私がピロリ菌のことを知ったのは、今から二十数年前、平成と年号が変わった初めの頃と記憶しています。まだ、大学で研究をしていた頃のことです。
 当時はピロリ菌の検査をする試薬もなく、自分で作るしかありませんでした。幸い当時大分医科大学の藤岡講師から、そこで作った試薬を分けてもらい、胃かいようや十二指腸かいようの患者さんの胃カメラをした時に、胃の組織を取らせてもらい、チェックしていました。
 びっくりしたのは、十二指腸かいようの患者さんでは95%、胃かいようの患者さんでは90%ピロリ菌がいたことです。かいようのない患者さんでは60%位でしたので、明らかに差がありました。このとき、かいようの原因はピロリ菌ではないかと思いました。欧米ではすでにそのような発表があったからです。
 しかし、日本では多くの内視鏡をしている先生方は、「胃かいようの原因が細菌などとは考えられない」と言っていたのを覚えています。
 今ではピロリ菌は一般の方に名前が知られており、今昔の感があります。