桂離宮の中を歩いてみると、とにかく目を惹くのが、敷石や飛び石の多彩さ。
下の写真は「御興寄せ」の前庭の畳石。
切り石を幾何学的に組み合わせた絶妙なデザインは、人の視線を足元へ引き寄せずにはいられない。

下の写真は「外腰掛」の前の敷石(左)。
「外腰掛」は茶室・松琴亭の待合いなのだが、自然石と切り石とを組み合わせた敷石を配置し、切り石によって茶室に向かう緊張感を喚起させ、一方で、自然石よって緊張感をほぐすという効果を狙っている。
また、離宮内の散策路には、あちこちに飛び石が置かれている(右)。


こうした敷石や飛び石を多く配置しているのには理由があって、苑内を歩く人の注意を足元に促し、歩いている際に庭の風景をなるべく見せないようにしているのだ。
といっても、意地悪でそういうことをしているのではなくて、訪れた人にはいちばん美しく見える場所で庭を見てもらいたい…という心遣いによるものなのだとか。
要するに、歩きながら流し見てもらうのではなく、ベストポジションでゆったり腰を落ち着けて見て下さいよ…ということだ。庭を作った人にとっても、訪れた人には自分の庭の美しさを印象付けたいでしょうしね。

そしてまた、敷石や飛び石だけではなく、しばしば我々の視界を遮るものが、こうした植え込みだ。
上の写真は、茶室・松琴亭の対岸からの眺めなのだが、生け垣と松の木が絶妙な位置に立ちふさがって、視界の邪魔をする。なんということだ。
こうして、まずは全景を見せず、だんだんとその景色が近付いてきて、生け垣が切れた時に視界が広がる…という視覚的な効果を狙ったたくらみを感じさせてくれる。
このように、桂離宮は、視覚的な遊び心がふんだんに盛り込まれている。