世は新緑の季節となりましたね。青葉が目にまぶしく輝いて、外を歩いているだけで生の息吹というものを感じます。今年は3月4月の花粉の時期に思いがけず色んな仕事をやらせて頂き、例年になく結構動き回った春でしたが、そろそろいつものように演奏会が活発になって来ました。季節と共にいろんなものが動き出してゆくのでしょうね。
これからの演奏会でやる演目も色々と抱えているのですが、先ずは独奏曲をブラッシュアップする事が最優先。もう2曲程出来あがって、何度か演奏会にもかけているのですが、まだ今一つしっくり来ないので、この2曲を仕上げて、いつもの「風の宴」とはタイプの違う薩摩琵琶独奏曲を3曲並べる演奏会が出来るようにしたいと思っています。
薩摩琵琶は歴史が浅い事もありますが、器楽としての曲が極端に少なく、せっかくの音色が樂琵琶のように豊かに響き渡らないのです。まあ器楽曲を創るのは、私に与えられた使命だと思って、どんどんと創り出すことに精進します!。

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先日は、ナレッジ&カルチャーアカデミー主催のレクチャーで中世以前の樂琵琶のお話と演奏をしてきました。
場所は麻布にある善福寺という歴史のあるお寺だったのですが、ご参加下さった皆様のお陰で気持ちよくやらせていただきました。一緒に写っている方はパイプオルガンの製作者として有名な横田宗隆さん。38年間スウェーデンで活動をされていて、一昨年日本に拠点を移して活動しているそうです。日本の文化をもっと知りたいという事で、今回参加してくれました。豊かな経験を背景にした視点で、色々とお話を聴かせて頂き、貴重なディスカッションが出来ました。

1琵琶という千年以上の歴史を持つ楽器に関わらせてもらって、本当にありがたいと思うと同時に、やはり日本の古典や歴史はもっともっと知りたいし、知らなければ豊かな響きは出せないと常々思います。なんたって世界一の歴史なんです。敦煌の遺跡から発見された楽譜が、今こんなちっぽけな私にも大体判るという事は驚異的なことです。この歴史の持つ意味を感じずに入られませんね。
少なくとも日本というこの土壌で育まれた感性を掘り下げていくには、和歌の知識見識は必須ですし、雅楽や能、文学はもっともっと精通するべきだと、レクチャーなどをやる度に思います。勉強は尽きないですね。

今時ですから、「源氏物語も古今和歌集もよう知らんし、大して興味も無い」という琵琶奏者も多いかと思います。それはそれでその人のやり方ですので、私がどうこう言う資格はありません。しかし私はもっともっと古典の世界を知りたい。中学高校から古典文学が好きで親しんできたので単なる趣味ともいえますが、琵琶は歴史がまだ100年程しかないのですから、その前に在った豊かな琵琶楽を知らずして、私はとても琵琶を生業には出来ないのです。アカデミックな勉強でなくとも、万葉集から続く日本の和歌の歴史と感性は肌身で感じていたいですね。文学、芸能等々、他の国にはありえない長い歴史と、深く豊かな文化を、世界で唯一持っているのが日本という国だと私は思っています。
幸い私のお付き合いしている方々は皆さん古典に精通している方ばかりで、和歌は勿論の事、古典文学や芸能に大変詳しいので、いつも良い勉強をさせてもらってます。ありがたいことです。


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「良寛」公演にて、観世流能楽師 津村禮次郎氏と

今回のレクチャーでも話題になりましたが。日本語の持つ母音の響きと魅力は深いものを感じます。佐藤朔芳先生主催の日本書紀歌謡の会でも毎回勉強させてもらっていますが、母音を生み出すその感性と身体性は、今後の日本の精神文化にとって重要な鍵になると思っています。母音や鼻濁音など、忘れてはならない「声」が日本語にはあるのです。けっしてコブシをまわすことではありません。
同時に所作もこれからの日本の社会に於いて大きな意味を持つと思います。所作は単なるお作法ではないのです。そこには多くの意味があるのです。言い方を変えれば、日本の感性がそのまま形になったのが所作なのではないでしょうか。音楽同様、お作法の表面の形をなぞっているのは、所作とはいえません。
近頃では舞台でまともに歩けない邦楽人が増えました。そういう姿を見ると、少しばかり上手に演奏出来ても、日本の文化を代表してゆくべき舞台人として本当に情けなくなります。
現代では言葉も乱れに乱れていますが、少なくとも伝統音楽に携わる人には、古代から受け継がれた感性と共に、美しい日本語と身体を持っていてもらいたいものです。いくら大声張り上げて熱演しても、歩き姿弾き姿がなってないようでは、日本文化として世界に観せることは出来ませんね。
千年以上の歴史を誇る日本。そしてその中で琵琶楽もまた千年以上に渡り歴史を刻んでいます。大きな視野を持ち、この琵琶楽の豊かさを世の中に発信して行きたいものです。

150918-s_塩高氏ソロ
箱根岡田美術館 尾形光琳 菊図屏風前での演奏会にて

5月はお世話になった方や両親が旅立った季節でもあり、私にとっては別れの季節です。しかし、別れがあるからこそ、また出会いがあるというもの。別れを経験して、初めて見えてくることも沢山あります。花が散るからこそ青葉が芽吹くように、またここから千年を越える歴史のその先へと、新らしい響きを生み出して行きたいですね。
想いは尽きないのです・・・・。



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