「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」に対する意見書

                         2013年6月17日

                          利息制限法金利引下全国会議

                          代    表 茆原 正道

                          事務局長 小澤 吉徳

 

当会議は2 0 0 73月から全国で、生活と事業を破綻させない金利の制限を求めて,利息制限法金利引き下げをめぐる集会を開き、全国各地の地方自治体の後援と,超党派の国会議員の賛同を得て、活動してき ました。

 

1 保証債務(第17)について

(趣旨)

個入保証、もしくは借主と同種の事業を営む中小事業者による保証は禁止し、坂に契約した場合には無効とする、との改正を求める。

 

(理由)

第三者保証は原則として,何の利益も得ない保証人に負担がかかることを予想しない,本質的には錯誤によるものである。
例外的に錯誤なく保証した事案においては,借主との人間関係を維持しなければならない強い関係にあり,保証人となることを拒絶することができ難いため,事実上の強制下で利益のない人に保証債務の負担を負わせることとなっている。
 また,保証を事業とする事業者は別として,借主と同業者が保証債務を負う結果,連鎖倒産等の悲劇のひきがねとなる例が多かったことに照らし,借主と同種の事業を営む中小事業者による保証をもあわせて無効 とすることが妥当と考える。
 借入れにより利益を得ることのない個人もしくは中小事業者が保証債務を負う結果,保証人の生活を破綻させたり,これを避けようとするための自殺が多発した。今後はかかる事態を何としても避ける必要がある。
 次に,経営者保証についても,経営者個人が多額の保証債務を負って 経済的再起困難となる事態を避けることが妥当であると考える。
 経営者保証に関しては「保証」ではなく債権者に対する誠実な報告義務を課し、これに違反した場合に損害賠償を認めることを以て足りると考えられる。
 経済不況,大企業の海外への発生による売上減等,借主にとってやむをえない返済不能の要因が多々ある中で,この責任を経営者保証人に全部負わせる現行の制度は問題がある。
 また,保証をなくすことは,保証人となることをいやがる中小事業の後継者への事業の引維ぎ,維続が可能となる。事業承継の面からも経営者保証を含めた廃止が望ましい。

 

2債権譲渡(第18)について

債務者が二重譲渡・三重譲渡によって現在でも翻弄されているS FC Gの事例に照らし,債務者に知られない間の債権譲渡登記に効果を持たせることは改悪であるので反対する。

 将来債権の譲渡を法制化することに反対である。
特に金銭消費貸借債権について,発生前の債権譲渡はむしろ禁止すべきである。

 

3相殺(第23)について

相殺の遡及効を維持したことには賛成である。
 債務者が時効を援用するまでの間相殺できるとする改正に反対である。
 
 時効にかかった債権でも,時効以前に相殺適状にあれば相殺できるとする現行制度を維持すベきである。

 実際には,権利行使可能か否かをめぐる紛争が耐えない。
消費者が知らない間に,時効期間が経過したとの債務者事業者の主張に対処した時に,かかる改正がなされるならば,消費者は救われない場合が多発する結果,紛争が多発しかねない。
 相殺により遡及効があることによる救済が妥当である。

 

4 消費貸借(第37)について 

 (1)準消費貸借関係(民法588条関係)
 「消費貸借によらないで」との文言を残すことを求める。
 もともと消費貸借であるならば,それを更に消費貸借にする場合には, 利息制限法違反の旧債務に関して,その瑕疵があたかもないかのような新債務を作り出すといった脱法的要素がある場合が多い。
 過去に「作りかえ」といい現在でいう「借換え」にあたる脱法が多かったために,「消費貸借によらないで」という文言が付けられた歴史を重視すべきである。その意味では消費貸借に準消費貸借を認めた判例は誤っていたとの認識に立つことが正しいと考える。

 旧消費貸借を新消費貸借とする,という場合には,過去の契約条件を今後に向けて変更することができるのであり,それこそが事実を反映する方法である。
 万一、一歩譲って、消費貸借の準消費貸借を認めるというのであれば、最判昭和5 512 4日(判時9 5 65 3頁旧債務の無効で存在しない部分は,新債務においても存在しない旨判示),昭和5 893 0 日付大蔵省銀行局長通違第24 (2) ニ,貸金業法施行規則法13 条第1号力にあるとおり,新債務によって消滅する旧債務を特定し,その元本,利息、遅延損害金の別を記載した書面を交付することを要求すべきである。
 仮に金利等の債務者にとって有利な変更がなされた場合には,その点についての以後の変更の効果にとどめるべきであって、準消費貸借としては無効とすべきである。
(2)利息について

利息については、単に発生日を特定するばかりでなく、「利息は,実際に利用可能な金銭その他の物を交付した場合に、それを元本として、実際に利用した期間について,実質年率により発生ずる。

利息を天引した場合には、実際の交付額について利息が発生する。 利息以外の名目により,債務者から徴収するものについて,全て利息とみなす。」との規制(利息制限法1条ないし3条とほぼ同旨)を求める。
(3)期限前弁済の権利(民法5 912項、13 62項関係)

期限前に返済できることを定めた5 9 I2項の1をそのままとし,債権者の損害を賠償すべきことを定めた部分を削除することを求める。

 債権者は,早期に返還されるならば,早くから自ら使用できるので, 損害は発生しない。

債務者がいつでも返済して借金から脱出できる権利を明.確にすることこそ,今後の借主及び社会にとって必要な法規制のあり方である。
「借主に借金から脱出する権利を!」という改正であることを求める。

 

5 和解(第46)について
和解に錯誤無効の主張ができなくすることについて反対である。
経済的にも情報量においても弱い立場の者が騙されたまま和解をする例は多数ある(消費法ニュース9 313 613 914 07 3 7 5頁等々)。
 かかる場合に,従前,訴訟上の和解でさえ錯誤無効が認められた判例が確立しているにもかかわらず,和解無効を主張できなくなることは、騙した者勝ちということになり,社会的に大きな悪弊が予想される。


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