
玉村方久斗は京都生まれの日本画家。
「雨月物語」や「伊勢物語」など、日本の古典物語ものに題材を得た作品を多く残した。とくに「雨月物語絵巻」善9巻は、いったん焼失したものの、再度描きあらためるなど、そのグロテスクな描写とあいまって、作者の執念を感じさせるものだ。
しかし一方で、玉村方久斗は「日本画」という枠にこだわらず、前衛芸術運動に身を投じて、立体作品を作ってみたり、雑誌作りに参加して積極的な文筆活動も行っている。
そして、活動の場を自由に飛び越えて行き来する軽やかなフットワークさながら、画家自身の筆もとても軽やかで、楽しい。
1930年代に入ると、洋画的なアプローチから生活断片を描いた明るい画面の絵に取り組んでおり、それら一連の作品は、どこかユーモラスで、伸びやかさを感じる。
この展覧会では、玉村方久斗の軽やかなマルチな才能ぶりを丁寧に紹介しているという印象を受けた。