2010年10月08日

北陸妄想(3)養浩館

金沢の加賀温泉駅を発ち、福井へと入ったのは、夕暮れ時のことだった。
西の空はオレンジ色に染まり、もうすぐ日が落ちようかという頃合いだった。
僕は、福井駅に降り立ったその足で、福井城址に近い養浩館という場所へ向かった。



行方不明になった知人もまた、福井に到着後、夕暮れ時にこの養浩館を訪れていた。
彼のブログには「一度は訪れておきたかった場所」と記されていたので、ここを訪れるのが旅の目的のひとつだったのだろう。
僕もまた、彼に倣って、夕暮れ時に養浩館を訪れたのだった。もっとも、僕が訪れた時には日も短くなっていたので、6時を過ぎる頃にはすでに薄い闇があたりをおおい、虫の声が聞こえていたけれど。
養浩館は、もともとは福井藩主松平家の別邸として建てられたお屋敷だ。
大戦中の昭和20年に福井空襲によって焼失してしまったが、その後、過去の文献をもとにして復原された。



毎年、秋になると話題になるのが、アメリカの庭園専門誌の「日本庭園ランキング」。
養浩館の庭園は海外でも高い評価を得ていて、2008年から3位にランク付けされ、以来、3年連続でその地位を保っている。
ランク付けの数字がすべてというわけではないけれど、百聞は一見に如かず、実際に目の前にしてみると、なるほど、気持ちの良い場所だった。



屋敷の周囲を池が囲み、まるで池に浮かんだ舟にでも乗っているかのよう。



部屋の一室に座り、窓の外に目を向けていると、だんだん夜の闇が濃くなってきて、視界が失われていく。



耳を澄ませば虫の声。時折、池の水面からは鯉が波を立てる音が聞こえてきた。
彼もまた、ここから闇を凝視し、闇に耳を澄ませたのだろうか。その時、彼の胸にはどのような思いが到来していたのか。



その夜は、福井城址近くのホテルに宿を取った。
知人はブログに「ホテルの窓からは福井城跡のお堀と石垣が見える」と書き残しており、僕もまた、おそらくそのホテルであろう場所を探し当て、宿泊することにした。ホテルのフロントで、彼の写真を見せて「この男性が泊まったことはないか」と訪ねてみたが、記憶にあるともないとも分からないような曖昧な表情を返された。ここでも芳しい反応を得ることはできなかった。
彼の辿った旅のルートをなぞってみても、僕にはまだ、何も分からなかった。

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