こんにちは,龍孫江です.龍孫江のよろず語り「有限群のおもちゃ箱」第4回の問題はこちらです.

問題 4.$G$ を位数 $15$ の群とし,$x$, $y \in G$ をそれぞれ位数 $5$, $3$ の要素とする.以下を証明せよ.
(1) $\langle x \rangle$, $\langle y \rangle$ の少なくとも一方は $G$ の正規部分群である.
(2) $G$ は巡回群である.

SmlGrp04:巡回群の自己同型と位数15の群



有限群のおもちゃ箱」では,異なる素数2個の積 $pq$ を位数にもつ群について観察中です.前回は一方の素数が $2$ の場合,すなわち位数が $2p$ の場合を扱い,巡回群と二面体群の2種類の型が存在することを見ました.$p$, $q$ がともに奇数の場合には,素因数 $p$, $q$ の関係によって状況は微妙に異なります.あるときは $2p$ の場合と同じようにふるまい,またあるときはもう少しシンプルになります.この差異がどこから生じるのかを,今回と次回の2回かけてお話ししたいと思います.

内部自己同型と正規部分群

 前回の議論で有り難かったのは,位数 $2p$ の群において位数 $p$ の部分群は正規部分群であるという事実でした.これを手掛かりにして,位数 $2$ の要素と位数 $p$ の要素の関係を解きほぐしていったわけです.
 この発想は位数が $pq$ になっても変わりません.$G$ の位数が $pq$ のとき,Cauchy の定理により位数 $p$ の要素 $x$ と位数 $q$ の要素 $y$ が存在し,さらに前回の議論から $G = \langle x, y \rangle$ が成り立ちます.もしここで,$\langle x \rangle$ か $\langle y \rangle$ が正規部分群ならば,共役を用いて両者の関係式が得られるというわけです.

 後々の便宜のために,そろそろ内部自己同型を定義しておきましょう.数学の用語に名前をつけるのは,その概念を思考の対象として明示するためです.うっすらぼんやりと見えてきた道具に定義を与え名前をつけることで,それを考察の対象として位置づけられるのです.もし最初の定義に足りないものを感じたら,再び定義をし直して磨けばいいのですから.そのようにして,数学の道具は生まれ,使えるように進化していくのですね.

定義(内部自己同型)群 $G$ の要素 $a$ に対し,写像 $$ \phi_a \colon G \to G~~;~~x \mapsto axa^{-1}$$ は $G$ の自己同型である.$\phi_a$ を $a$ による内部自己同型という.

 可換性にまつわる議論において,$x$ を $axa^{-1}$ に写す操作はしばしば使いました.$a$ に注目した場合が共役作用,$x$ に注目する場合が内部自己同型です.視点を変えて同じ操作を考えているわけですから,重要さは言うまでもないでしょう.
 ほぼ定義そのものですが,内部自己同型を用いると正規部分群の定義は次のように言い換えられます:

補題.群 $G$ の部分群 $N$ が正規部分群であるための必要充分条件は,
任意の $a \in G$ に対し $\phi_a (N) = N$
が成り立つことである.


位数の分布と正規部分群

 では,(1) から証明しましょう.以下,$H := \langle x \rangle$, $K := \langle y \rangle$ と表します.

 証明すべきことは $H$, $K$ の少なくとも一方が正規という主張ですから,
$K$ が正規でないとき $H$ が正規である
ことを証明します.そのために,いささか力ずくに見えますが,各要素の位数を計算してみましょう.

 $G$ には15個の要素があり,各々の位数は $1$, $3$, $5$, $15$ のどれかです.もし $G$ が位数 $15$ の要素 $z$ をもてば,$G = \langle z \rangle$ は可換群で,正規ではない部分群はありません.ということは,今の仮定「$K$ が正規ではない」が成り立つとき,単位元以外の要素の位数は $3$ か $5$ のどちらかです.位数 $3$ の要素の数が決まれば位数 $5$ の要素の数も決まりますから,位数 $3$ の要素の数を求めます.
 位数 $3$ の要素は総て位数 $3$ の部分群に $2$ 個ずつ含まれていますから,位数 $3$ の要素数の計算は位数 $3$ の部分群の数を数えることとと「ほぼ」同義です.ここで「ほぼ」とつけたのは重複分を省くひと手間の意ですが,まずこの部分から片付けてしまいましょう.前回もちらっと使った技巧ですが,次が成り立ちます.

補題.有限群 $G$ の部分群 $K_1$, $K_2$ は, $K_1 \ne K_2$,および位数 $\# K_1$, $\# K_2$ はともに素数とする.このとき $K_1 \cap K_2 = \{1\}$.

証明 仮定により $K_1 \not\subset K_2$ ,特に $K_1 \cap K_2 \subsetneq K_1$.$K_1$ の部分群は $K_1$ 自身と単位群しかないので,ここから $K_1 \cap K_2 = \{1\}$.証明終

 $K$ が正規ではない,という条件を内部自己同型によって整理します.$K$ の非正規性は,$\phi_a (K) \ne K$ なる $a \in G$ の存在によって特徴づけられましたが,$G = \langle x, y \rangle$ と $\phi_y (K) = K$ から $\phi_x(K) \ne K$ しかありません.
 ここで,ちょっと乱暴なのは重々承知で,次の作用を考えます.作用する群は $5$ 次巡回群 $H = \langle x \rangle$,作用される集合 $X$ としては $G$ の位数 $3$ の部分群の全体をとり,その作用を
$a \in H$, $L \in X$ に対し $a \cdot L := \phi_a(L)$
と定めます.各 $\phi_a$ は $G$ の自己同型ですから $\# \phi_a(L) = \# L = 3$,すなわち $\phi_a(L) \in X$ です.また $\phi_a \circ \phi_b = \phi_{ab}$ から $a \cdot (b \cdot L) = (ab) \cdot L$ も成り立ちます.つまり上の作用は作用として成立しています.

 乱暴なのは $X$ の要素数などの情報がほとんどないことですが,それでも作用の一般論は通用します.$K \in X$ を含む軌道 $H \cdot K$ の要素数は $\# H = 5$ の約数なので $1$ か $5$ のいずれかですが,$\phi_x(K) \ne K$ でしたから軌道には少なくとも2個の部分群が含まれているはずです.すると,自動的にこの軌道は $5$ 個の部分群を含まざるを得ません.

 ここから,$G$ は位数3の部分群を少なくとも5個もつことがわかります.これらは単位元以外に交わらず,かつ各々に位数3の要素が2個ずつ含まれていますから,位数3の要素は少なくとも10個存在します.このほかに単位元が1個,位数5の要素が少なくとも4個含まれているわけですから,全部で15個しかないことを思い出せば,その分布は
  • 位数1 $\cdots$ 1個;
  • 位数3 $\cdots$ 10個;
  • 位数5 $\cdots$ 4個;
しかありえません.
 さて,位数5の要素が4個とはこれらが $x$ の冪で尽きていることを意味し,特に位数5の部分群は $H$ しかありません.$a \in G$ に対して $\phi_a(H)$ も位数5の部分群ですから $\phi_a(H) = H$ であり,特に $H$ は $G$ の正規部分群です.以上によって (1) が証明できました.

巡回群の自己同型群

 前述のように,$N$ が $G$ 正規部分群であることは,任意の $a \in G$ に対し $\phi_a (N) = N$ が成り立つことと言い換えられました.$\phi_a$ は $\phi_{a^{-1}}$ を逆写像にもつ全単射なので,$\phi_a$ は $N$ の自己同型を誘導します.$N$ がそこそこ簡易な群であれば,$\operatorname{Aut} N$ における $\phi_a$ の振る舞いを見ることで $a$ と $N$ の各要素の関係を見いだせるのです.

定理(巡回群の自己同型群)$p$ を素数とする.位数 $p$ の巡回群 $N$ の自己同型群 $\operatorname{Aut} N$ は位数 $p-1$ の巡回群である.

 この定理そのものの証明ではありませんが,$p = 7$ の場合に証明の概略を紹介しています.どうぞ併せてご覧ください.

 自己同型群から元の群の性質を導き出す架け橋となるのが「内部自己同型をとる」という写像です.

補題.$G$ を群,$N$ を $G$ の正規部分群とする.$a \in G$ による内部自己同型 $\phi_a$(の $N$ への制限)は $N$ の自己同型を誘導し,写像 $$ \Phi \colon G \to \operatorname{Aut} N~~;~~a \mapsto \phi_a$$ は群準同型をなす.

 一見すると抽象的な定理です.証明も形式的な議論で済みます.しかし,このような抽象的な定理が具体的な問題に戻ってくるのが数学のおもしろいところです.どれほど抽象的な理論であっても,その開発の裏には具体的な問題が存在すると言っても過言ではないでしょう.

 では,問題を完成させましょう.$H$ か $K$ のいずれかが正規部分群なので,上記の補題が適用できます.今とりわけ重視しているのは $x$ と $y$ の関係であり,$x$ は $H$ の生成元として既に登場していますから,$\Phi(y) = \phi_y$ の振る舞いが気になります.準同型による原像と像の関係としては,次の命題が知られています.

命題 $f \colon G_1 \to G_2$ を群準同型とする.$g_1 \in G_1$ に対し,位数 $\operatorname{ord} f(g_1)$ は $\operatorname{ord} g_1$ と $\# H$ の公約数である.

「公約数である」とは「いずれもの約数である」という意味に過ぎないので,証明は $\operatorname{ord} f(g_1)$ と $\operatorname{ord} g_1$,$\# H$ をそれぞれ個別に比較して得られます.そうとわかれば,前者は $f(g_1)^k = f(g_1^k)$ から,後者は Lagrange の定理から従います.

 $H$ が正規部分群であったとします.補題によって $$ \Phi \colon G \mapsto \operatorname{Aut} H~~;~~a \mapsto \phi_a$$ は群準同型であり,$H$ は $5$ 次巡回群ゆえ $\operatorname{Aut} H$ は位数 $4$ の巡回群です.
 $\phi_y$ の位数は $\operatorname{ord} y = 3$ と $\# \operatorname{Aut} H = 4$ の公約数ですから $1$ しかありません.このとき $\phi_y = \operatorname{id}_H$ であり,$$x = \phi_y(x) = yxy^{-1},$$整理して $xy = yx$ を得ます.$G = \langle x, y \rangle$ ですから,$G$ は可換群です.
 $K$ が正規部分群の場合も同様で,$\Phi \colon G \mapsto \operatorname{Aut} K$ による $x$ の像 $\phi_x$ が自明であり,やはり $G$ の可換性が導かれます.

 $G$ の可換性が得られれば,$xy$ の位数 $k := \operatorname{ord} (xy)$ を計算することで捌けます.$(xy)^k = x^k y^k = 1$ とすれば $$ x^k = y^{-k} \in H \cap K = \{1\},$$ したがって $k$ は $\operatorname{ord} x = 3$ および $\operatorname{ord} y = 5$ の公倍数です.一方 $\# G = 15$ の約数なので,$\operatorname{ord} (xy) = 15$ しかなく,$G = \langle xy \rangle$ は巡回群とわかりました.

 今回は,$\operatorname{ord} x$ と $\# \operatorname{Aut} K$,および $\operatorname{ord} y$ と $\# \operatorname{Aut} H$ の関係がいずれも割り切りがたいことから $G$ の可能性が可換群に絞られ,結果として巡回群しか存在できませんでした.次回は,この関係がもう少し複雑な場合について考えます.

 最後までご覧いただきありがとうございました. 今後ともご愛顧のほど, よろしくお願いいたします.
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