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もしかしたら“この席”から『甲斐みのり』の活動は始まったと言えるのかもしれない…。
「少女は煙草を吸うためにマッチを擦るのではなくマッチに火をつけるために煙草を吸う」当時、何気なく着いた六曜社地下店の奥の席から眺めた店内の光景、そしてテーブルの上に置かれた灰皿とマッチ、甲斐さんはふと、浮かんだストーリーと共に自分を重ねた。そしてそんな合言葉を胸に、マッチ箱を制作することから『Loule』に結びつける雑貨への関心をより深めていき、自身のブランドを立ち上げていくことになる。
元々静岡県出身の甲斐さんは、子供の頃から作文を書くことが好きで、国語だけが得意と言えた。それは、父が古文の研究者であり、両親共に俳人という境遇から得たものもあるのだろう。休日などに吟行のために山里や田舎へ向かうことがある時には、連れられながらも好きな本を毎回1冊買ってもらえることで、父と母は俳句を楽しみながら、自分はその手にした本を読む時間が楽しみになった。そうして“いつか自分も書く人になりたい”そんな気持ちを覗かせていくのである。そして、好きなことを伸ばしていけば良いという両親の考えや方針もあり、甲斐さんは興味あるものに向かって探究心を磨き大阪芸術大学文学学科へと進学をする。学生生活の中では専門分野を、またプライベートでは好きな映画や音楽にもどっぷりつかり楽しい時間や日々が続いていると感じれていた最中、それでも何故か自分の将来に思い悩んでしまい引きこもりがちになってしまう時期が訪れてしまう。そんな葛藤の中でも自身と好きなモノコトに向き合あった甲斐さんは、自ら目標を課すことにしてスケッチブックを購入し“好きノート”を作ることに…。この1冊が埋まれば自分は変われると信じて塞ぎがちになってしまった心を奮い立たせていくきっかけも作り出した。

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思い描いた道に進んでいくため、記していく作業も頭の中だけでは当然ノートは埋まらない…。もっと自分の“好き”を探求しなければと散歩をしてみたり、それでも埋まらないから自転車で、電車でという回数を重ねていくことでノートは埋まり、自分の“好き”が更に増えていることにも心強さを感じるまでになっていた。そしてその習慣から、誰かが下した評価や価値ではなく、また近年一般的に良く利用される定められた星の数をマイナスした減点的な評価で価値基準を付けるのではなく、自分の物差しの中で響くいい所を見つけて、俯瞰せず自身の目線から加点的に物事を見ることで評価以上に大切な背景やエピソードと楽しさを加えながら“好き”の価値を等身大で伝えていくことに何より自信を持てていったのである。そうやって身のまわりや身近な所にも好きになれる“いいもの”が沢山転がっていて、それらを見逃さず拾える目線を持てたことが何より大事なことで、今現在も甲斐さんが一貫して自分が好きと思えるモノコトや題材を多くの人に伝え続けることの出来る要因や志しなのかもしれない。
いろんな好きを貯めこむことが出来た甲斐さんは、自分を取り戻しながら大学の卒業を迎えるが、研究生として籍を置きながら何処か魅力溢れる京都へと移り住むことを決める。そしてそれは自身が本当にやりたい仕事に就くための階段を上り始めていくきっかけとなるのである。昼間は絵本の出版社や流通の仕事に触れ専門的に、夜は料亭のアルバイトで器や食の素晴らしさや季節を感じ、着物や着付けに礼儀作法も学べて社会勉強にも結び付いた。「私が何者でもなくても、何も持たなくても、こんなに好きなモノがあるという事実に救われた」と感じるほど、埋めたスケッチブックから経た自信は甲斐さんの背中を支え、1冊で留まることはなかった。そんな京都生活の中で、合間に喫茶店で過ごす時間や雑貨店に足を運んで物を手にしていくことで膨らむ発想を頼りに、甲斐さんは冒頭のブランドを1999年に設立。好きなモノやコトのアイテム作りに繋げ、Louleらしさをそこに加わえて今も展開を続けている。そうした経験を積んでいきながら、フリーペーパーなどの執筆にも携わっていった甲斐さんは、離れることのなかった『本を書く人』という夢を叶えるため、2年ほど過ごした京都を後にすることにして、フリーランスのライターのアシスタントとして本格的に東京へと拠点を移します。そこからの月日で自身への依頼も増やしていきながら、甲斐さんは遂に、2005年に初の書籍として想いの詰まった場所を題材にした『京都おでかけ帖』の上梓を実現させます。そしてそこから現在に至るまでに50冊以上の刊行を続けていくこととなり、まさに夢は目標の連続となる現実に変えて執筆を続けています。そうした数々の書籍には、自らの足で運び続けた記録と共に、目で見た記憶と素敵な醍醐味も伝えて気持ちを加え、そして範囲を決めないアイドル的な感覚で“好き”を捉えて様々な観点で自身の言葉を綴っているのです。

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「私の本を開いた時に、忘れていた自分の好きという気持ちを思い出してもらえたらいいな」好きなモノコトを本にしていても、文章を書くことは決して得意とは思えないと言う甲斐さんは、そんな想いを胸にいつも書くことに向き合っている。そして今もおでかけを続け、好きなアンテナに引っ掛かかれば躊躇せず購入するアイテムの数々は、作り手の支えや応援と共に、日常や生活の中でしっかり使って生かすことも心掛けているし、自身のブランドにも繋げて可愛い雑貨を生み出している。何よりモノコトだけでなく人との出会いも含めて育まれている甲斐さんの魅力は、今日も何処かで旅という名の散歩をしながら、男子が少年の心を持ち続けるように乙女の心を響かせながら、今日も“かわいい”を集めてその幸せを皆に伝え、文章や活動を通して私達に様々なアイテムや場所の魅力を寄り添うように身近に感じさせてくれているのです。


【プロフィール】

甲斐みのり

文筆家。静岡県うまれ。
文筆家日本文藝家協会会員。
大阪芸術大学文芸学科卒業。
旅、散歩、お菓子、地元パン、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に、雑誌、webなどに執筆すると共に書籍も多数発刊。
食・店・風景・人、その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。
地方自治体の観光案内パンフレットの制作や、講演活動もおこなうと共に、メディアにも多数出演。
雑貨やイベントの企画のプロダクションをする「Loule」(ロル)の主宰としてと活躍。
★https://www.loule.net/

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