● その代わり,「 $f$ の括弧内で第1成分に右から掛かっていた $a$ が,第2成分に左から掛かるように移動でき,またその逆の移動もできる」という条件になります。

練習問題 1. 上の命題を証明してください。

こうして作ったものは,やはり次のような普遍性をもちます。

定理 1. 任意の$R$-バランス写像 $f \colon V \times W \to U$ に対して,加法群の準同型 $\hat{f} \colon V \otimes_R W \to U$ で, $f = \hat{f} \circ \otimes_R$ をみたすものがただ1つ存在する。
tensor-R
解説. つまり, $V \times W$ からの $R$-バランス写像は,必ず $\otimes_R$ が現れるように分解でき,その分解の仕方は一意的ということです。これがテンソル積の圏論的な特徴付けです。テンソル積の圏論的性質は,原理的にこの定理 からすべて導かれます。

練習問題 2. 上の定理を証明してください。(ヒント:ベクトル空間の場合の証明をまねる。)

この普遍性から,上の $V \otimes_R W$ と同じ性質をもつものは,すべて本質的に $V \otimes_R W$ と同型であることが標準的な証明で示されます。つまり次が成り立ちます。

系.  $R$-バランス写像 $t \colon V \times W \to T$ が上の普遍性を持つならば (すなわち,任意の $R$-バランス写像 $f \colon V \times W \to U$ に対して,準同型 $\hat{f} \colon V \otimes W \to U$ で, $f = \hat{f} \circ t$ をみたすものがただ1つ存在するならば), 次の図式を可換にするような同型 $h \colon V \otimes_R W \to T$ が (ただ1つ) 存在する。
tensor-R-univ
練習問題 3.  上の系を証明してください。(ヒント:ベクトル空間の場合の証明をまねる。)

環 $R$ 自身は,その乗法によって,右 $R$-加群とも左 $R$-加群とも見られます。あるいは,両側 $R$-$R$-加群と見られます。

定義. $R$, $S$ を2つの環とするとき,両側 $R$-$S$-加群とは,左 $R$-加群でもあり,右 $S$-加群でもあるようなアーベル群 $M$ で,関係式
$r(ms) = (rm)s$,   ($r \in R, m \in M, s \in S$)
をみたすものである。このことを ${}_R M_S$ で表す。

注意. $R, S, T$ を環とする設定 $({}_SV_R, {}_R W_T)$ のもとで,テンソル積 $V \otimes_R W$ は
両側 $S$-$T$-加群になります。作用の与え方は,次の通りです:
$s(v \otimes w):= (sv \otimes w)$,  $(v \otimes w) t:= v \otimes (wt)$,
$(v \in V, w \in W, s \in S, t \in T)$

練習問題 4. この作用の定義が矛盾なく定義できることを証明してください。(ヒント:テンソル積の普遍性を用いる。)

定理 2. $R$ を環とする設定 $(V_R, {}_R W)$ のもとで,次の同型がなりたつ:
$V \otimes_R R \cong V$,   $R \otimes_R W \cong W$.

練習問題 5. この定理を証明してください。(ヒント:前回のベクトル空間のときの証明参照。)

テンソル積関手

環 $R$ に対して,左(右) $R$-加群全体のなす
$\mathbb{Z}$-圏 (例13参照) を $R$-Mod (Mod $R$ )で表します。

定義. $R, S$ を環とする。 $R$-$S$-両側加群 $V$ に対して $\mathbb{Z}$-関手
$V \otimes_S ? \colon S\text{-}\mathrm{Mod} \to R\text{-}\mathrm{Mod}$
を次で定義する:
$W \in (S\text{-}\mathrm{Mod})_0$ に対して, $(V \otimes_S ?)(W):= V \otimes_S W$,
$f \colon W \to W'$ in $S\text{-}\mathrm{Mod}$ に対して,  $(V \otimes_S ?)(f):= V \otimes_S f$ は準同型
$V\otimes_S f\colon V \otimes_S W \to V \otimes_S W'$
$(V \otimes_S f)(v \otimes w):= v \otimes f(w)$,   ($v \in V, w \in W$)
とする。

練習問題 6. (1) 上で $V \otimes_S f$ が矛盾なく定義できることを証明してください。(ヒント:テンソル積の普遍性を用いる。)
(2)  $V \otimes_S ?$ が $\mathbb{Z}$-関手であることを確かめてください。

$V \otimes_S ?$ が $\mathbb{Z}$-関手なので,次が得られます。

定理 3.
$R, S$ を環とし, $V$ を $R$-$S$-両側加群とすると,任意の左 $S$-加群 $W_1, W_2$ に対して,次の左 $R$-加群の同型が成り立つ:
$V \otimes_S (W_1 \oplus W_2)  \cong (V \otimes_S W_1) \oplus (V \otimes_S W_2)$.

練習問題 7. $R$ を環とするとき,任意の自然数 $m, n$ に対して, $R$-$R$-加群の同型
$R^m \otimes_R R^n \cong R^{mn}$
が成り立つことを証明してください。(ヒント:定理 2と定理 3を使う。)

テンソル積とHomの随伴

最後に,一般の環の場合のテンソル積とHomの随伴についてお話します。証明は,やはりベクトル空間の場合と全く同じようにできますので,練習問題とします。

定理 4. $R, S$ を環とする設定 $({}_R U, {}_R V_S, {}_S W)$ のもとで,次の加法群の間の自然な同型が存在する:
$\mathrm{Hom}_R(V \otimes_S W, U) \cong \mathrm{Hom}_S(W, \mathrm{Hom}_R(V, U))$
すなわち,関手
$V \otimes_S ? \colon S\text{-}\mathrm{Mod} \to R\text{-}\mathrm{Mod}$
は関手
$\mathrm{Hom}_R(V, ?) \colon R\text{-}\mathrm{Mod} \to S\text{-}\mathrm{Mod}$
の左随伴である。

練習問題 8. 上の随伴を証明し,その unit と counit を求めてください。

 次回は,線形写像を図 (valuded quiver) で表し,双対空間についてお話します。そののち,テンソル積のもう1つの与え方を紹介する予定です。

例25. テンソル積とHomの随伴(ベクトル空間の場合)

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

 例19から例22までの準備のもとで,前回までの2回で,ベクトル空間のテンソル積とその普遍性についてお話し,テンソル積の基本的な性質を調べました。これらの準備のもとで,今回はいよいよテンソル積とHomの随伴についてお話します。以下, $K$ を体とし,ベクトル空間は $K$ 上のベクトル空間とします。(旧versionでは,前回の最後のところで一般の環について書き始めましたが,これらは次回にまとめます。)

定理. ベクトル空間 $U, V, W$ に対して,次の自然な同型が存在する。
$\mathrm{Hom}_K(V \otimes_K W, U) \cong \mathrm{Hom}_K(W, \mathrm{Hom}_K(V, U))$
すなわち,関手
$V \otimes_K ?\colon \mathrm{Mod}\, K \to \mathrm{Mod}\, K$
は関手
$\mathrm{Hom}_K(V, ?)\colon \mathrm{Mod}\, K \to \mathrm{Mod}\, K$
の左随伴である。

これら2つの関手の対応を書いておきます: 線形写像 $f \colon X \to Y$ in $\mathrm{Mod}\, K$ は次の線形写像に移されます。
$V \otimes_K ?$ で:

$V \otimes_K f \colon  V \otimes_K X \to V \otimes_K Y$.
ただし, $(V \otimes_K f)(v \otimes x):= v \otimes f(v)$,   $(v \in V, x \in X)$.

$\mathrm{Hom}_K(V, ?)$ で:

$\mathrm{Hom}_K(V, f)\colon \mathrm{Hom}_K(V, X)  \to \mathrm{Hom}_K(V, Y)$.
ただし, $\mathrm{Hom}_K(V, f)(g):= fg$,   $(g \in \mathrm{Hom}_K(V, X))$.

証明. 直接,同型
$\omega_{W,U} \colon \mathrm{Hom}_K(V \otimes_K W, U) \to \mathrm{Hom}_K(W, \mathrm{Hom}_K(V, U))$
を作ります。簡単に書くために $\phi:= \omega_{W,U}$ とおきます。集合の指数法則のところで話した方法をまねて $\phi$ を次のように定義します。

$[\phi(F)(w)](v):= F(v \otimes w)$,   ($F \in \mathrm{Hom}_K(V \otimes_K W, U), w \in W, v \in V$).

これが同型であることを示すために,その逆写像の候補として $\psi$ を次で定義します。

$\psi\colon \mathrm{Hom}_K(W, \mathrm{Hom}_K(V, U)) \to \mathrm{Hom}_K(V \otimes_K W, U)$,
$\psi(G)(v \otimes w):= [G(w)](v)$,   ($G \in \mathrm{Hom}_K(W, \mathrm{Hom}_K(V, U)), w \in W, v \in V$).
これらの定義は,集合の場合(例18)とそっくりであることに注意してください( $(v, w)$ が $v \otimes w$ に変わっただけです)。
これらが,(a) 線形写像になっていることと,(b) 互いに逆写像になっていることは簡単に確かめられます。また,(c) これらの自然性も集合のときと同様に確かめられます。  □

練習問題 1. (a), (b), (c) を確かめてください。((c)のヒント:例19の練習問題 2)

練習問題 2. この随伴の unit
$\eta \colon \mathrm{id}_{\mathrm{Mod}\,K} \Longrightarrow \mathrm{Hom}_K(V, ?) \circ (V \otimes_K ?)$
と counit
$\varepsilon \colon (V \otimes_K ?)\circ \mathrm{Hom}_K(V, ?) \Longrightarrow \mathrm{id}_{\mathrm{Mod}\,K}$
を作ってください。先にこちらを作って,上の定理を証明することもできます。
(ヒント:
$\mathrm{Hom}_K(V, ?) \circ (V \otimes_K ?) = \mathrm{Hom}_K(V, V \otimes_K ?)$
$(V \otimes_K ?)\circ \mathrm{Hom}_K(V, ?) = V \otimes_K \mathrm{Hom}_K(V, ?)$
なので,各 $X \in (\mathrm{Mod}\, K)_0$ に対して,
$\eta_X \colon X \to \mathrm{Hom}_K(V, V \otimes_K X)$
$\varepsilon_X \colon V \otimes_K \mathrm{Hom}_K(V, X) \to X$
を作ることが問題になります。例22の例が参考になります。例21の定理の証明と同じ一般的な方法で 上の $\phi = \omega_{W,U}$ から作ることもできます。)

注意. (理解の成長)集合の場合と比較してみてください:
集合の場合:集合 $X, Y, Z$ に対して次の自然な同型が存在する。
$\mathrm{Map}(Y \times Z, X) \cong \mathrm{Map}(Z, \mathrm{Map}(Y, X))$
ベクトル空間の場合:ベクトル空間 $U, V, W$ に対して次の自然な同型が存在する。
$\mathrm{Hom}_K(V \otimes_K W, U) \cong \mathrm{Hom}_K(W, \mathrm{Hom}_K(V, U))$

 今回はあまり絵を描きませんでした。今回の話題は絵の例というよりも,すでに知っていることに関係づける例として挙げました。次回は,体上のベクトル空間で話してきたこれまでのことを,一般の環の上の加群に拡張しておきます。
プロフィール

rhideto(リデート)

ギャラリー
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  • Q&Aコーナー Q6 問 2.3.23解答例続き1(冪等元全体)
  • Q&Aコーナー Q3. 問 2.2.15の解答
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