2009年10月15日

金沢の庭園(1)兼六園

兼六園の朝は早い。早朝の時間帯、庭園は無料で開放されている。
通常の拝観料を渋ったわけではなく、わざわざ早朝の人のいない時間帯を選んで、私は人と待ち合わせていた。
蓮池門口には警備員が一人いて、私よりも先にやって来た人物がいるかと尋ねたら、まだ誰も来ていない、あなたが最初の訪問者だ、という答えだった。

眺望台に立つと、東の上空に仄白く光る小さな星が見えた。あれは明けの明星だったか。



夜明けはすぐそこまでやって来ていて、山々の稜線がオレンジ色に輝きはじめていた。
待ち人はまだ来なかった。
私は霞ヶ池の周りをぶらぶらと歩いた。この大きな池は兼六園の景観の中心であり、池の周囲には有名な徽軫灯籠(ことじとうろう)や、栄螺山、内橋亭、唐崎松などが配置され、見る場所によって様々に風景を変えていく。



私は栄螺山に登った。小さな築山だ。
時計回りにうずを巻くように登り、それがまるで栄螺の殻のようであるというので、この名前が付いた。



栄螺山でしばらく空を眺めているうちに、ようやく朝日が顔を出した。
待ち人の姿は、まだ現れなかった。


私はだんだんと不安になってきた。もしかしたら、待ち合わせの時間を間違えてしまったのではないだろうか。



そもそも、夜が明けてからしばらく経つというのに、誰の姿も見えやしない。一人や二人、誰かしらは朝の散歩にでもやって来てよさそうなものを。



園内の木々や苔は、朝の日差しで黄金色に染まっていった。気が付けば、私は走りはじめていた。



水が岩を打つような音が聞こえたので、そちらの方へ走っていくと、瓢池(ひさごいけ)という瓢箪のような形をした小さな池に出た。
水の音の主は、翠滝(みどりたき)という滝だった。



少し走っただけなのに、息が切れて、呼吸が荒くなっていた。
そうだった。
私は誰かと待ち合わせの約束などはしていなかった。誰かが私と待ち合わせてなどはいなかったのだ。

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/rock_garden/51516817
この記事へのコメント
読んでいてちょっとドキドキしてしまいました…。

こんばんわ。
早朝の兼六園、誰一人としていないというのは独り占めな感じで素敵ですが、世界にたった一人だけで残された感のちょっとホラーな感じもしますね。
でも、是非行ってみたいです!
Posted by miki at 2009年10月17日 00:14
>mikiさん
こんばんは!
この日は、朝4時過ぎに起きて(前日は10時くらいに早寝して…)、開門の5時に行ったんですよ。
早朝っていうか、まだ夜でしたね。。。
でも、夜から朝への変わり目、空が濃い藍色になる時間帯はとてもきれいなので、一日のうちでいちばん好きな時間帯です。
Posted by 石庭 at 2009年10月17日 01:47