2009年05月27日

小泉八雲旧居

小泉八雲ことラフカディオ・ハーンが愛した庭。



ハーンは、この宅に移ってくる前の家(宍道湖の美しい風景を眺めることができる家)をたいそう気に入っていたが、やむにやまれず、松江城の北側に建つ、もともと武家屋敷だったこの家に引っ越してくることとなった。



ハーンは「日本の庭にて」(In a Japanese Garden)という随筆の中に、この家での暮らしのことを記している。
立地や景色などについては、初めこそ、あれこれと小さな不満もあった様子だが、この家と庭に大きな愛着を持っていたことをうかがわせる。



毎日学校の勤めから帰ってくると、まず教師用の制服からずっと着心地のよい和装に着替える。そして、庭に面した縁側の日陰にしゃがみこむ。こうした素朴な楽しみが、五時間の授業を終えた一日の疲れを癒してくれる。


聞こえてくるものといえば、鳥たちの声、かん高い蝉の声、あるいは、長くゆるやかな間を空けながら池に飛び込む蛙の水しぶきだけである。



ハーンが愛情を持って接したのは、何もこの家ばかりではなく、この家の庭に住み着く生き物に対しても、優しいまなざしを向けている。
蛙、亀、蝶、蝉、きりぎりす、蜘蛛、ホトトギス、トンビ、山鳩……それらもみな、日々の生活の中で、ハーンの愛すべきものだった。



一方で、ハーンは「日本の庭にて」の末尾において、急激に西洋化されていく明治の日本の姿に、一抹の寂しさを添えている。
都市化の波がやがてこの松江にも訪れ、「この屋敷もこの庭も、いずれはすべてが永遠に姿を消してしまうことになるだろう」と。



一方においてハーンの危惧は外れ、ハーンの暮らした家も庭も、今もこうして残されている。
しかし、一方においてはハーンの危惧の通り、日本各地の多くの町が「やがて平凡な一都市に変貌を遂げる」ことになってしまい、もしかしたら、天のどこかにいるハーンを悲しませているのかもしれない。

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