2007年04月08日

理念やらしさが必要になるとき(5) 【リクルート】

 古巣である株式会社リクルートの創業者・江副浩正さんが、また本を出 しました。はやりの文庫サイズ、タイトルは『リクルートのDNA -起業 家精神とは何か- 』。

 その中で、リクルートに創業期から企業理念が必要だった理由が書かれ ています。

江副浩正_リクルートのDNA

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 「私はそもそもシャイな性格で、カリスマ性はない。人前で話すことも 苦手だった。社員の前で話すときには前日から準備をして臨んだが、専 務の森村稔はしばしば忠告した。

 「ドラッカーとか、松下幸之助とか新聞記事を引用した話が多く、迫力 がない。“僕はこう考えている”“リクルートをこんな会社にしたい” “みんなにこうしてほしい”という経営者自らのメッセージを強く打ち出 さないと」(途中略)

 そう言われても、私は自分のメッセージがなかなか出せなかった。それ は、リクルート創業期の私が克服しなければならない弱点でもあったので ある。

 そのためもあって、リクルートでは私の思いや経営に対するスタンスに ついては「社是」「社訓」あるいは「心得」などとして文章にし、それを 社員教育の教材にした。」と。

 そして「それが結果的にリクルートの共同体意識を醸成し、独特の企業 風土や企業文化が形成されたように思う。」と述懐しています。

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 江副さんの話を直接聞いたことのある方であれば、すぐにぴんとくると 思います。

 彼が著書の中で「人前で話すことが苦手だった」というのは、たぶん謙 遜だけではありません。事業センスがあって、頭も切れる人だと尊敬して いましたが、話だけはつまらなかった。

 社員総会の中でも江副さんの話になると、いつも睡魔が襲ってきたのを 覚えています。一方、他界された日本を代表するデザイナーでリクルート の役員を長く務められた亀倉雄策さんの話の面白かったこと。

 著名なデザイナーといえば、青葉益輝さん、佐藤晃一さんと仕事をさせ ていただいたことがありますが、お二人とも本当に話が面白く、世の中を 見る視点も斬新で、毎回びっくりさせられました。

 経営者で、経営センスやリーダーシップもあって、おまけに話も面白い という人はごくごく少数。噺家じゃないのだから、悲観することなんてな いのです。

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 以前にも書いたかもしれませんが、多くの創業経営者の方にお会いしてき て感じるのは、企業理念を明確にお持ちの場合でいえば、大きく2つのパ ターンがあるということ。

 一つは、江副さんのように「しゃべるだけではうまく伝えられないパタ ーン」。つまり表現の問題。

 著書の中で、リクルートの経営の三原則を、1.社会への貢献、2.個 人の尊重、3.商業的合理性の追求 と、明確な言葉にして掲げたと書か れています。

 「「社会への貢献」とは、これまでにない新しいサービスを提供して、 社会の役に立つこと。だから「新しいサービスがどんなに儲かる事業であ っても、社会に貢献できない事業ならば、リクルートは行わない」とした。」

 優先順位が明確になっています。これなら、新規事業を始めるに当たっ て役員も社員も迷わないでしょうし、自分の取り組む事業に誇りをもつこ とができます。

 企業理念が明確な創業経営者のもう一つのパターンは、言葉になってい るけれど、それがあまりにもいっぱいあって、整理されていない状態。社 員にとってはどれを最優先すればいいのかわからない。

 つまり、考え方の整理の問題です。

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 当社のコンサルティングとしては、それぞれのケースで、処方箋も変わ って来ます。

 もちろん、企業理念そのものがまだ明確ではないというケースも少なく ありません。いえ、むしろ明確ではないケースの方が多いのが現実です。

 明確ではないからといって悲観する必要はありません。しかし、社員の みなさんは「私の考え方を話します」「私の考え方を言葉にまとめました」 という社長の姿を、待っているのです。

rinenshintou at 02:04│Comments(0)TrackBack(0) 【企業理念・事業戦略】 

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