本日はいろいろありました. 最近, なぜかやることがやたらと増えたような気がします. それが大人になるってことなのかもしれません. ぼくはいつから大人になったんでしょうね.
(昨日も申し上げたようにぼくは藤子不二雄先生が大好きです. それはともかく, 権利関係が若干心配な動画ですね)
そんなわけで, 今日は UFD講義録はお休みし, 可換環論のご質問にお答えすることにします.
基本的な事柄をきちんと組み合わせられるかが問題です. 時期的に出処が気になりますが, いちいち気にしても仕方がないので参りましょう. 答えは肯定的です, すなわち次が成り立ちます :
定理 1 を証明するためのキーワードは2つ, 素因子 と 素イデアル避け です.
この記事の定理5で, 素因子と零因子の関係について述べました. 再度引用します.
$A$ はネーター環としたので, あらゆるイデアルは準素分解をもちます. $A$ の素因子は, 零イデアルの $A$ における準素成分の根基として得られるので, その個数は高々有限個です. したがって, 補題 2 によりネーター環 $A$ の零因子の全体は 有限個の素イデアルの和集合に表されることがわかりました. ところで, 有限個の素イデアルの和集合といえば, 思いつくのは素イデアル避けです.
2つの補題の証明証明についてはリンク先をご覧頂くとして, これらを用いて定理 1 を証明します.
[定理 1 の証明] $I$ の要素は総て $A$ の零因子なので, 補題 2 から $A$ の素因子の和集合に包まれる. 補題 3 から $I$ はある $A$ の素因子 $P_s$ に包まれる. 再び補題 1 をよく見ると, この $P_s$ として $\mathrm{ann}_A~(x)$ の形のイデアルをとることができ, このとき $xI = 0$ である. [終]
というわけで, ネーター環の場合の証明は終わりました. 非ネーター環の場合, ご質問の主張は成り立ちません.
例 4. $A = k{x_m, y_n \mid m, n \in \mathbb{N}]/(x_m y_n \mid m \ge n)$ とし, $I = (x_m \mid m \in \mathbb{N})$ とおく. $I$ の任意の要素 $f$ には有限種類の変数しか現れないので, $f$ に現れるどの変数の添字よりも大きな自然数 $n$ をとれば $y_m f = 0$, したがって $I$ は零因子のみからなる. 一方, いかなる $g \in A$ に対しても, $g$ に現れるどの変数の添字よりも大きな自然数 $m$ をとれば $x_m g \ne 0$, 特に $gI \ne 0$ .
実はこの例も既に一度作ったものなんですね. 使い回しばかりで失礼いたしました. 皆様良い週末をお過ごしくださいませ.
最後までご覧いただきありがとうございました. ランキング参加中です.
(昨日も申し上げたようにぼくは藤子不二雄先生が大好きです. それはともかく, 権利関係が若干心配な動画ですね)
そんなわけで, 今日は UFD講義録はお休みし, 可換環論のご質問にお答えすることにします.
<ご質問> 可換 (ネーター) 環の零因子からなるイデアルがあったとして, それはある零因子を一斉に消すことはできるでしょうか?
基本的な事柄をきちんと組み合わせられるかが問題です. 時期的に出処が気になりますが, いちいち気にしても仕方がないので参りましょう. 答えは肯定的です, すなわち次が成り立ちます :
定理 1. $A$ を可換ネーター環とし, $A$ のイデアル $I$ は $A$ の零因子からなる [i.e., $I$ の要素は総て $A$ の零因子である] とする. このとき $x \in A$ で $xI = 0$ を充たすものが存在する.
定理 1 を証明するためのキーワードは2つ, 素因子 と 素イデアル避け です.
この記事の定理5で, 素因子と零因子の関係について述べました. 再度引用します.
補題 2. $A$ をネーター環とする.
(1) $ZD~(A) = \{ \mathrm{ann}_A~(x) \mid x \in A \setminus \{ 0 \} \}$ の包含関係による極大元 [$A$ はネーター環なので極大元は存在します] は素イデアル, 特に $A$ の素因子である.
(2) $A$ の零因子の全体は $A$ の素因子総ての和集合に等しい.
$A$ はネーター環としたので, あらゆるイデアルは準素分解をもちます. $A$ の素因子は, 零イデアルの $A$ における準素成分の根基として得られるので, その個数は高々有限個です. したがって, 補題 2 によりネーター環 $A$ の零因子の全体は 有限個の素イデアルの和集合に表されることがわかりました. ところで, 有限個の素イデアルの和集合といえば, 思いつくのは素イデアル避けです.
補題 3. 可換環 $A$ の有限個の素イデアル $P_1, \ldots, P_r$ をとる. イデアル $I$ が和集合 $P_1 \cup \cdots \cup P_r$ に包まれるならば, $I$ はある $P_s$ に包まれる.
2つの補題の証明証明についてはリンク先をご覧頂くとして, これらを用いて定理 1 を証明します.
[定理 1 の証明] $I$ の要素は総て $A$ の零因子なので, 補題 2 から $A$ の素因子の和集合に包まれる. 補題 3 から $I$ はある $A$ の素因子 $P_s$ に包まれる. 再び補題 1 をよく見ると, この $P_s$ として $\mathrm{ann}_A~(x)$ の形のイデアルをとることができ, このとき $xI = 0$ である. [終]
というわけで, ネーター環の場合の証明は終わりました. 非ネーター環の場合, ご質問の主張は成り立ちません.
例 4. $A = k{x_m, y_n \mid m, n \in \mathbb{N}]/(x_m y_n \mid m \ge n)$ とし, $I = (x_m \mid m \in \mathbb{N})$ とおく. $I$ の任意の要素 $f$ には有限種類の変数しか現れないので, $f$ に現れるどの変数の添字よりも大きな自然数 $n$ をとれば $y_m f = 0$, したがって $I$ は零因子のみからなる. 一方, いかなる $g \in A$ に対しても, $g$ に現れるどの変数の添字よりも大きな自然数 $m$ をとれば $x_m g \ne 0$, 特に $gI \ne 0$ .
実はこの例も既に一度作ったものなんですね. 使い回しばかりで失礼いたしました. 皆様良い週末をお過ごしくださいませ.
最後までご覧いただきありがとうございました.