「灼眼のシャナ」の最終巻となる3冊目の短編集。
「ソロー」は、アメリカの先住民族であるインディアン出身のフレイムヘイズである『大地の四神』が動き、『内乱』と呼ばれるフレイムヘイズ同士の大規模な戦いに発展した19世紀のアメリカ大陸。
こんな時代だからこそフレイムヘイズを憎む人間も現れ、フレイムヘイズ殺しの宝具も生まれる余地があると、あえて紅世の徒にとって死地に飛び込んだ“狩人”フリアグネ。
そんなフリアグネは思惑通り、闘争に巻き込まれて全てを失い、フレイムヘイズを憎む入植者の少年であるビリー・ホーキンと出会う事に。
死を待つばかりのビリーを拾って世話し、ビリーにとって仇である“凜乎の涌沸”スリュムのフレイムヘイズ『氷霧の削ぎ手』ノーマン・パーセルと交戦。
その戦いの中、『発砲狂(ハッピートリガー)』と呼ばれる宝具は生まれる事に。
その後、多くのフレイムヘイズを葬る事になる宝具ですが、その過信がフリアグネの破滅を招く事に…
フリアグネ自身は無敵の宝具だと思っていたようですが、シャナのような器の大きな例外もいますし、神ではない紅世の王であれば、強力なフレイムヘイズの中には休眠させずともよい器のフレイムヘイズも多少はいたでしょうしね…
『大地の四神』絡みの背景を見せつつ、宝具誕生のこれまでハッキリとは分からなかった部分もある事に上手く語ってくれたエピソード。
「ノーマッド」は、厳密には文庫化されているエピソードですが、一般書店で売られる単行本としては初収録。
1巻直後、フリアグネの“燐子”の残党であるニーナとの戦い。
所詮はフレイムヘイズの敵ではなく、“燐子”から見た主が語られている辺りが見所でしょうか。
「ヴァージャー」は、御崎市に至る前、オーストリアでのシャナの話。
“欺蔽の套子”クエレブレのフレイムヘイズ『荊扉の編み手』セシリア・ロドリーゴの救援という形で訪れるのですが、シャナが初めて対等な立場で会うフレイムヘイズは、『大戦』の頃に大量に粗製濫造された討ち手のようで、失望すら感じる女。
しかも、身勝手で役にも立たず、正直フレイムヘイズに討滅されてもいいような…
この地で戦う事になる“紅世の王”の“皁彦士”オオナムチとの因縁やらがあっても、正直…
「フューチャー」は、御崎市での決戦から2ヶ月後、4月下旬の御崎市。
悠二の妹に当たる坂井 三悠も生まれた坂井家の3人と、この世に残ったマージョリーやかつての悠二の友人達が集う話となっています。
フリアグネに喰われ、悠二によって復元された人々はその期間の記憶がなく、『御崎市症候群』などと呼ばれ、シャナが存在に割り込んでいた平井 ゆかりは断片的な記憶はあるものの、それがかえって混乱をもたらすようですが、基本的には平和。
この世に残った紅世の王達は、“紅世”とも『無何有鏡(ザナドゥ)』とも往来断絶、音信不通と、万一にでも契約するフレイムヘイズが不慮の死を遂げたりすれば、久遠の陥穽へ放り出されてしまうという状況ではあるようですが、それもいずれ時間が解決するのかもと思わせる終わり方。
「ホープ」では、『無何有鏡』へ渡った側のエピソード。
悠二は“祭礼の蛇”と共に立ち、『無何有鏡』創造を担ったという功績からすれば、“紅世の徒”にとっては英雄的な存在なのでしょうが、人間との共存を説いて放埓を掣肘して回るその行動ゆえに、恐怖と困惑を持って敵とみなされ、フレイムヘイズ、及び、存在の力の溢れる『無何有鏡』ゆえに、かつてフレイムヘイズと契約していた第三勢力となる秩序派の“紅世の王”は、敬意と嫌忌を持って悠二とそれに寄りそうシャナを避ける状況。
異端の傑物である悠二には、『廻世の行者』という異名が付く事に。
どちらかに加担する事はなくとも、これまでの過程から、悠二個人に関しては[仮装舞踏会(バル・マスケ)]との距離は比較的近く、リベザルは悠二と食事をしてその身を案じ、[仮装舞踏会]に戻ってはどうかと声をかけたり、助言で悠二がいつの間にか楽な方に流されている事を気づかせたりと、かなりの入れ込み。
ハボリムも即席ではない体系的な軍事学を将来に備えて習得させるべきと評し、ピルソインは警戒は抱きつつもまた盟主と共に立つ日が来るかもと評価はしているよう。
レライエも悠二を警戒する側のようですね。
新参者の“紅世の徒”が好き勝手するのは古参には快く思われず、[仮装舞踏会]も無条件に同胞を守る組織ではないゆえ、現状ではある程度足並みは揃っている感じでしょうか。
そんな悠二とシャナが現在追うのは、人を喰らう事は出来ない世界で殺人を掲げる、[マカベアの兄弟]という一党。
それを取り仕切っていた者を見せしめに殺し、後は逃がすというやり方は、現状では大きな流れとはならずとも、悠二とシャナの行動はいつか実を結ぶ事になるのでしょうかね。
「狩人のフリアグネ検廚蓮△い弔眥未蝓読者の疑問に答えていくコーナー。
眷族に関しては、神への畏れから気軽に話を通す窓口を欲され、“祭礼の蛇”によって創造されたもので、“祭礼の蛇”は特別優しかったから我が子として扱っているものの、実際の所は権能を効率的に発揮させる、システムを構成する部品。
ベルペオルもやはりヘカテーやシュドナイ同様に仮に討滅されても復活出来、顕現の要件は神か巫女が儀式“祭基礼創”の執行を欲した時のよう。
シャヘルに関しては、その特異な神格ゆえ、独自の眷族を作り出さず、探知に長け好奇心旺盛な“紅世の徒”が啓示を受ける任命制。
アラストールに関しては、出来れば動いてほしくない神に、気軽に話せる窓口など求められず、言わずもがな。
他にも個人的に気になっていた、“祭礼の蛇”のかつての通称も明かされます。
“祭礼の蛇”が伏羲、ついでにヘカテーの古名が女媧、ベルペオルの古名が西母。
シュドナイの古名が蚩尤で、中国神話由来と考えるなら、想像は出来た通称でしたね。

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