January 2010

January 30, 2010

Physician Assistant

同期の心臓外科医で米国エモリー大学のフェローとして働いているN先生が今月号の日本外科学会雑誌の特別寄稿にエモリー大学でのPhyisician Assistantの役割について投稿していました。Physician Assistant(以下PA)とは非医師高度診療師のことで専門のプログラムを経て認定をうける資格であり、医師の指示・監督のもと、病棟業務、手術助手などを請け負う職種のことです。日本の外科系医師が手術技能の向上に十分な時間を割けない理由の一つとして「雑務が多すぎる」というのがあります。特に修練医というのは日本では「雑用係」として扱われているところも多く、書類の整理、点滴の作製、人間モニタリング、果ては患者さんの食事の配膳・下膳までを担当します。その上、上級医の「指導」という名の下に合併症だらけの術後管理、理不尽な連日当直と自らの技術向上に十分な時間を与えられていないのが現状で外科系医師の減少の原因の一つとなっています。アメリカの外科修練医の平均執刀数が最初の5年で700を超えるのに対し、日本の外科修練医のそれはせいぜい200前後といったところでしょうか?実際、日本外科学会の定める専門医資格は執刀として120例と定められており、米国の550例と比べてその差は一目瞭然です。施設によっても差が大きく、教育プログラムと呼ばれるものがなく、施設の裁量によってまかなわれているので、経験年数が同じでもその技術にはバラツキが激しいのです。
日本においてPA制度の導入や専門研修プログラムの確立はおそらく不可能でしょうが、崩壊寸前の外科医療を立て直すため、また外科修練医のレベルの均整化には検討の必要がある制度の一つと考えます。


rigasure at 00:10|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 医学 | 医療崩壊

January 21, 2010

若年女性乳癌の予後

米国の電子ジャーナル「Plos one」にこんな記事が載ってます。

http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0007695

乳癌はその微小転移率の高さからすでに「全身病」としてとらえられ、一昔前の「手術で根こそぎ取る」という概念は時代遅れとされてます。手術法はどんどん縮小し、抗がん剤、抗ホルモン療法、分子標的薬が治療の主体を占め、乳癌治療における外科手術の存在価値は地に落ちてます。このように薬物療法がかなりの効果を期待できる病気ではありますが、若年発症と中年発症では予後が大きく変わってくるそうです。一般的に「若い人のがんは進行が早い」というイメージがあるみたいですが、たとえ早期で発見されたとしても若年者の方が予後が悪いそうです。


rigasure at 23:18|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 医学 

January 14, 2010

腹部食道癌手術2

今週は手術が続きました。
本日は食道ー胃接合部に対する左開胸開腹食道・胃切除+胸腔内胃管再建でした。食道の手術は実に3年ぶりくらい。以前赴任していた病院で担当して以来です。
胸部食道癌や腹部食道癌に対する標準的な手術は右開胸での食道亜全摘ですが、様々な理由で左開胸での縮小手術を行うこともあります。食道癌というのは比較的早期の段階でもあっという間に周辺のリンパ節転移を起こしながら広がっていくというやっかいな癌です。この辺が胃癌や大腸癌と違うところで、術後の生存成績が他の癌に比べて良くない理由となっております。
もうずいぶん前から「集学的治療」という名のもと、放射線が抗がん剤を組み合わせた治療が推奨されており、段々と乳癌治療のコンセプトに近いものになっていっているようです。あと数十年のうちにはすべての癌が「集学的治療」の対象となり、手術が治療に占める割合は狭められていく気がします。oncology surgeonからoncologistとなって、腫瘍治療に占める外科医の役割も変化していくそんな時代の流れですね。



rigasure at 22:00|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 医学 | 手術手技
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