2008年09月19日

石道寺〜紅い唇の観音様

高時川にかかる井明神橋を渡ると、石道寺まではひたすら坂道。
汗をだらだらと流しながら自転車をこぎまくり、最後は自転車を押して坂道を上っていく。
集落が途絶える山のふもとの突き当たりが、十一面観音を本尊とする石道寺だ。



石道寺は、もともとは背後の己高山(こだかみやま)一帯の山岳仏教の寺院のひとつとして栄えたお寺だったが、明治の頃に火事や自然災害で伽藍や寺宝を失い、ついには無住のお寺となって廃れてしまった。
かつての境内は、さらに山を入ったところに石道寺跡を示す碑だけを残すのみで、現在は、より人里に近いこの地で、大正の頃に建てたこのお堂と、それから、わずかな寺宝を伝えている。



ここの十一面観音は、素朴な薫りがする。
顔はふくよかで、胸まわりも厚みがあり、腕もむっちりとしている。そして、この観音様を特徴づけている赤い唇。彩色が残り、ぎゅっと結んだ意志の強そうな唇は、なるほど目を惹いてやまないものがある。

石道寺は現在も無住のお寺で、この地域の住民の方々が交代でお寺に詰めて、観音様を守っている。僕が訪れたこの日は、受付には小学生くらいの子供を連れたお母さん、お堂の中にはお婆さんが座っておられた。
今もなお、こうしていろいろな人の手によって守られ、伝えられていることを実感する。
我々がこうして観音様と対面できることは、本当に素晴らしいことであって、そして、観音様に携わってきた多くの人たちには深々と頭の下がる気持ちになる。
僕が観音様と静かに対面をしている頃、お堂の外では夏の日差しがますます強く照りつけていた。
汗はまだ引かなかった。
蝉の声だけが、頭の上で鳴っていた。

※写真をクリックするとちょっと大きな画像を表示します。



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