2008年08月21日

桂離宮(1)視覚を遊ぶ

さて、桂離宮。この夏、初めて訪問しました。ようやく拝観することができました。

桂離宮の中を歩いてみると、とにかく目を惹くのが、敷石や飛び石の多彩さ。
下の写真は「御興寄せ」の前庭の畳石。
切り石を幾何学的に組み合わせた絶妙なデザインは、人の視線を足元へ引き寄せずにはいられない。



下の写真は「外腰掛」の前の敷石(左)。
「外腰掛」は茶室・松琴亭の待合いなのだが、自然石と切り石とを組み合わせた敷石を配置し、切り石によって茶室に向かう緊張感を喚起させ、一方で、自然石よって緊張感をほぐすという効果を狙っている。
また、離宮内の散策路には、あちこちに飛び石が置かれている(右)。





こうした敷石や飛び石を多く配置しているのには理由があって、苑内を歩く人の注意を足元に促し、歩いている際に庭の風景をなるべく見せないようにしているのだ。
といっても、意地悪でそういうことをしているのではなくて、訪れた人にはいちばん美しく見える場所で庭を見てもらいたい…という心遣いによるものなのだとか。
要するに、歩きながら流し見てもらうのではなく、ベストポジションでゆったり腰を落ち着けて見て下さいよ…ということだ。庭を作った人にとっても、訪れた人には自分の庭の美しさを印象付けたいでしょうしね。



そしてまた、敷石や飛び石だけではなく、しばしば我々の視界を遮るものが、こうした植え込みだ。
上の写真は、茶室・松琴亭の対岸からの眺めなのだが、生け垣と松の木が絶妙な位置に立ちふさがって、視界の邪魔をする。なんということだ。
こうして、まずは全景を見せず、だんだんとその景色が近付いてきて、生け垣が切れた時に視界が広がる…という視覚的な効果を狙ったたくらみを感じさせてくれる。

このように、桂離宮は、視覚的な遊び心がふんだんに盛り込まれている。


こちらは、松琴亭前の州浜と、天橋立に見立てた石橋。
上の写真では、やはり木の枝が部分的に視界を遮っている。しばらく歩くと、下の写真のように視界が広がる。



下の写真は、初めに紹介した「御興寄せ」の門。



門前に敷かれた敷石の組み合わせ(大きな一枚石を囲むように小さな石を置く)にも、人の視線を惹きつけ、人の心に何かを伝える役割を担っているのかな。
門に足を踏み入れた時に目を惹く幾何学的な切り石とは、とても鮮やかな対比を描いている。

桂離宮、面白いです。

この記事へのトラックバックURL