切り取った日常から人生が見えてくる、34+1の短編
新聞記者(ニューヨーク・ポスト)、ピート・ハミルが取材のなかで出会ったニューヨークで暮らす人々を”スケッチ”している。
距離感を保ちながら彼ら彼女らを見つめる目線がやさしい。
「歴史」に登場しない、ささやかな人生たち。
過去の過ちも失敗も全部ひっくるめて抱擁するような人間賛歌。
事実の「再構築」にオチなんか不要だ。
場所や時が変わっても人間そんなに違わないんだなあと気づかされた。
いつの時代も市井の人間たちは、愛おしい。
順調にいかない人生にこそ人間の滋味を感じますね。
■気づいた点
・馴染みのバーやレストラン(固有名詞で)が日常の生活によく組み込まれ、登場人物たちを演出させている
・ポート・オーソリティー・バス・ターミナルが心の旅の発着点として象徴的な存在
・最近のことは忘れていても昔のことは克明に覚えていたりする
・プエルト・リコ人、アイルランド人、ポーランド人がジョークによく出てくる
・みんな退屈な人間になりたくないが・・
・最後の短編は「幸福の黄色いハンカチ」の原作。
こんなに短い作品で感動的に人生を描いてみせる手腕がすばらしい
今回も実家に眠っていた本から。
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