2008年10月12日

【展】アヴァンギャルド・チャイナ

アヴァンギャルド・チャイナ2年前に見た中国映画『胡同のひまわり』は、文化大革命による強制労働から帰還した父親と息子の30年にわたる葛藤を描いた映画だった。経済成長によって急速な変貌を遂げる北京を舞台に、画家として成功しつつある息子と、胡同(フートン)と呼ばれる昔ながらの下町に暮らし続ける父親を通して、新世代と旧世代、現代都市と消滅する下町……といった相反する二つの姿を描いていた。
そして、その対立する二項をゆるやかに繋ぐものとして、映画の中で象徴的に用いられていたのが、張暁剛(ジャン・シャオガン)の描く家族の肖像画だった。

中国の現代美術シーンの旗手でもある、その張暁剛の作品も出品されている「アヴァンギャルド・チャイナ〜〈中国当代美術〉二十年〜」は、六本木の国立新美術館にて。
1980年代半ばから始まる八五美術運動を起点に、中国の現代美術を見渡すという試みだった。
文化大革命や天安門事件といった政治的挫折はシニカルな表現を生み、中国当局の取り締まりによる緊張下での表現活動は強靭であり、経済の急成長を背景にした表現手段は多様さに富む反面で混沌としている。
中国の現代美術を通して見えたのは、日本の歩んだこの20年からは想像もできないような、激動の中国の姿の一端だった。

以下、簡単ながら、中国現代美術の聴講メモです。
0. 中国モダンアート前史
(1) 欧米のモダンアートの受容 1930年代
(2) 社会主義リアリズム 1940年代
 「芸術は大衆と政治に奉仕するもの」という毛沢東の提唱。
(3) 毛様式(マオイスト・モデル)の時代 1950年代
 芸術の徹底的な政治への奉仕、プロパガンダとしてのアート。具体的には毛沢東を礼賛。
(4) 傷痕リアリズム、郷土リアリズム
 1976年、毛沢東の死を境に、毛沢東と文化大革命によって歪められたリアリズムの反動。
(5) 星星画会結成 1979年 北京
 ・社会批判、社会参加、新しい表現形式への意欲の表明。
 ・王克平、黄鋭ら。
 ・野外美術展の開催(1979/9/27)→警察の介入→中国初の民間によるデモ行進の発生(10/1)

(6) 八五美術運動 1980年代半ば
 ・中国国内で同時多発的に現代美術グループが誕生する。
 ・西洋モダニズムの紹介、導入。
 ・理想主義的な熱気の高まり。
 ・廈門ダダ「焼却イベント」(1986年)


1. コンセプチュアル・アート
(1) ホアン・ヨンピン
 偶然性の導入、作家の主体性を消すような表現方法への関心。
(2) 触覚小組(タクタイル・アート)〜新刻度小組(シンカドゥ・グループ)
 作家の意図を排して、厳密な規則にのっとって作品を作る行為そのものをアートとする。

2. 絵画 Painting
(1) ポリティカル・ポップ
 ・王広義(ワン・グァンイー)ら。
 ・資本主義と社会主義の狭間の矛盾に揺れる心情を表現。
 ・一方で、アメリカンポップアートを誤って解釈。

  ※ウォーホールやリキテインスタインらは、大量消費されるものをアートの領域へ引き上げる手段として
  ポップアートを確立したが、中国では毛沢東ら高尚なもののイメージを引き下げるためにポップアートが利用された。

(2) チャイナ・キッチュ
 政治的なものを希薄にし、西洋的イメージを氾濫させる。
(3) シニカル・リアリズム
 ・張暁剛(ジャン・シャオガン)、方力鈞(ファン・リジュン)ら
 ・文化大革命、天安門事件の挫折感を出発点とする。
 ・90年代中国アートシーンの大きな軸となる。


※丁乙(ディン・イー)のような、ポリティカル・ポップともシニカル・リアリズムとも一線を画した表現を試みるアーチストも登場。

3. 身体表現
体制の抑圧の抵抗を、身体をもって表現する。
 ・パフォーマンスアート。
 ・素材としての“肉”への関心。
 ・「死体派」の登場。


4. ニュー・メディア・アート
 ・デジタルな視覚様式の変化を体験。
 ・都市化の波。
 ・海外のアニメ、漫画、映画、音楽への親しみ。
 ・商業化への危機感、バブル化する現代アートへの反発。(映像作品は売買の対象となりにくい)

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アヴァンギャルド・チャイナ〜中国当代美術二十年 を見た。【超反応で描け!】at 2008年10月25日 19:07