Q1. p.5, 例 1.1.17: 前順序集合とは何ですか.

A1. 集合$S$上の関係 $\le$ が次の2つの条件を満たすとき,これを $S$ 上の前順序とよび,組 $(S, \le)$ を前順序集合とよびます.

(反射律) $a \le a \ (a \in S)$.
(推移律) $a \le b, b \le c \implies a \le c \ (a, b, c \in S)$.

本の説明のように,これを圏と見なせるのは,(反射律)が恒等射の存在に対応し,(推移律)が合成の存在に対応することによります.

ちなみに,関係 $\le$ がさらに次を満たすとき,$\le$ は $S$ 上の順序あるいは半順序,$(S, \le)$ は順序集合あるいは半順序集合とよばれるのでした:

(反対称律) $a \le b, b \le a \implies a = b \ (a, b \in S)$.

例 1.1.17の方法で $S$ を圏と見たものを $\mathcal{C}$とおきます.このとき $\mathcal{C}_0 = S$ であり,この条件は,$\mathcal{C}$ の言葉に翻訳すると次のようになります(理由については下を参照):

(*)  $a \cong b \implies a = b \ (a, b \in \mathcal{C}_0)$.

したがって,この圏では,異なる対象は非同型になっています。このような圏は骨格的(または基本的)とよばれます(定義 1.4.7参照).つまり,反対称律は骨格的であることに対応し,半順序集合は骨格的な圏と見られます.

なお,読みが同じ全順序集合と間違えないようにしてください。こちらは,任意の $a, b \in S$ に対して,$a \le b$ または $b \le a$ が成り立つような半順序集合のことです.

練習問題. $a, b \in \mathcal{C}_0$とする.このとき $\mathcal{C}$ において次の2つが同値であることを示せ:
(1) $a \le b, b \le a$;
(2) $a \cong b$.
((2)については定義 1.4.1参照.)このことから,(反対称律)と(*)とが同値になることが分かります.