映画

2012年11月13日

桜井センリさんの死を悼む。

11月13日。

桜井センリさんが亡くなった。

拙者の知っているのはミュージシャンではなく俳優の桜井センリさん。

映画クレイジーシリーズや男はつらいよシリーズ 、その他テレビドラマ等出演多数。

岩手関連だと、一戸町で撮影された映画「待合室」に出演していた。
(いわて銀河鉄道線小繋駅の駅員役)
桜井センリさん。



【桜井センリさんの死を悼む 山田監督「謙虚でつつましく遠慮のかたまり」】

 12日に亡くなっていることが分かった俳優の桜井センリさんに、関係者がその死を悼んだ。

 桜井さんが出演していた、映画「男はつらいよ」シリーズの山田洋次監督は「ほんの数カット映るだけで映画全体に和やかな雰囲気が漂う。そんなセンリさんは、ある時期、僕の映画にいなくてはならない俳優でした。謙虚でつつましくて遠慮のかたまりのような上品なセンリさん。僕の大好きなセンリさんの死を心から悲しんでいます」と偲んだ。

 同じクレイジー・キャッツのメンバーの故植木等さんの付き人をしていたことがある俳優の小松政夫(70)は「驚いて、言葉になりません。桜井さんはクレージーキャッツでは“先生”と呼ばれ、ピアニストとして尊敬されていました。最後にお会いしたのは谷啓さんのお別れの会で、そのころは顔色も良くて元気そうだったのに」と突然の死を悲しんだ。
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2012/11/12/kiji/K20121112004539950.html





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2012年11月12日

ヴァンパイア@ラヂオもりおか音楽映画祭(フォーラム盛岡)

11月12日。

昨日はラヂオもりおか15周年企画、ラヂオもりおか音楽映画祭に行って来た。
20121028前売り券@盛岡市

10日から始まった映画祭だったが、みちのく国際ミステリー映画祭が開催されていた頃の様に頻繁には観に行けない為、今回はヴァンパイアのみで。
vampire

誰が撮ったとか、柵も先入観も固定観念を全て取っ払って観ると、その良さが解るという不思議な感覚の映画。

何故なら完全に洋画だから。

洋画だから許せる部分ってのが絶対あると思うし、そこを上手く利用してる辺りが凄い。



【「ラヂオもりおか音楽映画祭」始まる−岩井俊二監督、故郷語る一幕も】

 ラヂオもりおか(盛岡市中ノ橋通1、TEL 019-621-7111)が主催する「ラヂオもりおか音楽映画祭」が11月10日、フォーラム盛岡(盛岡市大通2、TEL 019‐622-4703)で始まった。

 期間中は、音楽と映画にまつわる作品を新旧合わせて6作品を上映。初日は「Bob Marley 〜Roots of Legend」上映前にランキン・タクシーさんによるトークショーが行われた。笑いも交えた独特の口調で、鑑賞のポイントを披露した。

 翌11日には同映画祭特別上映として岩井俊二監督作品「ヴァンパイア」が上映され、上映後に岩井監督のトークショーも行われた。

 ヴァンパイア好きという岩井監督が現代のヴァンパイアを表現した同作品は、構想10年をかけようやく完成したという。音楽と映画について岩井監督は、「子どものころから楽器をやっていたら、映画は撮っていなかった。それがなかったからカメラを持って今映画を撮っていると思う」と話した。観客からの「盛岡と、(岩井監督が現在住む)ロサンゼルスとの印象の違いは?」という質問に、「岩手は宮澤賢治の生まれ故郷で、緑が多く自然豊かな印象。ロサンゼルスで暮らすと南国な感じが目障りでサンタモニカを歩きながら『なごり雪』をあえて聞いたりして、サーフィンの景色を消したくなる。北欧に行くと心癒やされますね」と東北出身らしいコメントを返していた。

 映画祭関連のイベントは引き続き行われ、同15日には、ダウン症ドラマータケオさんのアフリカンドラムライブ、16日は、「死刑台のエレベーター」上映前にラヂオもりおか人気番組「Jazz Today」と「ネコの部屋」のコラボ・トークショーを開催する。

 プログラムなどの詳細はラヂオもりおかホームページで確認できる。今月16日まで。盛岡市街地を中心に20店舗以上の飲食店や雑貨店では、各店で企画した「マチナカイベント」も合わせて開催している。
(盛岡経済新聞)
http://morioka.keizai.biz/headline/1205/


friends after 3.11 劇場版の時に観に行けなかったので、今回は岩井俊二監督の話を聞けて良かった。





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roku2005 at 22:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

2012年09月10日

信号待ち@盛岡市

9月10日。

昨日は久々に盛岡フォーラムへGo!

盛岡市盛岡駅前北通。
20120909信号待ち@盛岡市


盛岡市開運橋袂交差点。
20120909信号待ちの開運橋@盛岡市


クロステラス前。
20120909信号待ちのクロステラス@盛岡市


2人巻き添えにして、盛岡フォーラムで「るろうに剣心RUROUNI KENSHIN」を観てきた。
20120909るろうに剣心@盛岡市

チラシ欲しかったけどなかった;;




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roku2005 at 05:24|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

2012年07月28日

あなたへ

7月29日。

大切な想い
  大切な人へ
    届いていますか
201207映画「あなたへ」。


あなたへ
(C)『あなたへ』製作委員会


映画「あなたへ」公式ホームページ



第62回“社会を明るくする運動”では,映画『あなたへ』(東宝株式会社配給)とのタイアップや,本運動フラッグアーティストの谷村新司さんと一緒に街頭広報活動を行います!

 法務省が主唱する“社会を明るくする運動”は、本年で第62回目を迎えました。第62回“社会を明るくする運動”では、より効果的な広報を行うため、8月25日公開予定の映画『あなたへ』(東宝株式会社配給)とのタイアップ企画を実施することにしました。
 また、強調月間初日の7月2日には、本運動発祥の地である東京・銀座数寄屋橋公園において、本運動フラッグアーティストの谷村新司さん、法務大臣などにより街頭広報活動を行い、人々に広く本運動への理解・協力を求めます。あわせて、本運動の一環として、谷村新司さんとともに、過ちから立ち直ろうとする人々の等身大の声をメッセージカードにして、東京・銀座の方々に届けます。

【“社会を明るくする運動”とは】
 すべての国民が、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において、力を合わせ、犯罪や非行のない明るい社会を築こうとする全国的な運動です。

【映画『あなたへ』(東宝株式会社配給)とのタイアップ企画について】
○法務省は、東宝株式会社と協力し、映画『あなたへ』(平成24年8月25日(土)全国ロードショー)とのタイアップポスターを作成しました。
○このポスターは全国の保護観察所や保護司会を通じて、全国各地の掲示板等に掲出されます。

※映画『あなたへ』とは・・・
 北陸の刑務所で指導技官として働く倉島英二(高倉健)。彼は、周囲から独身を貫くものと思われていたが、50歳を目前に刑務所に慰問に来ていた歌手の洋子と結婚する。
 平穏な日々を過ごしていた2人だったが、妻の洋子は53歳という若さで死んでしまう。
悲しみの中で英二は、生前洋子が遺した絵手紙を受け取り、故郷の海に散骨してほしいという彼女の思いを知り、洋子の故郷である九州へと長い旅を始めるのだが…。




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roku2005 at 20:53|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

2012年06月19日

マリリン・モンロー没後50周年。

【6月19日 Relaxnews】 2012マリリンモンロー。
女優マリリン・モンロー(Marilyn Monroe)の没後50周年にあわせ、米ハリウッドのハリウッド・ミュージアム(Hollywood Museum)で展覧会「Marilyn Monroe: The Exhibit」が開催されている。  会場には、野球選手のジョー・ディマジオ(Joe DiMaggio)との結婚式で着用した「シール・チャップマン(Ceil Chapman)」のウエディング・ドレスやマリリンが愛用していた家具、家族写真など、貴重なコレクションがずらり。  なかでも見どころは、フォトジャーナリストのジョージ・バリス(George Barris)が撮影したマリリンの未公開ショットだ。「アメリカのセックスシンボル」と称されたマリリンのひと味違う姿を楽しめる。  会期は、6月1日から9月2日まで。(c)Relaxnews/AFPBB News
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roku2005 at 18:03|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

2010年12月20日

映画・秘密。

12月20日。

今日久々に見たので記念に。

最初見たのが10年前。
小説もストーリーも知らないまま見たからびっくりした記憶が(笑)

滝田洋二郎監督を知ったのも この作品だった。
太東崎灯台のシーンとかそれっぽい。

TV版しか知らない若い子達にこの前まで「映画版も見たほうがいいよ」って薦めてたのでちょうど良かった。

↓うまい事編集してるのがあったので。

竹内まりやの「天使のため息」名曲です。

roku2005 at 23:11|PermalinkComments(2)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

2010年12月08日

岩手が舞台の小説。第十五章(1)

   第十五章(1)

   一

 今夜はつれ立って町へ出ようと約束がととのった瑞枝と宮子は、早目の夕食の支度をしていた。
瑞枝のおごりで映画をみようというのだ。
「呑気だね、こんなときに」
 といいながら、光枝がそれを許したのも、夫の病状が案外心配するほどのこともなく、もう一つには初美がいそいそとして佐藤と一しょに帰っていったことが、光枝だけでなくみんなの気を軽くしてもいたのだ。
「まったく暗雲低迷だったもな。ことによったらわしは、帰りに佐藤にあって、がんと談じこんでみねばなるまいと思ってたが、まんずこれでひと安心だ」
 と嘉久も甚だきげんがよい。彼も明朝の予定をくりあげて、終列車ででも帰ろうかといっているところだった。
「瑞枝はもう一ばん泊って、あしたの一ばんでくればいい。わしはひとりで帰る」
 きげんのよい嘉久に、宮子の方がにやりとして、
「その方が、いいんでしょ叔父さん」
 と冷かす。
「どういう意味だ」
 とわざととぼけるのへ、
「別に意味なんかないわ。たまには奥さんと二人だけになる方がいいと思っただけ」
「まあ、この子は」
 と眉をよせる光枝に、
「だって、母さんだってそうでしょ。わかってる。だから、私たちひとり者は遊びにいったげるのよ。ね 瑞枝ねえちゃん」
「いいかげんになさい宮子、品のわるい子ったら」
「ごめんなさい」
 くすっと笑って宮子は肩をすくめ、
「さ、瑞枝、だれもかれも二人なのよ。私たちも二人よ。お互いに相手に不足があるけど、仕方がないわ。出かけましようよ」
 珍らしくみんなの笑い声があがっている茶の間へ突然初美がもどってきた。
走ってきたように呼吸をはずませているのをみると、宮子は思わずいきをのんだ。
 瑞枝は瑞枝で、
「あら、忘れもの」
 と目を見はる。
「どうしたの。佐藤さんと一しょに、帰ったんじゃなかったのかい」
 不安をこめてきく光枝にも答えもせずに、初美は眼を伏せたまま、しばらくみんなの前にだまって坐っていた。
みんながそれぞれの思いで見守っているなかで、それでもやがて初美は態度だけは美事に立ち直ったかたちで、
「私、佐藤と別れようかと思うんだけど」
 今度はみんながだまってしまった。
初美は少したかぶった声で、
「いろいろ話したんだけどその方があの人のためにいいらしいのよ。私、そうしようと思うんだけど−」
「どういうんだね、一たい」
 と嘉久がいい、
「そんなかんたんに、よくいえる」
 と光枝は怒ったようにいい、みんなの口をふさぐように手をふりながら、
「父さんに、聞えんようにして」
 と病室の襖をふりかえった。それでみんなは一そうだまってしまった。
 やがて嘉久は、ある決意をからだ中に溢れさせるようにして、
「この話、任せてもらおう。さ、初美、わしと一しょにいこうや」
 と初美を促した。小声であるだけにそれはかえって力がこもって聞えた。
「どこへ」
 と初美も小さい声でしかし何かに抗らうようにいう。
「分ってるじゃないか」
「佐藤のとこなら、いやよ私」
「どうして」
「どうしても」
「それで、いいんだね」
「いいわ」
「後悔しないね」
「しないわ」
「じゃあ、きっぱり話つけてこよう。仲人だからな、わしは」
 わざとらしい笑いを残して、嘉久は出かけた。そのあとを光枝が追った。
姉妹三人だけになると、やはりまっ先に口をきくのは宮子だった。
「ほんとに、いいの、ねえちゃん」
「……」
「私にいわせれば、そりゃあ、その方がいいけどもさ」
「どういう意味、それ?」
 と初美の思いがけぬ強い声に、宮子は思わずあとじさりをするようなかっこうで、
「あら、だって、ねえちゃんもそんなつもりじゃなかったの」
「どんなつもりよ」
「佐藤さんと、別れる−」
「宮子までが、そうかんたんにいわないでよ。みんながそんな気でいるから、だめになったのよ」
 初美は、さっきの自分のいったことなど忘れたように、興奮して、宮子をにらみつけ、やがて、ちゃぶ台に顔を伏せて泣き出した。
宮子はすっと立って、目顔で「あとをたのむ」という気持を瑞枝におくり、オーバアのボタンをあわせながらだまって家を出た。
そして河岸の道を走って嘉久のあとをおった。
橋の近くで母にあったが、何か話しかけようとする光枝に、
「忘れもの」
 と、まるで嘉久の忘れ物でも届けるようにいって走った。
駅の近くで煙草を買っている嘉久をみつけると、宮子はほっとして呼吸をととのえながら、釣銭をもらっている叔父のうしろにだまって近よった。
「おっ!」
 とおどろく嘉久と肩をならべて歩きながら、
「ね、叔父さん」
 落ちつき払ったようにいう。
「どうした」
「佐藤さんのこと、どうするつもり」
「どうって、まず、佐藤とあって話してみなくちゃ」
「初美ねえちゃん、別れるなんて気もち、ないらしいわよ」
「そうかね」
「そうよ。だって、あんなにいったくせに、みんなが別れさせる気でいるからだめだなんて、あとで泣くのよ」
「ふーん。こまったな、そいつは」
「だから叔父さん、話つけるなら、やっぱり、まとめる方だと思ったの。それで−」
「おっかけてきたというわけか」
 嘉久は新しく吸いつけたたばこの煙をながく吐き出しておいて、
「だがね宮子、今も母さんと話したんだがね、話はそうかんたんにはいかないらしいよ。何しろ佐藤にゃもう、女がいるらしい」
「やっぱり」
 宮子はその言葉尻のままの口もとで嘉久をみつめていたが、やがて顔をしかめ、
「だからだめなのよ。初美ねえちゃんて、案外意地っぱりでしょ。先生なんかさっさとやめりゃあいいのよ。私ならそうするわ。そうしないでおいて、結果だけを人のせいのようにいう……」
 涙さえ浮べていう宮子を、嘉久は微笑でくるみながら、
「しかしね宮子、教職にあってみれば、そうかんたんにはいかないよ」
「わかるわ。胡桃沢家の名誉のためにもね。−ああ私、先生にならなくてよかった。愛情もまともに育てられないなんて、不幸だわ」
 宮子は指先で目がしらをはじくようにしながら、
「だけどね叔父さん、とにかく今度は初美ねえちゃんを、三日でもいいから佐藤さんと一しょにいられるように話しつけてあげて。
だってね、あの夫婦、このところろくに二人だけで暮していないじゃない。愛情を交すまもないじゃない。
そんな石っころみたいな夫婦なんて、冷めたくなるの、あたり前よ。だから、たとえ三日でもゆっくりと、ふたりで暮してみさせるのよ。
その上で、二人のことは二人に任せるんだわ」
 駅につくと、もう改札がはじまっていた。
宮子は一しょにホームまで入ってゆき、気重くだまっている嘉久の心をゆすぶるように、腕をとって、
「それからね叔父さん、もう一つお願い。瑞枝ねえちゃんのこと。彼女、みんなに遠慮してるんだもん」
 くるっと手の裏をかえしたような話の転換ぶりに、嘉久は思わず眉の開く思いで、
「若いくせに、宮子はよく気が廻るね」
 宮子も笑顔になり、いたずらっぽく、
「だって、あとがつかえてるもん」
「なるほど、そういうわけか」
「そうよ。ぐずぐずしてると、花はしぼむのよ」
「なんだ、姉思いの真心かと思ったら、エゴイズムか」
「だって、初美ねえちゃんはもう、とにかく一度は花も咲かせたけどさ、瑞枝はあしたが花ざかり−」
「宮子は?」
「あさってごろ」
「うまいこと、いうな」
 汽車は五分停車だった。窓から顔を出した嘉久に、話をまた元に戻して、宮子は、
「叔父さん、沼宮内で、途中下車?」
「そのつもりだ」
「うまくいったら、電報うって」
「そうだね」
「私、それまで初美ねえちゃんを、なんとかして家へ繋いどくわ」
「わかったよ」
「でも、私は悲観説なのよ」
「ふん」
「それでも、とにかく三日でもというわけ」
 あたりの人に気をつかいながら宮子は重ねて、
「お願い」
 と、ぴょこんと頭を下げた。
 外はもう暗くなりかかり、どことなく夕餉の煙のただよっているような温い微風が吹いていた。
急に空腹を感じながら宮子は、
 ああ、損しちゃった。−
 とつぶやいた。
映画がふいになったのを、ちょっと惜しいと思ったのだ。
そして、末っ子のくせに今日のように気を使うくせのある自分に軽い嫌悪を感じながら、
 ああ、損しちゃった。−
 ともう一度つぶやいた。
こんな動き方をしないで、初美ぐるみ映画でも見にゆけば、却ってその方がみんなのためにもよかったかもしれぬと思ったのだ。
彼女は深刻な表情をして歩いていた。


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2010年11月28日

岩手が舞台の小説。第十一章(1)

   第十一章(1)

   一

 娘たちのだれもがいないような日曜日が続いたりすると、まっ先にさみしがるのは光枝だった。
夫と二人で終日こたつのなかにもぐりこみ、急に老いこんだような張りのなさで嘉明を口説く。
「初美は一たい、どうしたというんでしょうね」
 それはもう、このところ光枝のきまり文句になっているので、嘉明もあまり真正面からは相手になるまいとでも思っているらしく、
「わからぬ。知りたかったら、山さいぐんだな」
 とはぐらかす。むっとした光枝はだまりこんでしまうのだが、しばらくするとまたいい出す。
「このごろは、瑞枝までが、家さ煙たがってるみたいに、帰らねえんだもな。宮子は宮子で、わがまま放題だし、親なんて、いつも貧乏くじばっかりひかされてるみたいすな。腹の立つ」
 すると嘉明は笑いながら、
「しようがねでねか。生んだ子の心配するの、親の義務だろ」
「赤んぼであ、あるまいし、義務もいいかげんにしてもらいたいわ」
「心配の方も、いいかげんにしとくんだね。損だよ。どねに気いつかってみたところで、子供の方であ、大して有りがたがってくるわけでもあるめし、
まあ、いいとこで切りあげて、腹立ってきたら横になってねるべし」
あまりうまくないじょうだんでも、きげんのよい時なら話題もここらで方向転換するのだが、年のせいでかこのところ、ずっとからだのどこかに苦情のない時のない光枝は、そんな悪条件と結びついて次第に性格がくどくなり、ますます腹を立ててしまう。
気のよい嘉明のあいづちまでが癇にさわるらしく、ぽろぽろと手ばなしで涙をこぼしながら、
「とうさんまでが物事をまじめに考えないで、ひと馬鹿にしたようなことばっかりいうてさ、私ひとりに心配させるんですか、だれもかれもがぐるになって……」
 などと声を出して泣いたりする。こうなるとしぱらくは手がつげられない。
泣くだけ泣かせて気のおさまるまで放っておく方がよかった。
なが年つれ添った夫婦のよしみとでもいうのか、それとも教育者としてのがまん強さからか、嘉明はだまってそれを聞いてやるいたわりをもっていたが、若い宮子など、風雲急とみると、ぷいっと出かけていって、夕食ごろに涼しい顔でもどってくる。
今日もそれだ。そして光枝がいないのを知ると、小さな声で、
「ごくろうさま」
 と父の前に頭をさげたりする。
「だめじゃないか。せめて宮子でもそばにいてあげないと、かあさん、ますますヒステリーになるよ」
「だって、宮子は一週の七分の六受けもってるのよ。とうさん、七分の一ぐらい引きうけてよ」
「そんなに毎日、くよくよ口説いてるのかね」
「そうでもないけど。それに私はとうさんみたい雅量ないもの。いやだったら、ぷいっ。かあさん、さびしいもんだから、心得てるのよ。ためておいてとうさんに− というわけ」
「かあさんじゃないが、貧乏くじだな、とうさんは」
「そりゃあ、夫婦だもん。−でもねとうさん、人間年はとりたくないと思わん?」
「思うね」
「これが相思相愛の夫婦の姿かと思うと、宮子、ニヒリストになっちゃいそう」
「とうさんたちのことかね」
 と嘉明はにやにやし、
「なるほど」
 といって笑いを消す。宮子は少しいい気になり、
「だから、瑞枝ねえちゃんだって、だんだん帰ってこなくなったじゃない」
「ふーん」
「かあさんの愚痴きかされるより、ひとりでいた方がいいと思うこと、あってよ」
「そういう、ものかね」
「それに、瑞枝ねえちゃん、いい人ができたの、知ってる?」
「知らないね」
「佐藤さんみたい、悪じゃないようよ」
「宮子、知ってるのか」
「知らないけどもさ、このごろの瑞枝ねえちゃんの顔みると、わかるわ」
「なるほど」
「初美ねえちゃんの顔みると、佐藤さんがわかるみたいにね」
「なるほど」
「このごろは少しちがうけど、うちのかあさんの顔みると、とうさんの人格がわかるっていった人がいたわ。坂田さんの小母さんよ」
「宮子は、どうなんだ」
「ぜんぜん、ニヒリスト」
「それは困るね。しかしなんだな、宮子のいい分聞いてると、女って、相手次第の受け身一方みたいじゃないか。今の時代に、少しおかしいな」
「宮子もそう思う。とくに初美ねえちゃんなんて、あれなんでしょう。めそめそ、ぐずぐず、でれでれじゃない。私なら横っ面ひっぱたいて、あと足で砂かけてやるんだけどな」
「こわいんだね」
「そうよ、あんな狼」
 はき出すようにいって宮子は、
「ね、とうさん、進言よ」
 とこたつのなかでいずまいを直した。嘉明も笑いながら、
「聞こう」
「初美ねえちゃんを、なんとかしてあげて」
「というと」
「とにかく、環境を変えてあげるのよ。でないとますます陰にこもっていくばっかりよ。このごろの初美ねえちゃん、手紙出してもろくに返事もくれないじゃない。
自分ひとりのけものみたいに思ってるらしいわ。実際またそうみたいだけど。かわいそうじゃない。
学校なんて、やめればいいのよ。一たい、いつまであんな山んなかにおいとくつもり。−そう思ったから、私、手紙出したの。
姉ちゃんの犠牲ぶりは馬鹿の骨頂ですって。だんなさんや自分を大切に思うなら、すぐ退職しなさいって。
理由は病気でもいいじゃないかって、だって、結局馬鹿みるの、ねえちゃんなんだもん」
「そんなこと書いたんなら、そりゃあ返事はこないよ。初美は正直だからね」
「馬鹿正直」
「馬鹿正直がなかったら、世は末だろう」
「古い古い」
「初美には初美の生き方があるさ。いずれにしろ、もうちょいだ。四月には戻れるよきっと」
「ほんと。でも私、なんだか心配よ。四月まで待てないような気がするの。にいさんのことよ。大丈夫かしら」
「それなんだがね。しかし、教育者としての責任もある」
「ねえちゃんだけに?」
「そこなんだがね。初美がまた、そういう人間なんだ。それをいいとも悪いとも、いえないじゃないか」
 嘉明はうろうろとたばこをさがしながら、
「みんな、つらいとこだ」
「佐藤さんも?」
「もちろん」
「寛大ね」
 なげすてるようにいったが、買物籠を下げた母の姿をみると宮子はなにもなかったような顔で立ち上り、
「お帰りなさーい。ごめんなさい。御飯は私がするわ。かあさん、ゆっくり休んでらっしゃい」
 外に出て気が晴れたらしく光枝もすっかりごきげんの顔で、
「今ごろ帰ってきて、あんなこといってるよ。だまってどこへいったのさ」
「映画」
「のんきだね。ひとりでいいことして」
「気をきかしてあげたのよ」
「まったく、かなわないよ、宮子には」
「かなったら大変。気ばかり若くても、しわだらけじゃない」
 そんな軽口をききあう母子を、嘉明はいとしそうに眺めている。


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2010年11月04日

岩手が舞台の小説。第一章(2)

   第一章(2)

 こんなやりとりをした日のことを宮子は思い出していた。前々週の日曜日だった。
前日の雨のあとでその日もやはり曇っていた。
その夜の終列車で父は任地へ帰ってゆき、翌朝の一番で初美と瑞枝をおくり出すと、急にひっそりとなってしまった家の中は、いつもながらあらしのあとのようにどの部屋もごたごたとちらかっている。
まだそのままの寝床に宮子は母とならんで横たわり、ひといきいれた。宮子のは瑞枝の寝床だった。瑞枝の使っていた香油のにおいがほのかに枕にのこっている。
「先生なんて、みんなだらしがないのね。みつけたわ」
 それを指摘するという風にではなく、宮子はいった。
「?」
 さぐるようなまなざしの母に、
「だって、ねどこも片づけていかないんだもん」
 ああそのことか、というような母の目の色のなごむのをみると、宮子は、
「母さんも、こんなだったの」
「若いときはね」
「生徒にみせてやりたいわ」
「みせたって平気だろうよ。生徒の家じゃあ万年床ばっかりだもん。
かえって親しみをおぼえるつうもんだ」
「万年床ならそれでいいけどもさ、片づけるのは私じゃないの。
母さんも私もみんなの召使いみたいね。
ごちそうつくって迎えてやって、弁当までもたせておくり出して、一しょに遊びもしないでスカート縫わされたり、母さんだって日曜ごとにへとへとじゃないの」
「まあいいよ。かんべんしてやってけろ。たまのことなんだから。
それ、いやなら宮子も先生さなれぱよがったってことよ」
「そしたら、私のねどこも母さんあげるの。今ごろおだぶつよ」
 はっはっと宮子は笑った。
その限りでは別に姉たちのだらしなさに腹を立てているわけでもなさそうなのを知ると、
「今となるとやっぱり、宮子が家にいてくれるのでみんな助かるよ。宮子、おがんでもいいな」
「たくさんよ。それよか瑞枝姉さんのことでも相談にのってやる方がいいわよ」
「?」
 疲れて半眼の母がさっきのさぐるようなまなざしになった。
「知ってんでしょ母さん」
「ん」
 あいまいな返事である。
「初美姉さんにこだわったりしない方がいいと思う」
「なにか、瑞枝がいってたかね」
「んんーん。いわないから、私、けしかけてやったわ。あとがつかえてますからねって」
「そんなかんたんなことじゃないんだから。いろいろあるんだよ」
「めんどくさいいろいろなんて、四捨五入するのよ。瑞枝姉さんを初美姉さんの犠牲にするのかわいそうよ」
「そんなこと、何か瑞枝がいってたかね」
「何でもうたがってかかるのね。母さんらしくもない」
「わかってるけど、そうかんたんにいがないしな」
「かんたんに、いかしちゃうのよ。すったもんだいってると、瑞枝姉さんの方までおじゃんになるわよ。
このごろの若い人は、気が早いんだから、すぐほかの女みつけたりするわよ」
 まるで世渡り上手の小母さんのような口をきく。
「まさかそんなこともないだろうが、困ったもんだ」
「そんなことありますよ。母さんたちの時代とちがうんだから、のんびりしてるとうちはオールド・ミスだらけになるわよ」
 じょうだんめかして宮子はいったが、母はまともにうけとめて、
「しかしね宮子、そう、思うようにいがねんだ」
「いかしちゃうのよ。むりやりに。そうしないと下水がつまったみたいで、
あとがつかえちゃう」
「初美に、どっちかはっきりかたをつけろというのかね」
「まあね。私、ぐずぐずしてるのきらい」
「ぐずぐずしてるわけでもないがね、いろいろあるんだよ」
「ほらまた。だって、ほどがあるわよ。初美姉さんのは自分でまいた種でしょう。自分で刈ればいい。
自分で刈らないで人のじゃまするなんて、古くさい」
「宮子の伝でいくとものごとは簡単にいくがね、宮子とは立場がちがうから」
「そうよ。だからいってるんじゃないの。初美は初美、瑞枝は瑞枝、そして宮子は宮子と別々の人格であるようにね」
「だけども、初美はいま、いろいろ辛いこと、あるんだよ。それでも学校の方だけはちゃんとしてるって、父さんほめてたもんな」
「結婚生活を犠牲にして教育にうちこんでるっていうんでしょ。瑞枝姉さんもそういってたわ。
うちじゃあみんな初美党なんだから、競争でぐじぐじ、ぐしぐじ、してるといい。そのうち私が、ババーンとびっくりするような花火あげるから」
「おお、おっかね」
「そしたら少しは目がさめるかな」
「えらい花火だね。あんまりおどかさないでけろ」
「母さんはびっくりしないわよ。だけど、姉さんたちはおどろいたあげくちっとばかりヘソかむかな」
「ほぞというのよ」
「おんなじよ。上品ぶらなくても」
 声を合せて笑って、やっと重くるしい問題からぬけ出し、宮子は仕事にとりかかった。
母はいつものとおり土曜づかれで終日ねていたが、夕食の卓につくと、まっさきに口をついて出たのはもう娘恋しの言葉だ。
「ああしてみんな揃ったあとで、一ぺんに出ていかれると、淋しいね」
 宮子はそんな母をみるとき、ふとある不安にとらわれたりする。更年期症状とでもいうのか、二、三年来次第弱りの母が、何となく人を恋うのも、限りある命のつきる前ぶれとして、しらずしらず身をすりよせたい思いをしているような気がするからだ。
何でもあっさり割りきろうとする宮子も、時々昔風な、もののあわれを感じたりする。
しかし彼女はそれを顔に現わしたりはしない。
「今朝別れたばっかりじゃないの」
 おねだりの子供を叱る母親のような調子でいう。
「だけどもさ、これでまたしばらく会えないもの。みんな一人々々別々に暮すていること思えば、かわいそうで」
 涙ぐんでいる。
「あきれた。六日すれぱ帰ってくるじゃないの」
「初美は、当分かえらねっていってたもの」
「へえ。どうして」
「おもすろくねんだろ」
「へえ。私のことかしら」
 宮子はむっとしながら、
「そんならそれでいいじゃないの。不景気な顔してさ。それをまた人のせいのような顔してさ。大体人間が三十にもなって、甘いわよ。いつまでも親に心配かけるなんて−」
「……」
「母さんだって甘いわ。私、みていてはがゆくて。まるで幼稚園だもん。
あれで模範教師かしらと呆れる。大体初美姉さんのわがまま−じゃないかもしれないけどさ。とにかく、半分は姉さんの勝手でしょ」
「ま、一口にいえばそうだがね。そんな風にも云えないこともあるさ」
「そんならそれでてきぱきやればいいのに。親も子も、はがゆい」
「宮子には、まだしんそこはわからね」
 母はほっとためいきをし、
「今度の日曜は、それで父さんもかえってこねってさ。佐藤さんとあって、初美のこと腹たちわってようく話してみるっつうことだ。
その上で、今度こそはっきりさせるってさ」
「それがいいわ。さっさと片づけて、初美姉さんにも再出発してもらわないと、みんなが困る」
「だけども、てきぱきゆけばいいがって、父さんいってたよ」
「だって、要するにもう離婚届に判こつくだけでしょ。事態はそこまでいってるんでしょ」
「宮子はすぐ、そうかんたんにいうけども、そうはこばないとこもあるからさ。元の鞘に納めるっつうことも一応はさべらねばなるまいし」
「へえ。何だかよってたかって、めんどくさくしてるみたい。でもまあ、とにかく解決しようとすることは賛成よ」
「それで、当分初美はこの話おもしろぐいかねば家へも帰らねっていってるんだよ。一さいがっさい父さんに任せるから、なんとでもしてくれって」
「何とでもって、じゃあもしも父さんが、元の鞘におさめる話にしてきたとしたら、姉さんほんとにおさまる気あるの」
「そこがむずかしいところさ。おさまれっつうとおさまりたぐなぐて、そんなら別れろっつうたらそれがわがれたぐない気分になるらしいもんなあ。
そこがなやみだで、それ考えると母さん、頭やめてきて−」
「ずるいわ姉さん。じぶんのことじゃないの。今度帰ったら、私、忠告する」
「やめてけれ。宮子はあんまり活発すぎて、かえって初美の根性、まがらすから。
−初美もあんな子じゃなかったけど、一度つまずくとこれまでもってなかったひがみ根性まで出てきてな。人間さ変ってしもて、困った−」
 そういってぽろっと涙をこぼされてみると、宮子もこれ以上活発なこともいえなかった。
母が淋しがるのも、一つにはそんな心配があり、お互い離れて暮していることからくる不安からだと思うと、顔を合せてどうあろうとも、やはり帰ってもらいたいと思い、そのことをいってはがきを出そうと思っているうちに一週間たっていた。
瑞枝だけは帰ってくると思っていたのに、それさえ待ち呆けになって、むなしい日曜日を迎えると、母はぐったりして心細い声を出した。
「瑞枝は、怪我でもしたんじゃあるまいかね」
「大丈夫よ。あんまり母さん、とりこし苦労しない方がいいわよ。この上白髪がふえるの、感心しないわ」
「んでも、やっぱり気にかかる。きっと帰るって、この前いって帰ってったもの」
「でも、突発的な用事だってあるわよ。帰るなら帰れ。けりたぐなげればけるなっていう気でいましょうよ。
たまには、だれも帰ってこない日曜日もいいじゃないの。二人で、映画でもみてきましょうか」
 宮子は本気で母をそそのかした。
「映画ね。よし、みにいぐ。すぐいこう」
 思いがけず乗気になられて、宮子の方があわてた。
珍らしいことだった。二人はすぐ支度をした。もしやとの懸念でかぎを隣家に預け、バスで町へ出た。
母ものと喜劇など三本だての映画館は子供を交えて満員らしかった。
「どうする。みる?」
 新聞の広告欄をみないで出かけてきたことを悔いながら母に聞くと、
「おもしろぐなさそうかね」
「うん、みてもいいけど」
「んだらみようや」
「じゃあみよう。たまにはね。せっかく母さんと一しょにきたんだから」
 しかしみている間じゅう宮子は何だか損をしているような気持から解放されなかった。
みんながすすり泣いている中で、自分ひとり泣けないのもそれだし、やっと一つだけ席がとれて、腰かけている母が、しきりに鼻をかんでいるのも、目をそむけたい気もちだった。
このあと、今度はげらげら笑いの喜劇をみるのかと内心うんざりしていると、母ものが終ったとたんに母は立ち上り、出よう、という様子で外の方へあごをふって、どんどん出口の方へ歩いた。
「どうしたの。今度の喜劇の方が、もしかしたら面白そうだったのに」
「やだやだ。泣かされたり、笑わされたり、くたびれるよ。それに、何だか、もしかしたら父さんが帰ってきそうな気がしだしてね」
「だって? 今日は佐藤さんとこでしょう」
「その帰りに、なんだかちょっとでも家へよっていきそうな気がしてさ。もしもいい話にでもなったら、きっとよっていぐと思ってよ」
 そういう母の目はまっかだった。
今みた映画のなかの「哀しい女」が馬鹿々々しいまでの苦労のあげく、誤解がもとで別れていた夫のそばへ帰っていくめでたしめでたしの結末をみて、彼女はある錯覚を感じているらしかった。
 そんな母を笑いもできぬ気持で、宮子は今日だけは母のお守りをしてやろうと決心した。
すしやにでも入ろうかとさそったが、母は本当にくたびれもしたらしくいらいらとかぶりをふり、一刻も早くわが家へ帰りたい様子だった。
「ね、父さん帰るか帰らんか、カケしようか」
 宮子が、少しでも母を落ちつけようとして家が見え出したときを見ていい出すと、母は無邪気にその気になり、
「うん」
 とうなずく。
「私は、かえる」
 宮子が確信ありげにくぎっていうと、
「じゃあ、母さんは、帰らない方になるのかね。なにかけるね」
「ワンコそば。父さんと三人でちょうどいいじゃないの」
「母さんが勝ったら?」
「何でも、おのぞみしだい。あした父さんとこへ行ってきてあげてもいいわ。
佐藤さんの様子聞きにね」
「まさか」
 もう家のそばまできていた。そして二人は思わず顔を見合した。かぎのかかっていた勝手口があいているのだ。
「だあれ」
 声をかけたが返事はなかった。しかし宮子はそれが父ではないことをすぐ覚った。
女靴なのだ。しかも、当分帰らぬ筈の初美のではないか。
「初美姉さん」
 やっぱり返事がなかった。母があわてて部屋へ入った。初美は顔にハンカチをかけそこにごろりと横たわっていた。
寝たふりをしているらしい。泣いているとさとって、宮子はわざと、
「なあんだ、ねむってるのよ」
 そして母に、
「なにか、買ってくるわね。ごちそう」
 ささやいておいて再び外に出た。その留守の間にどんな話が交されたか。
ただ宮子は姉が泣いていたことで、何となく心がなごむのをおぼえた。
宮子とはあまり話もせず、翌朝早く初美はいつものとおり一番の汽車で任地へ帰っていったが、その初美のことについて、母もあまり語りたがらなかった。
それを初美に対する母の思いやりとうけとって、宮子はいつになく口をつつしんでいた。いずれは近く解決をみることがあきらかだったからだ。
 そして、その日から今日はまた一週間たっていた。母は一刻も早く、父にあいたいらしい。
宮子たちに聞かせたくないことは、家に帰りつくまでの道で、語りあい、ことによっては北上川の濁流のなかへすててきたいのかもしれぬ、と宮子はひとり察した。
なぜなら母が空を見上げては気づかっている瑞枝は、いつもこの時間には帰らないからだ。
「降らないかもしれないけど、ちょっといってくる。外の凪にあたるのも、くすりだでな」
 瑞枝のと三本の傘をもって、母は出ていこうとした。宮子はそんな母に心の中で微笑しながら、
「二本でいいわよ母さん。それに持って帰るかもしれないしさ、そうでなけ
れば、相合傘もいいじゃない? 父さんとでも、姉さんとでも」
「それも、そうだね」
素直に一本をおいて、朴南(ほおば)の中足駄の音は遠ざかっていった。
 すっかり降るときめた雨支度である。

roku2005 at 16:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

2007年06月20日

盛岡・なかなか外に出られない現状。

6月20日。

今朝の夕顔瀬橋からの岩手山。
もう少しで雪が消えそう。
20070620岩手山@夕顔瀬橋









この前もらった「ゲドを読む」は なんだかなーって感じだった。
なので「ゆれる」の小説版を購入。
なかなか読む暇がなくて、まだ1ページしか読んでない。
20070620ゆれる
















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roku2005 at 12:45|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote
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    大好きな岩手県・盛岡市近郊の美しい風景と日々の出来事を記録していきたいと思います。
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