2005年10月

2005年10月15日

「ブル」

数年前、犬を飼おうってことになった。

犬の本を立ち読みしたり

何軒かペットショップや

大きな店のペットコーナーをまわった。



タウンページを見ているとそう遠くないところに

個人でやっているような所があり

興味を持って妻と出かけた。



看板は出ているが、普通の家で、

玄関の扉を開けると

いっせいに奥の部屋の犬が吠え出し、鳴き出した。

奥の部屋のドアが開くと

犬の大群が襲いかかってくるんじゃないかと一瞬、不安になった。



出てきたのは40歳前後の毛むくじゃらの男性で

商売人というよりは

パパイヤ鈴木みたいだった。



応接間にとおされ

古ぼけた革のソファーに座らされた。

犬の臭いがカーペットから

壁紙、カーテン、壁にかかった「子供の絵」にいたるまで

すべてに染み付いているようだった。

革のソファーで座りなおすたびに

ワンちゃんの臭いがズボンに染み入る気がした。



「パパイヤ」は私たち夫婦が犬が欲しい、

けれど犬に関しては完全な素人であるというのを

すぐさま見抜いた。



パパイヤはいろいろと日本各地で

賞をとっている「ブリーダー」だと言った。

まあ、トップブリーダーのひとりらしい。

壁には賞状みたいなものが飾ってあって

もちろんそれにも愛犬のにおいが染み込んでそうだった。

アホな私は「ブリーダーって何ですか?」と

またアホな質問をして

その講釈が延々と続くのを聞いて

「いかに自分がアホか」納得した。






そのあいだにもどんどんズボンに

ワンちゃんの香りが染み付いていく気がした。



パパイヤは言った、

「やっぱり、ブルでしょ」

「えっ?」とアホな私は聞き返した。

「ブルドッグだよ。」


「ああ、なるほど。

 ブルドッグってあのブルドッグですよね」



確かに「ブルドッグ」を縮めて言うなら

「ブル」でしょうね。

「ドッグ」ならわけわからないですもんね。

そりゃ〜、「ブル」が正しいわ。

「ブル」でOK!

けど、「ブル」って「雄牛」のことでしょ?

まあ、いいっか。



「あのね、お宅ら素人にはわからないだろうが

 極めるとね、ブルにたどりつくんだよ。

 だから、よかったら、はじめからブルにしとけば?」


「いや〜、ブルですか?

 キャバリアとかラブラドールとか・・・」


パパイヤはうっすら笑って言った、

「映画と流行りでねえ、

 素人はすぐ飛びつくけど

 極めればブルだね。

 今、いいのが生まれたんだよ

 この前のチャンピオンの血をひいてるからね」

「はあ〜」

「見てくか?」

と言って立ち上がり

パパイヤは小さいブルちゃんを連れてきた。

「かわいいね」

と言いながら妻を見ると表情が完全に固まっていた。

まあ、じっと見てると

ブルも悪くないような気がしてくるから不思議だ。


相手はプロだし、

それでメシ食べてるし

経験もある人が言うんだから

やっぱりそれらしく見えてくる。

志望校を選ぶときにも

プロがこの学校がいい!ってすすめると

いい気がしてくるし

世間で「あの学校はすごい!」って言われると

そんな気がしてくる。
 


我々はどうもその「ブルちゃん」が



欲しいって思わなかったので帰るタイミングを探していた。

奥様がグラスに麦茶をいれて持ってきてくださった。

私は遠慮なく麦茶をいただいた。

妻はまったく口をつけなかった。

犬の匂いでもするって思ったんだろうか?




立ち上がり帰ることに。

玄関へ行くとまた犬の大群が

思いっきり吠えはじめた。

妻と一緒に

「ありがとうございました」

と礼を言って足早に車に向かった。




自分は「ブル」ばかりすすめていやしないだろうか?

人によっては

ゴールデン・レトリバーや

チャウチャウや

柴がいいって言う意見はしっかりある。



それに子供ならなおさら

外見よりも

捨てられた子犬のほうが

自分を必要としているってことで

どうしても手放さないような気がする。

たとえそれが雑種でも

一晩じっくり名前を考えて

かけがえのないものになるだろう。


そんな子に

「ブルはどう?」ってすすめても

全く無意味だ。


ringo_juku at 18:28|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年10月13日

琵琶湖にピラニア!

やめて欲しい、全く。

子供が泳ぐのに。

ブラックバスとブルーギルだけで

じゅうぶん滋賀は困っているのに

ピラニアまで来たらややこしい。

越冬できないって新聞にあったけど

生き延びたら大変なことだ。




むかし忍者「サスケ」でピラニアの話があった。

池の底に宝石がたくさん沈んでいて

池にはピラニアがいるから誰も取りに行けない

ある人物がサスケのお父さんに依頼する。

巨大なろうそくと巨大なコップを使って

一時的に池の水を吸い上げる、という話だ。

理科の実験でもあった。

インパクトが大きく、覚えておられる方も多いと思う。



見事、池の水はすっかりなくなる。

人々が我先にと宝石を取りに

池の底へ走っていく。

宝石を手に喜ぶ人の足元で

ピチピチとピラニアが腹を見せている。



その後、依頼者が裏切ったかなんかで

怒ったサスケのお父さんはコップを壊して

水浸しにしてしまう。

欲張りな人がみなピラニアに食べられてしまった。

あの衝撃は今でも残っている。

だからピラニアと聞くと

あの「サスケ」のなかの欲深い人々のように

みんな食べられてしまう気がする。




各地で似たようなことが起こっている。

アライグマやニシキヘビ

ワニとかイグアナ

そしてサソリ

勘弁して欲しい。


アライグマと言えば「ラスカル」じゃないか。


そして来年あたりは近所の山で

コーカサスやヘラクレスと言う名の大きなカブトが見つかるかもしれない。




雨が降るまえはツバメが低く飛ぶってことがよく言われる。

私の家の前では

なぜか野生の「キジ」が走っている。

「低く飛べ!」って思う。

捕まえられそうで手を伸ばし

近づくと走って逃げる。

飛べばいいのに。

あきらめると

しばらく走って

空高く飛んでいく。






塾をはじめた頃、

生徒が興奮して私に言った。

「塾に来る前に、カンガルー見たで!」

「へえ〜、テレビでか?」

「違うって、塾来る途中の田んぼで」

他の生徒がどっと笑う。

「オーストラリアじゃ、ないんやから。

 野生の王国じゃないって」

と取り合わなかった。

あたり前だ。

いくらなんでもカンガルーはいないだろう。

ペットにカンガルー飼ってる人はいないだろう。

妻にも言ったら笑っていた。





ある夜、田んぼの中に不審車がある、とまた生徒が言った。

私は急いで窓から身を乗り出した。

確かに怪しい。

田んぼの夜道のまんなかで

ずっとライトを照らしてじっとしている。

こちら側をうかがっている様子だ。

その頃から近所で空き巣被害がよくあって

私もピリピリしていたので

「ちょっと待っとけ!」

といって教室を飛び出し

不審車を捕まえようと

車をだした。



私の車を見ると慌てた様子で

不審車は走り始めた。

「いったい泥棒ってどんなやつだろう?」

友人の家が空き巣に入られた。

雨の日を選び、土足で上がり

家の中をむちゃくちゃにしていった。

「2人乗ってる感じだから

 まともにやったら負けるな・・・」

相手がひとりでも凶器を持っていたら

簡単に負けそうだ。

「日本人じゃなくて外国人か?

 琵琶湖に沈められるかもしれない・・・」

殺されるかもしれない恐怖心と

空き巣に対する怒りとで

ハンドルを握る手がかなり汗ばんだ。





不審車は急に速度を落としたり上げたりする

私は挑発のためライトをアップにし

ぶつかりそうなくらいまで近づく






車は集落に近づくと

急にスピードを上げた。

車はカーブを曲がった。

私も遅れまいとアクセルを踏んだ。

対向車が来たらアウトだ。








カーブを曲がると

そこはまたのどかな夜の水田。

不審車の影も形もない。



私はあっけにとられた。




エンジンをつけたまま外に出る。





車のライトがボーっと水田を照らす。




小さな羽虫がライトの光の中を飛び交う





そして私は見た

ライトが照らすその先に

短い前足を折りたたんで

真っ黒い目を大きく見開いた

カンガルーが立っているのを。





その白いお腹に

ポケットがあったかどうか

それは定かではない。








ringo_juku at 19:54|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

傘を借りませんか?

今日は朝からシトシトと雨が降っています。

こういう時の犬の散歩は厄介だ。

傘をさしながらになるからだ。

帰ってきてからも体を洗ってやらないといけない。



突然、家の前に白い車が停まり

紺色のスーツを着た男が2人出てきて

傘もささずに小走りにやって来た。



誰かと思えば銀行の担当者と支店長だった。



「すいません、支店長。

 残高不足ですかね?

 担保とりに来ました?」


と挨拶すると、


「いえいえ違いますよ。」


とニコニコしていた。


少しくらい雨にぬれても上機嫌だ。



挨拶がすむと短刀直入に支店長が言った


「運転資金出しますよ。

 借りてくださいよ。」


びっくりしたー!


どうしてもうちょっと資金があったらいいなって

考えてたことがわかったんだろう?


塾の運転資金には全く困っていないが

今回、教材作成のスタッフを雇おうと思って

ただ今検討中で

それで結局その資金が問題だった。

貯金をあてればすむ話なんですが

それもな〜って感じでした。

今回だけは資金が先にいる

普段ならなんともないが

ちょうど自宅前の教室の入口に屋根をつけ

花壇をつぶして送迎用の駐車スペースをつくり

その工事費が厳しかった。



そんなところに

支店長の「お金借りてよ」だ。


「盗聴してるんじゃないですか?」

っていうとニコニコ否定した。

「イヤイヤイアー」

「ニコニコ否定しないでよ」

っていうと今度はニヤニヤ否定した。




外は雨だ。


新しくつくった駐車スペースに雨が落ちている。



雨の粒が窓ガラスをつたっていく。





銀行は雨が降っているときには傘を貸さないんじゃなかったのか?


この銀行はいつも雨が降りそうになると


傘を貸しにくる。



ある人が言っていた。


「銀行が借りてくださいって言ってきて

 金利が3%以下なら全部借りる。

 たとえば100万のお金を

 一年たって103万以上にできないんなら

 商売なんかやっていても無意味ですよ。

 一年で3%の利益が出せないなら

 経営者なんかやめようよって感じです。」



この言葉を聞いてから

借りてくれって来てるのに借りないと

遅かれ早かれ、先が見えてるなって思うようになりました。



「金利が3%以下なら

 お金を借りない経営者の

 心境が私にはわからない。」

ともおっしゃってました。





支店長には私の考えを

わかりやすく説明した。

これから私が進んでいく方向を。

塾だけではないということを。




「こんなこと言っててもいいんですかね?」

ってきくと

「そんなこと言えないような人は

 商売やっててもダメでしょう。」

って支店長は言った。





昨日のカナダの留学生がやっていたパズルを

支店長もやりたいっていうのでやらせてあげた。

「難しいですな〜」

と笑っていた。

「うち、これ小学校2年生から

 一応やってるんですけどね。」

と言っても笑っていた。




彼は担当者に言った。

「じゃあ、お金用意してあげてよ」

「ハイ、わかりました。」

「ちょっと、待ってよ〜」

と言ったけれど

彼らは傘もささずに

雨の中、小走りに車へ向かった。






傘を貸してあげればよかった。


ringo_juku at 09:53|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2005年10月01日

10月

ただいまシーサーブログで続きを書いております。


こちらからどうぞ!


パズルと迷路で最強の塾をつくる!



ありがとうございました。

ringo_juku at 20:43|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)