2010年10月17日

【展】古賀春江の全貌

仙台日帰り遠征で使ったウィークエンドパスがもったいないので、神奈川県立近代美術館の葉山館まで「新しい神話がはじまる 古賀春江の全貌」を見にいってきた。
JR横須賀線で逗子駅まで。そこから京急バスに揺られて、葉山の海岸に立つ美術館へ。ここに来るのは3年ぶりくらいだろうか。

古賀春江01

古賀春江(1895-1933)といえば、この看板にも使われている《海》(1929)という作品を、まず思い浮かべる。
シュルレアリスムに接近した古賀春江が、雑誌の図版や絵葉書の図柄を寄せ集め、モンタージュ的な手法で描いていた時代の代表作だ。《海》は東京国立近代美術館の所蔵作品なので、何度も見たことのある親しみの作品であり、それゆえに、古賀春江=シュルレアリスムの画家というイメージを持っていた。

古賀春江01
(これは東京国立近代美術館での展示風景)

しかし、この企画展では、古賀春江の画壇デビューからの画風の目まぐるしい変遷を辿り、また、詩作も欠かさなかった彼の詩人としての一面にもスポットを当てる。画業と詩作は密接にリンクしている。
第一章「センチメンタルな情調」では、水彩画を中心とした1910年代の作品。
つづく第二章「喜ばしき船出」では、キュビズム的な志向の作品の数々。我が子の死産に想を得た《埋葬》(1922)など、水彩画時代から一転して画面は暗色に埋め尽くされるが、その経験を乗り越えるように、詩《喜ばしき船出》を発表すると同時に、《誕生》《生誕》(1924)といった画を描き、それはあたかも自分の生まれ変わり(rebirth)を高らかに宣言するようでもある。
第三章「空想は羽搏き」では、写生から一転して空想の世界へ、クレーやシャガールに影響を受けたような画風で、古賀春江自身が言うところの“でたらめな画”へと転換する。子供の姿を画面に多く登場させるといったような、童心への回帰や牧歌的な印象を強めていく。
そして第四章「新しい神話」へ。わずか38歳で夭折した古賀春江が、最晩年に辿り着いたシュルレアリスムの画風は、古賀春江という画家の個性を強烈に印象付ける。《海》をはじめ、《鳥籠》(1929)《窓外の化粧》(1930)《単純な哀歌》(1930)といった大作が描かれていく。しかし、古賀春江が病身で仕上げた作品《サーカスの景》(1933)は、他の作品と想を同じにしながらも、輪郭線の定まらない動物たちの画は、ものすごく痛々しくもあるのだった。

この企画展のタイトルにもあるように、古賀春江の“全貌”を紹介しつつ、既成のイメージから解き放たれた彼の“新しい神話”を立ち上げるという意味で、とても見応えのある展覧会だった。

古賀春江02

美術館の裏手は、葉山の海岸。

古賀春江03

少年が父親と釣りをしていた。

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