February 15, 2007

僕の家族 第8話

カオリは一足先に帰りチョコレートの準備をしていた。

「これ…本当は彼に渡すつもりだったけど、カツオ君が私の物になるんだったらあんな彼氏もうどうでもいいわ。もし、カツオ君とくっつければ莫大なお金が保証されるのだもの…ふふふ!」

カオリはチョコに睡眠薬を溶かし込んだ。

「これを食べさせて、カツオ君が寝込んだところを…ふふふ。そして朝帰りさせる。既成事実はこれで十分。本当は写真週刊誌の記者にタレこんでうちの前に張らせるのもありだけど、さすがにそこまでしちゃあカツオ君の世間に対するイメージが悪くなっちゃうからね。そしたら、いくらプロ野球選手になってもらっても美味しくないわ。カツオ君にはいつまでも爽やかなイガグリ王子でいてもらわないと」

その時、呼び鈴が鳴った。

「来た」






『カツオ、バレンタインの香り・後編』







「早かったのね」

「…うん」

カツオは緊張で口がカラカラに渇いていた。
玄関から居間に案内する為にカツオの前を歩くカオリからは甘い匂いが漂っていた。

「ちょっと適当に座って待ってて」

「うん」

カツオは居間のソファに腰掛けて、周りを見渡した。

「カオリちゃん、こんな家に住んでいたのか。近くだったけど入ったのは初めてだな…」

台所の方からカオリの鼻歌が聞こえてくる。

「まさか自分がカオリちゃんとこんな風になるなんて…」

夢のようだった。
長年思い続けてきた女性に気持ちを伝える事ができて、その上バレンタインの日に家に招待された。
カツオの胸は期待に膨らんでいた。

「あっ」

気付くと、カツオのポケットから先程薬局で購入したコンドームがこぼれ落ちていた。

「危ない危ない。こんなの見付かったら下心丸出しじゃないか」

「お待たせ」

カオリは外であった時とは違い、ニット地の胸の開いた服で現れた。出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいる。ニット地がスタイルの良さを強調させていた。手には包装された箱を持っている。

「あっ」

カオリはその箱を落としてしまった。

「よいしょ」

その箱を拾い上げる為にカオリは前屈みになる。

「…!!」

カツオの目には服の開いた部分から白い下着が見えていた。

「…ゴクッ」

カツオは黙って生唾を飲み込んだ。

「ごめんね〜、落としちゃった」

「大丈夫」

「はい、これ。チョコレート」

「あ、ありがとう」

「早く開けて」

「何だか勿体ないなぁ」

「溶けちゃう」

「分かったよ」

包装を開けると中には可愛らしくデコレーションされたチョコが何粒か入っていた。

「食べて」

「うん」

カオリの妙な色気にドキドキしながら、カツオはチョコを一つ頬張った。

「美味しいよ」

「嬉しい。もっと食べて」

「うん…」

カツオは急かされるままチョコを食べ続けついに完食した。

「ふぅ、美味しかった」

しばらくすると、カツオは強烈な眠気に襲われた。

「カオリちゃん…何だか眠いよ」

「寝てっていいよ…ん?」

カオリがカツオのポケットの膨らみに気付いた。

「何が入ってるの?」

カオリが手で探ると、箱に入ったままのコンドームが出てきた。

「あっ、それは…」

「カツオ君…どういう事?」

「それ…は…フガフガ…」

カツオの眠気は限界に達しようとしていた。

「いいよ。カツオ君なら」

カオリはコンドームの箱を開封した…。







「遅い」

磯野家の玄関前では花沢が仁王立ちをして待ち受けていた。

「いつもならとっくに戻っているはず。おかしい。何かアクシデントでも…情報班!!」

「はいですぅ」

「情報班タラ!!今すぐにGPSを使い、磯野君の所在地を確認しろ!!これはもはや緊急事態だ!!」

「分かりましたぁ」

タラちゃんが手慣れた手つきで携帯電話を操作する。

「発見しました!」

タラちゃんが花沢に携帯を見せる。

「ここは…まさか!?」

「知ってるですか?」

「心当たりがある。タラちゃんはここにいて、情報を待ってなさい!」

「はいですぅ!」

花沢は玄関前に群がる人々をなぎ倒し、その場所へと爆走していった。

「カツオ兄ちゃんを頼みます…花沢親衛隊長」





「さすが野球部員。身体が違うわね」

薬で眠らされたカツオはカオリに脱がされパンツ一枚になっていた。
もちろん、カオリも下着しか着けていない。

「さぁ、カツオ君。私たちの既成事実を作り上げましょう…」

カオリの手がカツオの顔に触れたその時だった。

「やめなさい!!」

「誰!?」

カオリがとっさに飛び上がり振り返ると、そこにはあの女の姿があった。

「花沢…さん」

「久しぶりね。カオリちゃん」

「えぇ…。それより何よ。人の家に勝手に入り込んで。警察呼ぶわよ」

「警察?呼んでいいの?あなたこそカツオ君を眠らせて何をしようとしてるのよ」

「あんたに関係ないでしょ」

「カツオ君を襲って、身体の関係を楯にしてカツオ君とつながっていたいって魂胆なんじゃないの」

「…」

「カツオ君は将来が約束された有望な野球選手だからね。だからお金目当てで言い寄ってくる奴はたくさんいたわ」

「そう」

「でもカツオ君は決して誰にも手を出さなかった。それはなぜだと思う?」

「さぁ、知らないわよ」

「あなたの事が…カオリちゃんの事が好きだったからよ」

「…だから何よ。じゃあ今からしようとしてることは問題ないでしょ!何であんたが止めに来るのよ!私はカツオ君のお嫁さんになるの!お嫁さんになって将来いい生活がしたいのよ!ただそれだけよ、私がカツオ君に求めている物は!」

「…許せない。純粋なカツオ君の気持ちを踏みにじって」

「何?帰ってよ!好きな人とヤれるんだからカツオ君にとっても本望でしょ!」

「バカ!」

花沢はカオリに平手打ちをお見舞いした。

「…いったぁ…何すんのよ」

「カツオ君が…カツオ君が可哀相…」

花沢は涙を流していた。

「ずっと思い続けていた人がこんな女だったなんて…その間に他の人と付き合える機会もあったのに…全部カオリのせいで棒に振ってきて…」

「あんた何よ?カツオ君のなんなの?部外者は出て行きなさい。どんな事情があるか知らないけど、もうカツオ君は私の物よ。さぁ、帰って」

「いやよ!カツオ君は連れて帰るわ!誰があんたなんかに渡すもんですか!薬で眠らせて卑怯な手を使ってまでやるやつにカツオ君を預けられない!」

花沢はカツオの元に駆け寄った。

「カツオ君!目を覚まして!カツオ君!」

「…う…花…沢さん」

カツオの目がうっすら開いた。

「さぁ、カツオ君。寝てていいのよ〜」

カオリが横から口を挟む。

「ダメよ!カツオ君!帰るわよ!!」

「ブスは黙ってて!!」

その時、カツオはゆっくりと口を開いた。

「花沢…さん…身体が…う…ごかな…い。僕を…連れて…って」

「えっ!?」

カオリは動転した。

「分かったわ、カツオ君。ほら肩を貸すから頑張って!」

「うぅ…」

カツオは死力をふり絞って立ち上がった。しかし、薬でフラフラになっているため立つのがやっとだった。

「カツオ君!行かないで!」

「二度と…近付くな…この…下衆女…」

「…!!」

カオリはショックでその場に立ち尽くしていた。

「ほら、磯野君、おぶるわ」

「…ありがとう」

カオリはカツオに服を着せておぶり、外へ歩き出した。

外はすっかり暗くなり、夜空には月がぽっかり浮かんでいた。
夜のひんやりした空気でカツオの薬も少しずつ覚めてきたようだ。

「花沢さん…」

「あら、磯野君。目が覚めた?」

「うん、ぼんやり。重くない?」

「重いわよ。ガッチリしたスポーツ選手を背負ってるんだもの」

「ごめん。でも、しばらくこうしてていい?」

「いいわよ。私が家までおぶるわ」

「…僕、薬が効いてたんだけど、二人の会話はしっかり聞こえてた」

「…」

「カオリちゃんまで…お金目当てだった…」

花沢は黙って聞いていた。

「花沢さん…僕ね、花沢さんの言葉嬉しかった」

「これだけ、お金じゃない僕を見てくれてる人がいるんだなって」

「磯野君…」

「花沢さん…ありがとう」

「い、いいのよ!それくらい!」

「花沢さん…」

カツオは力強く花沢さんにしがみついた。

「ちょっと、苦しいわよ!ははは!」

「ふふふ…」

この後もカツオと花沢さんの関係は付かず離れずが続くが、この夜は確実に二人の間を一歩近付けた夜であった…。




「おかえりですぅ」






つづく


ridou_returns at 00:11コメント(5) この記事をクリップ!

コメント一欄

1. Posted by 甲斐   February 15, 2007 02:03
カオリはカツオに服を着せておぶり、外に歩き出した。

これってカオリはカツオにの間違いですよね??

毎日更新されるの楽しみにしています。
ではまた。
2. Posted by 甲斐   February 15, 2007 02:05
すみません、間違えました。
これって花沢さんがカツオにの間違いですよね??
でした。
3. Posted by 阿部   February 15, 2007 02:08
あ〜、そうです。甲斐さん。すいません間違えました。指摘の通りです。

これ書いてるの夜中の二時くらいなんで、寝ぼけ眼で作ってるんで結構穴があるかも知れません。すいません。
4. Posted by こばり   February 15, 2007 13:17
5 感動した!なんか熱い気持ちになったよ!ありがと!
5. Posted by 阿部   February 15, 2007 20:22
小針くん本当に!?
ありがとう。

コメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価:  顔   星