前回, 最初の投稿時のタイトルは「§9. Exercises (その1)」だったのですが, 翌日ふと思いついて「デデキント整域におけるGaussの補題 (§9. Exercises その1)」と修正しました. 自分のことを振り返っても, 確かにタイトルで内容が解らないと読む気がしないですからね. この夏に1か月みっちりブログを書き続けてみると, 今まで惰性でやっていたことがよく解ります.
 今回のテーマは「離散付値環の充分条件」についてです. 最初に定義をおさらいしておきましょう.

定義. 体 $K$ の離散付値 $v : K \setminus \{ 0 \} \to \mathbb{Z}$ (i.e., 付値であって像が離散的なもの) から定まる付値環を離散付値環, または単に DVR という.

 定義だけを見ていると他の性質とのつながりが見えにくいのですが, 既にご存知ならば $1$ 次元の正則局所環, 既に現れた性質では $1$ 次元のネーター局所整閉整域と特徴づけられます. 本文中で DVR の性質を最も踏み込んで論じたのは (9.2) でしょう.
Proposition 9.2. Let $A$ be a noetherian local domain of dimension one, $\mathfrak{m}$ its maximal ideal, $k = A/\mathfrak{m}$ its residue field. Then the following are equivalent ;
(1) $A$ is a discrete valuation ring,
(2) $A$ is integrally closed,
(3) $\mathfrak{m}$ is a principal ideal,
(4) $\dim_k \left( \mathfrak{m}/\mathfrak{m}^2 \right) = 1$,
(5) Every non-zero ideal is a power of $\mathfrak{m}$,
(6) There exists $x \in A$ such that every non-zero ideal is of the form $(x^n)$, $n \ge 0$.

 これを踏まえて, 本日は DVR の充分条件を与える問題を $2$ つ解きましょう.

2. A valuation ring (other than a field) is Noetherian if and only if it is a discrete valuation ring.
3. Let $A$ be a local domain which is not a field and in which the maximal ideal $\mathfrak{m}$ is principal and $\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty} \mathfrak{m}^n = 0$. Prove that $A$ is a discrete valuation ring.

 [2] から参ります. 意外なことに, 左右どちら向きの含意も (9.2) から直ちに導かれないのですね. 必要になりそうな付値環の性質を先に述べておきましょう.

補題 A. (1) 付値環の単項イデアルの全体は包含関係について全順序集合をなす.
(2) 付値環はベズー整域 (i.e., 任意の有限生成イデアルは単項生成であるような整域) である.
(3) DVR は付値環である.


[証明] (1) 付値環 $R$ の $2$ 要素 $x$, $y \in R \setminus \{0\}$ に対し $\dfrac{y}{x} \in R$ または $\dfrac{y}{x} \in R$ が成り立つ. $\dfrac{y}{x} \in R$ から $yR \subset xR$ が, $\dfrac{x}{y} \in R$ から $xR \subset yR$ が含意されるので, $R$ の単項イデアルの全体は包含関係について全順序集合をなす.
(2) 付値環 $R$ の有限生成イデアル $I = (a_1, \ldots, a_n)$ を考える. (1) から, 生成系の各々が生成する単項イデアル $a_1R$, $\ldots$, $a_nR$ のうち包含関係について最大のものが存在する. 全順序性から最大元は $a_1$ から $a_n$ の総てを含み, $I$ 自身に等しい, ゆえに $I$ は単項である.
(3) $R$ を DVR, $K = Q(R)$ をその分数体とし, $v : K \setminus \{ 0 \} \to \mathbb{Z}$ を $R$ を定義する (離散) 付値とする. 任意の $x$, $y \in R \setminus \{0\}$, に対し $v(x) \le v(y)$ または $v(x) \ge v(y)$ のいずれかが成り立つので $$ v\left( \frac{y}{x} \right) = v(y) - v(x),~~~~v\left( \frac{x}{y} \right) = v(x) - v(y)$$のいずれかは非負, ゆえに $\dfrac{y}{x}$ または $\dfrac{x}{y}$ のいずれかは $R$ に属する, すなわち $R$ は付値環である. [終]

[2] DVR がネーター的かつ付値環であることは既に示した. 逆に付値環 $(R, \mathfrak{m})$ はネーター的とする. $R$ 総てのイデアルは有限生成なので, 補題 (2) により単項である. もし共に $0$ でない素イデアルの組 $P = (p) \subset Q = (q)$ が存在すれば, $q$ は $p$ を割り切る. ところで $p$ も $q$ も素元ゆえ既約であるから, $p$ と $q$ は互いに単元倍でなければならず, $P = Q$, したがって $\dim R = 1$. また $\mathfrak{m}$ も単項なので, (9.2) (3)$\Rightarrow$(1) により DVR である. [終]

 引き続き [3] を証明します. こちらは条件がちょこちょことついているので, 力業でねじ伏せます.

[3] $a \in R$, $a \ne 0$, に対し $a \not\in \bigcap \mathfrak{m}^n$ なので, $$ v(a) := \max \{ n \in \mathbb{N} \mid a \in \mathfrak{m}^n \}$$ と定める.

補題 B. $p$ を $\mathfrak{m}$ の生成元とする. $a \in R$, $a \ne 0$, に対し $a \in p^{v(a)} R^\times$, 特に $aR = p^{v(a)}R$.

[補題 B の証明] $a \in R$ が $v(a) = n$ を充たすとき, $$ a \in \mathfrak{m}^n \setminus \mathfrak{m}^{n+1} = p^{v(a)}R \setminus p^{v(a)+1}R$$ である. $a = p^{v(a)} \cdot c$, $c \in R$, と表せば, $a \not\in p^{v(a)+1}R$ から $c \in R \setminus \mathfrak{m} = R^\times$ である. [終]

 この $v$ を公式 $$v(a/b) = v(a)-v(b)$$ によって $v : Q(R) \setminus \{0\} \to \mathbb{Z}$ へと延長する. これは well-defined である. 実際 $\dfrac{a}{b} = \dfrac{s}{t}$ のとき $at = bs$ であるが, 補題 B から左辺は $p^{v(a)+v(t)}$ の, 右辺は $p^{v(b)+v(s)}$ の単元倍なので $v(a)+v(t) = v(b)+v(s)$ を得る.

示すこと. この $v : Q(R) \setminus \{0\} \to \mathbb{Z}$ は離散付値である.

 $x = p^{v(x)} \cdot c$, $y = p^{v(y)} \cdot d$, ここで $c$, $d \in R^{\times}$, とすれば, $$xy = p^{v(x)+v(y)} \cdot cd^{-1}$$ から $v(xy) = v(x) + v(y)$ を得る. また $v(x) \le v(y)$ とすれば $x+y = p^{v(x)} \cdot (c + p^{v(y)-v(x)}d) \in p^{v(x)}R$ から $v(x+y) \ge v(x)$ を得る. ゆえに $v$ は離散付値環である.

 $R$ はこの $v$ が定める付値環なので, 特に DVR である. [終]

 少し見苦しい感じはありますが, なんとかなりました. こんな感じでやっていく予定です. よろしくお願いいたします.
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