小指の約束

みなさんこんにちは。先日ついにあいみょんFCツアー「PINKY PROMISE YOU」が無事終わったので、今回はそのツアーレポートを書こうと思う。

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昨年末からNHK Songs、紅白歌合戦と良い雰囲気でリハーサルに突入したけれど、その初日の東京は大雪。機材を運ぶのもままならないスタートだった。

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でも「ミートミート」や夏フェスで熟成したメンバーたちは家族のような仲。ちょっとレアなセットリストもスムーズに完成していき、初日の立川公演を迎えることができた。

今回の目玉はアコースティック小編成コーナー。メンバー二人ずつ組になりあいみょんと三人での演奏。その中でもハイライトは「森のくまさん」でドラムの伊吹が演奏したマリンバ。エレクトーンや様々な打楽器を演奏してきた彼の真骨頂。とても素晴らしい演奏だったよ。

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地方に出てからは、なかなか自由に街を歩くこともできなかったけど、それでも懐かしい人に会えたり、美味しいものをちょっと食べたりして、ツアーの楽しさを思い出すことができた。 博多のホテルは海の見える部屋だったから和んだなあ。

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初日のドキドキから始まって、回を重ねる度に演奏も演出も少しずつこなれていくのが長いツアーの良さ。 そして感動のファイナルを迎えた時の充実感も素晴らしいもの。

そのファイナルの広島公演。朝楽屋で出迎えてくれたあいみょんは、なんと全身広島東洋カープのコスプレ。そのままサウンドチェックをして大いに僕らを笑わせてくれた。

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各地のファンの皆さんが、自前でプラカードを作ってきてなんとか盛り上げようとしてくれる。それに丁寧に応えようとするあいみょん。本当に小指の約束を大事にしているからだね。だからこそ、どの曲でもグッと泣ける魔法のような瞬間があるのだろう。

さて冬が終わって春になれば、いよいよ全国を周るアリーナツアー「ま・あ・る」が始まる。ファンの皆さんまたお会いしましょう。お楽しみに! 

Drums, Guitars, & Ghosts インタビュー2

先週に引き続き、FMとなみ梶原さんによるインタビュー後編。

毎回思うのだけど、自分が喋った内容が文字になると、その瞬間の思考の過程が浮き上がってきて客観的に面白い。これもインタビュアーの梶原さんが上手だからだろうな。みなさんも楽しんで欲しい。

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FMとなみ「Made of Music」 

パーソナリティ梶原徳行

後半 放送日2021年11月10日~


梶原:こんにちは。「Made of Music」梶原です。今回は、前回に続きまして、高岡市出身のギタリスト、八橋義幸さんのセカンドソロアルバム『Drums, Guitars, & Ghosts』のインタビューをお届けします。ちなみに前編では、アルバムの成り立ちをお聞きしていました。松原“マツキチ”寛さんからドラムトラックだけが送られてきて、そこに八橋さんが曲をつけていったところ、とても楽しかった、ということで張替智広さんにもドラムを頼んで、そのパターンを聞きながら、ドラムトラックを聞きながら楽曲を作っていった、というお話を先週伺っています。先週はアルバム12曲のうち1曲目から6曲目を手がけられた松原さんと張替さんのお話を聞きましたので、今回は後編ということになります。それではお楽しみください。


梶原:では次の楽曲の紹介をお願いします。

八橋:では3番目のコーナーのドラマーはマシータ。お送りするのは「Disappeared」です。
 

♪「Disappeared」
 

梶原:八橋義幸で「Disappeared」を聴いてもらいました。ドラムは元BEAT CRUSADERSマシータさんですね。このドラム、ずばり。

八橋:ずばり。

梶原:ボンゾというか。ジョン・ボーナムですよね、これ(笑)。

八橋:(笑)そうなんです。マシータは本当にボンゾファンでいつも巨大なバスドラムを持ち運んでいる、というのは知っていましたけれど。マシータにこの話をしたときにすごい喜んでくれて。で、最初に届いた曲がこのドラムの音だったんですね。予想はしていたけど、予想を上回るレッド・ツェッペリン具合で(笑)。

梶原:そうですよね(笑)。最初のドラムでもう、「あ、ボンゾ!」

八橋:最初のフィルでもう、そうですよね。音色からフレーズから。あまりにもツェッペリン過ぎたので、どう返そうかなと。そこは一回ちょっと考えたんですよね。そのまま返しても、やっぱり何かを組み合わせたいなと思ったところに、このソリッドなドラムにちょっとロマンチックな、ムーディーな、そしてエモーショナルなメロディーを乗せるとどうかな、というふうに考えて作り出したことを覚えています。
そしてサウンド的にはレッド・ツェッペリンというよりも、90年代My Bloody Valentineであるとか、Dinosaur Jr.であるとか、歪んだギターが壁となって、シューゲーザーとまでは行かなくてもいいんですけど、そういうバランスに仕上げると新しいものができそうだなと思って作り上げた曲です。

梶原:確かに。ギターソロもこの曲は結構印象的だなと思って聴きました。

八橋:そうなんですよ。ギターソロは僕と、あと参加してくれた真壁陽平とかわりばんこに弾いています。真壁がまた最高のギターソロを弾いて返してくれたのでね。

梶原:これ、ちなみに最初、わりとオーバードライブのメローめなソロから、J・マスシスみたいなファズっぽいギターになっていますけど。

八橋:そうですね、ファズギターに変わっていますね。

梶原:これはどちらがどちらで?

八橋:前半は僕です、で後半が真壁陽平のギターソロ。

梶原:ちょっと弾きまくりな感じですね。

八橋:弾きまくりな。そうですね。ちょうどエドワード・ヴァン・ヘイレンが亡くなったのが去年かな?

梶原:去年ですかね。

八橋:真壁がエディに影響を受けているので、色々なところでエディ風のプレイをしてくれていましたが。なんと、うちでもね。最近あいつに会うと「真壁」とか「陽平」とか言わずにエドワードと呼んでいます(笑)。「もうエドワードはやめて下さい、卒業しました」と毎回返してくるんですが、僕はしつこくエドワードと呼んでいます(笑)。そういう二人のギターの対比もとても楽しめるかなと思います。
そして実は楽曲のスケール的には、そのレッド・ツェッペリン感をしっかりと取り入れている箇所があって。音楽用語的にいうとリディアン・スケールという、4度の音が♯するとう、そこでリフを一瞬使っている。僕もやっぱりレッド・ツェッペリン大好きなので、それを組み合わせています。

梶原:なるほど、ちょっと「Kashmir」っぽい感じの。

八橋:そうですね。「Kashmir」っぽい、その部分です。

梶原:ここにツェッペリンが込められているなと思いながら聴いていたんですけれど(笑)。

八橋:(笑)ちょっとは込めないとね、マシータに怒られそうだから。

梶原:せっかくここまでボンゾで来てくれたのに、返しが全部外されると。ちょっとここでジミー・ペイジが顔を出すと嬉しいという。

八橋:そのジミー・ペイジの「Kashmir」的なリディアン・スケールは僕が大好きで。実はいろんな楽曲に多用しています。

梶原:例えば?ちょっと私分からないですけれど。

八橋:例えば僕のThe Uranusのファーストの1曲目の「Iron Age」はもろ、そうですし。「Relight It」もそうですね。リディアン入っていますね。

梶原:これはソロに使うということですか?

八橋:いや、楽曲の基本的な和音感、和声感、旋律感みたいのを決めるときにあえて積極的にそのリディアンを使うように僕はしていますね。

梶原:八橋さん印というか。

八橋:まあ印というか、好きでどうしてもそのパターンに行っちゃうということですけど。

梶原:なるほど。まあ、マシータさんは「Disappeared」、8曲目「The Door」9曲目「Needle of a Compass」、この3曲をドラム提供されているということですね。僕は「Needle of a Compass」結構好きで、スチュワート・コープランドを彷彿させる。

八橋:そうなんです。マシータにドラムを頼むときに、マシータは「3曲目はちょっと困った、どうしよう」と言ってきたんです。「じゃあ、ボンゾの音でスチュワート・コープランドのフレーズを叩いて送ってくれ」とオーダーしたんです。

梶原:まさにそんな感じ。マシータさんのドラムにも色々刺激、インスパイアを受けての3曲でした。次は10、11、12と最後のゾーンに入ってきましたが、ご紹介お願いします。

八橋:はい、4番目、最後のドラムを務めるのは伊藤大地、お送りするのは「Sacrifice」という曲です。
 

♪「Sacrifice」


梶原:八橋義幸で「Sacrifice」を聴いてもらいました。このドラムは伊藤大地、「好きでこの人に頼もうと思った」という。

八橋:そうです。4人目どうしようかなと思っていて、ずばり叩いて欲しい人に頼もうと思って、頼んだのが伊藤大地でした。

梶原:ご一緒にやられたことは?

八橋:大地くんとはBONNIE PINKバンドで一緒になって、そのあとレコーディングで一緒になったり、Superflyに一度叩きに来てくれたり。やっぱりそのビートが大好きだったのでお願いした次第ですが。

梶原:この曲はどのような構想で?

八橋:これはですね、大地くんが送り返してきてくれた3曲がとてもダイナミックで、結構いろんな仕掛けがあったんですよね。ドラムだけで勝手に止まっていたりとか。この曲本当にそうなんですけれど。

梶原:いわゆるキメみたいのが。確かに、この曲止まっていますね。

八橋:キメみたいのがたくさん。止まっているんです。まあでもこのビート感を最初聴いた時に、思い浮かべたのがデヴィッド・ボウイの「Modern Love」ですよね。あの曲は僕どうしても1年に1回大音量でかけたくなることがあって。映画の『汚れた血』とかにも使われていたのでそういう印象がすごくあるのかも知れない。青春というか、焦燥感というか、疾走感というか。それを思い出して。でもこの曲ところどころ止まるな、どうしようかなと思った時に、アコギだけのデモで、とても明るい曲のキャッチーなフレーズのやつがあったので、それをはめて、その止まるところとかに合わせて編集したり、みたいな作り方をしたのを今思い出しました。

梶原:わりと80年代っぽいスクエアな感じというか。

八橋:がっつりスクエアな、this is 8ビートという。

梶原:そうですよね。さっきのいわゆるモータウン的な弾むリズムとはまた対極にきていて。それもまた同じアルバムの中で振れ具合の違いが気持ちいいなと思って。

八橋:順番にドラマーそれぞれ頼んでいるので、「やつとやつはこう叩いていたよ、ちなみに」というふうに一応みんなに、「聴いても聴かなくてもいいけど」と。だから多分かぶらないように(笑)選んでくれているところがあるかも知れませんが。

梶原:リズムの豊富さというか多彩さも。まあもともとドラムから作っているからそうだとなりますが。そこがまた面白いですよね。僕は2000年入ったくらいだったかな。ストロークスというニューヨークの。あのバンドの曲にもちょっとストップするところなんかも特にそんな感じがして。

八橋:そうですね。ストロークス的な明るいギターポップ、ギターバンドもやっぱり大好きで。この曲はそうですね。あとBroken Social Sceneというカナダの大所帯ロックバンドがあるんですが、これもちょっとイメージしましたね。素朴な音だけどモダンで広がりがあって。

梶原:そしてこの曲もホーン入っていますね。

八橋:そうですね。この曲はトロンボーンが。湯浅佳代子が重ねてくれたんです。デモの時点でトロンボーン1本だけ入れていたんですけど、彼女はホーンアレンジメントがとても上手なのですぐに複数のトラックを重ねて送り返してくれて。そのやりとりもとても楽しかったです。

梶原:これもやっぱりホーンが入ってくると気持ちいいな、と思います。

八橋:ホーンが入ってくると、感情がどーっと開くというか、涙があふれ出すというか。そんな効果がある気が、僕がしていて。まさに80年代のデヴィッド・ボウイとかブルース・スプリングスティーンとか佐野元春さんとか(笑)、必ずホーンが入っているみたいな時代がありましたけど。

梶原:厚さが、こう。

八橋:そうなんです。ホーンの力、魅力、魔力というかマジックというか。それに今回結構助けられているような気がしますね。

梶原:もちろんドラムとギターの絡みと音の良さもすごくあるんですけど、そこに1色、すごくいい色が。

八橋:1色付け足すには、そうですね。

梶原:noteラジオで伊藤大地さんが佐野康夫さんに憧れていて、みたいなことを、しなやかなドラムの印象です。

八橋:本当に全身バネのようなドラムを。ドラムを聴いているだけでも気持ちよかったですけどね、実は(笑)。

梶原:そうですよね、隠しトラックでドラムだけというやつも(笑)。

八橋:ボーナストラックつけようかな。

梶原:「ギターだけ」トラックとか。まあ八橋さんのアルバム、概ねそうかも知れないですけど、ギタリストなんだけど、ギターだけぐいぐい「聴け」みたいな感じになっていないところが、これはなんですかね?プロデューサー目線ということですかね?

八橋:そうですね、今回のこの作品全12曲に関して言えば、やっぱりよい曲をというか、3分半のポップスでありたいな、という想いがやっぱりあったのかな。そしていろんな人が参加してくれているし、自分のソロアルバムだけれど自分だけのものでは決してない。ちょっとセッションっぽい雰囲気になってもいいけれど、でもやっぱり楽曲が一番映える姿みたいのもちゃんと追い求めたい。ギターって、僕たまに言うんですけど、本来伴奏楽器なので。そんな頑張ってギターソロで埋め尽くしたりもする曲を、自分が好きで毎日聴いているかというと全然そんなことがないので。そうなんです。ギターは伴奏楽器。というところから、このアルバムは作っているかも知れません。

梶原:今の言葉すごく納得できるというか。ここを聴け-!みたいなギター、なんて言うんですかね。。

八橋:そうですね、「ギターだけ聴いてよ!」みたいなアルバムはね、実は次作に作ろうと思っているんですけど(笑)。今言っちゃった(笑)。

梶原:(笑)楽しみにしています。いや、この抑制された感じがまた「らしい」のかなと思って。

八橋:そうですね。やっぱり普通のギタリストのソロアルバムってあまり好きじゃないんですよね。ちゃんと歌おうとしている人のもののほうが、僕が好きだったりします。どうだろうね。ギターインストアルバムというのは、今回はまったく目指していなかった。

梶原:それは凄く伝わります。音の感触とか全然違うんですけど、僕がわりと好きでよく聴いていたのはスマッシング・パンプキンズのジェームス・イハのソロの1枚目。

八橋:イハ!あれはよかったですよね。

梶原:あの手触りを今回の八橋さんのアルバムに感じて。彼はギタリストでバンドの時はガーっと弾くんですけど、あのアルバムで聴かせたいのは曲という。

八橋:そうですよね。カントリー、フォークが本当に好きなんだなと伝わってきましたよね。

梶原:八橋さん今までアルバムたくさん作ってらっしゃいますけれど、そういった意味でもこのアルバムで、「そっか、こういうポップス、あるいはこういう雰囲気のこの感じ、好きだったんだな」とじんわり伝わってきて。

八橋:そうですね。やっぱり僕が聴いてきたものをダイレクトに、ポップに明るくパッケージする、という各時代のエポックメイキング的な楽曲に憧れた気持ちで。もう本当にその衝動だけで作ったアルバム、という気がしますね。

梶原:はい。八橋さんにはニューアルバム『Drums, Guitars, & Ghosts』から楽曲の紹介をいただきました。今日は本当にありがとうございました。

八橋:ありがとうございました。


梶原:富山のリスナーにメッセージがあれば、ぜひ一言を最後に。

八橋:コロナで帰れなかったので、今回の富山は1年ぶりですが、やっぱりいいところだなと思って。やっぱり立山連峰の景色を見たときに改めて「おっ」と、思いましたね。もう何回も見ていて分かっているつもりなのに。なので素晴らしい富山県に育つことができて有り難いなと思っています。ただ、僕は大人になってから何か変わったな、という気がしていますね。富山はやっぱり北陸で暗くて、田舎で。学生時代、そして大人になってからも東京に憧れる、東京コンプレックスみたいのがずっと持ったまま過ごしていたのですが、最近もう東京も地方も文化レベルがそんなに変わらないような。どこに行ってもみんな綺麗な格好しているし、富山でも街に行けば綺麗なデパートがあったりホテルがあったり。
80年代90年代の昭和の富山を知っているから、こういう「富山から出て何かをやりたい」みたいな、「音楽をやりたい」、
その曇天のもとで聴いて、とにかく「ここから出ていきたい」というような、そんなつもりで僕が育ったと思いますが、今の富山で生活している若者たちはどうだろう、ちょっと違うような。それほど富山がいいところになったのかも知れないのですが。昭和の音楽、育つために必要だった音楽―ロック、ポップス、その時代の僕の視点みたいのがこのアルバムに込められている気がします。富山の今の人はちょっと時代を遡るような感覚、想像、イメージを持ってこれを聴いてもらえると嬉しいな、なんてちょっと思っています。
最近シティー・ポップがあったじゃないですか、今年のキーワードは。でもロックというのはこの時代に必要ないのかと言うと、どこかで必ずリバイバルが来るだろうし。富山の皆さん、だからこそ改めてロックを聴いて欲しいな、と思っています。なんかちゃんと締められなかった(笑)。

梶原:いえいえ、大丈夫です。ありがとうございます。ぜひ八橋さんには頻繁に富山に帰ってきてもらって。

八橋:そうですね。もう近いので、すぐ帰ってきます。

梶原:車や新幹線でパッと帰ってこられますのでぜひ。アルバムリリースの、この豪華なメンバーでライブもやって欲しいな、と。

八橋:そうなんですよね。やりたいんですけどね。あまりに豪華すぎてこれみんな揃えるのが絶対無理だろうなとちょっと(笑)。

梶原:このドラマー4人の予定を合わせるだけで結構大変そうですもんね。

八橋:そうですね。

梶原:でも富山でぜひ八橋さんのギターの音を聴かせてもらえたら、と願っています。

八橋:できるといいですね。

梶原:今日はどうもありがとうございました。

八橋:ありがとうございました。


(♪BG:「Hibernation」)
 

梶原:2週に渡ってお届けしました、八橋義幸さんのセカンドソロアルバム『Drums, Guitars, & Ghosts』についてのお話、いかがでしたけしょうか。とても豪華なドラム4人、そして様々な交流のあるミュージシャンたちの参加を得た素晴らしいアルバムだと思います。このミュージシャンたちのお話は八橋さん自身がMCを務めるnoteラジオで詳しく聞くことができますので、ぜひ八橋さんの『ギタリストはエンジニアだ!』という番組をチェックして欲しいと思います。
そしてアルバムの入手方法ですが、八橋さんのバンド、The Uranusのホームページトップに詳細が記載されていますのでそちらをご覧になって、ぜひアルバムを手に入れて聴いてみてください。
八橋義幸さんの「Hibernation」を聴きながら、今回の「Made of Music」はお別れです。いい音楽を聴いて、素敵な1週間を。「Made of Music」梶原でした。


Drums, Guitars, & Ghosts インタビュー1

みなさんこんにちは。先日発売した僕のソロアルバム「Drums, Guitars, & Ghosts」。コロナ禍ならではのやり取りで生まれた作品であるけど、その内容について今回またFMとなみの梶原さんがインタビューしてくれた。梶原さんは熱心な音楽リスナーであるし、答え甲斐のある的確な質問を投げてくれるので毎回やりとりがとても楽しい。ラジオで聴けなかった方のためにもここで紹介したい。

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FMとなみ「Made of Music 

パーソナリティ梶原徳行

前半 放送日2021113日~


梶原:さて今回のMade of Musicは八橋義幸さんにゲストでスタジオにおいで頂いています。八橋さん、こんにちは。宜しくお願いします。

八橋:こんにちは。今回は直接伺うことができて。

梶原:6月は電話で、でしたけれど。 

八橋:前回は僕の電話の回線が悪くて、すごい変な音で声が録られていたってことに全然気がつかないまま喋って、すみません。なので、今回はスーパークリアな音で。 

梶原:対面してお話を伺えるということで。八橋さん、今回はソロ名義でニューアルバム、セカンドソロということですね。 

八橋:そうですね、ソロだとセカンドですね。 

梶原:『Drums, Guitars, & Ghosts』を11/1リリースということで。今お話にありましたけれど、6月に堀込泰行さんの『FRUITFUL』のプロデューサー・ギタリストとしてお話を聞かせてもらって、今年二回目ということでありがとうございます。

八橋:ありがとうございます。

梶原:改めて、八橋さんのプロフィールをご紹介します。富山県高岡市のご出身。ギタリストとしてあいみょん、SuperflyBONNIE PINK、堂島孝平、堀込泰行、中田裕二等のライブや作品に参加されています。2008年にThe Uranusを結成されて、これまでにアルバム7枚をリリースされています。真城めぐみさんとのYoshiyuki & Megumiやソロでの活動も精力的に行っておられます。2019年にソロアルバム『To Another City』を発表して今作がソロとして2作品目となる。2020年に、noteというウェブサイトを使ったラジオ配信『ギタリストはエンジニアだ!』でミュージシャンやエンジニアを招いて、基本的には機材の話ですかね、中心に番組を作っておられて。

八橋:そうですね、機材のお話を中心に、その人の人生とかコロナをどうやって過ごしていたのかとか、そういう話も含めてやっています。

梶原:まずは、このアルバム『Drums, Guitars, & Ghosts』のリリースおめでとうございます。

八橋:ありがとうございます。 

梶原:このアルバムの制作についてお話を聞いていきたいなと思いますが、いつ頃からどういう経緯でこのアルバム作っていったのでしょうか。

八橋:これはちょうど去年の7月だったかな、ドラムの松原マツキチ寛という、Superflyで僕と一緒に演奏していた友人がある日、いきなりドラムだけの音を3曲、送ってきたんです。ドラムしか入っていないトラックを(笑)。でそれに「八橋、なにかこれにギター乗っけて。」と。彼はやっぱりこのコロナ禍で自由な活動ができなかったので、自宅スタジオに録音機材を揃えて。そこでドラムのサンプルをデモンストレーション用に録音し始めたということは知っていたんですが、いつか自分にも手伝う順番がまわってくるのかなと思っていて、そしたらちょうど届いたのがあの3曲で。3曲と言っても、ドラムしか入っていない(笑)。そこにギターだけ乗っけてセッションっぽく送り返して、こんなもんでいいかな、という風にやる方法もあったのですが、せっかく素晴らしい音で録音されていたので、これをもとにちゃんとした楽曲に作り上げて送り返すとやつも喜ぶだろうなと思って。それでドラムの音を聞きながら曲を作ったんです。
通常こんな作り方をしないと思うんですよ。なので、メロディーもない、コード進行もない、歌詞もない、という状態から、マツキチの場合は3曲作り上げて送り返したら、やっぱり本人もすごい喜んでくれて。ギターだけ返ってくると思ったら全部の音が入って返ってきたと喜んでくれて。で実は僕もその作業がすごい楽しかったです。

梶原:そんな風に作るのは初めて?

八橋:こんな作り方したことないです。一般的にもドラムから作ることはないと思います。

梶原:リズムボックス的にちょっと流していて・・・

八橋:ガイドで、そうですね、流して、それをもとに組み上げていくということはあるかも知れないですけど、フルのドラムキットを録音して、そこからスタートってことは普通に絶対やらないやり方です。

梶原:レアですね。

八橋:レアです。で、そのやりとりはとても面白かったので、ちょうどその頃に同じように録音機材を揃えていたドラマーというのはあと二人ちょうど知っていたんです。それがハリーとマシータだったんです。それで二人に同じように、今度は逆に僕から声をかけて。まず、「自分の好きな、自分の得意なパターンをなんでもいいから録って送って、短くていいから、ワンコーラス分でいいから」と。で、そこから作った曲があれば、十何年前に作ってボツにしていた曲がこのドラムに合いそうだなと思ってはめた曲も中にはある。基本的には同じ作り方をして。
で、最後に伊藤大地。4人目のドラマーをどうしようかなと思った時に、4人目で機材を揃えたやつは知らなかったので、どうせだったらもう、叩いて欲しい人を探そうと思って。で、大地くんに声をかけたら「ちょうど今録音ツールを揃えようかどうか考えていたところです」と言ってくれて、「もう速攻で揃えます、ちょっと待ってて下さい」と揃えてくれて。で、送り返してくれて、作った。ざっくり言うとそんな感じで始めましたね。

梶原:去年の夏頃からnoteに動画、曲の断片をアップされていますよね。ちょうどきれいに12曲揃っていて。

八橋:そうなんです。12曲揃ったらアルバムにできるかな、と。

梶原:今年の春先くらいに全部揃ったんですかね。

八橋:そうですね、マツキチが夏でマシータが秋くらいで、年末は忙しかったので年明けて2月頃かな、大地くんの曲もできて。そこまでが普通に言うプリプロというかスケッチの段階だったような感じですね。

梶原:じゃあ今回曲を作るときにワンフレーズというか、ある程度叩かれたものを作っていく中でループというかご自身でドラムの構成をされて。

八橋:サイズも何も、とにかくメロディーもコードすらも、何もできていない状態で彼らは叩いていますから(笑)。

梶原:なかなかすごいですよね、よく考えてみると。得意なパターンを叩いて。 

八橋:とにかくね、自由に叩いてくれて、気持ちよく「これが叩きたい」というのがもろ伝わるフレーズがたくさんあったので、それを「ここにはまるといいだろう」というふうに自分で編集していき、で、フルサイズに作り上げた時に「本当にこれ最初に曲知っていたんじゃないか」と思うくらいにぴったりとはまって、面白いもんだなと自分でも発見だったんです。 

梶原:素晴らしい。そうですよね。大体みんなギターやピアノで作って、バンドで集まった時にドラムの人がそこに合わせてどんなフィルを入れようとか、どんなパターンにしようかと、あとからドラムを考えるのに、今回はドラムを先にやったと。 

八橋:まず最初にドラムがあった。

梶原:ドラマー冥利に尽きますね、みなさん。

八橋:そうですね、やっぱりみんな自分で録音するという行為も楽しんでいたみたいです。

梶原:それぞれスタジオというか自分のスタジオで、自分の録音機材を使って好きな音を録る。

八橋:そうですね、じっくりと。やっぱり通常のレコーディングだとエンジニア、そして立派なスタジオに行って、すべて環境が整っていて、「はい、演奏してください」というだけなんですけどね、ドラマーというのは普通は。でもところがそのマイクの種類、どれを選ぶか、どこに置くか、どんなバランスでそれをミックスするか、そのセッティングによって彼らの演奏のしかたも変わってきますから。どれくらいの強さで、どういう音色で、どれくらい部屋の響きを混ぜるかとか。通常それはすべてエンジニアが管理する部分で普通ドラマーはそこまでケアしないものですけれど、それを自分たちで録音してみるということでそれを考え出した。それは彼らにとってすごい、ひとつの殻を破るような行為だったんじゃないかな。

梶原:いい経験で。

八橋:とってもいい経験だったと思いますね。

梶原:やっぱりこういう制作方法をとられたのは、コロナという環境が大きいですか? 

八橋:そうですね。ミュージシャンのせいで、ライブハウスのせいでコロナが広まって、みたいなふうに悪者扱いにされて。フェスとかツアーとかも全部キャンセルになって。だから僕らは行き場を一旦見失いかけたんだけど、「家にこもりなさい」と言われた時だからこそ、そういうふうに機材を揃えてじっくりと実験する時間がとれて、そういう期間だったので、このプロジェクトができたのかな、という。

梶原:結果的には新しい制作のスタイルも生まれたみたいな。

八橋:本当にそうですね。どんな会社でもリモートとか当たり前になって新しいライフスタイルが築かれた期間だったと思いますが、ミュージシャンにとってもまったくその通りで。 

梶原:noteラジオを始められた経緯もそういうことですか?

八橋:noteラジオもそうですね。行き場を失ったミュージシャン達が配信ライブとかやりまくって、YouTubeをやる人もいたし、頑張っているな、ってところで、僕にできること何かなと始めたのがnoteラジオなんですけど。まあ一番好きなことを喋っていられるので。手っ取り早くて、長く続けられるので。

梶原:みなさん楽しそうですよね。自分の持っている楽器の話を、自慢とまでは言わないですけど、こんなふうに手に入れましたとか、楽しそうですよね。一番好きなもののことについて喋って。なかなかないプログラムだなと思って。

八橋:楽しそうでしょ?そうなんですよ。だから彼らの頭の中で考えていることはすごいたくさんあると思うんですよね。その内容を聞く場所って普通ないじゃないですか。

梶原:そうですね、音にはなっても言葉にはならない。 

八橋:たまにね、音楽雑誌で取り上げられることもあるけど、そこまで楽器のことばっかりきかれるというのは珍しいかも知れない。僕も聞いていて楽しいし、彼らも喋れて楽しいし。本当に今何十回目だったか忘れましたが、こんなに長く続くとは自分でも思っていなかったです。 

梶原:番組発明という感じがしますね、聞いていて。

八橋:コロナが終わったらもう速攻やめようと思っていたんですけど。全然終わる気配が、まあそろそろ終わりそうですけどね。

梶原:今回の新作のドラマーの皆さんの話も今、順番に聞いてらっしゃいますね。

八橋:そうです。ちょうど今月(10月)順番にその4人のドラマーに登場してもらって。これからは、実はそれ以外のミュージシャン達を順番に呼ぼうかなと。

梶原:去年「Drums & Guitars」という名前で動画がnoteにあがっていて、曲の断片ですよね。設計図みたいなものがあがっていましたが、ここに今回のアルバムはGhostsというのがついています。このGhostsというのは幽霊?これはどういう・・・? 

八橋:幽霊のGhostsですね。本当に直感というか初期衝動、そのままとも言えるのですが、ドラムから始まって、そこにギターで返事をした、という。そういうやりとりのプロジェクトなので、「Drums & Guitars」というダイレクトな名前をつけていたのですが、やっぱりそれだけじゃ何か欠けているなと。もう一言、なんだろう、と考えた時に、やっぱりこのコロナ禍の期間、僕たちは見えないコロナウィルスと言われるものに怯えて、そして戦って、過ごしてきた時間だと思いますが、だからのその見えない敵、みたいなものを一言で表すのはなんだろうな、と思うとGhostsという単語かなと思ったのですね。
実は「Strange Days」の歌詞にGhostsという下りがでてきて。というのは実はコロナが始まった頃に街を歩いていて、自分以外の人はみんなマスクをしている姿を見て、映画みたいだなと思って。ゾンビ映画を見ているみたいだなと(笑)。自分自身はもう今は外へ出るときは普通にマスクしているんですが。そんな風景がゴーストという言葉を生み出したんです、その時、その曲では。象徴的な一言を付け足して、なのでドラム、ギター、そしてゴースト、というちょっと一風変わったタイトルができたのではないかなと思っています。僕も気に入っています。 

梶原:格好いいタイトルだなと思いますね。 

八橋:ちょっとフックありますよね。 

梶原:なんというか、いろんな霊的な作用もあったというふうに読み取れます。 

八橋:作用はあったと思いますね、この12曲を作っている時に。やっぱり歌詞を書くときもほとんどコロナ禍のことを考えていたし。 

梶原:その思いはこの12曲に投影されている、ということですかね。 

八橋:そうですね、この時期でないとできなかった作品だったかなと思います。 

梶原:アルバムは今どういうふうに入手できるのでしょうか。 

八橋:今完全に自主で作っているので、メールをいただければ通販で直接お送りするという方法を取っています。僕のバンドのホームページ theuranus.jp にアクセスしていただければ、申込方法が書いてありますので、気になった方はぜひ申し込んで下さい(笑)。

梶原:では、ここまでずっとお話を聞いてきましたが、やっぱり楽曲を聴きたいと思います。アルバムの柱になっている4人のドラマーお11曲ずつ紹介していこうと思いますが、まず曲を聴いてもらってからいきましょうかね。じゃあ1曲目のご紹介を、八橋さんお願いします。

八橋:はい、1曲目は松原マツキチ寛、「Relight It」という曲です。
 

Relight It
 

梶原:八橋義幸セカンドソロアルバム『Drums, Guitars, & Ghosts』の1曲目に収められている「Relight It」でした。この曲は、一番最初に作った曲ですか?

八橋:これは一番最初に作った曲ですね。 

梶原:それが頭に。

八橋:そうです。このアルバムは作った順番というか、やりとりしたドラマー4名、3曲ずつ、順番に並べています。なので、時間の経過を分かりながら聴き進めることができるし、3曲分そのドラマー達の世界観をたっぷり味わって次のコーナーへ進んでいける。そういう作りになっています。さらにその1曲目を飾る曲です。

梶原: 1曲目の「Relight It」、2曲目の「Bloom」、3曲目の「Inner Sense」。この3曲が松原さんのドラムですね。 

八橋:そうですね、マツキチですね。

梶原:この1曲目はギターとかどんなイメージで? 

八橋:これはマツキチのドラムを聴いた時に、ポリスかな、とか、ツェッペリンっぽいな、とかちょっと思ったんですね。その鋭い、そして重いロックビート。なので、今思い出しましたけど、ツェッペリンの「Achilles Last Stand」とか(笑)、そんな風にしたいなと。で、ギター2本使って、左右に広がるもう1本のギターはポリスの「Synchronicity」のように12弦ギターで広げたいな、という。だからやっぱりドラムから発想しているんです、作曲自体が。 

梶原:なるほど。松原さんの曲は1曲分くらい、わりとたっぷり叩いてあったのですか? 

八橋:いや、マツキチはワンコーラス半ですね。 

梶原:そうですか。ブリッジのところで、スネアでずっと16でまわすようなところがあるじゃないですか。

八橋:あそこは今度はですね、松原マツキチの弟子である、bonちゃんという女の子にスネアだけ叩いてもらって。 

梶原:なんと。そうなんですか。この「additional snare」と書いてある? 

八橋:そうです。それです。弟子なんです。なので師弟共演というか(笑)。 

梶原:師匠が叩いたところに、「ここ、ちょっとブリッジやってよ」という。ぜひ皆さん、そこも気にしてもう一回アルバム手に入れて聴いてもらいたいなという気もします。 

八橋:これは意味的にちょっと戦いというか、マーチング、戦争でよく使われるドラムのことを思い出して。もともとドラムというのは戦争のための楽器だった。戦争という言葉がどういう風にとられるかはあれですが、何かに戦う、そういうテーマの楽曲だったりもしたので、そのbonちゃんにマーチングドラムっぽく、行進っぽく叩いてよ、と。 

梶原:noteにあがっている、歌詞の断片を少しあげておられるじゃないですか。そこだけ僕ざっと翻訳してみたりして、あれは実際に歌ってらっしゃる歌詞とはまた違いますか? 

八橋:いや、ほぼ同じですけど、そこからフルコーラス膨らんでいるので、伸ばしています。 

梶原:「トーチを高く掲げよう」みたいな。 

八橋:そうです、たいまつを掲げて、すべてを照らし出せ、というRelight。 

梶原:1曲目っぽいですね。

八橋:そうですね、アンセムソングというか。

梶原:僕はU2とかの紛争地帯のあれかな、とか思ったり。ちょっとそのイメージをしながら聴いていて。やっぱりブリッジのスネアのところでタカタカタカとなっているのも「おー」と思って聴いていました。 

八橋:そうですね、「Sunday Bloody Sunday」なんかを思い出しますよね(笑)。 

梶原:踏み込んでいくと80年代UKロックのいいところがまた。

八橋:今日も車で聞きながら来ました。「Sunday Bloody Sunday」。

梶原:今日富山雨降っていますしどんより来ている。

八橋:U2日和です(笑)。 

梶原:ぴったりですよね、U2日和ですよね、北陸。なるほど。この1曲、歌詞も含めて完成までどのくらいかかりましたか? 

八橋:どこまでを完成と呼ぶか・・・一番最初のデモはすごく早かったですね。 

梶原:アップされているのはデモですね。 

八橋:そうですね。フルコーラスにしたのもすごいシンプルにできました。早くできました。ミックス、最後の音の詰めというのは本当にギリギリまでやっていたのですが。でもどの曲もスピード感が命だと思って作り上げたので、そんなに時間かけていないです、どれも。歌詞も含めて。 

梶原:ドラムのパターンがあって、それに刺激されて、ギターもつけていけて、そんな感じですかね。 

八橋:そうですね。逆にその縛りがあるのでいらないことを考えないで進んだという。 

梶原:スピードとかドラムのパターンとか、縛りがあるほうが、行き先が見える。 

八橋:そうなんです。やりやすさは凄くありましたね。最初から決まっているという。で、最初からその極上の生のグルーヴが既にあるのでそこに乗っかるのが、実はとても楽だった。 

梶原:なるほど。確かに八橋さんがとても気持ちよくギターを弾いておられるんじゃないかなという感じがすごく伝わってきます。 

八橋:そうですね。わりと直球な、ですね。 

梶原:松原さんの曲だとBloom」がちょっとドローンっぽいというかダウンテンポというか、これも気持ちいいですし、「Inner Sense」も、稲泉りんさんのボーカルがピンク・フロイドの曲のスキャットみたいなイメージで。 

八橋:あー、なるほど。そうですね。そういう雰囲気もあるし、Massive Attackの頃のいろんな女性が歌う感じもあるし。アレンジ自体はやっぱり80年代のTalking Headsとか、白人が黒人にすごい興味を持ちだした、ワールドミュージックとか流行った頃のぐちゃぐちゃの混ざり具合というのが面白いなと思ったり、参考にしたりするのですが。

梶原:じゃあもう1曲、次はご紹介いただきたいのですが。 

八橋:次のコーナーはドラム、ハリー、張替智広で、お送りする曲はJump Into My Old Red Car」。
 

Jump Into My Old Red Car
 

梶原:八橋義幸で、Jump Into My Old Red Car」でした。ドラムは張替智広さんですね。この曲はどんなイメージで? 

八橋:僕はサッドコア、悲しい暗い曲が結構好きですが、やっぱり80年代90年代の洋楽ポップスを聴いて育ったので、明るい前向きな、鼻歌で歌える楽曲も、実はとっても大好きで。ハリーが送ってきてくれたドラムがまさにそういう弾むような軽快なものだったので、「よし、絶対そういう曲を書いてやろう!」と思って作った曲です。 

梶原:前のアルバムのTo Another City』には入っていない感じの曲ですよね。

八橋:そうですね、あれは本当にそっち方面に振り切った、サッドコア的な内容です。 

梶原:今回僕はこれを聴いて、「あ、スミスかな」とか、歌声を聴いて。どこか声にモリッシーを感じたりして。 

八橋:モリッシーは本当に理想のボーカリストで目指すところですね。やっぱりスミスの「This Charming Man」とか、チープトリックの「I Want You to Want Me」とか、プリテンダーズとかフィル・コリンズとか、ちょっとモータウンベースの軽快なものをロックバンドアレンジでやる、みたいなものをいつか作りたいなと思っていたんですよね。 

梶原:お気持ちの中にはこういう曲の願望はあったのですね。

八橋:願望はずっとあったんです。で、確かこの曲はアコギだけの鼻歌の断片みたいなものが、実はあったんです。そのハリーのドラムを聴いた時に「あ、あのパターンに絶対合うな」と思って。そこからそれをはめて作り上げた、という作り方になっています。 

梶原:なるほど。本当にアコースティックギターも軽快ですし、カッティングとアルペジオの組み合わせが、いったらジョニー・マー的な。 

八橋:ジョニー・マーですね、これ本当に。 

梶原:曲始まってもう、最初の何秒かで「おー来た!」と思わず仰け反ってしまって。僕がシングルカットしてもいい係だったらこの曲を最初のシングルにしたくなっちゃいます。 

八橋:そうですね、僕もこれシングルかなと思っています。やっぱり僕世代ではジョニー・マーの影響力大きいですね。彼のギターを聴いて育ったようなもので。

梶原:この曲のギターはでも、わりとシンプルというか歪ませずにいい音というか。

八橋:そうですね、ギターの音自体はレスポールのリアブリッジピックアップで弾いているので。もっとフェンダーのギターを皆さん想像されるかも知れないけど、僕はこれを録るときにやっぱりジョニー・マーがギブソンの355というギターを使っていたなと思い出して、じゃあ自分だったらレスポールで弾こうかなという風に作った曲なので、ちょっと癖のある音色が味わえるかなと思います。

梶原:すごい気持ちいいギターの音です。あとホーンもすごい贅沢な気持ちいい広がりで。

八橋:そうですね、3人組のホーンセクションで、ホルンとトランペット、トロンボーン。これも友達に吹いてもらっているのですが、これもやっぱりさっき言ったモータウン的な、フィル・コリンズの「You Can’t Hurry Love」的な、まあスミスだと絶対こうならないだろうなと。 

梶原:そうですね、ホーンはあまりスミスには入っていないですよね。そこは八橋印という感じかなと。

八橋:特にホルンの優しい音色というのがポップスに含まれているというのは、実はビーチボーイズとかの頃からよく使われていて。堀込泰行で使った曲もありますが。とても大好きで。軽快なところに何かクラシカルな荘厳さを与えてくれる気がしていて。面白い組み合わせかなと思っています。 

梶原:はい、このホーンが入ってきた時もまたニコッとするような音で。 

八橋:そうですね、嬉しくなりますね。 

梶原:あとこの歌詞のmy old red carというのは、これ何ですか?と訊こうと思っていたのですが。これは? 

八橋:これはですね、この曲のコンセプト、住み慣れた場所を飛び出して、新しい世界へ向かって走りだそうよ、みたいなことを歌っているのですが、なので古くて赤いボロボロの車に家財道具一式全部詰め込んで、新天地に向かう。そういう景色を歌詞にしたのです。 

梶原:なるほど、出発、ですかね。僕は最近『ドライブ・マイ・カー』という村上春樹原作の素晴らしい映画でしたけど、あれは赤のボルボ。

八橋:素晴らしい映画でしたね。あれは赤のサーブですね。 

梶原:あ、そうだ。そうですね。あれを観て、そのあとに八橋さんの曲を聴いたんですけど、曲を聞いたあと「お?」と思ってold red car、そう言えばあの映画のあれ、そうだなと思って。ちょっと不思議に頭の中で一緒になったというか。 

八橋:ね、不思議なシンクロニシティというか。似たようなタイミングで出せて、僕は勝手に嬉しく思っています。 

梶原:はまっている感じがしました。 

八橋:僕も実は古いボルボを大切に乗っていて、たまに止まったりしてポンコツで大変なんですけど、古いからこそ愛着が持てるというか、可愛いなと思って乗っています。 

梶原:ボルボどこかで止まったみたいな、昔ツイッターで見たような気がしますけれど。

八橋:よくあります、そういうこと(笑)。 

梶原:そうですか。まあでもそこがまた楽器と同じように古くていいもの、というか味のあるものという。 

八橋:どうせ苦労して、お金払って車買うなら、好きな車買った方がいいかなと思って、そうしているんですけど、たまに止まってタイムズのレンタカーとか借りると「いやー最近の新車すげーな」と感動しますけど(笑)。 

梶原:感動しますよね!僕もわりと古い方の車が好きなので、たまにレンタカーとかで乗るとびっくりしますね。ここまでやってくれるのか、と思って。
 

(♪BG: Lingers On」)
 

梶原:張替さんの楽曲は5曲目のLingers On」とさきほどちょっと「ゴースト」という歌詞が出てきますと紹介いただきました「Strange Days」の3曲ですね。「Lingers On」は僕ヴェルヴェット・アンダーグラウンド的な、なんかこう。 

八橋:まあ歌詞がもろ、そうですもんね。

梶原:「Pale Blue Eyes」が浮かんだりもして。 

八橋:歌詞もビートルズっぽいところもあったり。楽曲的にはエイミー・マンのような大人のフォークロックというか。これは自分で言うのもなんですが、名曲、いわゆるみんながいい曲だなと思うものになっているのかなと思いますが。その盛り上げ役としてヴァイオリン・ヴィオラ・チェロを自分で弾いたという。

梶原:これ、ご自身だったのですね!クレジットがないのでそれも訊こうと思ったのです。 

八橋:そうなんです。頑張ってこの夏、汗だくになりながら(笑)。 

梶原:あらゆる弦楽器をマスターされて。 

八橋:マスターまでは行ってないですけど、まったく。 

梶原:でもこの楽曲のストリングスはご自身で。 

八橋:そうですね、自分で弾きました。 

梶原:なんかシンセサイザーとか、サンプリングにしては生々しい音だしなあ、と思っていたんですけれど。なるほど。もう一回注意して聴いてみます。 

八橋:いえいえ。 

梶原:これ、ラブソングですか? 

八橋:ラブソングですね。 

梶原:In my heartというフレーズがあったような。モータウン的なポップソングのあとにしっとり、ラブソングが来て。 

八橋:ラブソング、実は多いんですけどね、僕の中で言うと。Yoshiyuki & Megumiだとほとんどラブソングです。実はでも自分のバンドではラブソングはほとんどないんですけど。なので、ソロではせっかくなのでラブソングをたくさん入れていこうという。結局だってみんなが知りたいのはそこじゃないですか?世の中の人。 

梶原:そうですよね。歌って結局ラブソングという。 

八橋:そうそうそうそう。 

梶原:八橋義幸さんのニューアルバム『Drums, Guitars, & Ghosts』のお話はここまで。来週に続きます。いい音楽を聴いて、素敵な1週間を。「Made of Music」梶原でした。
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(後編に続く) 


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プロフィール

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八橋義幸
ギター / プロデュース / 編曲 / 作曲 / エンジニア

富山県生まれ。2008年、The Uranusを結成。これまで7枚のアルバムを発表。一方で真城めぐみとのYoshiyuki & Megumiや、ソロでの活動も精力的に行っている。

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