Garden of Avalonにも登場するとある騎士はApocryphaでの主要人物でもあります。
 アーサー王サイドから見るといきなり現れて理不尽に叛逆してくるヤツではありますが、こちらはこちらでそれなりの事情というものがあるわけで、Apocryphaにおけるブリテンパートについて、例によってこじつけ込の深読みをしてみます。

 アニメではモードレットの過去話やFGOに出てくる成長した彼女になれた過程はものっそごっそりカットされましたので、その補完の意味でもご一読いただければ。
 もちろん、私の拙いようやくなんかより、今から原作を買って読むのが一番ですが!!

1.カムランの丘 ~2巻第二章

<概要>
 聖杯大戦に赤(魔術協会)側として参戦した魔術師である獅子刧は夢という形でサーヴァントの過去を追体験していた。
 死屍累々たる戦場に立つその騎士の名は、モードレッドという。
 飛び交う矢をものともせず、全身鎧と兜で身を固めた彼女は突き進む。
 ブリテン統一王であるアーサーへの叛逆に多くの兵が賛同したのは、厭戦気分もあれば王妃の不義で権威が落ちていたこと、王への畏れや侮蔑もあったがそれだけではない。旗印となったこの騎士、モードレッドの存在も理由の一つだった。
 先陣を走るその戦いぶりは野蛮でありながら殺戮に最適化され、狂気を孕んだその暴走に兵士たちは熱狂し、その後を追って戦い始めたのである。

 敵の陣の厚い所を選んで突っ込み、蹴散らし、また別の難所へと突撃する。
 兵を減らそうとしているのではない。警護が厚いところに求める相手が…アーサー王が居ると踏んでの奔走だ。
 しかし、居ない。共に戦場に在り、戦い続けているアーサー王とモードレッド。その二人はしかし運命に邪魔されているかのように遭遇しないままだ。
 結局望みが叶ったのは最後の最後だった。
 もはや動けるものすらほとんど居なくなったころ、モードレッドの前に王は姿を見せた。
 憐憫も憎悪も無い、静謐で感情の無い顔にモードレッドは苛立ち叫びをあげる。
「どうだアーサー王! 貴方の国はこれで終わりだ!終わってしまったぞ! どちらが勝とうと最早何もかもが滅び去った!」
 怒りと歓喜、その他のこみ上げる感情を全て乗せた言葉に、しかしアーサー王は口すら開かず剣を構えた。
 我関せず。それこそがモードレッドにとって最も許せぬ回答だ。咆哮とともに叛逆の騎士は斬りかかり、二本の聖剣は火花を散らす。
「こうなる事はわかっていたはずだ! 私に王位を譲りさえすれば!」
 不貞の息子として産まれ、父に憧れ、拒絶されて憎悪し。
「そんなにも憎いか!? モルガンの子であるオレが憎かったのか!?」
 これは自分を振り返ってくれなかったことへの、当然の罰だ! 全てを破滅させてやったぞ!
 怒りと共に放たれた叫びに、ようやくアーサーは応じた。
 何の感情もない声で。
「私は貴公を憎んだことなど一度もない。貴公に王位を譲らなかったのは」
 淡々と。
「貴公には、王としての器がないからだ」
 モードレッドに対しての感情で認めないのではなく。
 ただモードレッドの機能が王に相応しくないと選定しただけという回答だった。
 瞬間、怒り狂うモードレッドの鎧を貫いて聖槍が胸をえぐり、同時にモードレッドの剣がアーサー王の頭蓋を割った。
 崩れ落ちたモードレッドの兜が割れ、アーサー王と同じ顔が晒される。
 父上、と手を伸ばして倒れるその姿を見届け、王は背を向けてさっていく。
 アーサー王は伝説となり、叛逆者はその伝説に唾吐くものとして歴史に刻まれた。父の愛を求めた娘は、何故そうなったのかを理解しないまま朽ち果てる。
 後には、身ぐるみ剥がされ腐っていくのだろう、誰にも顧みられることのない死骸だけが残った。



(1)燦然と輝く王剣
 王剣、クラレント。
 モードレッドがキャメロットの武器庫から盗んできた剣。元はアーサー王が見つけてきたもので、王が持つとその王気(オーラ)を増幅するという。
 ところで、王気(王者らしい気品)という言葉が実在するのを、私はこれ書くまでしらなかったよ…

 剣そのもののランクはBで、王が使用した場合は身体ステータスが1ランクアップしてカリスマスキルが身につくという。
 …強いな結構。身体ステータス1ランクアップっていったらバーサーカーがひどいデメリットと引き換えに手に入れてたりランスロットのアロンダイトが魔力消費大で実現してる効果だし。(あっちは同時に竜殺しとむっちゃ硬いって特性もあるが)

 モードレッドは王でないのでそれらの効果を受けられないが、剣そのものの「増幅する」という機能は生きているのでモードレッドは魔力放出の応用で雷をぶっ放している。
 この雷は、生前は憎悪、悟り後は対抗心を中心としたパパへの想いで構成されています。うーむファザーコーン(お父さんのとうもろこし)。
 
 原理を考えるとカルナさんとかの魔力放出持ちはみんな増幅ビームを撃てるのだろうか。


(2)叛乱軍
 アルトリアの心がぽっきりいっちゃったのは、彼らが王憎しで立ち上がったのではなくこれ以上耐えられないという心の弱さで暴れだしたというのが理由である。
 自分がそれに気付けなかったのがわるかったのだと自罰しちゃったからなわけだが、実際の叛乱側はわりと盛り上がりまかせの部分もあった模様。
 ブリテン騎士たちが単純と思うべきか、彼らがおもわずついていってしまう程の狂奔を示すモードレッドの勢いを称えるべきか。


(3)憐憫も憎悪も無い、静謐で感情の無い顔
 実際には、もう心が折れているが必死で身体を動かしている状態だったので、もう感情とか顔にでるわけもない。言ってしまえば、泣くのを我慢してるだけの状態。
 こんだけやったら怒るはずっていう間違いはランスロットもしたんだけど、アルトリアはそういう時自罰して自己完結しちゃうタイプなのだ…


(4)何故! 何故! 何故!
 次巻で語られる通り、王云々は自分でも先走りすぎたし無理があったと思っている。
 実のところモードレッドが怒っているのは息子として認められなかったのが大きい。
 ホムンクルス故に早く育ち、子供のまま大きくなってしまったからかどこまでも自分のことしか考えないモードレッドの問いに対するアーサー王の感想は、「答える義理もない」。

 まあ、そうだよね…ここまでやられて説明とかしてあげる余裕とかないだろう…


(5)憎んだことなどない
 実際、どうだったのだろう。
 アルトリアからモードレッドへの想いというのは描かれていないのではっきりしないが、四六時中ブリテンをなんとかすることしか頭になく、ギネヴィアの不義に対してもそれで向こうが幸せになるならいいだろうとか思っちゃう人だから、多分自分の血を引いているとか気にしてる余裕はなかったのではないだろうか。
 少し優しくしてやれば…というのはあるが、モードレッド本人も言っている通りその場合ももっと多くを求めてモードレッドは要求を嵩上げしていって結局叛乱起こすのだろうからあまり意味は無いか。


(6)モードレッドに王の器はあるかないか
 あるかないかって言われたらどう考えてもない。
 国の形態というか、他国をどんどん侵略して大きくなっていこうぜ!みたいな国ならばひょっとしたら偉大な征服王みたいなのになれたかもしれないが、守りに入ってるブリテンの王というならば、確実になしだ。思考回路子供だし、そもそも敵を作りやすすぎるので粛清の嵐になってしまう。
 優秀極まりない戦闘能力といい兵を乗せる勢いといい、戦闘リーダーに徹するのが適任に思えるが…

 まあ、そういうのを関係なく王位を狙わざるを得ないところに追い込まれているのが、モードレッドの悲劇なのだが。


(7)叛逆の騎士
 こうして、モードレッドは「アーサー王の国を無茶苦茶にした物狂い」としての役割で歴史に刻まれる。ランスロットがアーサー王の伝説ある限り「裏切り者」のポジションで語られなければならないように。

 何故モードレッドは叛逆したのか。次巻でそれは語られる。



2.王と不義の子 ~三巻第三章

<概要>
 モードレッドは夢を見る。
 母モルガンは幼い自分に囁きかける。
「私の愛しい息子よ。貴方は騎士になり、王を倒しなさい。私の息子である貴方には、王位を継承する資格がある。けれど、今そう悟られれば王は必ず貴方を■すでしょう。だから、今は雌伏のとき。ただ待つのです」
 ホムンクルスであるモードレッドは人間より早く育って老いる。同い年の子供たちが大人になるころ、彼女は死んでいるだろう。
 だから、その妬ましく羨ましく憎らしい人間より優れた存在になってやると誓った。人より早く駆け抜ける時間を、誰よりも優れたものにしてやると。
 母に連れられて父を見た。
 完璧過ぎるその姿に憧れた。
 母はあれが貴方が■さなければならない敵だと囁くが、それに従う気はなくなった。代わりに、その父に仕え、剣となろうと決めたのだ。
 成長は瞬く間で、父と同じ顔になったモードレッドに母は兜を与えた。人前では決して外してはならないという、不貞隠しの鉄仮面。
 顔を隠した怪しげなものであっても、彼女の剣技も騎士道精神も完璧であったが故に、栄光はすぐ掴めた。騎士となり円卓に座り、望んだ通り父の剣として王に仇なすものを切り伏せる日々。
 あの王は完璧過ぎると主張する彼らに、モードレッドは完璧とは素晴らしいものだろうと毒づいていた。大抵の王は我欲を以って民の悦びとする。騎士王には我欲はなく、ただブリテンのためにだけひた走る純粋な生命体。
 その在り方にモードレッドは自分の生まれを恥じながらも憧れた。顔を隠したままであっても、騎士道を全うしようとしていた。

 そして、転落。
 一向に王を打倒しようとしないモードレッドに焦れたモルガンはその生まれを彼女に暴露した。アーサー王の宿敵の子だというだけではない。おまえはアーサー王の子。その生き写し(クローン)なのだと。
 憧れ崇拝したその王は他人ではない。他のどの騎士よりもその距離は近い…それどころか自分だけが唯一その血を引いている、かけがえのない存在なのだ。
 この自分は、あの輝かしい王の「次」に相応しい特別な騎士!
 歓喜に背を押されたモードレッドは父に全てを語り。
 そしてアーサー王は言った。
「確かに貴公は私から生まれたもの。だが、息子とは認めぬし、王位を与えるつもりもない」
 特別などなにもない、いつも通りの声だった。
 王位は先走りすぎた。後継者もまだいらないだろう。
 だが、息子として認めないという言葉は、モードレッドの根底を突き崩した。
 公的には認められずとも、二人だけのこの場でならと。武勲めざましく騎士道にも沿う円卓の一人なのだ。「誇り高き我が息子」と、褒め称えてくれるに違いないと。
 それだけは、間違いないと信じていたのに。
 認めぬと仰るか。初めて発した怨嗟の声に王は応えず踵を返した。
 モードレッドは考える。
 当然のことだ。仇敵であるモルガンによって無理矢理創りだされた呪いの如き子など、誰が認めるものか。つまり、自分は自分である限り永劫これ以上のものは掴めない。モルガンから生まれたという事実ある限りずっと、何も認められることはない。
 後悔させてやる。
 憎悪で生まれ変わろうとモードレッドは決心した。父の全てを貶めてやる。王の成した一切合切を無価値にしてやる。

 そうすれば、王はオレを、見ずにはいられない。

 ランスロットとギネヴィアの不義を殊更大袈裟に騒ぎたてた。
 妻を寝取られたアーサー王には王の器がないと流言を流した。
 王に不満があった騎士を唆し、自分は忠実な振りをした。
 王は表情一つ変えないが、その裏に狂わんばかりの哀しみがあるだろうとモードレッドは想像してほくそ笑んだ。
 事態は悪化し、ランスロット討伐の為のフランス遠征に際し、モードレッドは留守居役を任された。政務をこなせる騎士は自分だけと自負する彼女にしてみれば、当然の展開。
 それを待ち構えていたモードレッドは、アーサー王が出発した途端アーサー王討ち死にと振れ回り、緊急会議を開いた。
 摂政を任された自分が王に相応しいと認めさせ、宝物庫からクラレントを手に入れて戴冠式を済まして王としての体裁を整える。
 そして、彼女はギネヴィアに告げた。お前たちの夫婦ごっこは馬鹿馬鹿しいと、兜を外して。
 夫婦でなくとも、アーサー王がギネヴィアを大事に思っているのは真実だ。これで奴は一層自分を憎むだろう。もっと、もっとだ。

 フランスから急遽王が取って返して嘘が露呈したが、モードレッドは多くの騎士や領主に庇われて罰を逃れた。
 彼らはモードレッドに言う。貴方はアーサー王とくらべてずっと人間らしいと。
 モードレッドは、彼らを蔑んだ。
 人を救おうとする王は人の心がわからぬと罵倒され。
 人を羽虫同然に思う騎士は人の心がわかると褒め称えられた。
 モードレッドは付き従う者たちを顧みない。
 あれだけお前たちの為に心を砕いた王のことを忘れてオレに尾を振る奴らなど、知った事か。
 そして、最後の戦争が始まった。ドーバーでの戦いでは敗北し上陸を許したが疲弊していたガウェインを討ち取った。
 戦いは続き、そしてカムランに至る。
 どうしてこうなったのか。他者から見れば馬鹿らしいだろう。母の予言通りになるだろう。自分だけの憎悪に国のあらゆる人間を巻き込んだ。
 全て、知った事か!
 オレは一騎打ちに敗れた。だが、勝った。
 ここで死のうと、あの日決めたとおり王が手に入れたものは全て台無しにしてやったのだ。これだけのことをしてのけたのだ。
 さあ、オレを見てくれ。

 そして王は冷ややかにオレの死を確認し、背を向ける。憎しみも哀しみもなにもなく。

 ああ、なるほど。
 王は、人の心がわからない。

 最後の最後まで、全てを失い我が子を殺して尚私情を見せぬ王のままなのか。だが、その完璧さでもこの結末だ。
 なら、オレはどうだ。完璧でダメでも、オレはそれを上回ってみせる。


 だから、オレに後一度だけ、機会を寄越せ…! あの剣を、抜かせろ…!



(1)モルガンの教え
 モルガンは途中まで自分の子というだけで父親のことは伏せている。
 モルガンはウーサーの娘でアーサーの姉であるので、確かにブリテンの正当な王の血を引いており、不自然な部分はない。
 女であるがゆえに第一子であるにも関わらず王位を受け継げず弟に「奪われた」姉が奪回を狙うという構図は歴史上珍しいものではなく、その手段として自分の子を王位につける事で間接的に国を手中に収めるというのも、またよくある話だ。
 この時点ではモードレッドは王になろうなどとは思っていなかった。ホムンクルスとしてこの世に生を受けた原因であるところのモルガンがこの上なく嫌いだったようなので、「モルガンの子だから王になる資格がある」というのを主張するのも嫌だったのだろう。
 また、輝かしい王に忠実に仕えるという構図自体が、父親の居ない彼女が求めた父親から愛を得る行為の代替であったのかもしれない。
 
(2)不貞隠しの兜
 おそらくモードレッドの主観としては、アルトリア顔から血縁を疑われるとモルガンの子で王の「甥」であるとバレてしまい、仇敵の子など騎士にできるか!となってしまうので兜を受け入れたのだろうと思われる。


(3)悪落ち
 憧れの人が父親だと知らされて喜び勇んで打ち明けたものの認知してもらえなかった。
 それだけではなく、やはりモルガンの存在が大きいように思える。
 自分はモルガンを赦さない。永遠に赦さない。だから他の奴らもモルガンの子である自分を永遠に赦さないに違いないと短絡的に思ってしまうのは、やはり優秀であっても子供であるということではないか。
 なんにせよ、それまで他人を蔑んでも恨んだりはしなかったモードレッドは、アーサー王の全てを汚してやると心に決めてしまう。

 癇癪を起こす事でしか気を引けない幼子のように。


(4)息子とは認めない
 そもそも何故認知しなかったのだろうか?
 モードレッド自身も言っているように王位絡みはともかく、内々になら…と思ったけど、よく考えたら「モルガンの奸計の結果とはいえ貴公が私から生まれたことは確か」とか言ってるから内々の認知自体はしてるいるわけだ。
 ただ、モードレッドの求めたものは、息子(娘)として褒めてもらうことだったから、それでは意味が無かった。結局欲しいのは愛なのだろうか…
 オレは最高の騎士だ! → オレはアーサー王の子だった → こんな優秀なオレが息子なんだから嬉しいに違いない!

 残念ながら、アーサー王の「嬉しい」は自分ではなく他人が幸せになった時だったのだが。


(5)ランスロット悲惨
 ランスロットがやらかした傷口をモードレッドが全力でこじ開けにかかってて、手口の悪辣さに笑いすらでてくる。
 やはり、優秀ではあるんだなモードレッド。戦闘だけじゃなく頭脳面でも…自分だけが政務を担える騎士って言ってたけど、ケイあたりはできないんだろうか…? もしできたとしてもモードレッドはあいつごときオレの足元にも及ばないとか認めなそうだけど。

 しかしまあひたすら他人を貶めてまわる姿はやはり好きにはなれない。


(6)人の心がわかる王
 モードレッドの行動は、多くの騎士に支持された。
 騎士が王を引きずり下ろして王位を求めるというのは叛逆ではあるが、物欲を基盤にする普通の人間にとっては非常にわかりやすい。少なくとも「皆が幸せなら自分は不幸せでも構いません」という特別すぎる精神形態よりはずっとわかる。この辺り、ディルムッドとケイネスと主従は逆だが同じパターンかもしれない。
 結果としてモードレッドはアーサー王程ではないとしても武力知力共に優秀で見てて不安にならない…というか自分達も高潔でなくちゃいけないんじゃと思わないで住む王として、望まれたということだろう。
 そのモードレッド本人はアーサー王の完璧さを相変わらず讃えているのだが。


(7)知ったことか
 もう何がなんだかわからなくなってるモードレッドの戦い。
 アーサー王を倒し王位を奪う。上記の通り周囲が認識している目的はそれだし、モルガンもそれを望んで全てを仕組んでいる。だがモードレッド本人は実際のところそれを手段としか思っていない。
 アーサー王に憎悪を向けてはいるし、その築いたものを台無しにしてやろうとも言う。でもそれもまた目的そのものではない。それをして何を得られるかということが問題だ。
 だから周りの目も、母の呪いも、苦しむ民衆も全て知ったことかで済ましてしまう。
 おそらく本人も自分が何を望んでいるかわからない。何故だを連呼するのも、そのあたりに端を発しているのではないか。
 その正体はおそらく、親の気を引きたいというだけのことだと思われるが…


(8)機会を寄越せ
 そして、聖杯への願い。
 国の終わり、モードレッドの死を前にしても感情を見せぬ…実際には決壊寸前で我慢していたアーサー王の完璧さを、モードレッドは初めて否定的に捉える。このあたり自分だけは特別と思っているモードレッドの子供らしい自尊心が変わらず影響しているが…ともあれその在り方を否定してこう願う。
 オレが完璧な王という父のやり方を上回る何かを見せてやる。だから選定の剣を抜かせろ…
 つまり、「完璧なるアーサー王の次」ではなく「完璧なるアーサー王の代わり」に王になることを要求しているのだ。この差が、次巻におけるモードレッドの結論につながっていく。

 

3.ひとりきり ~四巻第ニ章

<概要>
 モードレッドは、マスターの準備を待つ間、ひとり思いにふける。
 生前から、自分は一人だった。
 母モルガンは自分を父への復讐の道具としか認識してなかった。
 急速に成長する身体では子供同士の知り合いなど作れない。
 騎士になってからも顔を隠して戦い、戦いと繰り返すばかりで他の騎士とも交流してこなかった。
 素顔で語り合ったのはただ一人。自分に感心を持たなかった父だけだ。

 理想の王という機械仕掛けの人形相手に語り合うには、せめて自分も王にならなければと思い…
 
 そんな彼女の前にふと訪れた黒のライダーは、君を慕って王にしようとした人間たちをどう考えるのかと問う。人間嫌いというが、そういう人まで嫌ってしまうのは可哀想じゃないかと。
 モードレッドは答える。あいつらはあいつらなりに叛逆の理由があった。オレが人間を蔑むのはオレに逆らったからとか従ったからとかでなく、王になるべき自分は民より上になければならないからだと答える。そこに例外はない。
 ならばと理性のない騎士は問う。君は王になりたいのか。
 叛逆の騎士は答える。当然だ。
 そして問われる。君は悪しき王になりたいのか。善き王になりたいのか。
 そして、モードレッドは答えた。
 善き王に、決まっている。

 彼女は黒のライダーと別れ、考える。
 善き王になる。
 それは決まっている。ヴォーディガーンのような英雄に討たれる悪しき王になるつもりはない。
 では、どうすれば善き王になれるのか。いや、むしろどんな王になりたいのか。
 王になる自信はある。選定の剣がここにあればきっと抜ける。
 理想の王になりたい。誰をも守れるような、誰もが望む王になりたい。
 そのためには父のような無私の王になればいいのか? それは息苦しかろう。
 それとも己が夢に全てを巻き込む貪欲な王になればいいのか? それは恨まれるだろう。
 暴君は討たれて終わるものだ。なら父のようにあるべきか。しかしその父も道半ばで膝を屈したのだ。
 迷う。
 ただ王になりたいとだけ言って目をそらしていたものは、その問を前に直視せざるをえなくなった。
 他の王たちはどうだったのだろう。歴史に刻まれた暴君、名君、暗君は。
 アーサー・ペンドラゴンは、自分の治める国の未来に何を見ようとしていたのだろうか。

 モードレッドは、自分で壊しておいて何を言うかと自虐する。
 アーサー王の治世は上手くいっていた。それを台無しにしたのは自分だし、それを後悔したことはない。自分を含めて誰も彼も死ぬ叛逆だったが、それをしなければ自分の魂は死んでいた。
 愛してくれとは言わない。せめて、自分に関心をもってくれれば。言葉にせずとも目で追ってくれればそれでよかったのに。
 そう思いかけて否定する。そうであっても自分はきっと際限なく求めるものを大きくしていき、最後にはやはり王位を求めて反逆していただろうと。

 果たして、自分はどうすればよかったのか…



(1)マスター遅せぇなあ
 聖杯大戦におけるモードレッドのマスターは獅子劫界離という魔術師で、全シリーズ通しても能力人格にバランスの取れた良マスターである。特に令呪の使いどころをよくわかっている。モードレッドという使いづらすぎるサーヴァントとの相性もいい。
 まあ、彼が使用した触媒「円卓の欠片」はマテリアルでも語られている通り使えば円卓の騎士からアーサー(世界との契約で聖杯探求中orアヴァロンでお休み中)とガラハッド(昇天して望みがないから召喚に応じない)の二人を除いた十一人の中で自分と相性がいいヤツが呼ばれてくるという超優秀なものだったという背景もあるのだが。


(2)アストルフォの問い
 モードレッドは生前から王位を求めていて戴冠までしてたりするわけだが、それは常にアーサー王が存在するという前提があった。そこから「奪う」のを目指していたわけで、実際に自分が王になったあとどうするかという考えには及んでいなかった。
 正確に言えば、死の直前に「完璧な王という父のやり方を越える」という漠然としたヴィジョンを抱いただけの状態。
 だが実際のところ私情を挟まぬ完璧な治世というやり方を越えるというのがどういうことなのかはモードレッドにもわからない。
 生前と違い、アーサー王が居ない場所でモードレッドは悩み続ける。


(3)輝ける星
 アニメUBWのBDボックスについてきたCDドラマで、ケイ兄さん…と思われる誰かはアーサー王について天で輝いているべき星が目の前で光ってるようなもんと表現した。
 モードレッドにとってもそれは同じだったのだろうと思われる。アーサー王がそこに居る限り、眩しすぎるそれを無視はできない。アーサー王をどうするか、アーサー王にどうしてほしいのかが先に立ってしまい、他のことを考える余裕がなくなってしまう。
 そういう点で、サーヴァントとして召喚され輝く星が見えない場所で初めてモードレッドは自分の事を考えることができたのだろう。
 それは、親離れとも言えるかもしれない。



4.語る言葉は ~四巻第三章

<概要>

 最終決戦への道すがら、モードレッドはマスターと軽口を叩き合いながら考えていた。
 生前の自分は、何故こうしてこんな風に誰かと語り合うことがなかったのか。
 答えは単純だ。目標としていた父が、そうでなかったからだ。
 だが、父がしていなかったことはこんなに楽しい。
 何故父は語り合わなかったのか。語らずとも楽しかったのか、語ることが楽しくなかったのか、それとも、それを必要と思わなかったのか。
 全てかもしれない。父の目指したものはあまりに遠く、その存在の全てが目的の為に捧げられていた。
 無論、配下の騎士達も努力はしていたが、その視野は追うよりも遥かに狭かった。目標の為に今何が必要なのか、やれと言われたことが最終的に何に繋がるのか。それを理解できているものが居なかった。
 目的の為の犠牲を説かれても、その犠牲が必要であると確信できないから、実はその犠牲は必要なかったのだと語られると、不信を覚えてしまう。他ならぬモードレッドがそうやって唆したのだから間違いない。

 王は孤高。王は孤独。だが、語り合うことでそれを埋めることができたのかもしれない。
 召喚されてからの僅かな日々でさえ、この相棒とこれだけのことを知った。
  生前にそれをしていれば。
 王と語り合うことができていたら、あの人のことを、理解することができたのだろうか。
 未練がましく、そう思った。


(1)わかり合えれば
 自分(と父上)以外は全て下と断じていたモードレッドのパラダイムシフト。
 これは聖杯大戦という特殊な状況であったのが大きいと思われる。通常の聖杯戦争であれば自分とマスター以外は全て敵なので、必然的に対話のウェイトは小さくなる。
 相変わらず、モードレッドはアーサー王の治世については正確に把握している。このあたりからが自称「円卓の騎士で唯一政務を担当できる騎士」の面目躍如か。
 逆に言うと騎士達の脳筋っぷりが目立つなあ。


(2)何故父は語らなかったのか
 女であることを隠しているから、というのもあるのだろうか?
 男体化とかもして一応本気で隠しにかかってはいるし、秘密を抱えたまま楽しく談笑もできまい。
 それ以上に、自分は恐れられ孤立する代わりに王として構成な政務をと心がけていたからなのではあろうけど。

 

5.選定の剣 ~五巻第二章・三章

<概要>
 モードレッドが聖杯に望むことは、選定への挑戦。
 選定の剣に挑み、自分が王になれることを証明すること。王の嫡子たる自分にはそれができる。できねばならない。そう考えていた。召喚されてすぐの頃は、だが。
 なりたいのは悪しき王か、善き王か。
 黒のライダーに問われたことを思い出す。
 選定の剣を抜く時に、父は何を願ったのだろう。これまで一度として考えなかったその問いを、何度も何度も繰り返す。
 
 生前、何度となく夢を見た。硬い岩に突き立てられた剣と、その横に立つ若いのか年寄りなのかわからない魔術師。そして、自分。
 この剣を抜いたものが王になる。その予言に騎士達はこぞって挑み、敗れていく。
 そうして誰も見向きもしなくなった剣の前に自分が立ち。
「その剣を抜く前に、よく考えた方がいい」
 魔術師の言葉に考える。
 この剣を抜く意味。立派な王になるという言葉の意味。選ばれた者であるという証明。それはいつだって考えていたものなのだから、これ以上考える必要など無いと自分は手を伸ばし。
 しかしそれを見た魔術師が溜息とともに手を一振りすると、そこで夢は止まってしまう。
 モードレッドは苛立ち、激高し、懇願した。剣を抜かせろ。抜けない筈がない。
「ならば。君はこの剣に何を誓い、何を託す?」
 魔術師の問いに正しく答える。
 善き王になる。正しき治世と戦略。絶対的な正義に権力。何が間違っているというのか。
 自分はアーサー王の子、モードレッド。誰にも負けない、父をも越える王になれる筈なのに。
 なのにこの手は、動かない。まだ分かっていないのかと。誰ともしれぬ声と共に目が覚めてしまうのを繰り返す……

 決戦のさなか、追い詰められたモードレッドの朦朧とした意識に、かつての夢と同じ光景が広がる。
 何故、どうして自分は王になろうと思ったのだったか。
 あのアーサー王の息子であるというプライドか。父の姿に憧れたのか。
 あの頃と違い、何故かその剣を掴むことが罪悪なように思えてしまう。
「おや、抜かないのかい」
 魔術師の声が聴こえる。
 手を伸ばすべきか。伸ばしていいのか。その権利はあるのか。躊躇するうちに、剣の前には一人の少女が立っていた。
 次の番だったらしい彼女の背を、迷いながらぼんやりと眺める。
「それを手に取る前に、きちんと考えたほうがいい」
 魔術師はモードレッド同様にその少女にも告げる。
「それを手にしたが最後、君は人間ではなくなるよ」
 よほど剣を抜かせたくないのか、積み上げた物は全て台無しにされ、寂しく虚しい死を迎えるとご丁寧に見せてまで否定され。

「いいえ」

 それでも、少女は決断した。
 それほど王になりたいのかとモードレッドは思い。
「…多くの人が笑っていました。それはきっと、間違いではないと思います」
 問いの答えを、ついに手に入れた。
 父にとって、王になるのは目的ではなかった。人々を守るために、王になるという手段が必要であったというだけ。
 見せつけられた未来がどれだけ怖かったのだろうか。小さな背中でそれに耐え、少女は剣を握りしめた。
 遠く騎士達が騒ぐ声が聴こえる広場の片隅。まだ王でなく誰一人見向きもしない。
 ひとりぼっちの少女が挑んだ伝説の始まり。
 魔術師は振り返り、問う。

「さあ、君はどうする?」

 何故手を伸ばせない。何が足りない。そう思っていた。だが、そうではなかった。
 父になり変わって剣を抜く為には何が足りないかというところで既に間違っていた。自分には足りないものがあったのではない。父の代わりをするには、そもそものカタチ、願いが違ったのだ。
 王になりたくて剣を抜こうとする自分が、人々を救いたくて剣を抜く父と重なる筈がない。
 あの時、王に仕える者達は我欲がないことを恐れて我欲に満ちたモードレッドに擦り寄った。
 モードレッド自身もまた、父はそういう機械じみたものなのだろうと考えていた。
 だが、違った。父には我欲が無いのではない。ちゃんと欲しいものはあった。ただその欲しいものが、民の笑顔なんていう自分達にとってどうでもいいものであったから、理解できなかっただけのこと。
 この気付きが真実なのかはもう確かめることはできないが、モードレッドはそれで納得した。だからもういい。

 それがモードレッドの、結論だった。


(1)選定の夢
 マーリンが夢魔ハーフでありアルトリアに睡眠教育を施していたことを考えると、これはモードレッドの夢でなくマーリンがモードレッドを試しているのだと考えるべきだろう。
 毎回マーリンが手を振って終了というあたりからもそれっぽさが感じられる。


(2)剣に手をのばすことすら出来ない
 剣を握ったら、意外と本当に抜けたのだろうか?
 どちらにせよ、自分なりの王の形を思い描くことをせず父が王だからという理由で剣に挑みたがっても、失格という話。


(3)これでいい
 FGOへの登場時に綺麗なモーさんになっていた理由であると思われる。
 一方的な恨みが一方的に解消されたことによって憎悪を乗せた魔力放出を増幅した雷ビームであるクラレント・ブラッドアーサーの燃料が無くなったことになるのだが、「使ってるうちにコツを掴んだ」という無体な理由でモードレッドは以降も雷ビームを撃ち続けるのであった。なんだかんだ天才である。
 尚、恨みが晴れたとはいえ父上を見たらオレが超えてやる!と襲いかかるのは変わらないらしい。他にコミニュケーションの方法知らないもんね。

 …いや待て対話の楽しさ学んだんじゃなかったのかおまえ。



6.ふたたび、カムランの丘で ~五巻三章

<概要>
 聖杯大戦を戦い抜き、敗北なきままに力尽き、現世を去ろうとするモードレッドはあの丘に蹲る自分を見ていた。
 全てを台無しにされ、モードレッドに致命傷を与えられた父はしかし、怒りも憎しみも見当たらない。その表情を、穏やかであると感じた。
 自分がここまで追い込んでも意に介さないそのありかたを、今のモードレッドは悲しいなと思う。憎むべき相手を憎まぬようにするのは、感情のままあるより大変だろうにと。
 王は騎士につれられて戦場を去り、モードレッドは自分の骸を離れてその背を追う。
 騎士は王との幾度かやりとりの後、聖剣を湖に投げ、ここに伝説は終わる。
「すまないな、ベディヴィエール。今度の眠りは、少し、長く……」
 その最期は、穏やかであった。無念の一欠片もないその顔に、涙が零れた。
 これは夢かもしれない。だが夢だろうと構わない。父はこんな最期を迎えるに足る存在だと信じて、赤のセイバーの聖杯大戦は、幕を閉じた。
 
(1)父の顔
 二巻では機械的なものと嫌悪したその顔を穏やかなものと感じているのは受け取り手の感情が変わったからであり、実際のところアルトリアはこの時泣きそうになるのを我慢しているくらいに辛いのだが…まあまだまだモードレッドは子供なので偉大なるパパが少女のように傷ついているというのは想像の範囲外なのかもしれない。。


(2)憎むべき相手を憎まぬようにするのは辛かろうに
 憎まれる事で父を振り向かせようとしたモードレッドの気付き。
 実際、アルトリアは人を憎むのではなく自分を責めてしまうタイプであり、それが故に世界と契約をしてしまうところまで追いつめられる。
 辛くてもやせ我慢してしまう、そしてできてしまうのがアルトリアの強みで弱みなのだ。


(3)此度の眠りを眺めてるヤツ多いな!
 モードレッドの死後のことであり、本人はただの夢かもとか思っているが、我々読者としてはこの最後が台詞レベルまで正確であることがわかっている。
 座なりなんなり経由で追体験してるのかもしれないし、このシーンをリアルタイムで千里眼使って目撃したマーリンのサービスかもしれないが…この分だと案外他にも目撃者がいたりしてもおかしくない感じである。