久しぶりの千葉市美術館は、5月20日で会期終了を迎えた
「蕭白ショック!!曾我蕭白と京の画家たち」。
千葉市美術館の江戸絵画関連の企画展は、本当に面白いです。“蕭白ショック!”というネーミングが、また、いいじゃないですか。
前期と後期で大幅に展示が入れ替わるということで、本当は2度行きたかったのだけれど、千葉なのでちょくちょくと足を運べないこともあり、
《群仙図屏風》や
《美人図》《唐獅子図》などの出品される後期を選んで足を運んだ。
展示会場は三章立て、「蕭白前史」「蕭白」「同時代の京画壇の人々」という構成。蕭白については「登場」「高揚」「円熟」と、年代ごとに三部に分けて紹介。
「蕭白前史」では、蕭白の師ともされる高田敬輔(画風に共通点があるものの裏付ける資料はない)や、敬輔の弟子である月岡雪鼎らを紹介。雪鼎の肉筆美人画は、女性の体を赤い線の輪郭で描いており、これは蕭白にも共通する手法。蕭白が敬輔の門下であれば、当然、雪鼎ともつながりはあっただろうし、であれば、こうした画の技法の共通点も頷ける…といったことを考えなら、前史を眺める。
そして、蕭白ワールドへ突入。
描き込まれた鷹と、簡略化された背景の対比が印象的な
《鷹図押絵貼屏風》。木にとまった鷹が水の中に映っているのも面白い。鷹の画は、蕭白が名乗る曾我派のお家芸的な画題。若き日の蕭白も鷹の画をせっせと描いた。画に変態的な要素は薄いけれど、蕭白はすでにテクニシャンだった。
おどろおどろしいまでの
《寒山拾得図》は、画題としてはポピュラーなものだけれど、奇怪さでいったら蕭白のこれがナンバーワンだろうか。拾得の手にした箒はあまりにも重厚すぎて、箒ではなくて武器のようにも見えてしまう。
それから、あどけないはずの子供の画が気色悪い
《群童遊戯図屏風》や、超絶テクニックで変態ワールド全開の
《群仙図屏風》、手紙をびりびりに破いた裸足の女を描いた
《美人図》の薄気味悪さなど、一筋縄ではいかない作品が目白押し。もうおなかがいっぱいである。
巨大な
《唐獅子図》は、荒々しい筆で描かれた即興画のようにも見え、落款の文字も酔っ払ったようにヘロヘロなのであるが、これほどまでに大きな画の出来上がりを、蕭白がどのようにイメージしながら描いたのか、興味が尽きない。下書きもなく、一気呵成に描いたのだとしたら、蕭白こそ、江戸時代に出現した唯一無二のアクションペインティングの先駆者ではなかろうか…とさえ思えてくる。
そう、こんなに面白い画家は、洋の東西を見渡しても稀有な存在なのである。
そんなことを再認識して、あらためて蕭白ショックを受けたのでした。