2010年12月17日

【展】麻生三郎展

東京国立近代美術館の「麻生三郎展」へ。この美術館の所蔵作品展ではお馴染みの麻生三郎だけれども、こうしてまとまって作品を見るのは初めてのこと。いやいや、すごい、これほどまでにひとつの筋が通った力強い画家であるとは思わなかった。
戦時下で描いた背景の黒い肖像画、戦後1950年代の赤い空シリーズ、さらに時代を下って「ある群像」といった作品を追い、その画風の変遷を辿っていくと、初めは人間の姿であると認めることができた人物たちが、やがて背景と混濁し、具象が抽象になっていく。しかし、その中にあっても、麻生三郎の描く人物の多くが、二つの足で立ち、こちらを見据えている。時には目だけがこちらを凝視しているのを感じる。
風景が人物を呑み込んでいく様は、急速に変貌を遂げる戦後の日本において、社会のシステムが人間を解体していく歪みや矛盾の危機感の表明であったかもしれない。しかし同時に、それでも二つの足で立ちつづける人物の意志がキャンバスに漲り、解体と屹立が拮抗する緊張感は、「鳥肌もの」という表現も決して大げさなものではなく、目を釘付けにされてしまった。
「柱のような人物が描きたい」というのは麻生三郎自身の言葉だが、その信念は最後まで揺らぐことがなかったようだ。

所蔵作品展も、これまた興味深い作品が並んでいた。
村山槐多が2つ、佐伯祐三が3つ、藤田嗣治が3つ、松本竣介が2つ…などなど。日本画からは徳岡神泉の抽象的な「刈田」や、片岡球子の異様なパワーが漲る「渇仰」など。
それから、長谷川利行の新発見作品「カフェ・パウリスタ」(1928)を含むミニ特集コーナーも良かった。
さくっと見るつもりが、つい、長居してしまった。

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