2022年01月14日

食わず嫌いで損した スティック・メンの魅力を今さら知る

先月のキング・クリムゾンのロイヤルパッケージで、トニー・レヴィンが今年6月にスティック・メンで来日することを表明しました。
スティック・メンはトニーがキング・クリムゾンの盟友パット・マステロット、スティック奏者のマイケル・ベルニエを仲間に加えて2007年に結成したバンドで、2010年以降はマイケルに代わってタッチ・ギター奏者のマーカス・ロイターが参加しています。

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最初、来日予告を聞いた時、「あっ、そう」と思っただけで嬉しさは感じませんでした。
トニーに関心がない訳ではないです。私は1990年前半あたりに、80年代キング・クリムゾンの日本公演を収録したレーザーディスクで彼のベース&スティックプレイを見て以来のファンです。



その後、ピーター・ガブリエルのライヴ映像で指に棒をはめて弾くファンクフィンガーズを見て、「彼はライヴで見る価値があるミュージシャンだ」と強く思いました。
1995年のキング・クリムゾンのダブルトリオ時代の日本公演では、ずっと彼だけを見ていました。



「キング・クリムゾンやピーターのアルバムを聴くだけでは真の彼の姿を知ったことにはならない」と思い、1995年当時、彼の最新ソロアルバムだったWorld Diaryを買ってみました。
さぞかし超絶プログレ世界が展開されているのだろうと思っていたら、自由気ままなジャズというかフュージョンというか、期待はずれの内容でした。

WORLD DIARY
トニー・レビン
ポニーキャニオン
1995-11-17


2001年4月21日のトニー・レヴィン・バンドの東京公演にも行きました。来日メンバーには、ピーターの「プレイヴ・ライヴ」近辺でバンド仲間だったラリー・ファスト(key)、ジェリー・マロッタ(dr)がいたので、これまた壮絶プログレ世界を期待していたら、おとなしめの曲ばかりで退屈さを感じました。この当時の最新アルバムWaters of Edenを買ったものの、「期待するプログレサウンドではなかった」ということ以外、全く印象に残っていません。
これ以来、私の認識は「トニーのソロはつまらん」というものになってしまいました。
そのため、過去スティック・メンで来日するという情報が入っても「3人のバンド? スティック奏者が2人? どうせ、スティックでジャズやフュージョン系のゆるめの曲をやるくらいだろう」と思って、パスしてきました。

この認識が間違っていたことを、去年の12月中旬に知りました。
Apple Musicでスティック・メンのアルバムがあったので「試しに聴いてみるか」と2017年2月21日にメル・コリンズをゲストに迎えた東京公演の音源を聴いてみたら、思っていたサウンドと全く違ったのです。

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パット・マステロットが重たさがある変拍子込みのドラムを叩き、ベースがずしんと響き、スティックの細かい指さばきに、ロバート・フリップの演奏スタイルに似ているサスティンが効いたギターがからむ。ハードだったり、サウンドスケープ的な幻惑系だったりのオリジナル曲に加え、Larks pt 2、Level Fiveが迫力たっぷりに演奏されたり、80年代のクリムゾン曲Satori in Tangierが重厚に蘇っていたりとおいしさ満点。時折からむメルのサックスやフルートもヨシ。

以下は、2017年2月8日の豪華客船上プログレ祭り Cruise to the Edgeでの演奏。


2015年4月にデヴィッド・クロスをゲストに迎えて来日して、その東京公演がCD化されていると知り、「これを聴き逃してはならん」と思い、買いました。

MIDORI
STICK MEN
JFK
2016-08-26



サウンドスケープではデヴィッドが奏でるバイオリンが幻想的な世界を描いていてうっとり。他の曲でもバイオリンが炸裂し、スティック・メンの面々が弾くヘビーだったり幻想的だったりするサウンドにうまいことマッチして曲の魅力を高めています。ラストはTalking DrumとLarks 2。デヴィッドが奏でるバイオリンが入ることで本家感があるし、濃厚になっていておいしさアップ。

↓は2018年のアルゼンチン公演。


スティック・メンは3人ですが、スティックとタッチ・ギターは両手で音を出せるので、実質5つの楽器で演奏していると言えます。その分、濃厚。
音源だけ聴いていると「いったい誰がどんな音を出しているんだ?」と気になります。その答えを以下の動画が教えてくれました。2016年10月13日のオランダ公演を完全収録したもの。チャンネルオーナーの説明によるとバンドの許可を得てプロ機材で撮影したものみたいです。手元、足元がしっかりと見えて演奏のすごさがよくわかります。



これまでの来日公演でこの凄い演奏を生で見れるチャンスがあったのに、食わず嫌いでパスしていたことを後悔しています。
6月の来日公演には絶対に行きます! コロナが落ち着いていて、無事来日できることを祈っています。

彼らの魅力を知り、作品を紹介するサイトを作りました。まだぬけがありますがボチボチ埋めていきます。


 

rock70s at 17:55|PermalinkComments(0) キング・クリムゾン 

2021年12月24日

原始神母 予想外の展開&新発見&ふれあいの大阪公演

12/24のクリスマスイブ。人によっていろいろな楽しみ方があるなか、私は原始神母の大阪公演を選びました。
今年は4月の川崎クラブチッタ公演、11月の神戸チキンジョージ公演に行ったので、なんと3回目。なんという贅沢な年なのでしょう!
今回の目玉は、おせっかい全曲再現+原子心母全曲再現。

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本家ですらやったことがない、超豪華な内容なのでこの日が来るのを楽しみにしていました。一方、「チッタとチキンジョージで見たから、新たな感動はないかな」とも思っていました。
しかし、予想に反し、感動&新発見の連続になりました。

大阪公演の会場はBIGCAT。広さとしてはチッタとチキンジョージの中間くらいです。座席は最前列でギタリストのshakeさんの正面。最前列は視覚的にはいいものの、会場によってはPAよりも前になってしまい音響的にイマイチなのでチョイ不安に思っていました(音のバランスが悪く、ドラムの生音がやたらでかく聴こえるとか)。

オープニングはTime。バランスがバッチリのパワフルなサウンドに不安は一気に消えました。ここで「あれ?」と思いました。コーラス隊のラブリー・レイナさんと冨田麗香さんの立ち位置がいつもと逆なのです。「クリスマス限定の新企画か?」と思ったら、イントロのレイナさんの大太鼓パートが終わったら、定位置に戻りました。もしかしたら、過去のコンサートでも同様だったのかもしれませんが、今までTimeのイントロはドラムの柏原さんを注視していたので気づかなかったです。続けてGreat Gig。いつもながらのレイナさんと冨田さんの激唱に聴き惚れた後、舞台右側から金髪ロンゲの人物が登場しました。チッタ公演でのAtom Heart Motherで指揮をされていたYOKANさんです。
「もう、Atom Heartをやるの?」と驚いたら、YOKANさんがサックスを持ちました。それを見て、チッタではShine Onでサックスを吹かれたことを思い出しました。演奏されたのはMoney。私が初めて参加した2017年と翌年の東京公演ではゲストが生サックスを吹き、その後はキーボードで鳴らしていました。やはり生のサックスはパワフルで魂がこもっていてナイス。
「このまま『狂気』後半コーナーを続けるか?」と思ったら、風の音が流れ「おせっかい」再現が始まりました。
「おせっかい」再現は先月チキンジョージで見て、脱プログレ曲コーナーでの面白い演出に驚きました。今回もそれが再現されました。
「麗香がアコギを持った!」(「クララが立った!」風)
「ラ、ラインダンスだと!?」
「レイナさんと冨田さんが犬??」
初めて見た人は驚きまくったでしょうね。

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そして、Echoes。チキンジョージで聴いた時と同様に柏原さんのドラムのパワフルさに圧倒されました。オリジナルではズンズン来るパートから幻想パートへの切り替えはクロスフェードなのですが、今回の演奏ではズンズンパートのラストでズドドドズドドドンと柏原さんが叩いて盛り上げてから幻想パートに突入。この動と静のコントラストが見事な場面展開はナイスです。

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幻想パートではshakeさんがギターでカモメっぽい音を出します。以前からどうやって音を出しているか気になっていました。正面なのでじっくりと見ました。ギターのつまみとフットペダルをこまめに動かしているのはわかったのですが、ピッキングしている感じなし。どうやって音を出しているのか結局解明できませんでした。
これで第1部終了。

「第2部はチッタ同様、『原子心母』完全再現で開始。その後、名曲集だろうな」と思っていたところ、ステージに出てきたshakeさんと扇田さんがアコギを担ぎました。何とここでWish You Were Hereを投入、さらにAnother Brick in the Wall pt 2が演奏されました。

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Anotherでは新発見がありました。shakeさんがギターでチャラチャラ音を出している横で、三国さんがキーボードでヘビーなギターっぽい音を演奏していたのです。2人を至近距離で見れたからこそわかったこと。最前列の恩恵でしょう。
次はまさかまさかのComfortably Numb。この曲は「コンサートの終盤にやってライティングの派手さで一気に盛り上げるために使う」と思っていたので、第2部の序盤での演奏は意外でした。

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Comfortablyの感動が収まらないなか、突如、効果音が流れ出しました。Alanのあの音です。チッタ同様に曲順も再現すると思っていたので、いきなりのAlanに驚きました。さらに驚いたのがAlanの3曲目のMorning Glory。終盤で柏原さんがズゴコドンとドラムを叩き、原曲とは比べものにならないくらいに大盛り上がりの曲に変貌していました。「おいおい、そこまで叩くか?!」と思わず笑ってしまいました。チッタでここまで叩いたのかまったく印象に残っていなかったです。

チッタのはこれ↓



ここで曲順を入れ替えた意図を理解しました。
チッタではブラス&コーラス入りのAtom Heartを聴いて強烈さに圧倒されたので、あとの曲は「どーでもいいわ」状態になって聞き流していました。今回は、インパクトが比較的弱い曲を先にやって、じっくりと聴かせ、じわじわっとAtom Heartというクライマックスに持っていくという狙いなのでしょう。これは大正解だと思います。
If、Fat Old Sunが演奏された後で気になったのは「SummerをAtomの前に入れるのか、後に入れるのか?」。この曲でもブラス隊が入ってパワフルになるので、入れ場所によってはどちらかの曲のインパクトが薄まってしまいます。
答えはすぐに出ました。shakeさんが「次はAtom Heart Motherをやります」と言われたのです。ステージ右手にはブラス隊が、shakeさんの後方(=私の目の前)にチェリストの崎元蘭奈さんが登壇しました。
ここで三国さんとshakeさんのやり取りが聞こえました。三国さんが「メンバー紹介したら?」とshakeさんに声をかけられ、shakeさんが「ここでやるの?」みたいな返答をした後、ゲストの方々をされました。三国さんは気遣いされる優しい方なんだなと感心。

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三国さんの気遣いは演奏中にも見受けられました。崎元さんがソロパートを演奏し終わった時に、彼女に向かってOKサインを出したのです。崎元さんが、ほっとした表情を浮かべてほほ笑んだのが印象に残りました。パッと目、孫を見守るおじいちゃん的なやさしさ。

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Atom Heartの演奏の壮大&パワフル&圧倒的な素晴らしさは文章で表現不可能。チッタ公演を収録した動画を見てください。



第2部は観客総立ちの大拍手の中で終了。人生で2回もこの素晴らしい演奏を聴けたことに大感動です。

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アンコールでも冒頭からブラス隊が登場しました。当然Summerです。圧倒的なAtomの終了後に短い休憩を挟むことで互いの曲のインパクトが薄まるのを避けたのでしょう。巧みなセトリ構成だと感心しました。

チッタでの素晴らしい演奏はこれ↓



次はRun Like Hell。「ザ・ウォール」コーナーは終わったものだと思っていたので、ここでの投入に驚きました。会場が手拍子で包まれ、あちこちで「ラン! ラン! ラン!」にあわせて腕が上がる中、華々しくコンサートが終了しました。

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終演後も楽しみは続きました。最前列にいるからには、ステージの様子を観察しないともったいない。
展示されたshakeさんのギターを観察したり、エフェクターコーナーに「夜明け」のジャケットが描かれた物体があったり、大久保さんのキーボードの上に置かれてあるディスプレーには楽譜が表示されていたなどの発見がありました。

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そして、物販。
ベースの扇田さんがつい先日ソロアルバム「I Feel」をリリースされネットで買えるのは知っていましたが、「どうせ買うなら本人から買う」と思い、この日を待っていました。ツイッターで「サインもする」と予告されていたので、物販コーナーで待っていました。
まずshakeさんが来られ、レイナさん、冨田さんが来られたのに、なかなか扇田さんが来ない。
どうしたのかと思い、スタッフさんに聞いたら「後片付けが忙しくて来られないかも」と言われました。「それは話が違う!」と思い、ツイートのことを伝えたら、呼びにいってくれました。感謝。
無事お目当てのサイン入りCDをゲットできました。

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その勢いで、以前から「さいたま市民の扇田さんに聞きたい」と思っていたことを質問しました。それは浦和レッズ派か大宮アルディージャ派ということ。去年まで埼玉県川口市に住んでいてしょっちゅう埼玉スタジアムに通っていたレッズファンの私にとっては重要な話で、出会ったさいたま市民には必ず質問しています。扇田さんは浦和在住でレッズを応援していることで「同志」という絆を感じました。We are REDSと言われたのには感動。

shakeさんには来年の予定をお聞きしました。「雲の影の50周年だし、鬱の35周年だけどね…」と言われたものの何か歯切れが悪そう。「ネタはばらさないぜ」かなと思いましたが、いつも終演時のMCで予告しているのでネタバレは気にしていないと思います。たぶん、両アルバムとも、もうチョイな作品なので企画の思案中ということでしょう。また、私が大好きなのにまだ原始神母で聴いたことがないDogsのリクエストもしておきました。「もしかしたら、Dogsは嫌いなのかな?」と思っていましたが、ここ数年は50周年特集でなかなか手掛ける暇がなかったとのこと。アニマルズ50周年にはやってくれるでしょうが、2027年になる…。もし、来年の企画に困っているなら是非とも新趣向として入れてもらいたいです。
レイナさんと冨田さんのCDもあったので購入し、サインをいただきました。

キング・クリムゾンのロイヤルパッケージに参加して、「ミュージシャンとのふれあいって楽しいな」と思い、原始神母でもロイパがあるといいなと思っていたところでした。まさか物販でロイパ状態になれるとは意外。

今回、唯一気になったのは客席後方に空席があったこと。「おせっかい」+「原子心母」の完全再現という歴史的なコンサートなので、話題沸騰で座席争奪戦が繰り広げられると思っていました。
クリスマスイブなので他の用事を優先する人が多かったのか、高齢のファンがコロナリスクを避けたのか? もし、原始神母を食わず嫌いで敬遠していたとしたら人生損します。関東方面の方は12/30の六本木公演に行きましょう。行けない方はライヴ配信されますので見ましょう(配信の詳細はこちら)。


 

rock70s at 22:53|PermalinkComments(0) 原始神母 
リリース情報
2021年
【4月16日】
ジョン・レノン ジョンの魂ボックスセット

【5月14日】
FROST*新作「Day And Age」

【6月11日】
デニス・デ・ヤング最終アルバム「26 East: Volume 2」

【6月18日】
スティクス新作「Crash Of The Crown」

【8月4日】
ピンク・フロイド「原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)」

【9月10日】
スティーヴ・ハケット新作「Surrender Of Silence」
マリリオン「Fugazi」 3CD+Blu-ray

【9月24日】
デュラン・デュラン、ポリス、XTCライヴ盤(Alive the Live)

【10月1日】
イエス新作「The Quest」

【10月15日】
ビートルズ「レット・イット・ビー」スペシャル・エディション

【10月22日】
デュラン・デュラン新作「Future Past」
ドリーム・シアター新作「A View From The Top Of The World」

【10月29日】
ピンク・フロイド「鬱」(リミックス&アップデイト)

【11月5日】
ABBA新作「ヴォヤージ」
アラン・パーソンズ新ライヴアルバム「The NeverEnding Show」

【11月19日】
スティング新作「ザ・ブリッジ」

【12月8日】
デヴィッド・バーン「アメリカン・ユートピア」DVD/Blu-ray

管理人のオリジナル小説