December 14, 2004

ゆとり教育の失敗

1977年から始まったゆとり教育だが、息子の生まれた翌年の1991年に、またワンランクアップした教育改革がおきた。
「知識・理解」よりも「関心・意欲・態度」を重点に置いた学習評価へと変わり、そして、2002年についに、小中で新「学習指導要領」実施され、教科内容3割削減、完全学校週5日制が実施された。
そして今回の、この結果
まるでこれまでの息子の教育環境は、文部科学省の「実験」に翻弄されたような感がある。
そして、やっぱり失敗だったから「すでに表明している全国学力テストの実施や学習指導要領の見直しなどに加え、新たに読解力向上のためのプログラムを来夏までに策定することを明らかにした。」なんて今更言われても・・・。


教科内容3割削減の新「学習指導要領」が実施されて、うちの方でも公立中学への進学に不安を覚えた親は当然多かった。乱暴に言ってしまえば、どんな私立でも公立中学よりはマシと考える親も多く、なだれ込み受験組も増えた。

中学入試には、当然ゆるい公立小学校での学習では全然間に合わず、最低でも5年生から皆せっせと塾通いを始める。学校では、今まで何の問題もなく来た息子の学年が、塾ストレスがたまり昼間学校での勉強がくだらなく思えた受験組の男子と、早めの思春期を迎えた女子を中心に、あっという間に荒れ始めた。

2年間で、夏休み明けに突然、定年間近にして担任が1人退職(臨時教員を慌てて配置)、翌年2学期の途中から学校に出て来れなくなった担任が1人。(その後ずーっと欠席し卒業式だけ出てきた)。その間、教頭にあたる教師と専科の教師が代講して、卒業まで何とかお茶を濁した。

結局息子の学年では、最終的には3人に1人が私立中学に進学した。
「ゆとり教育」導入のせいで、「ゆとり教育」を避けるために、塾で「詰め込み教育」を子供達が強いられたのは、何とも皮肉な事でした。

確かに息子の通う公立中学が10年前に酷く荒れていたのは、地元では有名だった。しかし校長が変わり、生徒会の自助努力等で数年前から学校は立ち直った。
今では、市でも優良中学の部類に入っているそうだ。

しかも今この中学では、塾での受験勉強をせずにのびのび過ごせた子供が多いせいか、なぜか拍子抜けするほど素直な子供達が多い(今時の子にしてはという注釈がつくが)。部活も行事も生徒会も盛んで、『金八先生』の世界とはほど遠い。あんなに「優秀な子」達が私立に抜けたのに、まだこんなに「まともな子」達が残っていたのと親は驚く。

大きな声では言えないが蓋を開けてみたら、子供の身にしてみれば、ある種の親があんなに忌み嫌っていた公立中学の方が、近所の私立中学よりも全然過ごしやすいという皮肉な現実となった。
公立中学は時々こういう大化けが起こるそうである。だけど、いつもいつもこううまく行くとも限らず、今回はやはり特殊ケースだとは思うが。


しかし残念ながら「大学受験」に関しては、やはりどう考えても、中高一貫の私立の方が有利なのは明らかである(そこで居心地が良いかは別問題として)。
私立に比べて公立中学の「学力」は、真ん中の層がなくなり、上下の二層に学力が大きく分かれているとの事。現実問題として、高校に行けない子供達も出てくる。
初めから指摘されていたこの事態を文部科学省は、結果が出るまでただ手をこまねいて見ていたのである。

高校入試の制度もここ3年でどんどん変わっている。いったい何が重要なのか、猫の目のようにくるくる変わる制度に、子供達は日々翻弄されている。この制度の変更に学校側はほぼ無策で、ほとんどの子が何らかの形で近隣の塾の進路指導(情報と対策)に全面的に依存している現状だ。
また、この世代が「実験」されているのかという気持ちである。もちろん自分の子供だけでなく、同じ年の子供達が全員そうなのだから仕方がないといえば仕方がないのだが。といって簡単に割り切れるものでもない。

文部科学省の「実験」は、失敗する事が多い。それもきっと当事者が予想していないトンでもない形で現れてくる。親が、結果が読めない賭けに子供の未来を託せというのか、と怒るのは当然の事なのだ。
この先も、この世代の「実験」は、どうやらまだまだ続きそうなのだから。

*この記事は「ジャンバラヤ」にTBしています。

riro at 10:48│Comments(12)TrackBack(6)ジャンバラヤ 

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2. ゆとり教育って何ぞや  [ Fancy Pet ]   December 16, 2004 12:14
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3. 人の子供で実験するなーー!!  [ うにょ日記 ]   December 16, 2004 22:20
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この記事へのコメント

1. Posted by もんか   December 15, 2004 00:15
突然の来訪、失礼いたします。
私は文部科学系のブログ記事を拝読して勉強してしまおう!としている学生の、もんかと申します。

文部科学省寄りな私にとってriro様のご意見はとても手厳しいものですが、お子様をお持ちのご両親にとっては、今回の一連の流れ、当然のお怒りだと思います。
実際にこのような生のお声が聞けてとても勉強になります。ありがとうございます。

さて、それでも少しだけ文部科学省をフォローするならば、彼らは言い方と言われ方がとても下手だと思うのです。

つまり、"ゆとり教育"が、みんなにとって分かりやすいような、個性を尊重した教育を受けられることを目的としたものだということが知られていない。そして指導内容を削減した分だけ総合学習として色々な案を用意したのに知られていない(だから学校が混乱している)。
みんなが色々なことを学べるように"学びのすすめ"を出したのに、ちょうど批判され始めたタイミングだったから「ゆとり教育の転換・目的が定まっていない」と批判される。
そんな前フリがあったから、今回の、現状で足りないものは素直に直しましょうという対策も批判される。

現実にはその知らせる能力が足りないことも"無能"の一部ですし、より沢山学びたい人にとって教科書の内容が限定されてしまうなどの問題点も多くありますが、
上手い言い方をされていれば「自主的に改革をしている!問題があればフットワークが軽く修正できる」という考え方もできなくもない。。。。です。(ちょっと無理がありますね)

「実験」という言い方をされていますが、(私もそうですが)変化の途中に置かれた生徒にとってはすごく不安で学習意欲の低下もおこりかねません。
あまり責任感の無い学生の私でもそうだったのですから、ましてやお子様の将来の責任を持っていらっしゃるご両親にとってはとても納得できるものではないとご推察いたします。

納得できる説明がされていくようにしていきたいですね。

突然の長文失礼いたしました。
重ねてになりますが、とても勉強になりました。ありがとうございました。
2. Posted by riro   December 15, 2004 12:11
はじめまして、もんかさん。
ご丁寧なコメントを頂いて恐縮しております。ありがとうございます。
もしこのエントリが、もんかさんのお役に少しでも立てたのなら、私もとてもうれしく思います。

寺脇研氏の著書を読ませて頂くと、この改革が寺脇氏ご自身の体験をベースにした理想に燃えたものだという事は、よく理解できます。

エントリと矛盾するようですが、我が家の長男は「いささか個性的」だったもので、小学校の低・中学年で「個性を尊重した教育」が受けられ、学校でのびのびと過ごせた事は、今考えると良かったなと思っています。
ただ高学年になって、私立受験組との学力格差や荒れたクラス環境で苦しむ事になったのが残念でした。

もう一つ気になる事としては、今現在小学校4年の娘のクラスでは、算数クラスで(少人数制『25人』・習熟度別ではない)、テストで毎回どうしても30点くらいしか取れない子がいるそうです。「3割カットして全員100点」という当初の目的は、やはり無理なのかと思うと、とても残念です。

「現状で足りないものは素直に直しましょうという対策」は感情的な部分をさておくと、親からみれば正直ありがたい事だと思います。悪い所はどんどん直して、より良い方向に進んでもらいたいものです。

最後に、もんかさんのようにまじめに「教育」の事を考えている学生さんが
いることを知り、とても救われた思いです。
頑張ってくださいね。


3. Posted by うにょ   December 16, 2004 22:33
TBありがとうございました。こちらからもさせてください。

私が思わず「実験」と書いたのと同じ言葉があるので、ほかの方もそう考えているんだと驚き,また共感しました。

我が家の子が進学する中学は3学期制を2学期制に変えようとしているという話を聞きました。(まだ決定ではないようです)
今でも不安を感じているのに、これからどうなるのかと心配をしています。

4. Posted by riro   December 16, 2004 23:28
うにょさん、こちらにもTBありがとうございます。
「実験」と考える人は多いと思いますよ。

うちの方では中学は去年から、小学校は今年から2期制になっています。
小学校の教師をされている方のブログを読むと、2期制になって教師は
もっと忙しくなっているそうです。せめて教師がラクになるのなら、と
思って2期制を見守っていた親としては、どうも納得がいきません…。
5. Posted by 自由なランナー   December 17, 2004 09:02
こんにちは
うちのブログにコメントありがとうござます。riroさんの記事がきっかけで、私の記事を書くことになりました。
うちの子供は91年生まれ、いま中一です。子供の学校については、女房とさんざん議論した結果、中学受験という選択をし、現在勉学面で充実した私立中学に通っています。この選択が良かったかは、まだわからないですが子供は満足して通っているようです。
首都圏は中学受験が存在するということで、特殊な教育環境です。私が今住む仙台では、そんなことはなく、あくまで公立に進学がふつうのようです。
文科省の実験は、もういい加減にして欲しいですね。学校教育がしっかりしていなければ、この国も駄目になってしまうのは明白ですから。
6. Posted by riro   December 17, 2004 11:24
いらっしゃいませ、自由なランナーさん。
私の記事をきっかけにして下さったとの事、うれしく思っています。こちらにもコメント有難うございます。

東京を中心にその近隣地域では、子供の教育を真剣に考える親は、子供を私立に通わすというのが、今や常識になっている感があります。それが、それぞれのご家庭でよく考えられ、親が自分の子供の性格や個性を見極めた結果なら、何も問題はないと思います。
でも大多数の家では「教育制度」の改革のたびに教育方針が揺れ、結局、皆がそうだからという理由で流されているのではと思う事がとても多いです。
そんなふうに、正しく選択が出来る教育環境を提示せずに、親の不安を煽りっぱなしの教育制度が、結局子供達を苦しめているのではないかと思ったりします。

>学校教育がしっかりしていなければ、この国も駄目になってしまうのは明白ですから。
本当に、そう思います。
7. Posted by ピジン   January 18, 2006 22:50
私はゆとり教育の被害者です。教科書内容3割カットには驚くほかありません。ゆとり教育の代表ともいえる総合的な学習の時間ですが、私のクラスではただのしゃべってる時間になってます。信じられないことに社会と同じ時間あるのです。ゆとり教育のせいで中高一貫校との差が広まり、いわゆる負け組に近づいたように思えます。補償してほしいです。金では解決できませんけど
8. Posted by riro   January 18, 2006 23:58
ビジンさんは、中学生さんでしょうか。
そうでしたら、うちの息子と同年代ですね。
残念ながら、公立の中学校でしたら、ビジンさんの学校とどこもほとんど似たり寄ったりの状況だと思います。
これではいけないと、文部省も今後色々ゆとり教育を手直ししていくようです。
それでも、今までの無駄になった時間はどうしてくれるの、という気持ちになるのは、よくわかります。今更、謝られてもねえ・・・。
9. Posted by パルメニデス   July 26, 2006 16:09
小6男子の中学受験生の父です。
わが子のクラスも学級崩壊状態にあります。「崩壊」は症状として、「授業の妨害」と「授業への不参加」に分けられます。「妨害」が起きたら、「学力への意思」を前提にした「不参加」もやむをえない措置と判断し、学校に文書を出し、わが子に実行させています。
平たく言うと、騒ぎが起こって授業の体をなさないと判断したら、塾の宿題を授業中にやることを(学校側も)黙認すべきだ、という見解なのです。
息子が行きたい中学校は小学校でキチンと勉強してくればよい(?)学校とのこと。しかし、授業すらマトモにしてくれないので、塾で夜間に小学校の内容を勉強しなくてはならないとは・・・。わが子が不憫です。
10. Posted by riro   July 26, 2006 23:40
パルメニデスさん

学校が勉強の場であるというのは、もう幻想なんでしょうかね? 親が、「学校で勉強、家でしつけ」という当たり前に思う事が、一部の学校では、
困難になっているという事ですね。

親としても、「学校の現状がそうであるなら、こちらも自衛手段を考えさせてもらいます」という気持ちになるのも、しかたがないのかもしれませんね・・・。
11. Posted by ハットトリック    January 08, 2009 11:45
3 はじめましてこんにちは。

知識、理解を教える、学ぶ詰め込みの学習 
と、いういわゆる読み書きそろばんも必要ですが。
将来に役立つ意味においても
体験学習、選択授業の時間を
出来る限り多く作るのも
必要だと思うのです。
私が中学時代の頃も選択授業はありましたから。
図工の授業でした、確か。 

でも、テストよりも社会科見学、学校給食が
楽しみでしたから。 
誰でも大学や一流企業に入れるとは
限らないじゃないですか。
学校もなんでもかんでもテスト、詰め込み教育などの統一化ばかり図るのではなく
各個人、一個人の個々の尊重、個性の尊重を重んじ
それらを理解する教育、学習が
必要ではないでしょうか。
もちろん集団で活動、行動することの重要性を
教えることも大切なことですが。
それらばかりを押し付けたり
それらを含んだ偏った教育ばかりしてると
かえって子どもたちが無気力になったり
不登校が増えたり、授業をサボったり
勉強したくない子どもが多く増えるのでは
ないでしょうか。 
 
たとえば翻訳者になりたいのなら
語学スクールで体験学習を学ぶ
と、いうのも良いのではないでしょうか。 
無理やりテスト、詰め込み教育ばかりさせてたら
かえって無気力な子ども作ったり 
学校に行きたくないという子ども
勉強したくない子ども増やすだけだと思うんです。
   
  
12. Posted by riro   January 09, 2009 18:26
ハットトリックさん、はじめまして。

古い記事へのコメント、ありがとうございます。
ゆとり教育もまた見直しになってしまいましたね。
あの記事を書いてから、世の中も教育制度もまたどんどん変化していってます。
正直私も、今何が正解なのかわからない状態です。ハットトリックさんのコメントの内容を読むと確かにその通りだと思いますし・・・。個々の子ども達の資質に応じて、その環境もサポートの仕方も異なっていくんでしょうね。

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