2011年02月
2011年02月28日 12:39
「あなたがそんな熱い瞳で見ているのがあの女だけってのは気に入らない。見ていなさい、私だって女の子なんだから! これが終わったら……あの泣き虫からあなたの心も身体も、奪い取ってやるもの……」

とわいすあっぷっ! (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 14-1)
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ものすごくMF文庫ライクな正統派三角関係ラブコメ。ただこういうのが増えてくると日陰者のSD文庫も少しは盛り上がるかなと。ちなみにタイトルはお酒の飲み方に関する用語。
故あって美少女二人から熱烈なアプローチを受けるけれど、そこに主人公の望む展開はない、というまあよくあるパターン。基本設定の説明が開幕数ページで充足するお手軽ぶりに笑ったけれど、全体的にはテンポもいいしなかなかの面白さだった。話がお気楽なだけでは終わらないのも個人的には○。
思い込み暴走特急で躁鬱の差が激しい涼子と、わがままなようでいて責任感や使命感が強く、頭もよく回るアリスの二人のヒロインもなかなか好対照で魅力的。彼女達の人格が形成されるに至った背景まできちんと描かれているのも好感が持てます。涼子さんがわりと壊れ気味なキャラなので、バックボーンのトンデモさのわりにアリスがまともに見える……
最終的に三角関係が形成されて終わり、ということで次回に繋がるいいプロローグだったかなと。異界関係の設定も意外とよく考えられてるみたいなので続きにも期待できますね。ちなみに自分はアリス派です(笑) 涼子さんの愛が重い。
エロコメ要素も結構あるのだけど、所々ちょっとコメディの範疇を越えてないかい、という部分も(おもに雅)。あんまりエスカレートしても困るかも。あと澤乃父がクズすぎて洒落にならん。涼子さんがかわいそうだ。
│書評
2011年02月27日 01:41
「用意がいいんだね」
『当然です。私なんですから』

ジュエルガール 1.眠り姫と心の玉座 (角川スニーカー文庫)
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「ピーチガーデン」の青田八葉のおよそ一年ぶりとなる新作(最近こういうの多いような)。
ある種の変身ヒロインもの、だと思うけど理路整然とした設定の構築ぶりはいかにもこの人らしい。ただそのせいで設定の説明に一冊丸々かかっているのだよなあ。長々と一気に説明するのではなく、話の流れの中で徐々に詳らかにするという形なので決して退屈ではないのだけど。さすがに誰でもすぐ疑問に思うはずの美海の謎を最後まで引っ張るのはやりすぎでしたが。
決められたルール、定められた条件の中で目標の達成を目指すキャラクター達を描くのがこの作者のスタイルだと思うのだけど、どうも本作ではその辺のシステマチックさが障害になっている印象。まあ今後の展開次第だとは思いますが。社会的に影響力のある秘密組織に対して、現実的なアプローチで戦いを挑む、ということで突き詰めればミュートスノート戦記(古いな)みたいな話になるのかも。
起承転結でいう転のところで話が終わってしまっているので、この一冊だけではなんとも言えず。続きは夏前くらい? もっと早く出せないものか……
一応、期待してる作家さんなので頑張ってもらいたいですね。「完璧」が口癖の木乃葉お姉ちゃんがかわいい。というかこの「過保護な姉」ってピーチガーデンが打ち切りに終わったせいで出せなかったキャラのリサイクルなんじゃ……
2011年02月25日 03:23
「恐れないでくださいまし。あなたと彼ら、彼我の力の差はないとは言いませんわ。ですが、思い出してくださいまし。半値印章時刻はあなたたちだけのものではない。わたくしたちのもの。狼、全員のもの」
「争奪戦は乱戦、敵は……味方。強い敵は、即ち強い味方でもある」

ベン・トー 7 真・和風ロールキャベツ弁当280円 (ベン・トーシリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫 あ 9-10)
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ついにその牙を剥くHP同好会の「過去」――憎しみの連鎖を断ち切れ! 佐藤!
来るかもしれないけどでもやっぱり来ないだろうなー、まさかねー、と思っていたことが現実になってしまったようですが、それはともかくとしてアサウラ氏の記念すべき10冊目。めでたいですね。
今回も三部構成、という形で槍水先輩の修学旅行から幕を開ける第7巻。前半では「半額弁当すら買えない」という未曾有の経済危機(笑)を迎えた佐藤の戦慄のサバイバルが描かれます。この脇道っぷりがいかにもこのシリーズらしいというか、止まるところを知らないセガネタと白粉さんの情念が現実を侵蝕したようなホモネタの多さに胃もたれが……大丈夫ですかこれ! 何気に白梅様にも大きなイベントがありましたが、本人は1mmもデレが無いのは変わらず。
そして後半、HP部のOGである鳥頭(うず)の「毒」によりジワジワと痛めつけられ、ついには同好会の活動から遠ざかってしまう佐藤と白粉。前半とはうって変わった重くるしい展開には息が詰まります。
そんな佐藤を立ち直らせ、再び戦いの場に駆り立てるのは、幾度と無く拳を交えてきたライバル達との絆。そして「美味いものが食べたいから戦う」というたった一つのシンプルな回答。この熱い展開こそがベン・トーの真骨頂ですね。白粉さんの復活ぶりはひどかったけど(笑) 同人活動の相方になったイラスト担当の人の正体が気になるところです。
かつてのHP部の崩壊にはまだ別の真相が眠っていそうですが、佐藤ならばそれもきっと乗り越えていけることでしょう。悪役全開だった烏頭も最終的にはかわいい女性に見えてしまうあたり、さすがとしか言いようが無いですね。
不在の槍水先輩はともかく、web短編でヒロインポイントを使い果たしたのか著莪の活躍もほとんど無く、今回は沢桔姉妹の出番が多めでした。とくに姉の梗は絶好調でなんだかもう……佐藤爆発しろ!
その他にも、今回新しく登場したルーキーの「ウルフヘア」は今後も好敵手として佐藤の前に立ちふさがりそうな予感。よく考えたら1年生の中で佐藤と白粉だけが争奪戦に参加しているわけではないし、今後もこういうキャラは増えてくるかも。「茶髪」は相変わらず名無しのキャラとは思えないほどの存在感を振りまいてますね。
誰もが気になっていた「三沢の乱」の詳細もついに語られましたが、これがまた随分と共感できる話で不覚にも感動した(笑) 自分も中坊のときはえらく重いカバン担いでましたね。
続きももちろんですが、個人的にはそろそろ百合・ガンアクション系の新作も期待しつつ、今後のメディア展開を楽しみに(そして戦々恐々としながら)待ちたいと思います。SD文庫でなければもっと安心できるんだけどなあ!
順調に調教の成果が出てる茉莉花に泣いた。とりあえずアニメはSEGAと日清食品の協力が必要だなあ……あとキリン氷結とかも。
│書評
2011年02月23日 19:46
「でも、真摯に祈るわ。その女に盛大に嫌われることを」

テンプテーション・クラウン (集英社スーパーダッシュ文庫 ゆ 6-2)
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「逆理の魔女」でデビューした雪野静の新作、ということで個人的に楽しみにしていた一冊。「一般人に翻弄される異能ヒロイン」を描いた前作同様、王道から微妙に「ズラした」構成の妙が味わえる作品でした。
強制ハーレム+最強設定(ヒロインが)という最近の流行に沿った内容では有りますが、「戦闘ヒロインに守られる凡人主人公」という状態そのものを「異能」としたあたりに面白さがあります。それはまさに最弱にして最強の力。
異能バトルのフリをしたラブコメ、という感じで諸々のファンタジー設定が全て、多角関係を発展させるための舞台装置として割り切られているのが潔いですね。膠着した三角関係を打開する為にわざわざやってきてヒロイン達に発破をかけてくれる魔王様は人がいいよなあ。
序盤はルヴィ、中盤は彩姫、終盤はラースという感じでそれぞれのヒロインにスポットが当たってましたが、なんだかおいしいところは全部ラースが持っていってしまったような。主人公は主人公で別に想い人がいたり、同級生の幼馴染が兄の婚約者だったりと一筋縄ではいかない要素も多いのだけど、全部ラースのキャラクターで吹き飛んでしまった。
設定の作りこみの甘さは前作からあまり進歩がないですが(汗)シチュエーションとしての面白さは抜群なので続編にも期待。後半微妙に影が薄かったルヴィ先輩は特に頑張れ!
2011年02月22日 01:11
「私は私を信じます。だから、私は私を疑います」
「……それは、矛盾ではないのかね?」
「いいえ」
「本当に信じるって、そういうことだと思います。本当に自分を信じたなら、そこには必ず、疑いがなければいけないはずです……さもなければそれは、盲信です」

神さまのいない日曜日IV (富士見ファンタジア文庫)
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ディーとアリス。二人の仲間?を加え、物語の舞台は再び荒野へ――
お騒がせスカーさんの「育児放棄」という衝撃のエンディングに続く第4巻。行方不明のスカーを追うアイ達がたどり着いたのは人の願いをかなえるという「世界塔(ザ・タワー)」。相変わらず、この作品で描かれる世界の有り様の鮮烈さには圧倒されます。
墓守本来の機能を外れた行動をとってきたスカーがプッツンしてしまうのは、時間の問題であったといえるのだけど、それ以上に今回はユリーさんが色々と限界でした。なんとなく無条件で「頼れる大人」ポジションに収まっていた彼ですが、元はといえば死ぬ為にアイの前に現れたのですからね。色々と吹っ切れたユリーさんは男らしくて格好よかったけど、同時にちょっとウザイ(笑) まあようやくアイ達のノリに付いていける様になったということか。
アイの「敵」を公言してはばからないディーはなんとも厄介なキャラですが、結局のところこれはアイとアリス、ディーの三角関係なのではないかな。そう考えると随分と話がシンプルになるような。まあラブ寄せなどという事は全くないですが(少年少女が主人公でここまで恋愛要素が薄いラノベも珍しい)
秩序立った展開から一転してタガが外れたようになるのはこの作者の定石ですが、終盤の目まぐるしさはまさに「物語の手綱を離した」よう。それでもページをめくる手が止まらないのは、この世界を生きるアイやアリスたちの行く末を、最後まで見届けたいと思ってしまうからなのだよなあ。このシリーズのくどくどと説明を重ねない(しない)構成は諸刃の刃といえるけど、それを補って余りある面白さがあるのも確か。
次で最終巻、というわけではないようですが一区切りという形になるそうです。もはやどんなものが飛び出してきても驚きませんね。まあ実際に読んだら驚くと思いますが。
堕落したターニャさんがかわいすぎて困る。
