rhidetoのblog

数学に現れる定義,定理,証明を理解するために,これまでいろいろと考えてきたことを主に書いていこうと思います。「数学を絵で理解しよう」

位相

例17. 既約空間

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

今回は,例15例16の続きです。今回の目標は,既約空間の開集合による特徴付けです。

さて,既約空間の定義を与えます。

定義. 空でない位相空間 $X$ が既約であるとは,それが2つの閉集合 $C_1$, $C_2$ の和集合として表される ($X = C_1 \cup C_2$) と,どちらかが $X$ に等しくなる,ということである。
式で表すと,
$C_1, C_2$ : 閉集合のとき $C_1 \cup C_2 = X \implies C_1 = X$ or $C_2= X$
絵で表すと,
irr(0)
対偶をとって言い換えると,ともに $X$ に等しくない2つの閉集合 $C_1$, $C_2$ の和集合として $X$ を表すことができないということです。
式で表すと,
$C_1, C_2$ : 閉集合のとき $C_1 \ne X$ and $C_2 \ne X \implies C_1 \cup C_2 \ne X$
絵で表すと,
irr(0')
次の命題はよく知られています。

命題. 空でない位相空間 $X$ に対して次は同値である。
(0) $X$ は既約空間である。
(2) 任意の空でない $X$ の開集合は,$X$ で稠密である。

これからこの証明を与えますが,直接これらを結びつけないで,真ん中にどちらにも近い命題を挟んで,どちらもそれに同値であることを示します。そのどちらにも近い命題自身がまた面白いものです。つまり次の命題を証明します。
以下で,2つの集合は,その共通部分が空集合でないとき,交わるということにします。

命題. 空でない位相空間 $X$ に対して次は同値である。
(0) $X$ は既約である。
(1) $X$ の空でないどの2つの開集合も交わる。
($O_1, O_2$: 開集合のとき,$O_1 \ne \emptyset, O_2 \ne \emptyset$ ならば $O_1 \cap O_2 \ne \emptyset$ 。)
(2) 任意の空でない $X$ の開集合は,$X$ で稠密である。

証明.
(0) $\iff$ (0') これを補集合の方で表すと,
$\iff$
irr(1)
これを $O_1$ を中心にしてみると,
$\iff$
irr(2)
この絵は, $O_1$ が $X$ で稠密であることを表しています。これで証明終わりです。
以上を正確に全部式で書くと,
(0) $\iff$ (0')
$\iff$  $C_1, C_2$ : 閉集合のとき, $C_1^c \ne \emptyset$ and $C_2^c \ne \emptyset \implies (C_1 \cup C_2)^c \ne \emptyset$
ド・モルガンの法則( $(C_1 \cup C2)^c = C_1^c \cap C_2^c$ )より
$\iff$ $C_1, C_2$ : 閉集合のとき, $C_1^c \ne \emptyset$ and $C_2^c \ne \emptyset \implies  C_1^c \cap C_2^c \ne \emptyset$
補集合をとる操作が開集合全体と閉集合全体の間の1対1対応を与えることから
$\iff$ $O_1, O_2$ : 開集合のとき, $O_1 \ne \emptyset$ and $O_2 \ne \emptyset \implies  O_1 \cap O_2 \ne \emptyset$
これを $O_1$ を中心にしてみると,
$\iff$ $O_1$: 空でない開集合のとき, $O_1$ はどの空でない開集合とも交わる
$\iff$ $O_1$: 空でない開集合のとき, $O_1$ は $X$ で稠密である。  □

以上のように,$X$ が既約であることは,上の性質(1)で特徴付けることができます。ちなみに,ここで位相空間を $R$-加群に,その開集合を全部 $R$-部分加群(から0を除いたもの)に置き換えると,一様加群 (uniform module) の定義になります。定義を書きますので,比較してみてください。
(注意:部分加群 $M$ に対して,$M \setminus \{0\} = \emptyset$ $\iff$ $M = \{0\} (=: 0)$
この 0 を除くことについては例8でベクトル空間の部分空間の絵を描くときにも使いました。)

定義. $R$を環とし,$X$ を $R$-加群とする。  $X$ が一様であるとは,任意の0でない部分加群 $M_1, M_2$ に対して $M_1 \cap M_2 \ne 0$ となることである。

2つの部分加群は,それらの共通部分が0でないとき,交わるということにすれば,次のように言えます:$X$ が一様であるとは,0でないどの2つの部分加群も交わることである。

 既約空間の定義を述べたので,ついでに位相空間の次元の定義に触れておきます。

部分空間

定義/命題.
$X = (X, \mathcal{O})$ を位相空間 $S$ をその部分空間とする。このとき,
$\mathcal{O}_S:= \{ S \cap O \mid O \in \mathcal{O} \}$
とおくと, これも開集合の公理をみたす。これを $S$ 上の相対位相とよび,位相空間 $(S, \mathcal{O}_S)$ を $X$ の部分空間とよぶ。特に断らなければ,位相空間の部分集合は,相対位相を入れて部分空間とみなす。

練習問題 1.  $\mathcal{O}_S$ が開集合の公理をみたすことを証明してください。

定義. 位相空間の部分集合は,それが部分空間と見て既約であるとき,既約であるという。

位相空間の次元

この既約性を用いて位相空間の次元が定義されます。(他にもいろいろな定義がありますが,ここでは代数幾何との関係でこの定義を採用します。)

定義. 空でない位相空間 $X$ の次元 $\dim X$ を,異なる空でない既約な閉集合からなる列
$X_0 \subset X_1 \subset \cdots \subset X_n$
が存在するような最大の $n$ の値として定義する。また, $\dim \emptyset:= -\infty$ と定める。

例16. 稠密性

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

今回は,例15. 開集合と閉集合の続きです。次の目標は,既約空間の開集合による特徴付けです。
まず,今回は稠密性の復習から。

定義. $X = (X, \mathcal{O})$ を空でない位相空間とし,$S \subseteq X$ とする。
$\overline{S} = X$ となるとき,$S$ は $X$ で稠密(ちゅうみつ)であるという。

注意. $\overline{S} \subseteq X$ は明らかなので,これが成り立つということは,$X \subseteq \overline{S}$ が成り立つということです。つまり$X$ の任意の点が $S$ の触点ということです。
これを絵に描いておきます。
稠密1
縁を含めると全体になるということで, $X$ のなかに $S$ が密に存在しているということです。簡単な言い換えを挙げておきます。

命題. 上の設定で, $S$ が $X$ で稠密であるためには,すべての空でない $O \in \mathcal{O}$ に対して, $S \cap O \ne \emptyset$ となることである。

どんな空でない開集合の中にも $S$ が顔を出す,ということです。

証明.
$\overline{S} = X$
$\iff$ $X \subseteq \overline{S}$
$\iff$ すべての $x \in X$ に対して $x \in \overline{S}$
$\iff$ すべての $x \in X$ に対して $O$ が $x$ の開近傍ならば, $O \cap S \ne \emptyset$
$\iff$ すべての $\emptyset \ne O \in \mathcal{O}$ に対して $O \cap S \ne \emptyset$.  □

上の最後の同値性について:
($\impliedby$) は自明。
($\implies$). $O \in \mathcal{O}$ が空でないなら,ある $x \in O$ がとれて,$O$ は $x$ の開近傍になります。すると仮定から,$O \cap S \ne \emptyset$ となります。この $x$ をとるところで,空でないという条件を使っています。

この命題から $S$ が $X$ で稠密ということは,次の絵で表せます。
稠密2
この絵だと,$S$ がどの開集合とも交わっているという感じが出せませんので,次のように$S$ の元を赤い点々で表すこともあります。描ききれませんが。
稠密3

例. $\mathbb{R}$ を普通の位相で位相空間と見ると,有理数の全体 $\mathbb{Q}$ は $\mathbb{R}$ で稠密である。

練習問題 1. 上の例を証明してください。
(ヒント:上の命題から「実数 $a < b$ をどのようにとっても,開区間 $(a, b)$ のなかに有理数が存在する。」を証明すれば十分です。他の空でない開集合はすべてこれらの和集合になっていますから。アルキメデスの原理($\varepsilon$ を正の実数とし $m$ を自然数とすると,$n\varepsilon > m$ となる自然数 $n$ が存在する)[塵も積もれば山となる] を使ってください。)

区切りがいいので,ここで切って次回,既約空間の開集合による特徴付けについてお話します。お楽しみに。

例15. 開集合と閉集合

まず,数学を理解することについてを読んでください。以下もその例です。

$X = \mathbb{R}$ での普通の位相での開集合全体 $\mathcal{O}$ は,次をみたしています。
(1) $X ,\emptyset \in \mathcal{O}$,
(2) $O_1, O_2 \in \mathcal{O}$ ならば,$O_1 \cap O_2 \in \mathcal{O}$,
(3) $I$ が集合で,各 $i \in I$ に対して $O_i \in \mathcal{O}$ ならば, $\bigcup_{i \in I} O_i \in \mathcal{O}$.

(補足と注意:$\mathbb{R}$ での普通の位相で,$\mathbb{R}$ の部分集合 $O$ が開集合というのは,有限開区間の和集合の形に書ける集合のことです[ただし,無限の和集合も許します。また,0個の和集合を $\emptyset$ と考えます]。したがって,この定義では,1点からなる集合は,開集合にはなりません。ただし,以下に説明する一般の位相では,1点からなる集合が開集合となることはありえます。)
有限開区間というのは, $(a, b)$, ($a, b \in \mathbb{R}$) の形の開区間のことです。$a, b$ のところに $\infty$ や $-\infty$ を代入したものは有限開区間とはよびません。

練習問題 0. 上の $X = \mathbb{R}$ での開集合の定義にもとづいて,上の性質 (1), (2), (3) を証明してください。

注意. 共通部分の方は次をみたしていません:
$I$ が集合で,各 $i \in I$ に対して $O_i \in \mathcal{O}$ ならば, $\bigcap_{i \in I} O_i \in \mathcal{O}$.
例えば,$I = \mathbb{N}$ として,各 $i \in \mathbb{N}$ に対して $O_i$ を開区間 $O_i:= (-\frac{1}{i}, \frac{1}{i})$ とすると,各 $I = \mathbb{N}$ に対して $O_i \in \mathcal{O}$ ですが,
$\displaystyle\bigcap_{i \in I} O_i  = \{0\} \not\in \mathcal{O}$
となります。

練習問題 1. $\bigcap_{i \in I} O_i  = \{0\}$ を示してください。

そこでこれを一般化して, $X$ を任意の集合としたとき,上の (1), (2), (3) の性質をみたす $X$ の部分集合系 $\mathcal{O}$ を $X$ の開集合系とよび,組 $(X, \mathcal{O})$ を位相空間というわけです。 また,$\mathcal{O}$ の元となっている部分集合を $X$ の開集合とよびます。位相空間の公理としては上の3つしか仮定しません。

この開集合系 $\mathcal{O}$ をもとにして,閉集合,点の近傍,内点,内部,触点,閉包,あるいは位相空間の間の写像の連続性など,位相に関するすべてのものが定義されます。その順序は,
開集合 $\to$ 閉集合,
開集合 $\to$ 点の近傍 $\to$ 内点 $\to$ 内部 $\longrightarrow$ 開集合,
     点の近傍 $\to$ 触点 $\to$ 閉包 $\longrightarrow$ 閉集合.
このように,もう一度,開集合と閉集合にもどってきますが,この部分を今回は解説します。
位相空間の絵を描いておきます。まず,位相空間 $X$ のなかの開集合 $O \in \mathcal{O}$ は,点線で囲んだ丸で表します。縁がないという意味で。どの部分を見ているかをはっきりさせるため斜線で塗りつぶしました:
開集合
次に,位相空間の中にはこの開集合がたくさん詰まっていますので,それを次のようにイメージします:
位相空間
描ききれませんがこんな感じで捉えています。ただし,開集合の公理をみたしているものとして。

定義. $X = (X, \mathcal{O})$ を位相空間とする。
(a) $S \subseteq X$ のとき, $S$ が $X$ の閉集合 $:\iff$ $S^c \in \mathcal{O}$. ここで,$S^c$ は,$S$ の $X$ での補集合 $S^c := X \setminus S$ を表す。
(b) $x \in X, U \subseteq X$ のとき, $U$ が $x$ の近傍 $:\iff$ $x \in O \subseteq U$ となる $O \in \mathcal{O}$ がある。開集合であるような近傍を開近傍とよぶ。(これは $x$ を含む開集合に他ならない。)
(c) $x \in X, S \subseteq X$ のとき, $x$ が $S$ の内点 $:\iff$ $U \subseteq S$ となる $x$ の近傍 $U$ が存在する ($\iff$ $x \in O \subseteq S$ となる $O \in \mathcal{O}$ が存在する)。
(d) $S \subseteq X$ のとき, $S$ の内点の全体を $S$ の内部あるいは開核とよび,$S^\circ$ で表す。
(e) $x \in X, S \subseteq X$ のとき, $x$ が $S$ の触点 $:\iff$ $x$ の任意の近傍 $U$ に対して,$U \cap S \ne \emptyset$ ($\iff$  $x$ の任意の開近傍 $U$ に対して,$U \cap S \ne \emptyset$)。
(f) $S \subseteq X$ のとき, $S$ の触点の全体を $S$ の閉包とよび,$\overline{S}$ で表す。

練習問題 2. 上の (b), (c), (e) の括弧内を証明してください。

以上の概念を絵で表しておきます。
ます,閉集合というのは,その補集合が開集合ということです。
閉集合定義
次に近傍:
近傍
$U$ が開集合で $x \in U$ なら$O$ として $U$ がとれます。(練習問題2(b)のヒント)
$x$ が $S$ の内点というのは:
内点
となることです。この $U$ としては開近傍にしてよいので,
内点-開近傍
となることです。つまり,別の見方をすれば,$S$ は $x$ の近傍ということです。
ここで,$x$ が $S$ の内点であれば,$x \in S$ となることに注意しておいてください。つまり,
$S^\circ \subseteq S$.
最後に $x$ が $S$ の触点というのは,開近傍の方で描くと,
触点
ということです。ここで任意記号になっていることに注意してください。 $x \in S$ ならば,どんな $x$ の近傍 $U$ をとってきても, $U \cap S \ni x$ なのでつねに $U \cap S \ne \emptyset$. ですから $S$ の元 $x$ は $S$ の触点になります。つまり,
 $S \subseteq \overline{S}$.

ついでに,$x$ が $S$ の触点でないということを絵で表しておきます:
触点でない
これを見ればわかると思いますが,$x$ が $S$ の触点でないということは,$x$ が $S^c$ の内点ということと同じことです。したがって,$(\overline{S})^c = (S^c)^\circ$. ここで両辺の補集合をとると,次が成り立ちます。
$(*) \quad  \overline{S} = ((S^c)^\circ)^c$.


ここで,予告していた命題を述べます。

命題. $X = (X, \mathcal{O})$ を位相空間とし, $S \subseteq X$ とする。
(1) $S$ が開集合(つまり $S \in \mathcal{O}$) $\iff$ $S = S^\circ$.
(2) $S$ が閉集合 $\iff$ $\overline{S} = S$.

証明.
(1) ($\implies$). $S$ を開集合とします。このとき,$S \subseteq S^\circ$を示せばよいわけです。
そこで,$x \in S$ とします。すると, $x \in S \subseteq S$ (まん中の $S$ は開集合)ですから,$x$ は $S$ の内点になります。したがって, $S \subseteq S^\circ$.
($\impliedby$). $S = S^\circ$ とします。このとき $S$ が開集合であることを示せばよいわけです。各 $x \in S$ に対して,$x \in S = S^\circ$ より,$x$ のある開近傍 $U_x$ がとれて,$U_x \subseteq S$ となります。
すると,
$S = \displaystyle\bigcup_{x \in S} U_x$
で,右辺は開集合の公理(3)より,開集合になります。
(2) ($\implies$). $S$ を閉集合とします。このとき,$\overline{S} \subseteq S$を示せばよいわけです。
そこで,$x \in \overline{S}$ とします。ここでもしも $x \not\in S$ とすると, $x \in S^c$ より, $S^c$ は $x$ の開近傍になります。すると $x$ は $S$ の触点だったので, $S^c \cap S \ne \emptyset$ という矛盾が出ます。したがって $x \in S$. 以上より $\overline{S} \subseteq S$.
($\impliedby$). $\overline{S} = S$ とします。このとき $S^c$ が開集合であることを示せばよいわけです。各 $x \in S^c$ に対して, $x \not\in S = \overline{S}$ ですから, $x$ は $S$ の触点ではありません。つまり, $x$ のある開近傍 $U_x$ がとれて, $U_x \cap S = \emptyset$ となります。したがって, $U_x \subseteq S^c$. このことから,
$S^c = \displaystyle\bigcup_{x \in S^c} U_x$
で,右辺は開集合の公理(3)より,開集合になります。  □

以上の証明を絵を描きながら追ってみてください。

以上では,(1) と (2) を別々に示しましたが,実は, (1) から (2) は次のようにして示されます:
$S$ が閉集合 $\iff$ $S^c$ が開集合 $\overset{(1)}{\iff}$ $(S^c)^\circ = S^c$ $\iff$ $((S^c)^\circ)^c = S$ $\iff$ $\overline{S} = S$.
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