Music

January 04, 2006

グリニッチヴィレッヂのアルバート・アイラー

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『東京大学のアルバート・アイラー』を読んだおかげで久しぶりにジャズの血が滾り、タワレコでアルバート・アイラーのライヴ盤を求める。ライナー・ノーツを眺めながら、半ば恍惚の状態で『グリニッチ・ヴィレッジのアルバート・アイラー』を聴き続ける。ライナーの英語の感じは、そこらへんのインチキ・ライナーに在りがちなヘッポコ三文批評とは違って、かなり真面目。

 

ところで、アイラーは発言もかなり興味深い。“we are the music we play”「俺たちは、俺たちが演奏する音楽そのものだ」 …とか。このライヴ盤に所収されている曲のタイトルは、どう見ても、というか、そのまんまキリスト教的。「聖霊」とか。かなりラディカルな域にまで達している感じがする。モチーフ、もしくは、曲のテーマのメロディーは、すごく単純というか、アメリカン・ルーツ・ミュージック。少なくとも僕はそう思う。だからすごく原始的でもあるし、プリミティブなままのものである。

 

でも、そのテーマの部分を抜けると、ものすごくアポカリプティックな状況、世紀末的な怨憎、いや音像が目の前にぐあーって広がるんですわ。かなり、啓示的な音楽というか、ものすごく散逸しているように一瞬思うんだけど、実はものすごく統制が取れているかというか、その曲一個で丸ごとテーマを形成しているというか。

 

アイラーの発言はまだまだ興味深い。アイラーの音楽をどう聴けばいいのか、という質問に対して(やはり当時の人たちもどう聴いていいのかわからなかった節が9割五分くらいあったんだろう・笑)師答へて曰く、「音を、その音の中にある音と関係付けなければいけない」、「すべてを同時に聞かなければいけない」・・・音を、その音の中にある音に結びつける・・・。わかったような、わからないような。でも二つ目のすべてを同時に聞かなければいけないというのはなんとなくわかる気がする。つまり、細部にとらわれないで、全体を把握することに注意を向けなければいけないということなのだろうと思う。曲全体でひとつのテーマを形成していること等に注意を向けるべきなんだろう。

 『東京大学のアルバート・アイラー』では、アイラーは「統合不全性を濃厚に湛えた天才」(170頁)として位置づけられているんだけど、音源を聴けば聴くほど、その指摘は的を得ているなと感じる。

 それで、ライナーを読んでいて興味深かったのは、最後のほうにウィリアム・カーロス・ウィリアムズへの言及があったこと。1923年に出版された『春のいろいろ』に収められている「エルジーへ」という詩の有名な“The pure products of America go crazy”「アメリカの純粋な産物は狂い行く」という一節が引き合いに出されている。それで思い出したんだけど、54年にはアレン・ギンズバーグが“I saw the best minds of my generation destroyed by madness...”「俺は見た 狂気によって破壊された 俺の時代の最良の精神が・・・」と歌った。で、60年代になると、アイラーは「オメガはアルファである」(聖書の黙示録の語句が元ネタなのは間違いない)のような曲名の曲をジャンジャン書いて、気●いの軍楽隊のような演奏を繰り広げる。うーん、このライナーを書いているロバート・パーマーも言ってることなんだけど、アイラーは、ウィリアムズやギンズバーグが詩で予見しているように、アメリカを覆いつくす狂気、もしくは60年代というものによって破壊された一人なのかもしれないな、と思った。

 

アイラーは67年にはとうとう(念願かなって)空飛ぶ円盤を目撃する(笑)。それでまたちょっとイッテる発言をしたりして、結局最後には水死体で発見されるという、悲劇的な最期。弟が精神的にアレで、それで悩んでたりとかいろいろ憶測は飛んでいるようだけど、でもどっちにしろ、悲劇的な死には変わりない。 

 

 

参考までにアイラーのウィキペディア(米国)の記事

http://en.wikipedia.org/wiki/Albert_Ayler

 

Downbeat誌のインタビュー

http://www.downbeat.com/default.asp?sect=stories&subsect=story_detail&sid=11



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December 31, 2005

song of the year 2005... V O N

今年の思い出に残る一曲といえば、Sigur Rosの"Von"という曲。アイスランド語で「希望」という意味のタイトルがついたこの曲、本当に何度も繰り返して聴いた。

シガー・ロスのオフィシャルサイトのここからDLして聴けるので、まだの方は聴いてみて。こういう静かな曲で一年を締めくくるのも中々乙な事かと思います。まぁただ、僕の場合、この曲を聴くたんびにいろいろなことを思い出してしまいます。そう、記憶にまだ新しいあのこととか。あとはあのこととか、あの事を。思い出すのをわかっていても、聴いてしまうというのは、曲がいいのか、いまだに未練が残ってるのかだんだんわかんなくなってくるから、なんとも複雑なんだけど、それはそれ、こちらの事情。

僕は聴き納めはこの曲だね。



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November 22, 2005

お休み中ですが

ブログタイトルを変更しました。

今の僕の気持ちを一言で言えというならば、まさにこの一言。元ネタは・・・わかるよね?近々25周忌のアノ人の歌の一部から拝借しました。なんかねぇ、最近24日のイベントのことの準備で、一杯一杯だったんだけど、気休めに聞くレノンの歌声には癒されるねー。

 

では24に!

変質ブロガーの皆様のお出でを心からお待ち申し上げるしだいでございます。

 

Love & Peace, Hikowski (signed)

 



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October 29, 2005

<号外>

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たかが失恋。されど失恋。

 

何もしないでいるのは逆効果なので、どうでもいい記事を書きますわ。たくさんの方からの励まし、感謝してます。みんな、ありがとう。昨日、エアロスミスのライブ盤を買いました。ロックです。最高です。イイ年コイた大人たちによるバリバリのロックです。エアロは一枚も持ってなかったのですが、ライブ盤だし購入。スティーブン・タイラーさん、娘のリブさんを僕にください。まぢかわいいっす。…失恋したときには、こういうギンギンのロックを聴くのが一番。そういえば、昔、失恋したときも、当時絶頂だったハイスタの歌に慰められたなあ。最近、難波さんが復帰されたようで、うれしい限り。このところ、11月24日に控えた三角みづ紀イベント関連の準備が本格的に始まり、それ関連の原稿書きやミーティングなどをこなす。来週はフライヤーの打ち合わせ。

 

次の号外はいつかまた。

 

またね。



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October 07, 2005

よだれを垂らして眠りたいあなたには

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えー、昨日しこたま飲んで酔ったにも関わらず、ちっとも眠れなかったので、眠れそうなCDを探す。しかし、酔ってるのに眠くないってのは、様々ある眠れない状況で一番最悪なパターン。体が火照って仕方が無いな。

世界のサカモトとモレレンバウム夫妻が作ったジョビンのトリビュート、CASAはいいんだ。やっぱねえ、ピアノとチェロと歌だけっていう音楽はいいよ。元ネタのジョビンを、彼らはきちんと新たなものにしてますから。YMOでピコピコいってたころの坂本龍一のイメージはどこにもないね。ひたすらアコースティック。

 

静かなボッサで眠りたいあなたにはお奨め。



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September 21, 2005

Key to the Highway

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Big Bill BroonzyっていうブルースマンのCDが最近お気に入り。"Key to the Highway"の原作者でもある人。夜中に部屋を真っ暗にして音を流すとそこはもう場末のブルース・バー。感じとしては、二部も終了して、セッションも終了したあたりの、疲れた感じを想像していただければと。ほとんど弾き語りで歌ってるんだけど、かなりいいよ。

秋はブルースが沁みるね。



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September 17, 2005

ドラムと詩(イベント出演の告知)

近々、都内某所のイベントで、三角みづ紀とのユニットで、ドラムを叩くことになりそうなので、声とドラムしか入っていない曲が入っているCDを引っ張り出してきて、夜中に聞き返す。そのCDとは、僕が日本で一番好きなドラマー、山木秀夫のソロ3作目「There He Goes」。かなりマニアックなCD。逆に言えば、好きな人にはたまらない一枚。

で、その中で、スージー・キムという人と、山木さんのデュオが何曲か入っているんだけど、これを繰り返し何回か聞いた。フリージャズな感じではなく、ビートがきっちりしているので、今度のイベントに生かせるかどうかは考え物だが、声を殺さない叩き方というのをちょっとは研究しないとな。バンドでやるのとはわけが違うわけだから、音量なんかもかなり控えめに叩くことになるだろう。やっぱ、あれだなー、ブラシだなー。スティックだと、喧しいことになるだろう。ドラムを人前で叩くのがかなり久しぶりなだけに、なんとなく今から緊張。

本当はもうすこし日にちがたってから告知しようと思っていたんだけど、考えたらそんなに日がない事に気がつく。なので、告知します!

10月2日(日)渋谷クロコダイル「変遷の詩学」12:30開場/13:00開演(終演15:40予定)

出演:八木忠栄/三角みづ紀/永澤康太/海埜今日子/他 Ticket:2000円(1Drink付)

日曜の一時という、やや早めの時間ですが、たくさんの方のお越しをお待ちしております。でもたぶん、われわれの出番は最後のほうなので、おねぼうさんなあなたも間に合うかもしれませんな。

詳しいことはまた後日、アップします。



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September 15, 2005

そういえば、ジョン・レノン

知り合いが、ジョン・レノンの夢の話をしていたので、僕もジョンについて。生まれて初めて買ってもらったCDは何を隠そう『イマジン』。でも、当時、小学生だったからかもしれないけど、よくわかんなかったんだな。なんでそんなこと空想しなくちゃいけないんだってくらいにしか思ってなかったかもしれない。ついでに言うと、あの丸メガネがどうも苦手だったんだな。メガネがね。ジョンがではないよ。

この間、といっても昨日かしら。音楽をかけながらブログを書いていたら、偶然に「イマジン」が流れたんだ。ずいぶんと長いこと聴いてなかったからかもしれないけど、なんだか感動。歌詞の細かい意味がどうのこうのというより、歌全体としてのメッセージがすうっと身体に沁みるようで心地よかった。

それで、窓の外を見たら、スカッと広がる青空。なんだか自分がやってることがどうでもよくなってしまって、本当はもう少しエリオットの「前奏曲集」におけるフラジリティを考えたかったんだけど、尻切れ蜻蛉ぎみなのを承知の上で、記事を早々にアップして、ずっと秋の空を眺めるという行為にふけってしまったのでした。

あの歌の歌詞で好きな部分は、もちろん歌いだしなんかもそうだけど、サビの

You may say Im a dreamer,
but Im not the only one,
I hope some day you'll join us,
And the world will live as one.

(僕が夢見るものだと君は言うかもしれないけど/夢見てるのは僕だけじゃないんだ/いつの日か君も僕たちに加わることを願ってる/そして世界はひとつとして生きるんだ)

ってあたりね。

 

ちなみに僕の一番好きなジョンの歌は「ジェラス・ガイ」ね。



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September 10, 2005

ディランについてイロイロ

今年はボブ・ディランの年なのかもしれない。何にしろ、ニュースに事欠かない。マーティン・スコセッシがメガホンをとったNo Direction Home がアメリカでもうすぐ公開されるそうだし、それにあわせてブートレグ・シリーズの第七作目が出る。高校時代の宅録デモまで入っているというから、ファンにとってはたまらない企画に違いない。考えてみるに、ブートレグ・シリーズを最初から順番に聴いていくと、ボブ・ディランの音楽の変遷の早さが手にとるようにわかっておもしろい。いや、ボブ・ディラン自身は変わっていないのかもしれない。ただ、その時代において、自分がやりたいことをやり続けてきた結果がこれなのかもしれない。

  

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いまでこそ、ディランの良さを少しはわかっているつもりだが、二年前にはじめてディランのCDを買ったときはさっぱりその良さがわからなかった。公言しているように、ライブ盤フェチであるので、ライブ盤を探していたら、MTVのアンプラグドのものを発見。確か1000円しなかったので、その場で購入し、帰って聞いてみたのだけど、なんだかよくわからなかった。第一に、その変な声である。なんなんだ、このシャガレ声はと思ったものである。それまでに聞いていたものが、ソウルやファンクなどの黒人ものが多くて、いくらシャガレていようと、美しいメロディーラインは崩れることがない音楽を聴いていただけに、微妙に音程が外れているように聞こえるディランの音楽はなんだか異質なものだったのだ。しかも、いまだから笑えるが、MTVアンプラグドという、入門者にとってはややキツ目のアルバムだったので、入り口は少々間違った感があるのだ。

 

 

いまでこそ、歌詞も含め、イイと思うようになったディランだけど、聴き始めはやはりキツいものがある。コレはなにもぼくだけに限ったことではなくて、例えば、あの、みうらじゅんさんも同じようなことをのたまっていた。『ほぼ日刊イトイ新聞』内のコーナーで「じゅんの恩返し」というのがあって、それを見ていたらディランについてのことを言っていたのだ。ディラン・フリークとして知られている彼だけど、やはり聴き始めはややキツいものがあったらしい。詳しくはこちらの動画で。

 

 

しかし、しかしである。どうしようもない流行歌が心太(ところてん)のように右耳から左耳にスルーしていくこの世の中で、ディランの歌はなんだか違うのだった。後から後から、まるで三年殺しのように効いてくるのだ。まるで温泉のような、漢方薬のような、そんな感じなのである。ディランの歌詞は詩である、とよく言われるが、まさしくその通りだとおもうのだ。ただ、ナンセンスな詩も多く、あんまり大真面目に考えるような詩ばかりでもない、とボクは思っている。

 

 

いまさら、ディランのことを僕がとやかく言ってもしょうがないけど、ボブ・ディランは芸名である。ロバート・アレン・ジママンというのが本名だ。ではなぜ、ディランという名前にしたかといえば、ウェールズの大詩人、ディラン・トマスをもじったのであり、だからその名前の段階で詩と密接なつながりがあることを発見できる。

 

 

ともかく、いまはディランにどっぷりなわけ。



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September 09, 2005

feel so blue(s)

いけないのはわかっている。倦怠感しか生まれないのはわかっているのに、朝からブルーズを聴きまくる。青・青・青。昼前からバーボンが欲しくなるが、それはさすがに我慢する。今週一週間は、本当に倦怠感の週だった。理由はよくわからない。ほとんど何もしていない、というのが実際のところだ。何をしていたか・・・ここには書けないな。考え事ばっかりしていました。でっかいことばっかりね。

 

 

あとは、T・S・エリオットの「伝統と個人の才能」という散文を読んだりもした。結局、伝統と個人の才能を切り離して考えることは出来ないんだな、と改めて認識する。過去からの集積なくして、新たなる才能は生まれ得ない。この散文を踏まえて、以前にこのブログに書いた「伝統と現代詩―『詩の停滞について』に関する試論」を見直すと、僕は自分で意識するよりも、遥かに多くの影響をエリオットに受けているのだなと思う。

 

 

秋は、詩作品ももちろんのことだけど、詩論、批評論を中心に読んでいこうと思っている。ワイルド、パウンド、エリオット、パス、などの必読系に加えて、鮎川信夫に端を発する日本の詩論も手当たりしだい読まなければ、という半ば強迫観念のようなものに狩られている。なぜそう思うのかは本人が第一によくわかっていないのだが、理由はともあれ、読んで損するものではないし、とにかく読んでやろう。

 

 

キャノンボール・アダレイの「枯葉」がしっくり来る季節になった。とりあえずは、今日からパウンドの詩作品を読む作業を再開しなくては。これもある意味では強迫観念のようなものなのである。

あとは、なにをさしおいても、あのことばかりかんがえてしまう。しかもこれはブログに書ける類のことではないから、なんにしろ歯がゆい。とにかく会いたい。



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