雪音さんって本名なんですか〜?
どうして雪音なんですか〜?

と最近、頻繁に名前のことを聞かれるようになりました。

何か変えるような啓示やインスピレーションがあったのですか、
と言われるのですが、残念ながらそんなにスピリチュアルで
かっこいい感じはありません。わはは〜。

でも大きなきっかけがありました。
それが無ければ、たぶん名前を変えることは無かったでしょう。

ということで今日は名前を変えたきっかけをお話しようと思います。


雪音りえ の りえ は本名ですが
雪音 という名前は本名ではありません。

私は22歳からジュエリーアーティストの活動を始めたのですが、
25歳までの間は、本名で活動していました。

ユニティの小冊子やこのブログを昔から読んでくださっている方は
私の父が自殺したことをご存じの方も多いと思います。

父の死因が理由で、私たちは父方の親戚と大揉めに揉めました。
揉めたというよりも、父が死んだのは私のせいだと
責められたという方が正しいかな。

仕方が無かったかなと思います。
とにかくあまりに突然で、悲し過ぎて辛いことで、
誰もが誰かのせいにしなければ、きっとやりきれなかったのです。


当時、私はジュエリーアーティストとして活動をし始め、
仕事も順調に増えて来ていました。
翌年には初めての個展も控えていました。

けれども勿論まだそれだけで食べて行ける訳ではなかったので
制作費を稼ぐためにモデルやイベントコンパニオンの
アルバイトをしていました。

様々なアルバイトをしましたが、モデルの仕事は一番長く続きました。
それなりの努力や自己管理は必要でしたが報酬も高く
他のアルバイトをするよりもずっと多く制作活動の時間を取れる事が
何よりもありがたかったのです。

また地方に行くと美味しいものも食べられたし
立ち居振る舞いが身に付いて自分が変化していく事が嬉しく
それは後々非常に役に立ちました。

地元だけの活動ですしそれほど華々しい仕事でも
あまりモデルらしい仕事もなかったけれど、
段々と指名も来る様になって来ていました。

けれど、いつになったらアーティスト一本で仕事出来るだろうか、
と不安でもありました。


そんな矢先に父の事がありました。

母は、私を庇う気持ちが強かったのだと思います。
まっさきに、周囲からの目を考えました。
 
「とにかく目立たないで欲しい。
田舎ですぐに噂が立つから名前の出る仕事や目立つ仕事は
一切辞めて、これからは地味な仕事をして欲しい。」
そう私に言いました。

私もショックが大きすぎて、イベント会場や
カメラの前で笑顔を作ることなど到底無理でしたし
随分前から指名をもらっていた仕事を直前でキャンセルして
事務所に迷惑をかけてしまった申し訳なさもあったので
すぐにモデルのアルバイトを辞めることにしました。

その仕事にそこまで意地もやりがいも持てなかった、というのも本音でした。
自分に才能がある様にも思えませんでした。
その仕事をどうしてもしたいと望んでいる人たちにとっては
違う方向を目標にしていながら仕事を貰う私は
邪魔な存在だったかもしれません。
嫌がらせをされることもあり、派手な競争の世界は肌に合いませんでした。


私は物心ついた頃からずっと思っていました。
なぜ周囲に自分を合わせたり
また比べたり競争したりして生きて行く必要があるのか?と。

無理なサイズに自分を合わせずに
それぞれ魅力や違いがあることを解り合えたらみんなが幸せになれるのに。
という想いがありました。

周囲の人々の価値観に合わせて生きる必要なんかない、
という私の意見は両親と衝突することも多くあり
この土地で生きることにいつも違和感と孤独を感じて
周囲と馴染めずにいました。


しかし今回ばかりは
母の気持ちを考えるとそれは言えませんでした。

この時から更に、「人様より目立たないようにすること」が
人生で私が最も気をつけることになりました。

そして私は父が死んだ時から
親戚達と同じ、父と同じ自分の名字を忌み嫌うようになりました。

父を死に追いやった私という人間は汚れているのだから
この名前で物を創っちゃいけないとも思いました。

個展もやめて欲しいと言われましたが、
どうしても物を創造し、生み出す仕事だけは
辞めたくなかったのです。


だから創作活動を続けるには名前を変えるしかないと考えました。

名前を変えたのは、それがきっかけでした。

今思うととてもネガティブなきっかけで名前を変えましたが、
それでも新しく付けた 雪音りえ という名前は
確かに私を救ってくれました。

ジュエリーを創る表の人間を別に持つことで
嫌な事を忘れて創作活動する事が出来ましたし
フリーランスで活動している身にとって
出逢った人にすぐに名前を覚えてもらえるのはとても嬉しいことでした。


親しい人からも、はじめてお会いした方からも
名前を変えた理由を聞かれることはとても多いのですが
いつもなんとなく誤魔化していました。

私にとってこの経緯を話すのは少々骨が折れることでしたし
父方の親戚には生きている人たちもいて、未来もあるので
責めたり悪人扱いせずにありのままを説明出来るようになるまで
話すことが出来なかったのです。

つい最近までは、生まれた土地や
出身中学を聞かれると口籠ってしまっていました。
私の名字は割と珍しく、また小さな街なので
出身地や中学の名前を言えば遅かれ早かれ
自分の出生や父の事が分かってしまうと思ったからです。

現にそれを口実にして近づいて来た人たちもいて、
私は不意打ちで心に入られることに対してとても過敏になっていたので
繰り返し、名前を変えた理由に嘘をつくようになりました。
嘘をつきながらもその頭の中では当時の事が
思い出されてしまうのが一番の難点でした。

本当の理由を言葉にして話せるようになったのは最近で、
10年以上も経ってからのことです。



なぜ、雪音 というアーティストネームを付けたのかは
とても単純というか、特に夢のある話でもないのですが
次の記事で書きたいと思います。