2016年11月25日

ピンク・フロイド ボックス・セット 超幻惑世界

ピンク・フロイドのボックス・セット、The Early Years 1965-1972の中で私が最重要だと思っていたのがDRAMATIS/ATIONと名付けられたブック3です。CDは2枚入っています。
CD1の冒頭を飾るのは映画「モア」のために録音されたもののアルバムには収録されなかった4曲。私は「モア」の幻惑世界が好きなので、けっこう楽しみにしていました。1曲目はHollywoodなる曲。どんな曲かとワクワクして聴いたらズッコケ。中途半端なCymbalineという感じのたった1分21秒のあっけない曲でした。次はアルバム収録のThemeのちょっとスピードアップしたバージョンで、その次はMore Bluesの長いバージョン的なもの。最後に期待したSeabirdsはどう聴いてもQuicksilverで、期待を見事に外してくれました。この4曲はあまり存在価値がなく残念でした。

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その次に収録されていたのはこのボックス・セットで2つめのEmbryo。収録アルバム回収騒ぎを起こしたいわくつきの曲です。これについては別の機会に。
続くは1969年5月12日のBBCラジオセッションの音源です。Granchester、Cymbaline、The Narrow Way、Green Is A Colour、Carefulの5曲。私はこれのブートを持っていて耳に馴染んだ音源です。The Man & The journey ツアーの最中なのでアレンジが組曲で使われている感じになっていますが、スタジオ録音とさほど違わない印象です。



意外と良かったのが、CD1を閉める1969年8月9日のオランダ公演のライヴ音源。ラジオ放送のために収録されたものです。1曲目のIntersteller Overdriveは原型をほとんど留めておらずリックの幻想系的なキーボードに引き込まれるアレンジになっています。ちょうど「ウマグマ」に収録されたAstronomy Domineが幻想曲にアレンジされていたのと同じ感じです。ちなみに「ウマグマ」に収録されたライヴもこのツアーです。続くSet the Controlは12分の長尺。この公演ではボーカルをあえて入れない演奏にしたそうで、インスト作品になっています。Careful、Saucerfulは「ウマグマ」とほぼ同じアレンジですが、ボーカルがない分、聴きやすいです。私はCarefulの絶句が好きじゃないので。

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CD2はボックス・セットの最大の目玉、組曲The Man & The Journeyです。私がこの存在を知ったのは35年前。「炎」のLPに入っていた年表に書いてあるのを見た時、どんな内容なのか気になってたまりませんでした。しかし、当時はインターネットなき時代。調べようがなくモンモンとしていました。
謎の一片は20年前に「ピンク・フロイド全曲解説」を買った時に解けました。この組曲は「モア」や「ウマグマ」などの収録曲から構成されていたことがわかり、さほどのものではないと安心しましたが、一度は聴いてみたいという気持ちが高まりました。そして、2年くらい前にYouTubeにブートの音源がアップされているのを見つけて聴いてみました。音質が良くなく、「まあ、確かに組み合わせだな」という印象しかなかったです。「きっといつかは音質がよい公式版が出るに違いない」と夢見ていたところに今回のボックス・セットが発売されました。ホント、嬉しいです。

The Manは主人公が起きてからの1日を描いた作品です。オープニングは、後にGranchester Meadowsとして「ウマグマ」に収録されるDaybreak。ロジャーとデイヴのツインアコギでボーカルもハモっていてリックのオルガンがいい雰囲気を足しています。「ウマグマ」版より断然こっちがよい。仕事をしている場面を描いたWorkは、ドラムとシロフォンの打音をごちゃ混ぜにしたもの。夕方の様子は後にBiding My Timeという曲になるAfternoon。ロジャーのボーカルとリックが吹くトロンボーンの掛け合いが奇妙な世界を描いています。



続くDoing It!はニックのドラムと誰かが叩くティンパニ(多分)が混じりあった曲。どことなく「ウマグマ」のGrand Vizierです。夕方以降、寝る前に「それやろう!」と言うことは、アノ場面か?
続くSleepingはQuicksilver風の幻想サウンド。寝ている間の悪夢はCymbalineの焼き直しのNightmareで表現し、そのまま迷宮(Labyrinth)に入り込んで終了です。
素晴らしい組曲です。今まで長年聴いてきた曲達が前後の曲と相乗効果を発揮し輝いています。

The Journeyはリスナーを不思議な迷宮に誘う旅を描いたもの。オープニングはThe Beginning(Green Is the Colour)とBeset By Creatures Of The Deep(Careful)が切れ目なく繋がり、いきなりの幻想世界に入ります。デイヴのボーカルが歪んで聴こえて耳触りが悪いのは残念。21世紀のリマスター技術でも補正できなかったのか? それとも生々しさを残すためにあえて補正しなかったのか?
続くはThe Narrow Way Part 3。「ウマグマ」に入っていたとおりですが、サビでデイヴは裏声ではなく地声で熱唱しています。裏声ではライヴには声量が足らないので地声で頑張ったと思いますが、キーが高くて苦しそうで音程がずれます。The Pink Jungleは「口笛吹き」のPow Rの焼き直し、The Labyrinths Of Auximinesはリックのキーボードとデイヴのギターがエコーたっぷりに鳴って宇宙空間的な幻惑感を描きます。足音やドアの音を使ったFootsteps / Doorsを挟んでBehold The Temple Of Lightではギターがジャラーン、ジャラーンとなる中でキーボードが幻惑空間を描き、ラストはSaucerfulの後半を抜粋したThe End Of The Beginningで荘厳に幕を閉じます。
これまた見事な組曲です。この時代の幻惑サウンドが大好きな私にとっては、お年玉とお中元とお歳暮とクリスマスプレゼントをいっぺんにもらえたような嬉しさです。

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「聴いてみたい! でもボックスセットは買えない!」という方はYouTubeでブート音源を探すか、ブートCDをみてはどうでしょう? すぐに見つかるかどうかはわかりませんが、手間暇かける価値はある音源です。なお、その際は1969年9月17日のオランダのアムステルダム公演を選んでください。ラジオ放送のために収録されたもので、数ある中で一番音がいいそうです。





 

rock70s at 21:49│Comments(0)TrackBack(0) プログレ 

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リリース情報
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