
一鳥啼いて 山更に幽かなり(いっちょうないて やまさらにしずかなり)。
床の間に掲げられた軸は、ご住職の剛山和尚の筆によるもの。「鳥」が絵になっているのがユーモラスで、自然と笑みを誘う。
一羽の鳥が啼いて山の静けさがよりいっそう深くなる…といった意味なのだそう。中国の漢詩に由来する言葉のようだ。
静寂の中に響き渡る鳥の啼く声、さらに寂寥感を増す山々…そんな情景が浮かんでくる。
そういえば、ここ高桐院も、運良く人がいない頃合にただ一人で庭と対面していると、それはまさに「一鳥啼山更幽」の雰囲気なのではないかと思う。

書院「意北軒」を臨む。こちらの紅葉も、色付き始めたばかりだった。

境内の庭を出ると、細川忠興(三斎)と、その正室ガラシャ夫人の墓所がある。燈籠型の墓所だ。
ちりぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ
関ヶ原の戦いの直前に、キリシタンであるガラシャ夫人が遂げた悲劇的な最期は周知の通り。
「ちりぬべき〜」は、よく知られたガラシャ夫人の辞世の句。グッとくる一句だ。