『シチリアーノ』マーガレット・ローム著 小林町子訳 

【あらすじ】ロザルバは母の仕事のパン屋を手伝いながら静かな生活を送っている若い娘。
ある夏、いとこに誘われてシチリアにいる父方の祖父・ロッシ伯爵の館を訪れたロザルバは初めて自分のシシリーの血筋を意識した。ここでの生活はイギリスでの慎ましい生活とは全く違い、煌びやかな装いをし社交的な振る舞いを求められる。そんな雰囲気に気後れし、窮地に陥ったロザルバを二度も見知らぬ男性が助けてくれた。しかし三度目にロザルバの前にその男性が現れた時、彼は祖父の館から彼女を誘拐にしにきたのだった。シシリーの掟に従ってロッシの娘に復讐を遂げるために!

※この先(少し)ネタバレのある感想です※

獅子は我が子を千尋の谷に落とす…ロザルバ母は娘をシチリアの地に向かわせる…。

これもまたなかなか印象的な作品だった。シシリーの地で絶対権力者であるロッシ伯爵のしてきた(とされること)やその地で生きる人たちの過酷な生活の様子などかなり激しくドラマチックに描かれていた。

権力を使って自分の思うままに生きてきた祖父に背を向けてイギリスで生涯を終えたロザルバ父。
パン屋を営む母を手伝う世間を知らないままの娘を心配して、祖父からの初めてのシチリアへの招待を受ける様に背中を押すロザルバ母。
娘を思う親心もまさか娘が復讐のターゲットになるとまでは思っていなかったはず!

ヒーローであるサルバトーレも生まれた時から苦労している。自分の存在自体をロッシ伯爵にバレない様に暮らしていたなんて…。
やっと一矢報いるチャンスがロザルバ誘拐、だったと。

でも、どんなに復讐心をたぎらせて憎きロッシ伯爵の孫を不自由な目に合わせても、心から憎むことはできない。
ロザルバも突然誘拐され、洞窟での生活を強いられて山の中を連れ回されてもサルバトーレを憎むことはできない。
だから逃げ出したのも、自分が助かりたいから、というよりも「サルバトーレを助けたい」という気持ちの方が強かったのだと思う。

実際、サルバトーレの命を助けるために伯爵に言ったハッタリは、まぁ、円満解決にはこぎつけられたわけだし。
(あの何人もの人たちを不幸にしてきた伯爵の思う様に運んだと思うとシャクだけど…)

サルバトーレもそのロザルバのハッタリを否定せず、伯爵から「病院建設・運営」という実利を取った形に。

だから時間稼ぎくらいの気持ちで言った自分のハッタリを使って
二人の男が頭越しに勝手に和解してしまった時のロザルバの気持ちよ…!!

置いていかれた様な気持ち…何よりサルバトーレを、自分を好きでもない男を愛してしまったやるせない気持ち…

その気持ちがわかるから、最後のサルバトーレの素朴な告白が胸にしみた。

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Castle of the Fountains by Margaret Rome 1984