7月24日。伏見稲荷大社、満月の夜のこと。
祭りのにぎわいを抜け出して、山の中に入っていく途中で、狐ににらまれてしまった。
にらまれただけなら、まだいい。その狐は、長いしっぽで僕の顔をひんやりと撫でたのだった。
おそろしくなった僕は、その場から急ぎ足で立ち去り、奥の院のあるところまで戻ってきた。
そこは多くの人でにぎわっていて、ああ良かったと胸をなでおろしたのだったが、振り返った彼らの顔には狐の面。
行灯画を眺めている幼い姉妹の顔にも、狐がついているのだった。