渡礁難民-

ギリシャからやってくる客人に、何としてもニッポンのヒラマサを釣らせてあげたい。

もちろん、自身もこの年のシーズン初釣行でもあるわけで、楽しみで仕方ないのはいうまでもない。そのため、是が非でも渡礁したい瀬があった。

 

3月の声を聞く頃、例年通り、やおら渡礁のための支度をはじめた。

厳密に言えば、釣り業界の時節柄、年末から3月中旬ごろまでは多忙を極めるのが通例なのだ。

ところが、いつもの渡船屋に連絡を取ると好機を伺っていたタイミングはほぼ他の釣り人がいないため、我々だけでは出船が危ぶまれることとなった。

「是が非でも…」とは言え、無い袖は振れない。
(チャーターする余裕などあるハズがない。)

また、よりにもよって当該日程には怪しげな低気圧が這い寄る気配も出てきた…。

 

よほどのことがない限り、同じ渡船区内であれば船宿をほいほいと変えたりはしないのだが、今回はそうもいかない事情があるので、考えうる凡ての手立てを模索した。

すると、事情を汲んで考えてみてくれるという船長が現れた。

最悪、足りない頭数の渡船代は補填する旨も伝えたが、
「そんな必要はない、ただ天気だけはどうしようもないからそれは覚悟しておいてくれ。」
という返答を得ることができたのはタキが来日するわずか5日前のことだった。