こちらの庭も、重森三玲の手によるもの。昭和14年(1939年)の造営で初期作品にあたる。


八相の庭は、峻険な立石を所狭しと並べ、息が詰まりそうな緊張感を生み出しており、「激」「険」といった言葉を想起する。
それに対して、この波心庭は、広々とした空間の中で、波打つような丘がなだらかな曲線を描き、白砂を囲む柔らかな曲線と相まって、全体的に「穏」「柔」といった印象だ。配置された石と石の間にもゆとりを感じる。
また、この波心庭は、書院や本堂の中から眺める上で、どこからでも楽しめるような緻密な計算がされているようだ。三ヶ所に配置された三尊石の石組が、ともすれば締まりがなくなりがちな広い空間の中で絶妙なアクセントとなっており、建物内のどの場所からでも三尊石組の美しい立ち姿を見ることができる。
「波心庭」と「八相の庭」。
どちらが好みかというのは見る人の感性に委ねるしかないけれど、同時期に造り出した二つの庭で、異なる個性を見せた作庭家の仕事ぶりには、大きな興味を感じないではいられない。
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