2008年11月12日

ゆるやかに夜へ〜東福寺芬陀院

曇り空の一日の終わりは、夕日が沈む光景を見るでもなく、夕と夜の境目も曖昧に、ゆるやかに夜の帳が下ろされて、気が付けば周囲は夜の気配に包まれているのだ。



東福寺塔頭の芬陀院の拝観時間は、午後5時半まで。
寺社の多くが4時あるいは4時半で拝観終了になることを思えば、かなりゆとりがあるといえる。
受け付けの年配の女性も「5時半までなのでゆっくりしていってください」と声を掛けてくれた。

外の様子は、時間を経るごとに、じわりじわり闇が濃くなっていく。
枯山水の庭の白砂の上には、部屋の中の明かりが仄白く落ちている。
夜のお寺というと、ライトアップされた光景ばかりを思い浮かべてしまうけれど、ただこうして縁側に座り、夜の訪れに抗うことなく、じわじわと闇に支配されていく景色の変化を眺めているのも、目を奪われてしまうものだ。聞こえてくるのは、庭の向こうの竹林の葉が、時折り吹く風にざわめく音ばかり。



数人いた拝観客も、一人、また一人と立ち去り、気が付けば、堂内に残されたのは僕だけだった。
やがて時計は拝観終了の時刻を告げる。
「ありがとうございました」との言葉を残して、玄関をあとにした。

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