2018年サマーツアーとストラトキャスター

酷暑に大雨、台風、そして地震、本当に大変な2018年の夏。被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞を申し上げます。

そんな大変な日本全国を駆け抜けた、渡辺美里さんのサマーツアー。昨日、無事に大阪ファイナルを終えました。みなさん、ありがとうございます。

今回、僕は初参加ということもあって、 演奏自体もそうだけど、楽曲に合ったギターの音色を作ることに苦心しました。

リハーサル途中で一度、ツアー途中にも、アンプを入れ替え。ギターから最初に出るシールドは、4種類から日替りで試して決定。テレキャスターのコンデンサを、値の小さいものに交換。各エレキギターに、ハイパスコンデンサ取り付け。本番中に音が出なくなったレスポールの、ピックアップ、ポット類全交換。エフェクターは、ピッチシフターをフランジャーに交換。アコギのブースト用に、フェイザー追加。アコギも、ツアー途中で一本交換。。

長いツアーですから、トラブルも起きますし、楽曲の理解度も増してきて、もっとぴったりの音を出したくもなる。楽屋で半田ごてを握る姿に、バンドメンバーが心配そうな眼差しで見守ってくれたことも。

一方、僕はツアーで移動時、必ずギターを1本持ち歩きます。今回はダンカンのストラトキャスターでした。

62E0FC6E-4E7E-465A-9A58-F5FCFB50227Dこのギターは、学生の頃に買った、初めてのストラトキャスターで、以来幾度もパーツ交換を繰り返しながら、使用し続けて来ました。ピックアップをH-S-H配線にしたり、ネックを細くて平らなものに交換した事も。結局今は、オリジナルの極太トライアングルネックに戻して、ピックアップはフェンダーFat 50’sに。元々ボディはホワイトだったんだけど、Superflyで使うとき、ロン・ウッドのストラトを参考にして、サンバーストにリフィニッシュ。正統な50年代ストラトキャスターの風貌に収まりました。

実はこのギター、フレットの打ち替えを、当時ダンカンのギターを作っていた、リペアマンの志村さんにやってもらいました。弾きこまれて傷だらけのこのギターを、我が子のように、優しく見つめる志村さんの表情がなんとも忘れられません。

今回のツアーでは、名曲「Eyes」で使用。Big Muffにディレイを深くかけてソロを弾けば、もう気分はデヴィッド・ギルモア!最高だったなぁ。

ではみなさん、またお会いしましょう!



 

Go to the Sea

みなさんこんにちは。今年の夏どうお過ごしですか?
異常な酷暑で倒れたり、台風や大雨などの深刻な被害に会われた方もいらっしゃると思います。
僕はというと、渡辺美里さん全国ツアーの真っ最中。その間をぬって、SuperflyやBONNIE PINKで夏フェスに参加したりもしています。
そんなある日、The Uranusでいつも英詞を監修してもらっている木村リサさんに、7月にリリースした新作「Go to the Sea」についてインタビューしてもらいました。
すでにアルバムを聴いた方も、まだこれからの方も楽しめる内容になっています。

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The Stories Behind “Go to the Sea”

木村リサ
The Uranus 歌詞監修者

 

The Uranus4年ぶりの、そして初のフルアルバム『Go to the Sea』をこの夏ついにリリース!今回、リーダーの八橋義幸さんに制作話を伺いました。夕方待ち合わせの喫茶店に着くと、八橋さんはもうビールを飲んでいて(笑)。終始リラックスムードで話が進みました。

 

——初のフルアルバムですね。新曲はまとめてではなくて、周期的に書いてきた印象です。

一昨年くらいは『Can You See the Spire? 』をタイトルにした5曲入りのミニアルバムを構想していた。最低56曲あればストーリーは作れると思っていて。でもそれだと、やっと気持ち良くなったところで終わってしまうのが勿体ない気がし始めて。そこから「適切な長さってなんだろう」と考えて、追加で4曲作りました。

 

——そのあと時間かかりましたよね?

去年の秋に今のタイトルに決めて、夏に出すイメージを固めた。それで今年の始め頃かな、まず全曲の仮ミックスを作って、一旦生音にそぎ落とすという作業をしました。ちょっと距離を置きたくなって。しばらくしてから、必要な音と無駄な音を選り分ける作業を始めた。だから結構手間と時間がかかっています。

 

——曲作りはどんな順番で?

まずコードを作って、次にメロディーを乗せることが多い。歌詞は大体最後。メロディーが出来た時点で自分なりにアレンジの方向は見えている。そこでメンバー3人(ベース岩崎なおみ、ドラムス西野真純)が集まって、演奏してみる。でその時に、二人が楽しんで演奏してくれるかなと、こっそり観察するんです。良い曲だったら楽しそうな表情だし、ダメな曲ならそんな感じ(笑)。これすごく大事。つまり僕は、二人を信頼のおける音楽評論家、リスナーとして信頼していて、だから確実に二人のフィルターを通り過ぎたものがThe Uranusの楽曲として残る。まあ、意見が合わないときも偶にあって、そんな時は個別に相談したりするけど。。

 

——新作のタイトルはどうして『Go to the Sea』に決めましたか?

アルバムの軸になっている「Can You See the Spire?」の中に“Come walk to the sea”という歌詞があるけど、海ってちょっと特別な場所だと思う。例えば免許を取ったらまず海に行くとか、遠くに海が見えた瞬間にハッとしたりする。海って何かを思い出させられる気がするんです。僕が育った場所(富山県)も海が近くて、夏休みに自転車で海岸沿いをどこまで行けるか、ひたすら走った想い出も。あと『進撃の巨人』を読んだら、誰も海を見たことがない設定で「海を見るまで頑張るんだ」みたいなくだりがあって、いいなあ、、と。Walk to the SeaではなくてGo to the Seaにしたのは、力強くて良いと思ったから。

 

——ジャケットは外国の海をモデルにしていますか?

タイトルを決めてから、実際に国内の海を見に行って、何パターンか下書きした。でも結局、海外の北の国を旅行したときに見た海に落ち着いた。ところが最初、色を少し明るく塗ってしまい、沖縄の海みたいになって(笑)。「これは違う!」とどんどん上から暗い色を重ねて、結果油絵みたいな質感にしました。でも実際はアクリルと水彩絵の具、クレヨンや色鉛筆など、どこでも買える画材を使っています。

 

——The Uranusはスリーピースバンドですが、「3人」にこだわりはありますか?

もちろん!基本的に僕らは、シンプルなバンドサウンドを大切にしている。隙間のある音楽が好きだし、音数が少ないと曲に力強さがあるかどうかがシビアに分かる。だからライブでは3人がベストな編成。でもレコーディングはちょっと違って。勢いで一発録りしてそのまま出すやり方は、自分は聴いていてちょっと疲れるんです。曲や歌詞の世界に最適な音色、アレンジを探す作業は、作品に立体感をもたらしてくれる。だからレコーディングは3人のフォーマットにとらわれずに考えたい。まあオーバーアレンジも良くないし、バランスが難しいけど。

例えば打ち込みはデモでは使うけど、僕の場合は大体生楽器を想定したもの。それが本物の音に変わっていくとすごく嬉しい。特に今回のアルバムはエレキ・ギターのプラグインを使わず、実際のアンプの音を使うことにした。自宅スタジオでギターを録るのは難しいけど、やはり本物のアンプの音に置き換える過程は楽しかった。

改めて振り返ると、今回の『Go to the Sea』は、予算のせいでやりたいことができなかった、ということは一切ない。そもそも僕は、低予算でも、曲や歌詞といった骨格がしっかりしていれば良い作品ができると信じている。音の装飾は、工夫次第で。

 

——ではここから各曲振り返りましょう。

 

1. Can You See the Spire?

Spire(尖塔)は、ダブリンにあるThe Spireという、待ち合わせ場所として馴染みのある建物から。歌詞のテーマは開放、報われるということ。実はこの曲が一番アレンジで迷って、何パターンも作り直した。色んな楽器を入れたいなと思って、たくさん足したけど、そこからすごく間引いた。一体何時間費やしたか分からない。これが固まらなかったから、アルバム完成まで時間がかかったのもある。The Uranusには珍しく、明るく、前向きな楽曲。ド・レ・ミ・ファと駆け上がるファズ・ギターも聴きどころかな。

 

2. A Family Tale

E-bowの音がさりげなく彩りを添える。会えなくなった家族の切ない話。なおみちのキッズ・コーラス、マー坊のマレット・タムはThe Uranusのトレードマーク。

ソロライブではよく終盤にかき鳴らしていたけど、喪失感がテーマだから、怒っているというより寂しさや哀しさ、理解し合えなかった悔しさが吹き出る感じ。相手だけではなく、自分に対しての鎮魂歌でもある。

 

3. Guardian

歌詞は優しく見守っている風でありつつ、2コーラス目の“I know the secrets in your eyes(君の目に潜んでいる秘密を知っている)” あたりから内容がダークに。日本人は皆、ご先祖様が背後霊についていて、自分を守ってくれていると思っているんじゃないかな。でも逆にもし悪いことをしたら、それも見られているから気を付けないと。お盆の季節にぴったり(笑)。

12弦アコギとリバース・ギター(逆回転)はどうしても入れたかった。リバース・ギターって違う時間軸の存在を想起させる。古典的な技だけど、世の中のエフェクトで一番面白いかも。

 

4. Teenage Dream

今では音信不通になってしまった、10代の頃の友人に思いを馳せる曲。世の中に応援ソングはたくさんある。でも、頑張ったけどだめだった人も当然いるわけで、軽々しく「頑張れば夢は叶う」とは言えない。ただ、「あの頃はキラキラしていたね」という事実はある。だからなに?って感じるだろうけど、必ずしも答えや、オチがなくても良くて、10代の夢多き無垢な瞳を思い出す、それだけで良いんじゃないかな。後ろ向きか前向きか分からないけど、そういう幸福な時期があったのって素晴らしいこと。

この曲のストリングスは、室内楽っぽく、弦楽四重奏がバンドに寄り添って演奏するイメージで土屋玲子さんにお願いしました。

 

5. Sway and Rock

これはラップスチール・ギターを使用。去年買ったペダルスチールはまだ使いこなせなくて(笑)。この曲を書いたのは2016年の夏で、リオ五輪の影響が少しあったかも。勝者より敗者のことを考えた。テーマは再生、復活。頑張りすぎてダメになっちゃった人に「ゆっくりしていいよ」と優しく語りかける。こういうことを歌うというのは昔からのテーマ。

こういうオーセンティックな演奏をしてもらうと、マー坊、なおみち二人のポテンシャルが発揮されて面白い。

 

6. Banished

Sway and Rockのムードから一転、ヘビーなイントロ。次の「Discharge It」と合わせてロック・コーナーの始まり。

メンバーには「AC/DCNine Inch Nailsを合体させたようなサウンド!」と説明したけど、2人ともまったく理解ないまま演奏開始(笑)。すると、「絶対フィルは入れたくない」とマー坊は主張するし、なおみちは「すごく歪ませたい」と言い出して予想外の方向へ。この曲が一番早く録れるかと思ったら、一番時間がかかった(笑)。

歌詞は自分のことを歌っていて、「追っかけ、追われて、そのうち死んで忘れ去られる」という内容。ギリシャ神話で、「絶対に獲物をつかまえる犬」と「絶対つかまらない狐」が追いかけっこしているうちに星座になっちゃったという話からヒントを。ちょうど『Twin Peaks The Return』を見ていた頃で、そんな映像が何度もフラッシュバックした。

 

7. Discharge It

毒や嘘など、あれもこれも「排出してしまえ!」。作曲が恐らく一番早かった。最初は原始的で、2パターンを繰り返すだけの曲だったけど、3人のライブで温まって今の構成に至った。多分スリーピース・バンドで一番やりやすい曲。それであらかたは出来上がっていたけど、まだ何か欠落している気がした。より重厚さが欲しくて、足すとしたら何だろう?と考え始めて。昔からロックバンドにホーンズが入るのが好きで、最初はビートルズっぽくチューバとホルンか?でも重厚と言えば、何はともあれバリトンサックスとトロンボーンだろうな、と。それで村瀬和広くんと伊藤隆博さんに遊び半分で来てもらった。1回は譜面通り吹いてもらい、せっかくだから、「ジョン・コルトレーンやオーネット・コールマンのような変態なことやって下さい」「豚が泣き叫ぶみたいな音で」とお願いして、イントロとアウトロは即興で飾ってもらいました。12テイクだったかな。録音した瞬間としては一番楽しかった。

 

8. Monologue

内容はもう覚えていないけど、高校の時に読んだ『狂人日記』の独白(モノローグ)がイメージ。日常がうまくいかなくて喪失感が続いた時、人はどうするのだろう。それに苦しむ人が、ある日屋上に上ったら、どこからか同じような狂人の声が聞こえてきたっていうシチュエーション。そこでその人は飛び降りるかもしれないし、救われるかも知しれない。自分でもこれは分からない。映画「バードマン」で主人公が最後に窓から飛んでいくシーンがあるけど、あれは飛び立ったのか、飛び降りたのか。。最期の瞬間に人が何を思うのかなって考えると、この世の中は不思議だな、ってことくらいしかないんじゃないかな。なかなか人に理解されない視点だとは思う。

土屋さんに「オーケストラが大きな音楽堂で演奏するイメージ」とお願いして、アウトロを壮大に仕上げた。狂人の頭の中で鳴っている音だから(笑)。確か第1バイオリン6、第2バイオリン4、ヴィオラ4、チェロ4という編成で、僕の譜面に沿って土屋さんが全パートを演奏してくれた。最後は行けるところまで広げたいという想いでまとめ上げた。これは僕の出来るストリングス・アレンジの限界(笑)。ギターもベースもドラムもフルで鳴っているから、その隙間を縫って弦を配置するのが難しかったな。

 

9. Evening Dew

ある夏の日の曲、場所は特定されず。日本のサラリーマンにも当てはまるかも。汗だくで1日中歩いて疲れ果てた男が、ふと夜露に癒される。

夏の夕暮れに見える光のコントラストやキラキラ感を演出したくて、リバースディレイやループを使った。途中タイコの「ドンドン」と打つ響きがThe Uranusっぽく、しつこく繰り返される。曲そのものは素朴で短い。アルバムの締めくくりとして、聞き手に「ありがとう」という気持ちで。ホッとして、現実に戻ってもらえるような終わり方にした。

 

 

あとがき

歌詞はどれも完全な作り話ではなく、基本的に私小説的。だから「解説するのは恥ずかしい」と、話している中で八橋さんは何度も言っていました。曲は世に出れば独り立ちし、聞き手が自由に解釈すれば良いので限定したくはないとも。しかし、今回のアルバムも聞き手を癒し、励まし、浄化させる力があると私は思っていて、これを皆さんにも存分に味わっていただきたいと願いを込めて、本記事をまとめることにしました。

私はThe Uranus2枚目のアルバム『Nord』(2012年)からお手伝いさせてもらっていますが、不思議だと思う歌詞について問いかけると神話や歴史などの話になることがたびたびあり、八橋さんの広い知識や見識によく驚かされてきました。圧倒的なサウンドもさることながら、The Uranusの世界は深く面白い。


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マンドリン・ブラザーズ

みなさん、こんにちは。 関東の梅雨明けと同時にThe Uranusの新作「Go to the Sea」がついに完成。リリースライブも盛況に終わり大成功。やっと一息つけるかなと思ったら今度はCDの初期出荷ロットに不具合が。。うーむ。この新作、制作にもなかなか時間がかかったんですが、最後の最後まで一筋縄ではいきませんねー。(不具合のお知らせはこちらです。)

さて、今回は2本のマンドリンをご紹介します。アリア・エレクトリック・マンドリンとギブソン・マンドリン・タイプA-1。 IMG_0373

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もともとマンドリンはイタリア生まれのクラシックの楽器で、19世紀末ギブソン社が底面の平たいフラットマンドリンを開発。カントリー、ブルーグラスの花形楽器として人気が出ました。ロック、ポップスでも良く使われて、ジミー・ペイジが弾くような、民族的な雰囲気が僕は好きです。アンサブルの中で特徴的な音色が欲しい時に持ってこい。チロチロとトレモロでメロディを弾くと、たちまち泣きたくなるような郷愁感を誘います。

上の写真はアリア・エレクトリック・マンドリン。プロデューサーの松岡モトキさんからお借りしているものです。これまでBONNIE PINK「Heartbeat」、Superfly「Wildflower」、絢香「繋がる心」といった曲で使用してきました。マグネットとピエゾのデュアルアウトで、ライブでもバッチリ使えます。

そして最近手に入れたのが下の写真のギブソン製マンドリン。1923年製ですから、もう95年前のもの。スネークヘッドと呼ばれる小さなヘッドが特徴的。エボニーの指板とブリッジ、透き通る鼈甲柄ピックガード、そして漆黒に塗装されたスプルースのトップ。音色も気品があって美しく、音量感もたっぷり。

この二本のマンドリン。形が似ていて、どちらもAタイプと呼ばれます。アルファベットのAの文字に似てるからかな。一方Fタイプというのもあって、そちらは ゴージャスな作り。Aタイプは素朴な見た目ですね。 

ところで今回の記事のタイトル、マンドリン・ブラザーズとはニューヨークにある楽器屋の名前。マンハッタンから自由の女神を横目にフェリーで渡る、スタッテン島にあります。スタッテン島はイタリア移民が多い場所。その名のとおり、ヴィンテージ・マンドリン/バンジョーなどの素晴らしいコレクションを揃える有名店で、20年ほど前に松岡さんと一緒に訪れたことがありました。その時は良く価値も分からなかったし、何も買えなかったけど、アメリカの楽器屋は凄いなーと思ったのを覚えています。懐かしいな。

さて、今僕は渡辺美里さんの全国ツアー「M・Evolution Tour 2018」に参加中です。美里さんの曲はニューウェーヴ・ギターのエッセンスがたっぷり。あの時代のバンドに参加しているような錯覚を起こしながら演奏できて、とても楽しいです。そしてこの夏はSuperflyでも何本かフェスに参加できそう。Revolutionな夏。頑張ります!


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