2010年07月17日

【展】北斎とその時代

北斎とその時代表参道の太田記念美術館にて開催の「北斎とその時代」展に足を運ぶ。前後期に分けられた企画展は7月25日まで、後期にあたる今回は北斎の《富嶽三十六景》。
こうしてシリーズをまとめて眺めてみると、富士をテーマに描いた作品群は、たんなる風景画にとどまらず、北斎がいろいろな絵画表現を試みていることが分かる。
言わずと知れた「神奈川沖浪裏」の波が砕ける一瞬、それから、笠や紙片が吹き飛ぶ様子で“風”という見えないものを描いた「駿州江尻」などは、緊張感のある“瞬間”を描くことを試みている。
それからまた、富士と幾何学的な形の表現の試みも面白い。
建物の屋根と富士の同形状の反復(江都駿河町三井見世略図、東都浅草本願寺)や、半円の橋越しに眺める富士(深川万年橋下)、円形の桶の向こうの富士(尾州不二見原)、材木工の支柱越しの富士(遠江山中)、材木置き場の遠景にある富士(本所立川)…といった具合に、幾何学的な形の中に富士の姿を置いて、楽しんでいるようでもある。

とはいえ、名作として名高い《富嶽三十六景》の中にも、印象の薄い平板なものも少なくなかった。
いや、「神奈川沖浪裏」や「山下白雨」「凱風快晴」といったいくつかの作品が傑作すぎるのかもしれないし、それだけの緊張感の高い仕事を持続するのが容易でないことはもっともだろう。
北斎が《富嶽三十六景》を発表したのは70代に入ってから。晩年にして、このような旺盛な表現活動を試みた北斎の画業に、あらためて驚嘆の念を覚えずにはいられないのでした…。


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