2013年08月

2013年08月27日 00:21

「テストは関係ありません! わたしは! 自転車に、乗りたいんです!」




 明治時代から続く名門・白輪館女学院。自転車の値段が現代の高級外車並だった時代、自転車教育を通じた女性の自立と先進――「しくろおとめ」の育成という理想を掲げて創立された風変わりな学校である。しかし自転車に乗れることがステイタスではなくなった現代。時代に則しながら受け継がれてきた伝統は、ある種の「歪み」となって少女達に暗い影を落とすことになる。中学一年生の千晶、沙羅、綾音。そう、彼女達は自転車に乗れない新入生だったのだ――


 とわいすあっぷにフールズフィストと異能アクション・ラブコメ物が中心だった阿羅本さんの新作は、ラノベでは珍しい自転車物。ぱっと思いついたのは昔ファミ通文庫で出てたやつくらいかなあ。作者のサイトを見ると自転車とお酒が大層好きな方のようで、趣味を活かした形ですね(とわいすあっぷも作中の用語は酒関係が多い)。

 おおまかにいうと自転車版ロウきゅーぶ(+1歳)みたいな感じで、サクセス物としては王道でわかりやすい粗筋。中学生ズが落ちるのが早くてチョロい仕様なので純粋にスポコンを期待してるとちょっと気になる感はあったかな。まあその辺は小学生より中学生の方がマセているということでしょうか。

 終盤の課外試験。秋川渓谷から吉祥寺の学校までのツーリングはさすがにディテールがしっかりしてて面白かったですね。地理的にも個人的にわりと馴染みのあるところだったのがよかった。確かに40Kmちょっとという距離はロングライドと呼ぶには短すぎるのだけど、3日前まで自転車に乗れなかった少女達には過酷なもの。というか自転車乗りでもなんでもない自分はその程度の距離でも走ったことはないので、フィクションとはいえ素直に感心しました(笑)

 自転車関係以外でちょこちょこ気になる部分がありましたが、題材のレアさもあってなかなか楽しめました。冒頭に書いた学院の設定はこういう話が元になっているようです。

 キャラクターは概ねテンプレに寄ってる感じですが、終盤である少女に嫉妬する千晶など、単に溌剌とした良い子で終わらなそうな気配があって今後が楽しみなような怖いような。

2013年08月25日 00:58

「私、体は売っていません。私が売っているのは、命です」



 決戦はグンマケンチョで。


 女子高生傭兵VS警視庁という煽り文句どおりの展開。ただ公権力と真っ向から衝突するような展開を想像していたので実際にはちょっとテイストが違う感じだったかな。

 そもそも本作の主人公であるユリは本来は許されない銃を手にし(作中では拳銃の所持自体は合法ですが)非合法な裏の仕事にも手を染めているれっきとした犯罪者です。そんな汚れた境遇にあっても、それでも走り続けることを選択したのが1巻でのお話でした。前向きさこそがユリの最大の武器なのです。

 ところが今回の敵である警察のマスコット――P君もまた、法に則った存在ではないものとしてユリの前に現れます。目的の障害とならば仲間であるはずの同僚も躊躇なく殺害しますし、「法で裁けない悪を断罪すること」すわなち私刑こそが己の行動原理であると嘯きます。しかしそれでも、P君スーツを身に纏う限り彼はまぎれもなく「警察官」であり、弱きを助け強きをくじくみんなのヒーローです。はたして虚飾の「正義」に隠された真実とは何なのか。また決して正義とはいえないユリは、いかにしてその強固な幻想(ファンタジー)に立ち向かうのか。全ての決着は群馬県庁(跡地)です。

 企業間抗争に巻き込まれた被害者としての悲劇性と、不条理なまでの凶悪さを併せ持ったロナウドに比べると敵の怪物性はやや薄れた感がありますが、マスコットキャラクター達の設定のトンデモ度は相変わらず。派手なカーチェイスあり、空中戦あり、秘密兵器ありで作品のB級映画テイストもマシマシです(笑) 1巻に比べると救いのあるオチなので読後感はだいぶ良くなりました。新キャラの美鳳もいい子だし。前回ほとんどいいところのなかったユリは今回結構活躍していますが、大事な友人を守るというモチベと、あの恐ろしいロナウドのおかげで精神面が鍛えられた結果でしょうねえ。

 一巻がどことなく「黄色い花の紅」を思わせる構成でしたが、今回は女子二人での逃避行やスナイパーの活躍など偶然なのか「バニラ」を思い出す要素が。次はいよいよ、日本最大のファンタジーである「夢の国」の隠された真実に挑むようですが……3巻ではやくも完結してしまうんでしょうか。これも奴等の圧力の結果か!

 しかしイラスト担当の赤井てら氏の作品への愛も半端ねー感じです。大野さんの痴態(笑)から恐怖の生物兵器まで、多彩な挿絵の数々は必見!

2013年08月19日 21:45

 いろんな意味で今話題の(笑)榎宮センセの夏コミ本、ノーワーク・ノーライフが委託開始したので回収してきました。

 タイトルからしてNGNL本かと思いきやカラーイラストはいつ天関係がわりと多目。まあNGNLはこれからメディア展開していく作品なのでしかたないですね。それでもショップの特典イラストの他、完全描き下ろしのジブリールなどもありファンなら一見の価値あり。

Image258




 モノクロパートはNGNLオンリー。キャラの変遷がわかるラフイラストや暇奈椿氏との生々しいチャットログ(笑)で明かされる初期プロットなど、リアルな創作過程が窺い知れる大変興味深い内容でした。プロトタイプでは空がいなかったり(正確にはラスボスポジション)今とはちょっと性格の違う白とステフがコンビを組んでたり、これはこれで読んでみたかったと思いますが、最終的にベストな形に落ち着いたからこそ今の面白さがあるのでしょうね。

 同人だけに再販があるとも限らないので、気になった人は今のうちに抑えておくことをオススメします。しかしマジで大丈夫か榎宮センセ……

2013年08月12日 02:32

「……ぼくの顔をお食べよっ」

 全ての神話を従える王となれ!


 ごくペン!の1巻以来に読む作者の本。電子版で1巻を衝動買いしたら存外面白かったので2巻まで読了。非常に良かったと思います。

 売れ線に全力で迎合した感のある学園ハーレムバトルラブコメですが、あの「ごくペン!」の作者らしい勢いのあるキャラクター造形や展開の早さがいいですね。2巻までで既に10人近いヒロインが揃ってますが(メインとサブが半々くらい)意外と無駄な子もいない感じ。スーパー神話大戦、古流剣術無双などの燃え要素もあり隙がありません。

 「まるでギャルゲーのような」というのはあまり褒め言葉として使われるものではないですが、このシリーズでは逆にかなり割り切っていて、「数値で表示される好感度」や好意の増減が視覚的にわかる仕組みなど「むしろギャルゲーである」という開き直り具合が素敵。ついでにいうと1巻も2巻も4章のタイトルは「恋愛シミュレーション」となっており、個別のヒロイン攻略のみにページが費やされるという竹を割ったような明快さです。

 さて、2巻の内容はというと既存の未攻略ヒロインを差し置いて新キャラがやってくる(そして攻略する)というこれまたなぜかよく見るパターンなのですが(笑)、強敵とのバトルや意外な人物との共闘など盛り上がる展開もあって楽しめました。次回はなにやら思いつめ過ぎな輝夜先輩と氷灯さんの同時攻略かな。

 既得権益でしか物事を考えられない薄汚い大人達。未だ魔技科と剣士科の対立という壁を越えられない学生達。目前に迫る戦いの予兆から目を逸らし続ける人々にソロモンの神々が失望し始める中、一樹は「王」としてこの国に正しい道を示せるのか…? 主人公の覚悟と意志が問われる次巻が物語のターニングポイントになりそうなので期待して待ちます。

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