2010年04月19日

【展】なにものかへのレクイエム

ずいぶん前にチケットを買ったきり、なかなか足を運べずにいた東京都写真美術館の「森村泰昌 なにものかへのレクイエム〜戦場の頂上の芸術」
20世紀を舞台にして、政治の現場、あるいは戦争や革命の現場に自身を投入したセルフポートレート、さらに20世紀を代表するアーチストなどに扮装したセルフポートレートを通して、20世紀という時代を自ら「演じる」ことにより、かつての時代の証言者たちの記憶を呼び起こすような、その丹念で緻密な作業は、まさに「レクイエム」と呼ぶにふさわしい。
自分自身が歴史の記憶の中の人物に「なりきる」ことによって、20世紀という時代を辿り、解釈していく、その方法は他に類を見ない、森村泰昌が森村泰昌たるオリジナリティにあふれ、とてもエネルギッシュだった。

ところで、森村泰昌が提示する「20世紀」というテーマの根本にあるのは何だろうか……と展覧会場でずっと考えていたのだが、これはやっぱり「戦争」や「紛争」なのだろうか、と自分なりに受け取めた。
20世紀は二つの大きな戦争があり、地域紛争や内乱も絶えず、戦争の世紀といっても過言ではなかった。20世紀にさかのぼってみて、さて、当時に夢見ていた21世紀とは、いったいどういう時代だったのだろう。戦争も紛争もなく、貧困や飢餓を克服し、もっと幸せな世界を思い描いていたのではなかったか。けれども、実際に21世紀になってみて、どういう時代になったろう?
ヒトラーに扮した映像作品では、21世紀の独裁者たりうるものは何かを痛烈に突きつけ、警鐘を鳴らし、同じく映像作品「海の幸・戦場の頂上の旗」では、硫黄島の兵士をモチーフにして白い旗を掲げてみせる。
白旗=降参の意味ではなく、白旗を画用紙やカンバスに見立てることによって、その無地の旗の上に自分で色を塗っていく=21世紀という時代にアートの力で立ち向かっていくのだという、アーチストであるからこその強烈な宣言にも受け取ることができた。

最後に、ガンジーに扮した「光と地の間を紡ぐ人/1946年インド」の写真の中にさりげなく置かれた“ベトナム人に心痛を与え/アメリカの良心を突き刺した/恐怖のイメージふたつ”の言葉は、けっして声高にではなく、呟きににもモノローグだが、直截的な言葉が最後の写真で投げかけられたのも、作者のメッセージとして印象に残った。

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