rhidetoのblog

数学に現れる定義,定理,証明を理解するために,これまでいろいろと考えてきたことを主に書いていこうと思います。「数学を絵で理解しよう」

集合論

例18への追加(別の絵. テレビの画像送信)

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

随伴関手の話に進む前に,例2. 写像の絵の描き方のうち,定義域に重点をおいて描く方法を用いて,例18の全単射
$X^{(Y\times Z)} \cong (X^Y)^Z$
の別の絵を与えます。

復習.(定義域に重点をおいて描く方法) $f \colon A \to B$ を写像とします。$A$ の各元 $a$ "の上に $f(a)$ を載せる"ことによって,$f$ を表します。この描き方の例には,行列,スカラー場,ベクトル場,箙の表現などがあります。

以下の例では,$X = \{0,1,\dots, 9\}, Y = \{1, 2, 3\}, Z = \{a, b\}$ とします。

例 1. $Y \times Z = \{1, 2, 3\} \times \{a, b\} = \{(1,a), (2,a), (3,a), (1,b), (2,b), (3,b)\}$ を横に3,縦に2の長方形
$\begin{matrix} (1,a)& (2,a)& (3,a)\\ (1,b)& (2,b)& (3,b) \end{matrix}$
の形に表すとき, $F(1,a)=0, F(2,a)=2, F(3,a)=4, F(1,b)=5, F(2,b)=3, F(3,b)=1$ で定義される写像 $F \colon Y \times Z  \to X$ を,
 
$\begin{matrix} 0& 2& 4\\ 5& 3& 1 \end{matrix}$

で表します。定義域の絵と並べて描くと
$$\begin{matrix} (1,a)& (2,a)& (3,a)\\ (1,b)& (2,b)& (3,b) \end{matrix}\qquad\begin{matrix} 0& 2& 4\\ 5& 3& 1 \end{matrix}$$
例 2. $Y = \{1,2,3\}$ を横に並んだ3個の点の列
$\begin{matrix} 1& 2& 3\end{matrix}$
の形に表すとき,$f_a(1) = 0, f_a(2) = 2, f_a(3) = 4$ で定義される写像 $f_a \colon Y \to X$ を

$\begin{matrix} 0& 2& 4\end{matrix}$

で表します。
他にも,$f_b(1) = 5, f_b(2) = 3, f_b(3) = 1$ で定義される写像 $f_b \colon Y \to X$ を

$\begin{matrix} 5& 3& 1\end{matrix}$

で表します。$f_a, f_b$ ともに $Y$ から $X$ への写像なので,集合 $X^Y$ の元です: $f_a, f_b \in X^Y$.

例 3. $Z = \{a, b\}$ を縦に並んだ2個の点の列
$\begin{matrix} a\\b \end{matrix}$
の形に表すとき,$G(a) = f_a, G(b) = f_b$ で定義される写像 $G \colon Z \to X^Y$ を

$\begin{matrix} f_a\\f_b \end{matrix}$

で表します。ここで,$f_a, f_b$ は,例2のように横に並ぶ数で表されていますから,それを代入すると $G$ は,

$\begin{matrix} (0& 2& 4)\\(5& 3& 1) \end{matrix}$

と表されます。定義域の絵と並べて描くと,
$$\begin{matrix} a\\b \end{matrix}\qquad\begin{matrix} (0& 2& 4)\\(5& 3& 1) \end{matrix}$$
上の表し方を使うと,例18の全単射 $X^{(Y\times Z)} \cong (X^Y)^Z$ の対応はこの $F$ と $G$ については,次のように書けます:
$$\begin{matrix} 0& 2& 4\\ 5& 3& 1 \end{matrix}\ \longleftrightarrow  \begin{matrix} (0& 2& 4)\\(5& 3& 1) \end{matrix}$$
一般の形で書くと,
$$\begin{matrix} F(1,a)& F(2,a)& F(3,a)\\ F(1,b)& F(2,b)& F(3,b) \end{matrix}\ \longleftrightarrow  \begin{matrix} (F(1,a)& F(2,a)& F(3,a))\\(F(1,b)& F(2,b)& F(3,b)) \end{matrix}$$
これは,前回述べた直積の分解の仕方
$Y \times Z = \displaystyle\bigsqcup_{z \in Z} (Y\times \{z\})$
直積と素和
と全く同じです。これらの上に $X$ の元がばらまかれているようすを想像してください。
そこで, $X$ を,赤丸と白丸2元からなる集合として絵を描いてみます。 このとき,$X^{(Y\times Z)}$ の元 $F$ は $Y\times Z$ の面の上に赤丸と白丸を載せたものとして描かれます。白丸は地の色と同じなので描かないことにして赤丸だけを描きます。すると,例18の全単射
$X^{(Y\times Z)} \cong (X^Y)^Z$
の対応は次のように描けます:
集合の指数法則
右の図は,上で説明したように,写像 $Z \to X^Y$ を定義域 $Z$ に重点をおいて描いたものです。($Z$ の各元 $z$ に対して,それに対応する横線で表される写像 $f_z\colon Y \to X$ を対応させる写像 $Z \to X^Y$ を表します。これは,集合 $(X^Y)^Z$ の元です。)
テレビやファックスで画像を送るとき,横の走査線に分けて送られていますが,これと同じです。
(ちなみに高柳 健次郎が最初に実験で送った画像はカタカナのイでした:
1926年(大正15年)12月25日、浜松高工にてブラウン管による電送・受像を世界で初めて成功した。送像側に機械式のニプコー円板と受像側に電子式のブラウン管を用いて、片仮名の「イ」の文字を送受像した。走査線の数は40本だった。「イ」の字はいろは順の最初の文字として選んだ。Wikipediaより。)
例19ではテンソルとHomの随伴を扱う予定です。お楽しみに。

例18. 集合の指数法則

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

 今回と次回に分けて,テンソルとHomの随伴についてお話しします。今回はその準備として集合の指数法則について解説します。次回はこれに,テンソルとHomの随伴を関係づけます(理解の成長を参照)。

記号.  集合 $A$ から $B$ への写像の全体を $B^A$ または $\mathrm{Map}(A, B)$ で表す。

前の方の記号は,$A, B$ ともに有限集合でそれぞれ元の個数が $a, b$ であるとき,$A$ から $B$ への写像の全体のなす集合の元の個数が $b^a$ となることから作られています。つまり,集合 $S$ の元の個数を $|S|$ で表すことにすると,
$|B^A| = |B|^{|A|}$
が成り立ちます。(無限集合の場合,元の個数を濃度とすれば,上の式は $A, B$ が無限集合でも成り立ちます。)

直積について

$Y$ と $Z$ を2つの集合とします。このとき,

$Y \times Z = \displaystyle\bigsqcup_{z \in Z} (Y\times \{z\})$

となっていることに注意します(右辺は互いに共通部分のない和集合を表します)。これを絵に描くと,
直積と素和
図1
そこで,この直積集合から集合 $X$ への写像 $F \colon Y \times Z \to X$ を考えます。これは集合 $X^{(Y\times Z)}$ の元です。上の分解をこれに適用して, $F$ 分解することを考えます。
直積からの写像
図2
この $F$ が与えられると, $Z$ の各元 $z$ に対して,1つの写像
$f_z:= F(?,z) \colon Y \to X$,  $f_z(y):= F(y,z)$ $(y \in Y)$
を対応させることができます。これを用いて,写像
$(F(?,z))_{z \in Z} \colon Z \to X^Y$, $z \mapsto f_z$
を定義することができます。これを絵に描くと,
写像集合への写像
図3
これは集合 $(X^Y)^Z$ の元です。このようにして,写像
$\phi \colon X^{(Y\times Z)} \to (X^Y)^Z$, $F \mapsto (F(?,z))_{z \in Z}$
が定義できました。以上をまとめて,$\phi$ の定義を書くと,
$[(\phi(F))(z)](y):= F(y,z)$, $(F \in X^{(Y\times Z)}, z \in Z, y \in Y).$
 逆に,集合 $(X^Y)^Z$ の元である,写像 $(f_z)_{z \in Z} \colon Z \to X^Y$ (つまり図3)が与えられると,$X^{(Y\times Z)}$ の元である写像を
$F \colon Y \times Z \to X$,  $F(y,z):= f_z(y)$ $((y,z) \in Y\times Z)$
で定義することができます(これは, $f_z$ を合わせて図2にもどしたものです)。これによって,写像
$\psi \colon (X^Y)^Z \to X^{(Y\times Z)}$, $(f_z)_{z \in Z} \mapsto (f_z(y))_{(y,z) \in Y\times Z}$
ができました。以上をまとめて,$\psi$ の定義を書くと,
$([\psi(G)](y,z):= [G(z)](y)$ $(G \in (X^Y)^Z, (y,z) \in Y \times Z).$
すぐにわかるように,$\phi$ と $\psi$ は互いに他の逆写像になっています。

(絵による直感的な説明:$\phi$ は,図2を図3のように分解することを意味し,$\psi$ は逆に図3を図2のように合成することを意味しています。互いに逆になっていて続けて行うともとにもどります。)

練習問題 1. $\phi$ は $\psi$ の逆写像であることを証明してください。

以上により$\phi$ と $\psi$ は全単射となり2つの集合は対等であることがわかりました:
$X^{(Y\times Z)} \cong (X^Y)^Z$
これはちょうど数の指数法則と同じ形です。実際,自然数については,$X, Y, Z$ を有限集合としたときこの両辺の濃度をとれば,自然数の指数法則になります。
 この同じ式をもう1つの記号で書き直してみますと,
$\mathrm{Map}(Y \times Z , X) \cong \mathrm{Map}(Z, \mathrm{Map}(Y, X))$
となります。これは $Y \times ?$ が $\mathrm{Map}(Y, ?)$ の左随伴関手であることを意味します。これを線形化すると,テンソルとHomの随伴が得られます。次回は随伴関手の定義から始めて,このことについてお話しします。お楽しみに。

例2.写像の絵

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

前回の数列の収束についての記事では, 数列を絵として思い描けることを仮定していました. これができていないと, 説明を途中から聞いたことになり, 理解しにくくなります. この記事では,この部分について補足します. まず定義から.

定義.
(実)数列とは, 関数 $a \colon \mathbb{N} \to \mathbb{R}$のことである.

ということですので, 関数を (あるいはもっと一般に写像を) 絵として思い描ければ, その特殊なものとして数列も思い描けるようになります. (写像というのは, 関数 $f \colon A \to B$ の定義のうち, 数の集合に限定されていた $A$, $B$ を, 数の集合とは限らない一般の集合にとりかえたものと思ってください.) 写像 $f \colon A \to B$ を絵として描く方法には, 大きく分けて4通りあります.
  1. $A$ に重点を置いて描く.
  2. $A$ と $B$ の間に重点を置いて描く.
  3. $B$ に重点を置いて描く.
  4. グラフを描く.

1. これは, $A$ の元 $a$ の上に, $f(a)$ を乗せて描く方法です.

2. これは, $A$, $B$ をベン図として描き, 対応する元の間をシッポつきの矢印 $\mapsto$ で結びつけて描く方法です.

3. これは, $A$ の元 $a$ の移り先である, $B$ の元 $f(a)$ のところに $a$ を描く方法です.

4. これは, 中学校で習っている方法です.

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