というわけで、南青山の根津美術館へ、10月8日より始まっていた「国宝 燕子花図−光琳 元禄の偉才−」展を見に行ってきた(10月25日からの後期展覧会に見たい作品がたくさんあった)。この展覧会には、修理を終えた国宝「燕子花図」が久々にお目見えとあって、まさに待ちに待った展覧会だったのです。人もそれなりに多く、やはり「燕子花図」の前には人だかり。注目度の高さがうかがい知れた。

「燕子花図」などを見ていると、これは他の画家の屏風絵のみならず、光琳自身の他の屏風絵の画風とも違っていて、どうしてこういう屏風絵を描くに至ったのか、本当に興味が尽きない。見ていても飽きない。緑と藍色だけを用い、単純化されたフォルムで描かれる燕子花は、まるで切り絵のように即興性に富み、左右の屏風で異なる燕子花の連続性がとてもリズミカル(これはまったくの私見だけど、マティスの切り絵「JAZZ」などを想起させる。デザイン性という意味でも…)。
他に注目していた作品を数点。
「月梅図」は光琳晩年の作ともいわれる墨画。梅の枝が(光琳特有の描き方で)伸びやかに描かれ、おぼろげな月が半円で表される。シンプルな作品だが、優れた作品というのは、きっと多くを語らなくてもよいのだろう。
「中村内蔵助像」は、光琳唯一の肖像画。中村内蔵助は光琳のパトロンだった人です。
「八橋蒔絵硯箱」も国宝。これは「燕子花図」と同じデザインを、硯箱に応用したもの。細部にいたるまで凝ったデザインが施され、工芸デザイン家としての光琳の面目躍如といったところか。「燕子花図」にしても「八橋蒔絵硯箱」にしても、国宝級の作品には、やはり見る人を強く惹きつけるだけの力がある。
工芸デザインといえば、光琳に縁の深かった小西家の資料も見逃せない。デザインのスケッチともいえる「衣装図案帖」「円形図案帖」などを見ていると、デザイナー光琳を発見できるはず。小袖「白綾地秋草文様小袖」などもとても魅力的。男の僕でも、着てみたいと思う…なんてことはない。
というわけで、とにもかくにも見どころ満載の、充実した展覧会だった。